2/1 あれはいつだった? 第16話
旭が高校2年のときだった。
中学を終わるころから体がグングン育ち、
ある決定的なことが起こったのは高2のときだった。
ちぃ姉ちゃんがこれまでと同じように旭を突き飛ばそうとした。
旭はこれまでと同じように
悲鳴に近い やめて! を言いながら
ちぃ姉ちゃんの手をふるいのけた。
旭もちぃ姉ちゃんすぐにわからなかったけど
その力は強力で、ちぃ姉ちゃんは床にくずれた。
ちぃ姉ちゃんは笑いながら、バツが悪くて笑うしかなかったのだけど
大きくなったね、アキラ!と言った。
ちぃ姉ちゃんは上二人にそのことを報告した。
そして3人は旭が育ったことを認め
身の安全のために、旭に触れないことにした。
旭の体が成長したのと同じように
旭の頭も、勉強も先生も両親も驚くほど伸びた。
旭の夢には程遠いけど、旭は人のうらやむ名門大学に入学し
平和な大学生活をおくっていた。
根のやさしい旭は姉たちのいじめ・しごきもたいして思い出すこともなく
親しい女友達も数人いた。
そういう中にはバレンタインデーにチョコレートを旭に渡す女子もいた。
でも旭はどうせ義理チョコの一人と本気で渡されたチョコも
気にとめたことがなかった。
学生仲間にはホワイトデーに金がかかるからとあえて受け取らない
仲間もいたけど、旭は喜んで受け取った。
それは旭がチョコレートが好きなこともあったけど
ホワイトデーにプレゼントできる機会が持てたことがうれしかった。
旭は何を女の子が好きか好きか、
姉たちを見ていたのでなんとなくわかった。
一言で言うと
高くはないけど、可愛いもの
高くはないけど、おいしいもの
高くはないけどステキなもの
そんなところだった。
その中には姉たちに言ったらぶんなぐられるような
旭の目にはくだらないものもあった。
女子の間では旭の趣味はそうとうよかった。
だからバレンタインデーは旭の仲間が驚くほど
たくさんのチョコレートが集まるのだった。
旭と直子が付き合いだして直子は旭に兄たちや弟たちとは
かなり異なるものを選んだ。
直子は旭の味覚を密かに賞賛していたので
渡す前に自分でもしっかり味わい
家族にも食べてもらってから決めた。
直子のプレゼントに旭は驚くべき子と一目を置いていた。
そしてホワイトデーには姉たちが選ぶようなガラクタではなく
高いバリューのものをプレゼントした。
直子は旭のプレゼントにすごく喜んだけれど
高かったんじゃないのって眉をよせて心配することもあった。
直ちゃんはもっとバリューがあるんだ
って小さい声で言った。