9月5日の夕暮れ。
夫と買い物から帰る。門扉をくぐる。すると、庭木の茂みから猫の鳴き声がする。
微かな、すがるような、鳴き声だった。
「仔猫かしら」
わたしの声を聞きつけて、猫はさらに哀れぽい声で鳴いている。
低い植え込みから這い出てきた3か月位の仔猫が、わしを見上げて鳴いている。
両脚を少し開いて佇んでいるわたしの足元に、からだをすりつける。
仔猫はわたしの脚の間を8の字にまわりはじめた。
それから頭をわたしの脚にこすりつける。この「すりすり」にはわたしはヨワイ。
仄あたたかい仔猫の体温が伝わってくる。
「迷子になったのかしら」
「それにしては、骨がごつごつしているね」
「間違いなく飼い猫だわ」
「捨てられたのかしら」
「可哀想に」
猫大好きな夫が
「取りあえず餌をあげたら」
というのでブラッキーの餌をとりに家に駆けこむ。
何日も食べていないのか夢中で食べている。
さて、どうしたものか……
帰る場所のない仔猫のことを思うと涙が溢れそうになった。
夫に気づかれないようにそっと目がしらをおさえた。
その晩は心を鬼にして家に入れなかった。
次の朝バラに水やりをしていると夫の呼ぶ声が。
「仔猫が鳴いているよ」
夫の書斎の窓の下で昨日の仔猫がしきりに鳴いている。
餌を持って近寄る。すぐには寄ってこない。
猫は変にいさぎよいところがある。
昨日拒まれたと思ったのだろう。
毅然としている。それでも――。
餌を近づける。ひもじかったのだろ。
わたしの手から……やっと……食べ始めた。
その日の夜はひどい土砂降りだった。
可哀想なので、裏庭に面した廊下へ入れてあげた。
急きょトイレと寝床を用意した。
安堵したのか静かに眠りについたようだ。
はやいもので我が家に来て3週間になる。
体重も2キロまでに増えた。
名前はリリ、三毛猫の雌。
リリはわがもの顔で、部屋のあちこちを歩き回っている。
もとからわが家の猫だったような顔をしている。
このあたたかくて柔らかい、ふわふわした毛の生きもの。
そして小さな微かな鼓動。
魅惑的で不思議なこの生きている――仔猫。
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夫と買い物から帰る。門扉をくぐる。すると、庭木の茂みから猫の鳴き声がする。
微かな、すがるような、鳴き声だった。
「仔猫かしら」
わたしの声を聞きつけて、猫はさらに哀れぽい声で鳴いている。
低い植え込みから這い出てきた3か月位の仔猫が、わしを見上げて鳴いている。
両脚を少し開いて佇んでいるわたしの足元に、からだをすりつける。
仔猫はわたしの脚の間を8の字にまわりはじめた。
それから頭をわたしの脚にこすりつける。この「すりすり」にはわたしはヨワイ。
仄あたたかい仔猫の体温が伝わってくる。
「迷子になったのかしら」
「それにしては、骨がごつごつしているね」
「間違いなく飼い猫だわ」
「捨てられたのかしら」
「可哀想に」
猫大好きな夫が
「取りあえず餌をあげたら」
というのでブラッキーの餌をとりに家に駆けこむ。
何日も食べていないのか夢中で食べている。
さて、どうしたものか……
帰る場所のない仔猫のことを思うと涙が溢れそうになった。
夫に気づかれないようにそっと目がしらをおさえた。
その晩は心を鬼にして家に入れなかった。
次の朝バラに水やりをしていると夫の呼ぶ声が。
「仔猫が鳴いているよ」
夫の書斎の窓の下で昨日の仔猫がしきりに鳴いている。
餌を持って近寄る。すぐには寄ってこない。
猫は変にいさぎよいところがある。
昨日拒まれたと思ったのだろう。
毅然としている。それでも――。
餌を近づける。ひもじかったのだろ。
わたしの手から……やっと……食べ始めた。
その日の夜はひどい土砂降りだった。
可哀想なので、裏庭に面した廊下へ入れてあげた。
急きょトイレと寝床を用意した。
安堵したのか静かに眠りについたようだ。
はやいもので我が家に来て3週間になる。
体重も2キロまでに増えた。
名前はリリ、三毛猫の雌。
リリはわがもの顔で、部屋のあちこちを歩き回っている。
もとからわが家の猫だったような顔をしている。
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そして小さな微かな鼓動。
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