Colors of Breath

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COLORSも16年目。

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エピソード1 『グリンピースの炊き込みご飯』

2008-04-02 20:47:54 | 22.思い出物語


お待たせしました。
待望(?)のエピソード1 『グリンピースの炊き込みご飯』です。

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エピソード1

 『グリンピースの炊き込みご飯』


いちい、小学3年生。(多分それくらいの頃だったと思う。)

土曜日は給食がないので、授業を終え掃除を済ませ、帰りの会が終わる頃には、
背中の皮とお腹の皮がくっつきそうなほど空腹になる。
いつもならふらふらと道草を食いながら帰る2キロの道のりも、土曜日ばかりはまっしぐらに家路を急ぐ。

「ただいまー!」
玄関を開けると、やたらと広い田舎の家の中は、大きな柱時計の時を刻む音だけがコッチ、コッチと、静まり返った空気の中に水音のように響いている。

農家は今、田植えのシーズン真っ盛りだ。
大人は皆、朝早くから夜陽が落ちるまで、ビニールハウスの苗代や田んぼに入り浸りだ。いちいの家も例外ではなかった。

とにかく腹ごしらえをしなければ、空腹で目が回りそうだ。
普段食卓の上に、焼き魚や古漬け(保存用に発酵させた漬物)や田舎特有の味の濃いおかずと朝食べたままの味噌汁の鍋が置いてあるが、到底小学3年生が喜ぶ代物ではない。
とりあえずご飯さえあれば、納豆なり海苔佃煮なりで食べられる。そう思い、台所の3つある炊飯器を順番に覗いた。
(家は大家族だった事と、犬猫や豚も沢山いた事もあって、冷や飯は彼らの餌とし、3台の炊飯器を順番に使って新しくご飯を炊くのが普通だった。)

まず、奥の炊飯器を開けた。なにやらきれいな色合いが目に飛び込んできた。
「あ、豆ご飯だ。」
若芽のような清々しい緑色のグリンピースが均等に散らばった、美味しそうな炊き込みご飯があった。が、内心は驚きの言葉と裏腹に(なーんだ、豆ご飯か…)と、私の心はがっかりしていた。なぜなら、私は豆芋類が嫌いだったからだ。
まあ、私のみならず米農家の子は往々にして、混ぜ物のご飯より白いご飯が好きなようである。
すぐさま蓋をして、次の炊飯器を開けた。中はきれいに洗われた状態でカラだった。
残りの炊飯器を開けた。白い、朝のご飯があった。
冷蔵庫から、適当におかずになりそうなものを探してぺこぺこのお腹を満たした。

夕方、陽が落ちる頃、母が夕飯の支度をしに田んぼから戻って来た。
「ああ、帰ってたか。何もおかずを作ってなかったねぇ。昼、何食べた?」
母は少し申し訳なさそうに、腕や足につけた土避けを外し作業着を脱ぎながら、私に
言った。
「うん、適当にあるもので食べた。豆ご飯があったけど食べてない。」
母は一瞬、えっと言う顔をして私を見た。
「豆ご飯?そんなの炊いてないよ。」
「え?そこの奥の炊飯器にはいってるよ。」
母と私は台所のシンク脇の炊飯器に歩み寄った。
私の前に立ち、母は怪訝そうな顔をして奥の炊飯器を開けると、顔を近付けるようにして中を覗き込んだ。
そしてひとこと言った。
「バカ。豆じゃなくてカビだわ。」
「………」

私は恐る恐る米粒が見えるところまで顔を近付けて、ご飯を凝視した。
グリンピースだと思ったのは、直径1センチほどに点々と規則正しく散らばって発生した緑色のカビだった。豆のように表面が滑らかではなかった。なにやら妖しく毛のようなものが生えていた。
「はいはい、これは豚の餌だな。」
そう言い、母はさっさとそれを豚用の残飯バケツ空けると、その後は一人で思い出し、思い出ししながら大笑いしていた。

あの時以来、そう、あの至近距離でカビを見て以来、私はカビと緑の毛の生えたようなものが苦手になった。
その苦手から生まれた恐怖の対象は、私の優れた想像力により増幅されて、
〔カビ→苔→藻〕の図式となり、〔カビ=苔=藻〕の基本図式を作ってしまったようである。


 

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