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映画と共に、青春時代から熟年時代へ思い出を重ねて・・・「ブルーピリオド」「パーフェクトデイズ」

2024-09-15 14:29:18 | 映画

 

なかなか見に行けなかった映画二本、仕事前後に、続けて鑑賞。

どうしても、千葉Jrとしても注目してしまう眞栄田郷敦君の「ブルーピリオド」そして、カンヌ国際映画祭で、役所広司さんが最優秀男優賞受賞で話題になった「パーフェクトデイズ」は、まだ嬉しいロングラン中。二作品とも、爆発も血しぶきも無し、穏やかに心に染み入る作品でした。

 

 

一本目、「ブルーピリオド」

 

絶賛された傑作漫画の映画化という事でしたが、あえて情報を入れず、予告のみの情報で鑑賞。

 

渋谷の夜明けから始まり、若者ならではの緩さと熱さ、真っ暗なトンネルの中を手探りで歩くような、何も考えず体力に任せて一気に全速力で駆け抜けるような、懐かしい感覚は、かつて自分も過ごした季節。古い記憶が、じわじわ蘇ってきた。

 

母親に内緒で、ぎりぎりまで進路伝えずにいた高3の日、やりたいことに、ただただ無防備なまま、真っ向勝負していた青春の日々が重なって、ボロボロになりながらも前に向かっていく、八虎の姿が、いとおしくてウルウル。

 

ゴードン君の眼差しに、ふと気づくと、「日本暗殺秘録」小沼正役の千葉ちゃんの瞳を重ねてしまった自分、千葉真一お別れの会に飾られていた、千葉真一作「富士山」の絵が浮かんできて、涙。

 

 

 

 

 

 

 

二本目は、「パーフェクトデイズ」

 

 

映画のストーリーが入ってきますので、これから見られる方は、要注意。

 

寡黙なトイレ清掃員の話もまた、朝の景色から始まる。

 

夜明けの下町、天神様の朝の掃き掃除の音がして、目が覚めた役所さん演じる平山が、布団を畳み片づける。シンプルな部屋に、畳の上を歩く音。畳暮らしの自分、我が家で、こんなに畳の音していたか?


朝のルーティンの締めは、自宅アパート前の自販機で買う缶コーヒー。職場の渋谷へ向かう仕事道具が詰まったバンの、カーステレオ(カセットテープ使用)から流れてきたのは「朝日の当たる家」。

 

この選曲?!こんな曲が好きなんだ!いつもお気に入り音楽をイヤホンで聞きながら出勤する自分、親近感が湧いてきてニヤニヤ。

 

清掃するのは、都心の公園の、サラリーマンや、女子高生や、子供たち、様々な人々がやってくる、おしゃれなトイレ。おしゃれだったり、面白くて、仕掛けがあったり、さまざまなアート作品のよう。

 

使い方に戸惑う人には、説明したり、清掃中に、「お客」ならぬ、「使用者」が来ると、外に立って待つ平山は、優しい笑顔。時には、誰かが壁の隙間に潜ませた紙を見つけ、ゴミ箱に捨てずに、○✖️遊び交流してみたり。

 

磨き続けてきたトイレ掃除のプロの技で、丁寧に黙々と仕事をこなす平山にとっては、自分が納得した自分の仕事をやり切る事が、彼のプライド、日々の幸せにつながっているのだろう、真摯な眼差しと、公園の人々を見守る優しい笑顔が、印象的だ。この平山の表情に、ヴィム・ヴェンダースも心とらわれてしまったのだろう。

 

公園で昼食休憩。木漏れ日の下でのランチは、視線が合った隣のベンチの女性に、微笑み会釈しながら、サンドイッチと牛乳で。フィルムカメラ(懐かしい!)をポケットから取り出して、木漏れ日の写真数枚カシャカシャ。

 

公園の木の根元に生えている、小さな紅葉の苗を見つけ、持ち主に断りポケットに潜ませた新聞紙の袋に、そっと、詰めて帰る。

 

茶碗に植え替え、部屋にならんだ、先にやって来た小さな紅葉達(結構な数!)と一緒に並べる平山。毎朝、霧吹きでそっと水をかけてやるしぐさに、優しさが伝わってくる。(相方が、毎朝、金魚の子供たちに餌やっている姿を思い出す)

 

 

なじみの銭湯に一番乗りして、常連の地下の居酒屋で一杯。どこでも、微笑み挨拶して、静かな部屋に戻ると、黙って、一人、布団に横になって、スタンドの明かりで、好きな文庫本を読み眠りにつく。

 

静かに一日が終わり、又、静かに、朝の掃き掃除の音が聞こえてきて、植木に霧吹き、髭を整え、歯磨きして、缶コーヒーを飲みながら仕事場へ向かう。

 

今日選んだカセットは、日本のフォーク!?似たような、年代?好み?と、またニヤニヤ。

 

選んだ歌のせいなのか、平山のまわりがざわついてくる。

 

同僚が現れ、その彼女が車に乗り込んで来て、カセットテープショップやに連れていかれたり(持っているテープが高値と知り嬉しそう!でも売りません!!)、姪が突然、アパートで待ち構えて、泊まることになったり。

 

静かな暮らしが乱されても、面倒ごとに巻き込まれても、受け入れる余裕があるのは、お気に入りのカセットテープと文庫本と植木たちいるからなのか。

 

もう一つ、普段しない腕時計をはめ自転車で出かける馴染みのスナックのママの存在。

 

客のギターで「朝陽の当たる家」を歌うママを、見つめる視線は、なんともいい感じ。(この風景、若き日のバイト時代のお店、そっくり!ママさんギターも歌もうまかった!!)

 

夜、娘を迎えに来た、妹。久しぶりの再会で、今の父親の話をそっと聞かされ、思わず妹を抱きしめる平山の表情に、この暮らしを始める前の姿を、思いめぐらしてしまった。

 

物置のたくさんの段ボールの中身も、気になる。

 フィルムカメラの写真を、年代別缶に詰めて、押し入れに積んであったり、馴染みの古本屋で、好きな本を探して見たり、たっぷりカセットが並んでいたり。(カセットテープを鉛筆で巻き取るシーンに、やった!やった!笑)

 

お気に入りの物、時間、空間の中で一人くらす物静かなトイレ掃除のプロフェッショナル平山が、だんだん、青春時代を過ごした懐かしい友人(カメラマンや、フォークシンガーくずれやら)や、いろんな好きなもの達に囲まれた自分の、仲間のように、思えてくる。

 

突然、同僚が辞めシフトが乱れ働き詰めで、ルーティーンも崩れ、珍しく声を荒げ会社に苦情の電話をかける姿にニヤリ。上司には強い!?

 

さっそくヘルプの叔母さんがやって来た。が、ちょっと苦手なタイプかも、前の若者好きだったんだなぁと、ニヤニヤ。

 

ルーティン復活。癒しのスナックへ意気揚々自転車走らせ、一番乗りしたところで、ママさんが男性に抱かれ涙する姿を目撃。

 

河べりで、失恋青年のように、ビール飲みながら吸えないたばこを吸う平山。さっきの男性に声をかけられ、ママさんの元夫で、癌を患い会いに来たと告白され、ビールを勧める平山は、やっぱり優しい。

 

そして、缶ビール一杯で酔ったか、元夫の言葉のせいか、一緒に影あそびに・・・

 

「影濃くないですか?濃いですよ!」

 

笑顔で、珍しく大きな声を出す平山の姿に、いきなり涙があふれてしまった。

 

 

 

人はいずれ亡くなるし、病にもなる。

何時までも元気で、好きなことだけではいられない。

 

だから、なおさら、今あるひと時を、

自分らしく、味わいながら、過ごしていきたい。

 

ささやかなつながりを、味わいながら。

 

 

平山よりちょっと先に年を取り、

姑や両親、一緒に青春を過ごした友人たちを、

だいぶ見送ってきた、自分。

 

平山のラストの涙に、一緒にまた涙。

 

 

日々の、ささやかな一瞬一瞬を、

もっと、味わいながら暮らしたい。

 

しみじみ思いながら、イヤホン耳に、職場へ向かった。

 

 

公園で、群衆の中で、一人ゆらゆら(木漏れ日のように)踊る老人、それを見つめる平山の視線が、今も気になっている。

 

 


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