前置きは長いが、
ともかく出かけた、歩いてみた
真山神社〜真山〜本山〜毛無山〜門前【男鹿三山/秋田県】
~では「前説」~
「1枚足りない」となげくのは
播州&番町皿屋敷のお菊さん。
そして「1段足りなかった」と
言葉の発祥地は島根らしいが
今回はみちのく、秋田の一角で
地団駄を踏むのは。
~続いて昔話の語り部風の文章の「導入部」~
昔むかし、と申しても
まさか夏が、命に関わる暑さになるとは
予想もしなかった初夏の頃じゃった。
花の都は東京に住む、あるおっさんが
渋谷の駅前で人と会う約束をしたそうじゃ。
時間通り、待ち合わせの場所に着いても
待ち人来らず。待ちぼうけを食らったおっさん、
仕方がないので、暇にまかせて
周囲をウォッチングしておった。
近頃の街中は、ほんにインバウンド。
外国の方も増え、おっさんの周囲も
インターナショナルな人、人、人である。
おっ、べっぴんさんじゃのう、
どこからお出での方じゃろう。
おっさんもとりあえず男。視線は
どうしても女性にとなるようじゃ。
そして美しさに見惚れながら、
おっさんは、考えておった。
べっぴん、器量好し、美人といえば
博多に京、それから秋田だったな。
そういえば、九州も京都も
訪ねたことはあるが、秋田は
まだお邪魔したことはなかったかな。
美人以外にも秋田で思いつくのは
ハタハタ、それに「ナマハゲ」か。
ところで、ナマハゲって
風体からすると、あれは鬼なのか。
それにしても遅いのう。
我に返って、おっさんが
あらためて周囲を見回す。
待ち合わせの相手は
まだ姿を見せん。
ではこの時間を利用してと
ナマハゲについて調べてみるか。
おっさんがインターネットを
検索しようとした、その矢先。
「いやぁ申し訳ない」。
聞き覚えのある声とともに、
大遅刻の待ち合わせ相手が、
ようやく現れおった。
やれやれと、
待ち合わせ場所を離れるおっさん。
そんなおっさんの背に
「お忘れかい、オイラも秋田だよ」と
声をかける者がおった。
声の主は、おっさんが長らくたたずんでいた
場所の“主”であるハチ公。
そうじゃった“彼”も大館生まれの秋田犬じゃったな。
残念ながら、都会の喧騒のせいで、
“彼”の声はおっさんの耳には
届かなかったようじゃが…。
~まだまだ、今度は普通の語り口で続く「イントロ部」〜
いまでこそ秋田は、
県内オール・ナマハゲというイメージだが
厳密には秋田の一角、日本海に突き出た格好の
男鹿半島に残る風習で、
年に1度やって来る、ありがたい神様。
用事を済ませて、
あらためてナマハゲを調べてみると、
ナマハゲは鬼ではなく、来訪神とあった。
鬼のルックスは、ナマハゲ発祥の地が
山岳修行の地であったため、
修験者が「鬼の形相」で山を駆ける姿が
モチーフになったからという。
また、こんな話も。何でもある時大陸から、
皇帝が5匹の鬼をしたがえて、空からやって来た。
理由は定かではないが、不老不死の秘薬探しあたりか。
空を飛べるなら、そんな秘薬も無用かとは思うが
まあとにかく飛来した。
日頃の鬼は、それこそ「鬼のよう」に働くが、
休みもなると「鬼畜」と化し
周囲の村で悪さのし放題。
一計を案じたある村人が、そんな鬼に
「一夜で山の上まで千段の石段を
つくることができたら
何でもいうことを聞きます。
しかし、できなかったら、
もう二度と来ないでくれ」と提案する。
鬼は快諾。早速石段つくりに取りかかるが
これがテキパキ、グッドジョブ。
実に手際よく、どんどん石段は完成してゆく。
驚いた村人、こうなれば反則技と
一番鶏の声を真似て、コケコッコ~。
今度は鬼がびっくり。もう朝か。
悔しさをにじませながらも、ここは潔し。
その後鬼は、二度と来村することはなかった。
ちなみに石段は、完成まで残り1段だったという。
胸をなでおろす村人だが、理由はどうあれ
鬼を騙した後ろめたさも。
そこで鬼をまつる5つの社をつくり、
年に一度、鬼をもてなす行事をおこなったとか。
これがナマハゲのルーツになったとも。
おぼろげながらも、ナマハゲと鬼の
関係もわかったが、文献だけでは
物足りなくなって来た。
よし、夏にでも出かけてみるか。
それではさっそく出かける準備でも。
~ようやく、ここも普段の語り口調の文章で「本題」~
初訪問、秋田の空は泣いていた。
朝から雨、一向にやむ気配はない。
しばらく待ったが、変化なし。
仕方がない、雨具をつけてまいりましょうか。
ぐずぐずと天候待ちをしていたのは真山神社。
ナマハゲゆかりの地にある神社だ。
今日はここから、かつて修験者も歩いたとされる
雰囲気の残る道を、例の一段足りない石段と、
鬼をまつる5つの社・赤神神社五社堂まで、
男鹿三山とも称されるルートを歩く。
杉の間につけられた道を歩きながら、
天候が良ければ、さぞや絶景だろうなと
途中視界が開ける場所では、周囲を見渡すが
残念ながら雨、ガス他で、よく見えず。
それにしても立派な杉だ。
それに山も緑も豊かで
まあこれも良しかと、男鹿の自然を
楽しんでいるうちに、本日最初で最後の
ピークとなる真山に着く。
男鹿三山とは、真山、本山、毛無山の
3つの山のことだが、
本山には自衛隊の施設ありで立入禁止。
また毛無山は登山道が迂回しており、
両山とも頂を踏むことはない。
まあ特にピークハントを目的に
来たわけでもなし。
それ以上に、自然が魅力的で
歩いていると、本当に気持ちが
晴れ晴れとする。
だったらついでに天気もと、
空を見上げれば、大粒の雨のシャワー。
それは無理な願いのようだ。
毛無山付近を過ぎると
今度はブナの林の中を進む道となる。
少し雨脚が弱まったかな。あらためて
視線を上に。すると上空を覆うブナの葉が
傘というのか、屋根がわりとなってくれていた。
まさに天然、緑のアーケードである。
これは大助かりと、足取りも軽やか、
快調に歩けば、眼前に、
いきなり5つの社の出現だ。
社ひとつひとつは、いたって普通のつくりだが
5つも横に並ぶと、これは壮観。
順番にお参りをしたら、いよいよクライマックス、
1段足りずで泣いた鬼たち、
999段の石段にさしかかる。
せっかくなので、段数でも数えながら
降りましょうか。
あれれれ、鬼さん。どうも鬼さんは
計算がアバウトなのか、こちらもかなり
おおざっぱに勘定してはいるが、
石段の数は999以上あるんですがだ。
まあ999段の話は伝説であり、フィクション。
かたいことは抜きである。
いやいや、鬼さんは文系。
意外と計算は不得手だったりして。
~そろそろ結び、再び昔話の語り部風に戻り「大団円」~
天気には恵まれんかったが、
秋田の自然を満喫しつつ、無事にゴールの
門前に下山して、ホッとしたのかおっさん、
いわんでも良い余計なひと言、鬼の悪口が
つい口からポロリと出てしもうた。
するとどうじゃろう、
「関係も深い鬼の悪口を言う奴は
いえねが~」。
こんな声が、おっさんの背後から
するではないか。
古いコントなら「志村、後ろ、後ろ~」
となるシチュエーションじゃが、
この時は雨音のせいで、
おっさんの耳にはなかなか届かんかった。
ようやく何度目かの声に
「はて、何か騒がしいのう」と
おっさんが振り返ってみると。
鬼が、いやナマハゲが、
こわい顔して迫って来ておる。
雨の東北、秋田の地で
ナマハゲと“鬼ごっこ”。
いや“ナマハゲごっこ”か。
ようし、向こうが来訪神なら、
こちらは韋駄天じゃぁ。
相変わらず屁理屈こねながら
おっさんは一目散、脱兎のごとく
全速力で逃げたとさ。
さぁて、結末は…。
とりあえずは、締めくくりますか。
では、昔話ではお約束のフレーズ、
めでたし、めでたし。
〜2018(平成30)年7月、ナマハゲを感じながら
秋田は男鹿半島をスタコラ歩く〜
ともかく出かけた、歩いてみた
真山神社〜真山〜本山〜毛無山〜門前【男鹿三山/秋田県】
~では「前説」~
「1枚足りない」となげくのは
播州&番町皿屋敷のお菊さん。
そして「1段足りなかった」と
言葉の発祥地は島根らしいが
今回はみちのく、秋田の一角で
地団駄を踏むのは。
~続いて昔話の語り部風の文章の「導入部」~
昔むかし、と申しても
まさか夏が、命に関わる暑さになるとは
予想もしなかった初夏の頃じゃった。
花の都は東京に住む、あるおっさんが
渋谷の駅前で人と会う約束をしたそうじゃ。
時間通り、待ち合わせの場所に着いても
待ち人来らず。待ちぼうけを食らったおっさん、
仕方がないので、暇にまかせて
周囲をウォッチングしておった。
近頃の街中は、ほんにインバウンド。
外国の方も増え、おっさんの周囲も
インターナショナルな人、人、人である。
おっ、べっぴんさんじゃのう、
どこからお出での方じゃろう。
おっさんもとりあえず男。視線は
どうしても女性にとなるようじゃ。
そして美しさに見惚れながら、
おっさんは、考えておった。
べっぴん、器量好し、美人といえば
博多に京、それから秋田だったな。
そういえば、九州も京都も
訪ねたことはあるが、秋田は
まだお邪魔したことはなかったかな。
美人以外にも秋田で思いつくのは
ハタハタ、それに「ナマハゲ」か。
ところで、ナマハゲって
風体からすると、あれは鬼なのか。
それにしても遅いのう。
我に返って、おっさんが
あらためて周囲を見回す。
待ち合わせの相手は
まだ姿を見せん。
ではこの時間を利用してと
ナマハゲについて調べてみるか。
おっさんがインターネットを
検索しようとした、その矢先。
「いやぁ申し訳ない」。
聞き覚えのある声とともに、
大遅刻の待ち合わせ相手が、
ようやく現れおった。
やれやれと、
待ち合わせ場所を離れるおっさん。
そんなおっさんの背に
「お忘れかい、オイラも秋田だよ」と
声をかける者がおった。
声の主は、おっさんが長らくたたずんでいた
場所の“主”であるハチ公。
そうじゃった“彼”も大館生まれの秋田犬じゃったな。
残念ながら、都会の喧騒のせいで、
“彼”の声はおっさんの耳には
届かなかったようじゃが…。
~まだまだ、今度は普通の語り口で続く「イントロ部」〜
いまでこそ秋田は、
県内オール・ナマハゲというイメージだが
厳密には秋田の一角、日本海に突き出た格好の
男鹿半島に残る風習で、
年に1度やって来る、ありがたい神様。
用事を済ませて、
あらためてナマハゲを調べてみると、
ナマハゲは鬼ではなく、来訪神とあった。
鬼のルックスは、ナマハゲ発祥の地が
山岳修行の地であったため、
修験者が「鬼の形相」で山を駆ける姿が
モチーフになったからという。
また、こんな話も。何でもある時大陸から、
皇帝が5匹の鬼をしたがえて、空からやって来た。
理由は定かではないが、不老不死の秘薬探しあたりか。
空を飛べるなら、そんな秘薬も無用かとは思うが
まあとにかく飛来した。
日頃の鬼は、それこそ「鬼のよう」に働くが、
休みもなると「鬼畜」と化し
周囲の村で悪さのし放題。
一計を案じたある村人が、そんな鬼に
「一夜で山の上まで千段の石段を
つくることができたら
何でもいうことを聞きます。
しかし、できなかったら、
もう二度と来ないでくれ」と提案する。
鬼は快諾。早速石段つくりに取りかかるが
これがテキパキ、グッドジョブ。
実に手際よく、どんどん石段は完成してゆく。
驚いた村人、こうなれば反則技と
一番鶏の声を真似て、コケコッコ~。
今度は鬼がびっくり。もう朝か。
悔しさをにじませながらも、ここは潔し。
その後鬼は、二度と来村することはなかった。
ちなみに石段は、完成まで残り1段だったという。
胸をなでおろす村人だが、理由はどうあれ
鬼を騙した後ろめたさも。
そこで鬼をまつる5つの社をつくり、
年に一度、鬼をもてなす行事をおこなったとか。
これがナマハゲのルーツになったとも。
おぼろげながらも、ナマハゲと鬼の
関係もわかったが、文献だけでは
物足りなくなって来た。
よし、夏にでも出かけてみるか。
それではさっそく出かける準備でも。
~ようやく、ここも普段の語り口調の文章で「本題」~
初訪問、秋田の空は泣いていた。
朝から雨、一向にやむ気配はない。
しばらく待ったが、変化なし。
仕方がない、雨具をつけてまいりましょうか。
ぐずぐずと天候待ちをしていたのは真山神社。
ナマハゲゆかりの地にある神社だ。
今日はここから、かつて修験者も歩いたとされる
雰囲気の残る道を、例の一段足りない石段と、
鬼をまつる5つの社・赤神神社五社堂まで、
男鹿三山とも称されるルートを歩く。
杉の間につけられた道を歩きながら、
天候が良ければ、さぞや絶景だろうなと
途中視界が開ける場所では、周囲を見渡すが
残念ながら雨、ガス他で、よく見えず。
それにしても立派な杉だ。
それに山も緑も豊かで
まあこれも良しかと、男鹿の自然を
楽しんでいるうちに、本日最初で最後の
ピークとなる真山に着く。
男鹿三山とは、真山、本山、毛無山の
3つの山のことだが、
本山には自衛隊の施設ありで立入禁止。
また毛無山は登山道が迂回しており、
両山とも頂を踏むことはない。
まあ特にピークハントを目的に
来たわけでもなし。
それ以上に、自然が魅力的で
歩いていると、本当に気持ちが
晴れ晴れとする。
だったらついでに天気もと、
空を見上げれば、大粒の雨のシャワー。
それは無理な願いのようだ。
毛無山付近を過ぎると
今度はブナの林の中を進む道となる。
少し雨脚が弱まったかな。あらためて
視線を上に。すると上空を覆うブナの葉が
傘というのか、屋根がわりとなってくれていた。
まさに天然、緑のアーケードである。
これは大助かりと、足取りも軽やか、
快調に歩けば、眼前に、
いきなり5つの社の出現だ。
社ひとつひとつは、いたって普通のつくりだが
5つも横に並ぶと、これは壮観。
順番にお参りをしたら、いよいよクライマックス、
1段足りずで泣いた鬼たち、
999段の石段にさしかかる。
せっかくなので、段数でも数えながら
降りましょうか。
あれれれ、鬼さん。どうも鬼さんは
計算がアバウトなのか、こちらもかなり
おおざっぱに勘定してはいるが、
石段の数は999以上あるんですがだ。
まあ999段の話は伝説であり、フィクション。
かたいことは抜きである。
いやいや、鬼さんは文系。
意外と計算は不得手だったりして。
~そろそろ結び、再び昔話の語り部風に戻り「大団円」~
天気には恵まれんかったが、
秋田の自然を満喫しつつ、無事にゴールの
門前に下山して、ホッとしたのかおっさん、
いわんでも良い余計なひと言、鬼の悪口が
つい口からポロリと出てしもうた。
するとどうじゃろう、
「関係も深い鬼の悪口を言う奴は
いえねが~」。
こんな声が、おっさんの背後から
するではないか。
古いコントなら「志村、後ろ、後ろ~」
となるシチュエーションじゃが、
この時は雨音のせいで、
おっさんの耳にはなかなか届かんかった。
ようやく何度目かの声に
「はて、何か騒がしいのう」と
おっさんが振り返ってみると。
鬼が、いやナマハゲが、
こわい顔して迫って来ておる。
雨の東北、秋田の地で
ナマハゲと“鬼ごっこ”。
いや“ナマハゲごっこ”か。
ようし、向こうが来訪神なら、
こちらは韋駄天じゃぁ。
相変わらず屁理屈こねながら
おっさんは一目散、脱兎のごとく
全速力で逃げたとさ。
さぁて、結末は…。
とりあえずは、締めくくりますか。
では、昔話ではお約束のフレーズ、
めでたし、めでたし。
〜2018(平成30)年7月、ナマハゲを感じながら
秋田は男鹿半島をスタコラ歩く〜
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