米国の遺伝子組み換え穀物に賛否 何が不気味で問題なのか
日刊ゲンダイDIGITAL 2020/01/15
米国から輸入される不気味な食品は、なにもホルモン漬けの牛肉だけではない。肯定論、反対論いろいろある遺伝子組み換え(GM)作物もけっこう怖い。
そもそも作物の遺伝子を換える必要性はどこにあったのだろうか。
本来、私たちが食べている作物は何千年もかかって品種改良をしてきた。たとえば、イネの野生種は小さな種をつけた雑草のような植物だったのを、人間が1万年以上かけて改良したのだ。ところが、1970年代になって遺伝子を組み換える技術が実用化されたことからこの流れが変わった。植物も動物と同じで、細胞の中にある遺伝子がその生物の形や性質を決める。つまり、遺伝子を換えれば植物を思い通りに変えられるというわけだ。
96年、この技術を使って、あらゆる雑草を枯らしてしまうラウンドアップという除草剤に耐性のある大豆とトウモロコシが作られた。
ラウンドアップは、雑草だけでなく穀物も枯らしてしまう強力な除草剤だ。まるでベトナム戦争で使われた枯れ葉剤のようなものだが、製造したのが枯れ葉剤を作っていた企業である。だが、穀物までが枯れてしまったら元も子もない。そこで、遺伝子を組み換えることでラウンドアップに耐性のある穀物を作った。そしてこの穀物のタネと劇薬の農薬をセットで売ったのである。
同時期に、害虫が作物をかじると死んでしまうように遺伝子を組み換えたタネも販売された。害虫が感染して死んでしまう細菌の遺伝子をトウモロコシに組み込み、穀物が自ら殺虫成分を作るようにしたのだ。
現在この2種類が遺伝子組み換え作物の主流になっている。
農作物を育てた経験のある方なら分かるだろうが、一番厄介で手間がかかるのが害虫や雑草の駆除だ。放っておくと作物が育たなくなる。それが米国のように広大な農地となると、生半可ではない。その点、飛行機から劇薬をまいて雑草だけを全部枯らし、害虫が農作物をかじったらコロッと死んでくれたら、こんな楽なことはない。というわけで、またたく間に拡大していった。
しかし、猛毒の除草剤を大量にまいたら、それに耐えたトウモロコシや大豆に残留する。当然これを食べれば人間の体に入る。念のためにいうが、この残留農薬は洗っても落ちない。また、昆虫が食べたら死ぬような穀物を、人間が食べて大丈夫だろうかという素朴な疑問も湧く。そんなGM作物が日本に大量に入っていて、さらに拡大しようとしている。「不気味」だけでは済まない問題になっている。
知らずに大量に食べている遺伝子組み換え穀物の危ない事実
公開日:2020/01/16
前回は、危ない遺伝子組み換え(GM)作物がなぜ生まれたのか、その経緯を書いた。別に遺伝子なんて組み換えなくても、従来の大豆やトウモロコシで十分なのに、なぜみんなが不安になるようなGM作物なんて作ったのかと思うかもしれない。
それには米国の企業風土が大きく影響している。企業利益至上主義の米国では、作物以外の雑草をぜんぶ枯らし、害虫を寄せ付けないGM作物は、生産量も上がって効率的だし、大規模栽培に便利だからである。だから反対意見があっても、大規模農家はそれに目もくれずに普及させた。いまや米国は、GM大豆の作付面積が94%、GMトウモロコシは92%と、勝利を目前にしている。
日本は、穀物としてのトウモロコシはほぼ全量輸入だ。年間1600万トン。このうち9割をアメリカに依存し、ほとんどが遺伝子組み換えだ。65%が家畜の飼料で、残りはコーンスターチのほか、コーンフレークや甘味料となって日本人の胃袋に収まる。
また、日本の大豆の自給率もたった6%で、ほとんどが輸入。輸入大豆の7割、230万トンが米国からだ。もちろんほぼGM大豆。7割弱から油を搾り、搾りカスは牛などの飼料になる。残りの大半は食用だが、このうち米国産GM大豆は約52万トン。ぞっとする数字だ。私たちは知らないうちに、GM大豆を味噌、醤油、豆腐、納豆などで食べている。
国民が不安に感じているGM作物について、日本の厚労省は、食べても胃と腸で全て消化されるから問題はないとしている。その後、イギリスの研究グループが、人工肛門の患者で人体実験をしたところ、便の中にGM大豆のDNAが分解されないまま残り、除草剤に耐性となった腸内細菌も検出された。
人間の腸には100兆個といわれる細菌がすんでいる。この細菌は人類が誕生したときから人間と共生してきた。今ではこの細菌は腸に入ってくる化学物質を無毒化したり、胃や腸で消化できなかった繊維やでんぷんを消化したり、ホルモンを作ったりしている。もっとも重要なのは免疫に関わっていることだ。
しかし、除草剤耐性菌などが増えて腸内のバランスが崩れると薬物アレルギーや食物アレルギーなどを引き起こし、免疫疾患やぜんそく、肥満、自閉症といった現代病の発症につながるといわれている。
遺伝子組み換え作物と人体の健康のことをさらに掘り下げていきたい。
GM作物の毒性は2年間の実験で分かるのに行われない不可解
公開日:2020/01/17
遺伝子組み換え(GM)作物について、多くの人が不安に感じているのは、人間が食べて大丈夫なのだろうかということだろう。
なかでも関心が高いのが発がん性だ。では、本当にがんになるのかといえば、よくわからない。通常、食べ物の毒性はラットに食べさせて実験する。これは遺伝子組み換え食品でも同じだ。ただし毒性試験は90日間。これを人間に当てはめれば、通常はわずか10年にすぎない。
がん細胞が発生して、がんの塊になるまで20年以上かかるといわれる。だったら人間の一生に相当する期間をラットに食べさせればいいじゃないかと思うが、実はこれが莫大なお金がかかる。だから企業はやらない。
■唯一、仏の教授が挑戦した結果は
ところが、それにチャレンジした人物がいる。
2012年、フランス・カーン大学のセラリーニ教授だ。世界で初めて遺伝子組み換えトウモロコシの毒性を確かめる長期実験を行った。実験に用いたのは強力な除草剤に耐性のある遺伝子組み換えトウモロコシ。これをラットに2年間食べさせた。2年間というのはラットの一生である。
結論からいうと、除草剤を使って栽培した遺伝子組み換えトウモロコシを与えたラットは、そうでないトウモロコシを食べたラットの2~3倍の腫瘍ができた。また腫瘍が発生するスピードも違っていて、普通のトウモロコシを食べたラットも晩年になると腫瘍ができたが、遺伝子組み換えトウモロコシを食べたラットは4カ月目に腫瘍があらわれ、11カ月目から爆発的に増えた。とくにメスは乳房に腫瘍が多発したという。
この実験はGM推進派を驚かせ、セラリーニ教授に猛烈な抗議が寄せられ、掲載した学術雑誌はこの論文を取り消すという騒動に発展。最終的に別の学術雑誌に掲載されたが、論文を批判する前になぜ追試験をしなかったのか。誰もが疑問に思うはずだが、誰も追試験をしなかった。お金がかかるから。人間の安全よりもコストなのだ。
セラリーニ教授は「腫瘍は必ずしもがんではない」と語っているし、ラットに腫瘍ができたからといって、人間にもできるとは限らない。ただ人間に近いラットで腫瘍ができれば、人間にも腫瘍ができる可能性を否定できないということだ。
危険かどうかはっきりさせたいというなら、人間に長期間食べさせることだ。いや、冷静に考えれば、大量のGM作物を食べている日本人は“ただいま人体実験中”なのかもしれない。もちろん毒性がわかったときは元に戻せない。それが嫌なら、疑わしき食べ物は避けるしかない。
遺伝子組み換え表示を隠蔽…輸入大国日本の緩すぎる基準
公開日:2020/01/21
今週も、遺伝子組み換え(GM)作物の話を続ける。その評価はいまだに「危険」と「安全」の真っ二つに分かれているが、何度も書いてきたように、GM作物が人間にとって有害か安全かを立証することはまず不可能である。
とすれば、何を信じるかだろう。GM作物が安全だと思うなら、どんどん食べればいい。危険だと思えば食べなければいい。少なくとも、GM作物であることを隠蔽して食べさせることは絶対に許されない。ところが、日本は巧妙に隠蔽しているとしか思えないから問題なのだ。
EUでは、GM作物が占める割合が0・9%以上の食品に表示を義務付けたところ、GM食品はパタッと売れなくなった。実際、フランスのスーパーに行っても「GM」を表示している食品示義務がないなどの抜け道をつくったために、事実上の「非表示法」だといわれている。
■米国では事実上の「非表示法」
米国では表示義務はなかった。バーモント州で牛乳に遺伝子組み換え成長ホルモンが入っているかどうかの表示を義務付けようとしたら、バイテク企業から訴えられて、州は表示義務を断念。また、オバマ大統領の時代に連邦政府はGM食品の表示を義務付けたが、QRコードを入れれば表示義務がないなどの抜け道をつくったために、事実上の「非表示法」だといわれている。
「遺伝子組み換え」の表示に抵抗するのは、表示すれば買ってもらえなくなるからだ。そんな米国に忖度したのか要求されたのか、日本では「遺伝子組み換え原料使用」なんて書かれた商品はまず目にしない。
それには理由がある。EUの表示義務が混入率0・9%以上に対し、日本は5%以上という、世界でもまれに見るゆる~い基準を設定したことだ。韓国でさえ3%未満なのである。さらに、虚偽表示をすると、韓国は3年以下の懲役か、3000万ウオンの罰金なのに対し、日本は農水大臣の指示に従わない場合に限り50万円以下の罰金。
表示義務がある食品も、大豆やトウモロコシなど8作物と、豆腐や納豆、コーンスナックなど33加工食品のみで、大量に消費されている食用油は除外した。外食産業も表示義務の対象外だ。
こうして日本は、中国に次ぐGM作物の輸入大国でありながら、「遺伝子組み換え」の表示が見られないという不思議な国になったわけだ。日本人はGM作物が好きなのではない。知らずに食べさせられているのである。
また、記事がたまってしまいました。それでもまだ未掲載分がありますので、また数日分掲載させていただくことになるでしょう。あしからず。
今日のお散歩。
いい天気になりました。