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古賀茂明「安倍総理が負う参院選後のツケとは?」

2019年07月16日 | 社会・経済

AERAdot  2019/07/16

   元ハンセン病患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、安倍晋三総理は7月9日、「異例のことだが、控訴をしない」と表明した。患者家族に寄り添う素晴らしい判断だと称賛したいところだが、そう素直には受け取れない。

 もし、本当に家族のことを思うのなら、国のこれまでの過ちを率直に認めて謝罪し、他の訴訟で争っている家族や、今回の地裁判決で請求を棄却された2002年以降に被害が明らかになった20人についても、損害賠償を行う方針を示すのが筋だからだ。

 今回の安倍総理の発言を見ると、あくまでも、上から目線で、「可哀そうだから救ってやる」という姿勢を示したように見える。

「異例」の判断をしたのも、参議院選挙中に「控訴」と報道されれば、「安倍総理は弱者に冷たい」というイメージが広がり、野党に攻撃材料を与えてしまうと心配したからではないのか。

 こうしたことを書くと、安倍総理信奉者からは、「せっかくいいことをしたのに、歪んだものの見方をするな!」としかられそうだが、そういう見方をしたくなることがほかにもあった。

 それは、福島の人々に寄り添う姿勢を示すために行った安倍総理の参院選公示日の第一声だ。

 それは、福島の果樹園で行われた。

 実は、安倍総理には大罪がある。第1次安倍政権下の06年12月、共産党議員の質問主意書で、地震などにより外部電源が止まった場合に非常用電源喪失による冷却機能停止のリスクがあるという、まさに福島第一原発事故を想定したかのような警告に対して、「御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期している」と完全に無視する答弁書を閣議決定したのだ。

 つまり、根拠なき「安全神話」に基づいて漫然と危険な原発の稼働を認めて巨大事故を起こすという取り返しのつかない過ちを犯したことになる。普通なら自責の念に駆られるはずだが、安倍総理は、これまで、自らの過ちを認めず、謝罪もしていない。本来、福島の人々に寄り添うというのであれば、まずは自らの過ちを認めて謝罪するところから始めるべきだろう。

 しかし、安倍総理の演説を聞いて驚いた。「民主党政権の下、遅々として復興は進まなかった。私たちは野党である悔しさ、申し訳なさで胸が震える想いだった」と、原発事故を野党攻撃に使ったのだ。私は、「この人は本当に危ない」と思った。自分の過ちに思い至ることができない。つまり、全く反省できない人なのだ。

 本コラム執筆中(10日)に恐ろしいニュースが入ってきた。米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が、イラン沖などの民間船舶護衛のため、有志連合の結成をめざし、数週間以内に参加国を募るというのだ。

 安倍総理は太平洋戦争の過ちを認めようとしない。イラク戦争の過ちについても、世界の先進国で日本だけは認めていない。

 米国は日本タンカーへの攻撃はイランの仕業だと断定するが、そんな証拠はない。しかし、過去の反省ができない安倍総理なら、躊躇なくトランプ大統領の言いなりで有志連合に何らかの形で協力するのだろう。「数週間後」なら、選挙後だ。安倍総理は通商交渉の結論を選挙後に延ばしてもらってトランプ氏に大きな借りを作った。

選挙後の「ツケ返し」は日本にとって、思いもよらない致命的なものになるのかもしれない。

※週刊朝日  2019年7月26日号