登る前に
お会いした二人のレディより
パワー、頂戴いたしました
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【上条~入広瀬~大白川/新潟県】
どえらき降雨で、断念した夏の守門岳山行。
ご縁があればまたあらためてと思っていたら、
秋のある日に出かけることができ、
無事にピークにもお邪魔することができた。
そこで山の記録を残すかと
パソコンに向かったが
山の話は、ほかでもいろいろありそうなので、
少し趣向を変えて。
今回は途中で出会った
インパクトある御仁について書いてみようと思う。
実は今回の計画では、垂直に登る前に水平もと、
只見線の駅、2駅間を歩くこともプラスしてみた。
理由は、前回訪れた際に登れないので、仕方なしと
只見線の3つの駅の間を歩いたが、これが
意外と面白かった。そこで引き続きである。
コースは登山口の最寄りとなる「大白川」駅まで、
夏は「越後須原」駅までだったので、
残りの2つの駅間、
「上条」と」「入広瀬」を歩くことにした。
只見線の沿線に、人気、有名、話題のスポットは
見当たらない。
コスパだ、タムパだ何度という人には、歩いたところで
時間の無駄と一刀両断、切り捨て御免のエリアだろう。
しかし、そんな一見空費なような時間の使い方が
闇雲に忙しく、何でも費用効果や
ものごとに即決が求められる現代においては
逆に貴重で、得難い経験でもあるような気もする。
例えば今からしたためる2駅間の歩き旅では、
パワー溢れる淑女にお会いすることができた。
それもお二人。どちらもシルバーエイジの女性だが
ともすれば意気消沈、うつむき加減となりそうな心を、
パッと前向き、元気へとチェンジしてくれそうな
雰囲気を持ったレディである。
お一方は「入広瀬」駅の周辺で。
上条駅から歩き出し、途中に守門温泉、廃隧道や
道の駅、その裏にある城跡を巡ってと、
ひとり遊びを楽しんだ後に
到着したのが上条の次、入広瀬の駅。
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ここでも週末だというのに、
観光客、というかあまり人には
出くわさない。
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かわって、只見線に愛想をふりまく
カカシたちがお出迎えとなった。
では先にと歩き出してすぐ、
目に止まったのが、玄関に「松風」という
名称の入りの暖簾がかかった古民家。
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ここは何だろうと、のぞいていると
呼び鈴があったので、
そっと押して「ごめんください」と、
声をかけてみた。
するとクイックレスポンスである。
奥から、まあ張りのある
まさに、はつらつとした
返答があり、人がやってくる気配だ。
声の主は女性、お歳はレディに聞くのは
失礼なので憶測だが、多分70代か。
とりあえず、ここは民宿か何かと
クエスチョン。アンサーは、
完全予約制レストランとのこと。
昨年開業して今日にいたっているそうだ。
では今度は客として来ますと申せば、
「ぜひおこしを。お持ちしています」と
これまた力強い響きの声で、ひと言いただいた。
女性と別れて、愛用タブレットで
インターネットで検索してみると
女性は浅井さんといい、お歳は76歳。
開業の動機は、地元・地域が元気になればと
一念発起したそうで、とても俗にいう
老いてくるとありがちな
たそがれ、しょぼくれ感は微塵も感じない。
自身も決して若くはなく、
時にもう歳だしと弱音が口からポロリだが、
ここで大いに反省。
でしゃばるわけではないが、
それなりの力でひと踏ん張りも
必要だなと思えてきた。
さらに歩く。入広瀬から大白川までは
本当に何もない。ただただ、ひたすら道歩きだ。
途中にはかつて「柿ノ木」という駅も
あったそうだが、今は全く痕跡なし。
さらに歩く。ようやく大白川の駅が、
只見線では大きな部類の駅舎が見えてきた。
やれやれである。
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大白川駅の駅舎の2階部分は、
週末と祝日のみ営業のそば屋となっている。
上手いとの評判もあり、今日も駅舎前は
そば店利用者の車がびっしり。
その光景は、鉄道の駅でありながら、
ここは道の駅かと見まごうばかりだ。
この駅舎の前で出会ったのが
もう一人のレディ。
彼女は地元の農家の方で、
あれこれ手作り野菜を広げて、
販売中だった。
人だかりにつられて、
あれこれ眺めているうちに、
言葉は悪いが、いかん逃げ遅れただ。
気がつくと自分以外にお客はゼロ。
これは気まずい、小心者ゆえに
何も買わずに立ち去る勇気もない。
ちょうど手頃なプライスの
枝豆ほかがあったので、よしこれ買ったとなる。
お金を払って、しばし彼女とも
「売り上げは‥」などと
おしゃべりタイムとなる。
あまり長話は商売の邪魔になるかと、
ではそろそろと、なったところで
彼女から大サービスだ。
よかったらまだ食べるのには
ちょっと早いがと、アケビをいただいた。
しかも「いいよ、持てるだけ、
好きなだけ、どうぞ」。
気前もいいのである。
遠慮せず、たっぷり頂戴し
ザックに詰め込み、さて今宵の宿まで
歩くか。いやその前にいただいたアケビを
ひとつ口にしてみる。
味は彼女のいう通り、
本当の美味を味わえるのは
もう少し先のようだ。ではあるが、
久方ぶりに食べたアケビは、
ほんのり甘かった。
食べながら振り返ると、
彼女はひと休みと、紫煙をくゆらしていた。
これがまた、実に美味しそうで、
超クールな佇まい。
禁煙全盛の時代ではあるが、
タバコだって、お酒などと同様に
過度は慎むべき嗜好品の一種。
彼女のように格好よく、適度に嗜むのであれば
そうめくじら立てる問題ではないような気もするが
どんなもんだろうか。
レストランを開業したレディ、
駅舎前で手作り野菜を販売するレディ、
お二人の醸し出す雰囲気は、
お笑い芸人の芸名ではないが
「とにかく明るい」である。
高齢化社会での弊害のひとつに
「怒り、すぐ怒る」がある。さらに最近は
「俺の意見が一番で、ほかは論外」という輩も
少なくない。
よって世の中は、
どこか殺伐としているが、
明るさなしでは、
幸運だってソッポである。
ほんの短い時間ながらも
二人のレディから、あらためて
明るさ、元気さの大切さを
学ぶことができました。
後は、東京に帰ってから
実践あるのみ。
眉間の皺より、口角上げて。
さあ、ジィさんには
できるかなである。
歩いた翌日は大白川からピストンで守門岳へ。
無事に下山して、東京に戻る列車の
乗り換えで下車した小出の駅で
ゴミを捨てようとしたら、アケビがひと枝分
ザックの底に残っていたので、思わずガブリ。
甘みが気持ち増しているような気がした。
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〜2022(令和4)年11月のある週末、雪の便りが届く前にと、
ジィさん、沿線を歩いて、人に出会って、山に登って、帰京したとさ。
はい、お疲れ様〜
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