「東京新聞」2024年9月26日
人口1000人当たりの生活保護利用者の割合を示す「保護率」の過去10年間の変化を、研究者らによる「生活保護情報グループ」が自治体ごとに日本地図上で「見える化」し、インターネットで公開した。保護率の増減がひと目で分かり、グループは「周辺自治体に比べて急減している場合などは、申請をさせない水際作戦など福祉事務所の組織的な要因も疑われる」とみている。(中村真暁)
公開された地図では、2012年度から21年度への保護率の増減率が分かる。赤くなるほど急激な減少を、緑が濃くなるほど増加を示している。データは都道府県の全市と政令市の全区、東京23区が国に報告した計970市区の監査資料を情報公開請求し集めた。
◆減少率平均2.4%、トップはなんと58.9%減
全国で最も減少率が高かったのは、愛知県知立(ちりゅう)市の58.9%。減少率が40%を超えた自治体は9府県の12市区だった。保護率の全国平均は1.64%から1.6%で減少率は2.4%とほとんど変わっていない。
群馬県桐生市で、保護費を一部しか支給しないなど悪質な運用が次々と明らかになった際、グループの調査で同市は41.1%減っていたことが判明。このため、急減した地域の可視化を目指した。
◆「貧困が解決されたなら、悪いことではない」が…
グループの桜井啓太・立命館大准教授(社会福祉学)は「貧困が解決されたなら、保護率の減少自体は悪いことではない」としつつ、高齢化率や失業率などが似通う近隣と懸け離れる場合は「水際作戦や保護の強引な廃止も疑われる」と指摘。「困窮者の権利が守られる対応をしているか、チェックするツールとなれば」と話した。
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◆「申請を減らそうとしている」自治体の手口は…
保護率の10年間の増減幅を見える化したマップは、自治体間でかなりの差があることを示した。背景に何があるのか。
「申請を減らそうとしているように感じられる自治体がある」。東京都内外で保護申請の同行支援をする一般社団法人つくろい東京ファンド(中野区)の小林美穂子さんは指摘する。
小林さんによると、自治体が保護申請を事実上拒む手法として、
(1)自身の相談も含む録音禁止の張り紙を掲示する
(2)相談や申請は予約が前提だと間違った説明をする
(3)事前相談などで3回窓口へ行かなければ申請できない
—といった対応を例示。こうした「水際作戦」によって、保護率が下がった可能性があるとみる。
またその背景については、2012年以降に政治家やメディアによって生活保護利用者へのバッシングが強まった影響が「色濃いのでは」と推測する。
◆保護要件を満たしても「約8割が利用できない」推計も
生活保護の要件を満たす人のうち、約8割が利用できていないとの推計もあり、「そもそも国は困窮せずに保護を利用する濫給(らんきゅう)防止に力点を置きすぎてきたため、生活保護を受けられず制度から漏れている人を救えずにいる」と指摘する。
都内での保護率は10年間で31市区で減少し、18市で増加した。最も減ったのは千代田区で減少率35.6%だった。集計データの区の21年度の人口は約6万7000人と、12年度比で約37%増えており、区の担当者は取材に「タワーマンション増加による富裕層の転入などで、人口が増加したためと思われる。保護申請を受け付けないようなことは一切ない」と答えた。
園のようす。
そろそろ鉢物を室内へ。オリズルラン