さて、上手い事いくか。デジタル人民元の本格運用を来年に控え、中国当局が既存の仮想通貨の所持・取引を違法化した。相変わらず強引なやり口ではあるが、膨れ上がった経済活動を何とか制御下に置かないと足元が危うくなるので、中国共産党も必死である。北京冬季五輪でデジタル人民元を大々的にお披露目し、国際的な決済でも存在感を高める為にはまず国内統制を強化しなくてはならないのは理に適っている。これまでコッソリ色々やってきた人は不満ではあろうが、従わねば叩き潰されるだけであろう。人民元をデジタル化する事によって国際通貨になれるかであるが、現状のドルもほぼデジタルでやっている様なものなので、現時点では何とも言えない。資源国に「使わないと輸入してあげない」と迫る事が出来る購買力は有るが、受け取っても使い所が無ければ敬遠されるだけである。「人民元決済するとポイント20%付与」みたいな捨て身の販促が必要に思えるのである。
当クリニックではマイナンバーカードは使えません。従来の保険証をお持ち下さい。行きつけの病院でそう云うポスターを見掛けた。ちゃんとした印刷物なので、恐らく相当数の個人経営型開業医でニーズが有ったのだろう。そうだろうなとは思う。病院側にシステム導入に見合う利点が見出せないのである。電子カルテが厚労省の管理下で共通化されマイカが無いとそれにアクセス出来ない、みたいな所まで話が進んでいるなら話は別だが、現時点では「おくすり手帳」程度の機能しか無いのだから当然である。この手のニワトリタマゴな問題はテクノロジーの普及途上では良くある話なので、一朝一夕でどうにかなるものでもない。マイカを提示したら抽選で医療費をキャッシュバック、みたいな謎のテコ入れに走る事無く地道に取り組んでもらいたい。本来は行政のコスト削減ツールなのだから、それに見合わぬ補助金をぶら下げて導入をゴリ押ししたのでは、本末転倒なのである。
今後どう展開するだろうか。AppleがiOS15.1で、ワクチン接種証明をWalletアプリに追加出来る様にするそうである。Apple Pay用にクレカを登録してからは滅多に使う事は無かったが、デジタル庁の機敏な対応によって利用機会が増えるといいなあ、と思っている。しかし接触通知APIの実装ではGoogleと共同歩調を取っていたのに、今回はApple単独なのが気掛かりである。Google Payと云うこれまた滅多に使わないアプリが有るのだから同様の機能は実装出来なくもない様に思うのだが、Android端末はスマホメーカ毎にカスタマイズされている事が多いので、その動作検証が難しいのかも知れない。我が国独自規格の「おサイフケータイ」との兼ね合いも考えると、下手にWalletに入れるよりは専用のアプリにした方が汎用的と云う判断も有るだろう。ヘルスケア分野での両陣営のデファクトスタンダード競争は滅多に使われない事も有って盛り上がっておらず、デジタル庁が頑張ってもiOSの機能が使われるかは微妙なのである。
動乱の時代にはそれを収束させるヒーローが必ず傑出する。余りにもご都合主義ではあるまいか。尤も「そんなトントーンと話が進むんやったら警察は要らん」みたいなミラクルを連発出来たからヒーローなのであろう。例えば織田信長である。無茶な合戦で何度か死んでいてもおかしくないし、暗殺の企ても有っただろう。その死線を潜り抜けたから歴史に名を残せたが、恐らく同時代には何百人もの名も無き「信長的な人」が居たに違いない。ただ初陣で雑兵が投げた石に頭をかち割られて討ち死に、みたいな人が大多数で生き残ったのが彼だけだったと云うのが正解の様に思える。何時でも信長的な人は居るけど、その活躍の場が巡ってくるかは時の運次第なのである。「治世の能臣、乱世の奸雄」と評された器用な人も居たが、そう云う規格外を除けば平々凡々たる生涯を過ごすのが当たり前なのであり、信長的な人がヒーローにならずに済む様にするのが大人の努めなのである。
ラテン国家の面目躍如である。国連総会に出席する為にNY市を訪れていたブラジルのボルソナロ大統領が路上でピザを食べたとかで、騒ぎになったそうである。ワクチンに否定的な見方をしており、当然接種証明書は未所持なので店内で食べられなかったとの事だが、普通はホテルに持って帰るだろう。一国の元首に対し不敬である、とメンツを重んじる国家ならブチギレる所だが、挑発する様に立ち食い姿をインスタにアップしているのだから、フットワークが軽いにも程が有る。一日の陽性者数が9万人を突破していた頃から見れば沈静化はしているものの、1万人台で推移している現状は決して楽観できるものでは無いと思うのだが、現時点では厳しい制限は特に課していない模様である。どうせワクチンは先進国が買い占めるから期待するだけ無駄、と云うささやかな当てこすりなのかも知れないが、単にピザを楽しみたかっただけと云うラテンな可能性も捨てきれないのである。