東京新聞社説 2019年4月13日
虐待予防の方策には考古学の精神が必要だと、NPO法人「カンガルーの会」(高知県)代表の沢田敬医師は考えている。国からの上意下達ではなく、親子とふだん接している人たちから現場での体験談を「発掘」し、積み上げていくことが大切だというのだ。
確かに、保健師や保育士などの話を聞かせてもらい、ベテランの勘が、親子のSOSをすくい取るカギを握っていると感じた。状況に応じて力を発揮するには、経験を積み重ね、志を育む時間や余裕が必要だろう。仕事の量が過大になれば、その理想は遠ざかる。経験で培われる安全網を政策が支えられる社会になればと願う。
一方で、高知で聞いた話から見えてこなかったのは、お父さんの存在だ。日本の子育てでお父さんはまだ「遠景」だと感じた。
子育ての主役となったお父さんを題材にした写真展が世界六十五カ国以上を巡回している。「スウェーデンのパパたち」展=写真(省略)=だ(詳細はスウェーデン大使館=https://www.swedenabroad.se/swedishdads.jp)。スウェーデンは国から給付を受けられる育児休暇が四百八十日間あり、そのうち九十日は父親専用だ。写真展では六カ月以上育休を取った父親を紹介している。
同国は親の子どもに対する体罰を一九七九年に法律で禁止。体罰を用いる人の割合は法施行前の九割以上から約一割まで減少した。大使館広報部のアダム・ベイエさんによると、育児休暇制度を充実させ、親のストレス水準が下がったことも、一つの要因と考えられるという。
ベイエさんは「日本では企業文化が個人に与える影響が強いと感じる。企業の文化を変えるのがカギ」と話す。
子どもの犠牲をなくすには、社会のありようを幅広く見つめ直す必要がある。 =おわり (早川由紀美が担当しました)
一日雨の日。氷点下にはならなかったが寒い。
こんな日には床屋さん。こまごまとしたお買い物。
午前中、苗の鉢上げ作業。