里の家ファーム

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自然の中に身を置いてみませんか?

障がい女子、複合的な差別

2020年02月15日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」きょうの潮流 2020年2月14日


 多くの女性が声を上げています。性被害を受けた、あなたが悪いのではない。性暴力は許さないと。いま世界中に#MeToo、#WithYouの運動が広がっています▼元TBS記者からレイプ被害を受けたとして損害賠償を訴えた伊藤詩織さんの勝訴には、多くの人たちが励まされ、力づけられました。社会が少しずつ変わってきているのを実感します▼半面、被害者が障害のある女性だと、温かいまなざしを向けてもらいづらいとの指摘も。被害者が自身の人権や人格を踏みにじられたと理解するのが難しいことや、「優生思想」が背景にあります。性暴力被害者の55%が、精神や知的、発達障害があるという調査もあります▼拘束され暴力を受けた3日間で、与えられたのは菓子パン一つ。涙を流し訴えながら同時に、「やさしくしてくれた」と話す障害のある女性。千~2千円で買春される障害女性も。作業所で働いて得る賃金が月5千円程度だと、数千円は大きな額に映ると元障害児学校の教員。「貧困なうえ、さみしさもある。本人の問題ではなく社会問題です」▼障害者施設で、職員による性暴力が発生しても、「被害に遭ったあの子はたびたび問題行動を起こすから…」。周囲が加害者をかばいだてすることも▼障害のない加害者と障害のある被害者を比べて、後者を社会的に“低い”とみなす傾向があります。障害のある女性が複合的な差別を受ける―。ジェンダー平等の実現をめざす中で、見過ごすことのできない視点です。


本日3.1ビキニデー地域集会



安倍内閣総辞職を

2020年02月14日 | 社会・経済

国民の命を守るため、安倍内閣総辞職を~新型肺炎危機対応のため超党派で大連立内閣を

ハフポ スト BLOG  2020年02月14日 

   郷原信郎 弁護士 

  
 あまりに拙劣な日本政府の対応によって、国民を新型コロナウイルス感染の重大な危険と恐怖に晒すことになったのはなぜなのか。その「根本的な原因」はどこにあるのか。

 新型コロナウイルスで、日本国内で、感染経路のわからない感染者が多数確認され、また、初の死亡者も出たことで、昨日から事態の深刻さは一気に高まった。ザルのような「水際対策」に頼り、「37.5度以上の発熱」、「呼吸器症状」に加えて「湖北省への渡航・居住歴」を検査の条件としていたことで、多くの感染者が「水際対策」をすり抜け、日本国内で急速に感染が拡大していたことは明らかであり、日本政府の対応の拙劣さは、全く弁解の余地がない。
 横浜港で停泊中のクルーズ船ダイヤモンドプリンセスでは、3000名を超える乗客乗員が船内に閉じ込められ、感染者が急増しており、下船した乗客の多数が重症となっている。乗員乗客を長期間船内に閉じ込める対応が不合理極まりないものであることが指摘され、国際的な批判が相次いでいる(【クルーズ船の日本政府対応 海外で非難の声も】)。常識的に見て、政府の対応は、「船内監禁感染拡大事件」と言ってよい大失態だ。
 このような政府の対応に対しては、早くから、上昌弘氏(医療ガバナンス研究所理事長)が、1月24日の時点で既に【「新型肺炎」日本の備えに不安しか募らない理由】で問題を指摘していた。また、船内検疫の専門家の指摘も相次いでいた。
 あまりに拙劣な日本政府の対応によって、国民を新型ウイルス感染の重大な危険と恐怖に晒すことになったのはなぜなのか。その「根本的な原因」はどこにあるのか。
 7年以上も続いた安倍政権下において、官僚の世界が強大な政治権力に支配され、自己保身のための忖度ばかりして都合の悪いことは隠蔽することがまかり通ってきた。そういった緊張感の無さが常態化してしまったことによる「官僚組織の無能化」が根本的な原因としか考えられない。それは、「桜を見る会」問題に見る、政権の意向を唯々諾々と受け入れるしかない官僚組織の対応とも共通する。
 安倍政権の危機管理能力の欠如は、森友・加計学園問題の際にも指摘してきた(【籠池氏問題に見る”あまりに拙劣な危機対応”】【加計学園問題のあらゆる論点を徹底検証する ~安倍政権側の“自滅”と野党側の“無策”が招いた「二極化」】)。
 ただ、これらの問題は、その拙劣さが、政権内部の問題にとどまっていたため、国民に被害・損失を被らせることにはならなかった。
 しかし、今回の新型コロナウイルスの問題は全く異なる。今後、日本政府の適切な対応が行われなければ、多くの日本国民が生命の危険に晒されることになる。
 では、今の安倍内閣に、国民の生命に危険が生じている状況への適切な対応が期待できるだろうか。それは「絶望的」と言わざるを得ない。これまで多くの問題に対して安倍内閣が行ってきたことに照らせば明らかであろう。
 最大の問題は、これまでの安倍内閣は、政権の維持・責任の回避を最優先し、問題の根本に目を向けようとして来なかったということだ。今回は、何より国民の生命が最優先されるべきだが、果たして安倍内閣にそれが行えるのか。全く期待できない。
 日本政府の適切な対応の障害になり得るのが、まず、今後の感染の拡大如何では、今年の夏開催される予定の東京オリンピック・パラリンピックへの影響が生じかねないことだ。もちろん、「国民の生命」と「東京五輪の開催」と、どちらを優先すべきかは言うまでもない。しかし東京五輪開催中止が日本経済に与える影響が、安倍内閣の判断に様々な影響を及ぼす可能性があることは否定できない。
 また、最大の懸念は、これまでの日本政府の拙劣な対応の責任を回避することを優先する対応が行われ、当初の中国で問題になったような、責任回避のための隠蔽的な行為が行われるおそれもあることだ。「桜を見る会」問題での対応を見れば、もはやこの点について、安倍内閣を信頼しろと言っても無理だ。
 このような日本政府の大失態に対して、今後、野党が国会で追及姿勢を強めていくのは当然だが、それが政府の対応をますます「自閉的」にすることになり、政府の対応を一層混乱させる可能性もある。
 このような状況において、国民の生命を守る方法は、「安倍内閣総辞職」しかあり得ない。そして、この危機的な状況を突破するための超党派の「大連立内閣」を作ることだ。危機的な状況を脱したら、再び内閣総辞職し、総選挙によって、新たな国会の下で政権を組織すればよい。
 「内閣総辞職」によって、国会でのこれまでの安倍内閣の失態や失政に対する論戦には一気に終止符が打たれ、国会での論戦を、危機対応のための重要な議論の方に向けることができる。そして、もともと有能であるはずの日本の官僚組織も、安倍政権による「責任回避」の呪縛から逃れ、国民の生命を守るために、自ら考え、主体的かつ積極的な行動を起こすことも期待できる。
 新型コロナウイルスから国民の生命を守るために、「安倍内閣総辞職」を求める声を上げていくことができるのは、我々国民しかない。
 
「郷原信郎が斬る」2020年2月14日『国民の命を守るため、安倍内閣総辞職を~新型肺炎危機対応のため超党派で大連立内閣を』より転載しました。


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日刊ゲンダイDIGITAL  
コロナ拡大は安倍政権の人災 国立感染研大リストラの大罪
  2020/02/13

 ようやく、安倍政権が重い腰を上げる。ついに4人が重症。新型コロナの感染が加速度的に広がる中、ウイルス検査の態勢強化など緊急対策に乗り出すが、しょせんは付け焼き刃の対応だ。これまで、感染症対策をおろそかにしてヒトやカネをバッサリ削ってきた“人災”のツケが回ってきた。

 現在、ウイルス検査や分析などの対応に追われているのは国立感染症研究所だ。米国では、感染症について「情報収集と発生時の対応」はCDC(疾病予防管理センター)、「研究・開発」はNIH(国立衛生研究所)、「ワクチンの品質評価」はFDA(食品医薬品局)と、3つの機関が分業している。この3つの役割を感染研は一手に担っている。

 近年、インフルエンザ、麻疹、風疹、梅毒などの流行が見られ、感染症の脅威は高まっている。しかし、感染研はすさまじい大リストラを食らってきた。
 2009年度に61億円あった研究費と経費の合計額は、18年度はなんと41億円。3分の1に当たる20億円も減らされてしまった。研究者も09年の322人から、現在は307人。組織はスカスカにされている。

 理由は十把一絡げの国家公務員の削減だ。山野美容芸術短大客員教授の中原英臣氏(感染症学)が言う。

「感染研が担う役割や仕事量からして、300人余の研究者は極めて少人数です。10年間でさらに人も金も減らしているのは、安倍政権が感染症対策を軽視している表れといえます」

10年で20億円カット
 感染研の大リストラには、有識者からも強い異議が起こっていた。11年に医学の有識者らでつくる「国立感染症研究所研究評価委員会」が報告書をまとめている。

<人員や経費が削減される中、研究所の業務や研究の範囲は拡大し続けており、個々の職員の努力に依存した運営には限界がきている><予算・人員の裏付けをつけることが重要であり、研究所は、その国民に対する使命の質と大きさに鑑み、「国家公務員削減計画」からの除外対象とすべきである>

 悲鳴のような報告書が出されても、安倍政権は、予算・人員を削り続けた。

 さらに昨年4月9日、共産党の田村智子参院議員が内閣委員会で、感染研のリストラ問題を取り上げた。政府は「(感染研は)重要な機能を有していることは認識しています。新規増員を措置してきている」(宮腰光寛内閣府特命相=当時)と答弁。感染研によれば、「国会で予算が通れば、新年度は1人増えて、308人になります」(総務課)という。増員幅はスズメの涙だ。
 安倍政権が評価委や田村議員の指摘に耳を傾けていれば、新型コロナウイルスはここまで感染が拡大しなかったのではないか。

「予算、人員削減のツケが回ってきました。例えば、クルーズ船の約3700人全員のウイルス検査は、マンパワー不足の問題で決断が遅れました。感染が確認された検疫官が防護服を着ていなかったのは、金がない証拠です。安倍首相のいう国防は、高額の軍艦や飛行機を買うことですが、感染症から国民の命を守ることの方が大事な『国防』です」(中原英臣氏) 安倍政権は新年度予算案に過去最高となる防衛費5・3兆円を盛り込んだ。政権発足後、8年連続アップで、6000億円も増やしている。いくらかでも感染症対策に回したらどうだ。

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看板倒れ加計学園 獣医学部はコロナ感染症対策で機能せず(一部抜粋)
  2020/02/14

■つぎ込まれた税金は約186億円

 そもそも、獣医学部新設の狙いを安倍首相は「人獣共通感染症対策」「新薬開発」――と強調してきたはずだ。しかも、〈広域的に(獣医学系大学が)存在しない地域に限り新設を可能とする〉との特区認定の条件を追加し、わざわざ鳥インフルエンザ研究センターを持っていた京都産業大を除外までしている。
 それにもかかわらず、新型肺炎が猛威を振るっている、この肝心な時に、ほとんど機能していないのだから話にならない。新薬の開発なんて期待されていないのだ。
    (略)
 獣医学部新設につぎ込まれた税金は約186億円。国からの助成金も入っている。政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。

「『人獣共通感染症への対策』との説明はしょせん、獣医学部新設のための建前だったということでしょう。モリカケ疑惑といい、『桜を見る会』といい、いったい血税を何だと思っているのでしょうか。今回の新型肺炎のような不測の事態にこそ、税金が投入されるべきでしょう」

 “世界に冠たる”なんて、看板倒れじゃないか。


和泉補佐官❤大坪次長(コネクティングルーム)

2020年02月13日 | 社会・経済

和泉補佐官❤大坪次長(コネクティングルーム)

衆議院議員  早稲田ゆき 神奈川県第4区|立憲民主党| 


研究者は“大坪問題”と…新型肺炎にも影落とす独断専行ぶり
   日刊ゲンダイDIGITAL:2020/02/13

    新型肺炎への場当たり対応で厚労省に批判が集まっているが、担当者としてたびたび公の場に登場するのが大坪寛子大臣官房審議官では、話にならない。

 京大iPS細胞研究所の山中伸弥教授に国費の事業支援終了を突きつけるなど、医療分野の研究予算を削りまくってきた張本人だからだ。山中氏との面談は和泉洋人首相補佐官と出張。午前中に面談を終え、午後には仲良く京都観光を満喫した“公費不倫疑惑”も国会で追及されている。

■日本医療研究開発機構理事長が名指しで批判

 予算を巡って大坪氏が強権を振るったのはiPS細胞研究所だけではない。国立研究開発法人である日本医療研究開発機構(AMED)の関係者が言う。

    「今年1月のAMED審議会で、末松誠理事長が大坪氏を名指しして『昨年7月に大坪氏が次長になって以降、我々のオートノミー(自立性)は完全に消失した』と批判する一幕があった。和泉補佐官が室長、大坪氏が次長を務める内閣官房健康・医療戦略室のトップダウンで不透明に物事が決められ、医療研究が適切に行われなくなっていると訴えたのです」
 AMEDは医療分野の研究開発を総合的に推進する司令塔として2015年に設立。感染症のプロジェクトも行っている。総額1200億円程度の予算の中には、使途を決めずに財務省から予算措置される約80億円の「調整費」があり、これまで文科省や総務省などとも相談して運用してきた。その調整費の使途が大坪氏の一存で厚労関連の内容に決められてしまったというのだ。

    「大坪氏は『大臣や政治家と勝手にコンタクトを取るな』とか『すべて健康・医療戦略室を通すように』などともAMEDに通告したそうで、さすがに自民党内でも『やり過ぎだ』と問題になった。和泉補佐官と大坪氏、どちらの意向なのかはハッキリしませんが、その独断専行ぶりは、関係者の間で“大坪問題”と呼ばれています」(自民党厚労族議員)
    衆院予算委では、12日も和泉補佐官に大坪氏が同行した18年の4回の海外出張すべてで、隣り合わせたコネクティングルームに宿泊したことが問題視された。研究予算を削りまくる公費不倫疑惑の2人が、海外出張では高級ホテルの「内部でつながる部屋」に宿泊。公私混同としか言いようがない。

 野党は和泉補佐官の国会出席を要求し続けているが、与党は官邸に忖度して却下。これでは国民は到底、納得できない。


  こんな低俗な問題で時間と税金を使うアホらしさ。自民党が安倍を切れないのなら国民は自民党を切るだろう。アベの支持率30㌫というのは、「安倍親衛隊」であり、自民党の支持率には直結しないのではないかと思う。国民が、汗水たらして納めた税金を・・・・・・・!!!


雨宮処凛 植松聖被告の法廷に通って

2020年02月12日 | 事件

相模原事件裁判傍聴記〜「歌手とか野球選手になれるならなってると思います。(事件は)自分がなれる中で一番有意義だと思いました」(植松聖被告) 

  imidas時事オピニオン2020/02/11


    相模原の障害者施設で入所者を殺傷した事件の植村聖(うえまつ・さとし)被告について、雨宮処凛さんは、取材を重ねてきた。2020年1月から始まった事件の裁判、2月の法廷の傍聴記をお届けする。
   「あなたは小学生の時、『障害者はいらない』という作文を書いてますね?」
 法廷で、被害者側の弁護士にこう聞かれた植松聖被告は「はい」と言った。
 その瞬間、これまでの傍聴で積み上げてきた「植松聖」像がガラガラと崩れる音がした。それは法廷で初めて語られた事実だった。これまでの裁判での友人たちの供述は、「事件前年までは普通だった」「小中学校の同級生は彼から一度も障害者を差別するような言葉を聞いたことがない」「小中学校の時、障害がある生徒を同級生として受け入れていた」というものだったからだ。

私が植松被告の裁判に通う理由
 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者19人が殺されたのは2016年7月。事件前には衆議院議長に犯行を予告する手紙を送り、犯行直後、SNSに「世界が平和になりますように」「beautiful Japan!!! !!!」と投稿し、自首したのは26歳(当時)の元施設職員だった。
 事件から3年以上。20年1月8日、やっと裁判が始まった。
 そんな裁判に、私は通っている。2月7日現在、12回行われた公判のうち6回を傍聴している(1月20・24日の傍聴記はこちら)。なぜ通うかといえば、この事件と日本社会の空気には大きな関係がある気がするからだ。
 例えば植松被告は逮捕後、日本の借金を憂える発言を繰り返している。日本の財政は破綻寸前、そんな危機的状況の中、障害者を生かしておく余裕なんかない、という言い分だ。障害者を殺傷した犯人が口にすると、ことさら「異常さ」が際立つその言い分はしかし、私たちの日常に溶け込んでもいる。
 いつからか「高齢化」が報じられる時は「医療費としてこれだけの金がかかっている」などお荷物感とセットで語られ、「日本は少子高齢化で社会保障の財源がないんだから、ある程度“命の選別”をするのは仕方ない」という空気は気づけばこの国を覆っている。10年前だったら口に出すのがはばかられた考えだろう。が、残酷な「本音」が「建前」を打ち破り、「命は大切だ」というような「正論」を口にする者が「現実を何も分かっていない」と嘲笑される光景があちこちにある。
 そんなこの国に溢れる「生産性」「迷惑」「一人で死ね」という言葉。「失われた20年」を生きる私たちは、「障害や病気があれば公的に守られるけど、障害者でもなく病名もないなら自己責任で競争に勝ち続けてください。負けたら野垂れ死でよろしく」という無理ゲーをこの20年以上強いられている。

面会室で向かい合った植松被告の印象
 相模原事件は、そんな自己責任社会がぱちんと弾けた象徴のように思え、私はこの事件をずっと考えてきた。19年9月には『この国の不寛容の果てに 相模原事件と私たちの時代』(大月書店)という対談集も出している。
 そうして裁判が始まった今、傍聴を続けているのだが、公判を見れば見るほど謎は深まるばかりだ。植松被告は法廷でも、「障害者は不幸をつくることしかできません」といった事件前からのスタンスを崩すことなく主張し続けている。障害者がお金と時間を奪っている、障害者に使うお金を他のことに回せば戦争がなくせる、世界平和につながる、という荒唐無稽としか言いようのないものだ。
 一方で、公判を見ていると、植松被告は私が考えていたよりもずっと深刻な「妄想」状態だったのでは、と思わせるエピソードが次々と出てくる。世界の出来事を予言するという「イルミナティカード」への傾倒。「障害者を殺せばトランプ大統領が絶賛してくれる」「自分は選ばれた人間である」というような事件前の発言。また「UFOを見た」「日本は今年滅びる」「横浜に原子爆弾が落ちる」などと法廷で堂々と述べている。
 一体、彼の精神はどのような状態なのか、確かめるべく、1月30日には横浜拘置所に面会に行った(面会についての記事はこちら)。
 面会室で向かい合った植松被告は法廷で見るより「普通」で、しかし、同行した人が事件に触れると「自分の考えは正しいと思います」と頑なに主張。障害者がいらないなんて間違ってる、と言われると「それこそ間違ってる」「不幸な人がたくさんいるのに、ヨダレを垂らしてるような人が生きているのがおかしい」とぴしゃりと言うのだった。
 少しでも「攻撃された」と感じると、スッと心を閉ざして自分の主張を投げつける。面会の最後には唐突に「雨宮さんに聞きたいんですけど、処女じゃないですよね?」と私に質問。病気には見えないけれど、どこかが決定的にズレている。そんな印象を強く持った。

そもそも彼はなぜ障害者施設で働いたのか
 そんな植松被告、これまでの裁判では「事件前年の15年から急におかしくなった」というのが友人たちの供述調書から浮かび上がってきたことだった。それまではフットサルやバーベキューが好きな「チャラい」若者。が、やまゆり園で働き始めて2年目の15年頃からしきりに「障害者はかわいそう」と言うようになったという。「食事はドロドロ」「車椅子に縛りつけられている」等々。また、この頃から妄想じみた言動がひどくなり、約50人に「意思疎通のできない障害者を殺す」と言うようになる。行きつけの理髪店の担当者にまで言っている。
 しかし、2月6日に傍聴した第11回公判で、冒頭のように被害者弁護士に「あなたは小学生の時、『障害者はいらない』という作文を書いてますね?」と問われた植松被告はそれを認めた。書いたのは低学年の頃だという。
 また、この日の裁判では、中学生の頃に一学年下の知的障害者の生徒が同級生の女の子を階段から突き落としたのを見て、その障害者の腹を殴ったと発言。これも初耳だった。ではなぜ、そもそも障害者にいいイメージを持っていなかったのにやまゆり園で働いたのか。裁判でそう聞かれると、「仕事として考えればそんなに辛いことはないと思いました」と答えた。やまゆり園の前には配送会社で働いているのだが、そちらの給料について被害者側の弁護士に聞かれると、「23、4万円」と回答。一方、やまゆり園は19〜21、2万円で年60万円のボーナスも出たという。これまでの友人の供述調書によると、植松被告は配送会社を体力的にキツいという理由でやめている。

自分ができる一番有意義なこと、と言い放った植松被告
 さて、2月5日の法廷では、二人の被害者家族からの質問があった。一人は事件で亡くなった甲Eさん(女性・当時60歳)の弟。もう一人は事件で怪我をした尾野一矢さん(46歳)の父・剛志さんだ。ちなみに「甲Eさん」というのは被害者の多くが匿名を希望しているからで、法廷ではこのような名前で呼ばれている。
 姉の遺体と対面した時の話をしながら涙を拭い、どうして殺したのかと問いかける男性に、植松被告は淡々と言った。
「意思疎通のとれない方は、社会にとって迷惑になっていると思ったからです」「殺したほうが社会の役に立つと思ったからです」
 男性が「(あなたの)コンプレックスが事件を引き起こしたのではないですか」と問うと、植松被告は答えた。
「あー……確かに、えー、歌手とか、野球選手になれるならなってると思います。自分がなれる中で、一番有意義だと思いました」
 ポロッと出た本音に思えた。が、歌手や野球選手というキーワードは、30歳になった男性が持ち出すものとしてはかなり幼く思えた。この件については、翌6日の法廷で被害者側の弁護士に以下のように質問されている。
  弁護士 昨日、コンプレックスが事件を起こした、野球選手になれば事件はなかったということでしたが。
  植 松 そうだと思います。
  弁護士 人前に出たり、注目されたいということですか?
  植 松 人前や注目じゃなくて、楽しそう。
  弁護士 楽しそうだと事件を起こさなかった?
  植 松 こんな事件に興味なかったと思います。
  弁護士 あなたの人生楽しくないから事件を起こした?
  植 松 そうではなくて、楽しみたいから思いつきました。人の役に立つことを。
  弁護士 有意義な人生を別の形で送れていれば、事件を起こさなかった?
  植 松 興味なかったと思います。
  甲Eさんの弟の後に質問したのは尾野剛志さんだ。
「今、幸せですか」と聞かれ、「幸せではありません」「あーどうだろう」「面倒だからです」と答えた植松被告は「今のはちょっと失礼だな、不自由だからです」と言い直した。施設に勤務し始めてすぐの頃は「障害者はかわいい」と言っていたのに「必要ない」という考えに変わったのはなぜか、という尾野さんの問いに、植松被告は答えた。
「彼らを世話している場合ではないと思いました。社会に不幸な人はたくさんいるし、日本もそれどころではないと」
 なぜ、それが正しいと思ったのか、その根拠について聞かれると「お金と時間を奪っているからです」。
 翌2月6日の公判は、被害者側の弁護士からの質問だ。裁判を前に家族が実名を公表した美帆さん側の弁護士が質問する。美帆さんは、植松被告に刺され、19歳で亡くなった女性だ。
 美帆さんは人に幸せを与えていなかったと思いますか? と問われ、「そこだけ見ればそうかもしれませんが、施設に預けていることを考えれば負担になっていたと思います。お金と時間を奪っている。それで幸せになってはいけないと思います」。葬儀に多くの人が来たことに触れ、美帆さんがいることを喜ぶ人がいなかったと思うか? と聞かれると、「喜んではいけないと思います」と答えた。
  弁護士 あなたは美帆さんが人間でなかったと思うんですか?
  植 松 人間として生活することができないと思います。
  弁護士 人間と考えるべきでないということですか?
  植 松 そういうことです。
 法廷では、植松被告の両親についても被害者側の弁護士に質問された。植松被告は自分の親のことになると「言う必要はないと思います」など口をつぐむことがある。「自分は愛されて育ったと思いますか」と聞かれると、言った。
「比較的、いろいろ手をかけて頂いたと思います。学習塾、部活動、不自由なく生活させてもらいました」
 一方、親が障害者になったら殺すのかという主旨のことを問われると「自分で死ぬべきだと思います」「そうなったらおしまい。安楽死させられても仕方ない」。(「あなたが手を下す?」と聞かれて)「家族任せは心理的負担が大きいので医者がすべき」と答えるのだった。

全身にみなぎる「万能感」
 2月5、6日の法廷での一つのキーワードは「共生社会」だった。
 事件を起こしたことで、社会はあなたの考えるようになったか? と問われた植松被告は「キョウセイ社会に傾いたので、やっぱり無理だよね、となればいいと思います」と言った。
 キョウセイ社会? 共に生きる、ですか? と裁判官が確認したほどに、その言葉は植松被告にそぐわなかった。が、翌日もこの言葉について補足している。
「共生社会を目指す方向にいったのが、ある意味一歩前進したと思います。安楽死を認める上でそういう段階を踏まなくてはいけない。共生社会になれば現実的でないと分かる。実践として無理だったと分かる」
 共生社会という奇麗ごとはどうせすぐに破綻する、その結果、安楽死が認められると主張するのだ。また、「犯行前に戻れるとしたら、殺害以外の方法はないのか?」と聞かれると「デモなどしても意味がないと思います」と言った。
 さらにこの日は、植松被告が事件後につくった「心失者」という言葉にも触れられた。彼は意思疎通のできない重度障害者を「心失者」と呼んでいるのだが、それ以外の「心失者」はどんな人かと聞かれると、自分に手紙を出してきた殺人犯の話をした。手紙には、「若い女を監禁して殺しまくる小説が面白かった」と書かれていたという。その犯人は、女性を殺したそうだ。
「どうしようもないと思いました」
 梅松被告は軽蔑の滲んだ声で言った。そのような人も心失者に入るらしい。続けて「植物状態の人は?」と聞かれると、「絶対回復しないわけではないのですぐ殺すべきではありませんが、安楽死させるべきだと思います」。「名前、年齢、住所が言えない人は?」とさらに問われると、「安楽死させるべきです」と答えた。
 このような時、植松被告の全身に「万能感」がみなぎっているのを感じる。あらゆる者の生殺与奪の権利を自分が一手に握っている、という陶酔感。そんな権利、植松被告には微塵もないのに、どのような人間を生かし、どのような人間を殺すべきかという話になると、端から見ても脳内麻薬が出ているのが分かるほどに高揚するのだ。
 この「神目線」の快楽が、事件を読み解く一つの鍵のような気がする。何一つ思い通りにいかない若者(20代なんてだいたいそんなものだ)がすがった「自分が支配者だったら」という脳内ゲーム。すらすらと答える姿を見れば、誰もが「ずーっとこのことを考えていたんだろうな」と思うはずだ。
植松被告には一体、何が見えているのだろう?
 さて、2月6日の裁判の終わり頃、裁判員の一人が、殺害方法に触れた。植松被告は最初、心臓を狙って刃物を刺していたという。が、刃物が骨に当たって曲がったりし、自身も怪我をしたことから首を狙うようになる。
「やわらかい首に変えました」
 その「やわらかい首」という植松被告の言葉に、思わず自分の首を押さえそうになった。やわらかな首の皮膚に、刃物がスッと当たる冷たい感触。目の前の植松被告はあの日、無防備に寝ている43人を刺し、19人を殺害したのだ。刺し傷だけで100箇所以上。なのに、犯行当時、血の匂いはあまり感じていなかったという。
 ゾッとしながら、もう一つ、背筋が凍ったことを思い出していた。1月30日の面会で、私は植松被告に真鍋昌平氏の漫画『闇金ウシジマくん』(小学館)について聞いていた。1月24日の法廷で「横浜に原子爆弾が落ちる」「6月7日か9月7日に落ちる」などと言っていた植松被告だが、それが「『闇金ウシジマくん』に書いてあります」と述べていたからだ。面会でそのシーンが何巻にあるか聞くと「最終巻です。それの一番最後のところです」と言うので入手して読んでみた。
 しかし、『闇金ウシジマくん』の最終巻に、彼が言うシーンは存在しなかった。
 彼には一体、何が見えているのだろう?
               ◆
 2月7日の裁判で、植松被告の精神鑑定をした医師は、「意思疎通のできない障害者を殺す」という動機を「妄想ではない」とし、「病気による発想ではなく、園での勤務経験や世界・社会情勢を見聞きしたことにより形成されていった」と述べたという(神奈川新聞「被告の精神鑑定した医師が証言、事件への大麻の影響否定」、20年2月7日)。
 私の謎はまた一つ、深まった。
 判決は、3月16日に出る予定だ。


 ようやく、先ほど「解放」されました。この間、更新も不定期ながら、なんとかできました。この3日間江部乙にも行ってないし、散歩もあまりできていません。体がなまって腰痛気味。明日から普通の生活です。


「法の下の平等」は幻想か。

2020年02月10日 | 社会・経済

IR汚職5議員が少額理由に立件見送り
    MAG2NEWS 2020.02.05

    「100万円は少額」であった点を考慮して、IR事業の賄賂を受け取った秋元司容疑者(48)以外の5人の衆院議員の刑事責任を問わないと東京地検特捜部が方針を出した。時事通信、北海道新聞などが報じている。1円でも賄賂は賄賂、罪は罪であるはずが、額の大きさで立件を見送るという判断には疑問が残る。

秋元議員は収賄罪で追起訴
    東京地検特捜部はIR事業をめぐる汚職事件で、中国企業「500ドットコム」側から計385万円相当の賄賂を受け取ったとして、衆院議員秋元司容疑者(48)を追起訴した。すでに起訴されている分と合わせると、立件額は760万円になる。秋元容疑者は昨年12月25日早朝、毎日新聞の記者に「はした金は、もらわねえよ。あり得ねえよ。ほんと、ばかたれ」「1億、2億なら別だが、俺は正面から堂々ともらうんだから」「地検は、はしゃぎすぎだ。こんなことで身柄拘束しやがって。徹底して戦ってくるわ」と高圧的な電話を入れていた。次々と問題が明らかになる秋元容疑者から今後も目が離せない。

100万円は少額だからOK
    中国企業は、秋元容疑者以外の5人の衆院議員への資金提供も供述した。しかし、「事務職員が100万円を受領したが、収支報告書に記載しなかった」と説明し、日本維新の会から除名された下地幹郎元郵政民営化担当相以外の4人は否定している。4人は「職務に関して」は、金品を受領しておらず、秋元容疑者のような立場になかった。
    また、過去2015年に起訴されている小渕優子元経済産業相の元秘書らの虚偽記載額は3億円を超えており、今回の額と大きく異なる。特捜部は経緯を確認した上で、起訴を見送った形だ。1円の商品でも万引きしたら「犯罪」であるというのが当然の考えだろう。しかし、衆院議員の罪は額の大きさで決まるのだ。
    そして今回、国と国民との金銭感覚のズレを改めて感じることとなった。秋元容疑者も述べていた通り、衆院議員や特捜部にとって、100万円は「はした金」なのだろう。我々国民にとっては十分高額であり、重大な問題であることをどうかわかっていただきたい。


学校の先生がもったいないからと給食の残りを持ち帰って処分されたよね!
赤ちゃんにミルク買うお金なく、餓死させた母親が逮捕されたよね!
やっぱり「上級国民」なんだ!
きのうのニュースでは秋元容疑者が3000万円の保釈金で保釈されたという。
罪状を認めていない状況では、あり得ない措置ではないのか?
まさか、「黒川効果」・・・?


トランプに握られた日本人の胃袋 (4)

2020年02月10日 | 食・レシピ

日本国民の健康を米国に売り渡してきた「レモン戦争」
  公開日:2020/01/29


    乳牛の餌にする米国産トウモロコシが、猛毒のカビであるアフラトキシンに汚染されていると書いたが、実はアーモンドやピスタチオもけっこう汚染されている。なぜ米国産に汚染が多いのだろう。

 簡単にいうと、アメリカの農作物の多くは投機商品だからだ。収穫してすぐに日本へ輸出すればそれほど問題はないのだが、トウモロコシには相場があり、巨大なサイロに保管して値段が上がった時に売るのが基本だ。その時、トウモロコシにカビが生えていたら莫大な損害になる。それを避けるために防カビ剤をまくのだが、長期間保管したうえに、船積みしてから日本の港に着くまで1カ月はかかるとなれば、どうしてもアフラトキシンが発生してしまう。

 収穫後の作物が腐らないように、船積みした穀物などに散布する農薬のことを「ポストハーベスト農薬」というが、これがかなり危険なのだ。
ポストハーベストで、よく例に出されるのが1970年代の「日米レモン戦争」だろう。米国から輸入していた柑橘類からオルトフェニルフェノールとかチアベンダゾールといった防カビ剤が検出された。この防カビ剤、日本は膀胱がんや腎障害の原因になるとして禁止していた。

 当時、アメリカから輸入されていた柑橘類はレモンやグレープフルーツ。これを船積みする前に、防カビ剤入りの液体ワックスに漬ける。いわば猛毒のニスで果皮をコーティングするようなものだ。昔、農林省に勤めていた大先輩から喫茶店に誘われた時、レモンティーを頼んだら、「そんなもの注文しちゃいけない」と怒られたことがある。当時の日本の政治家や官僚はまだ多少の気概はあったのだろう。

■農薬を食品添加物にスリ替えて認可

 この防カビ剤が日本の検疫で検出されると廃棄処分にし、日本政府は米国政府に防カビ剤の使用禁止を求めた。
それに激怒したアメリカは、日本からの自動車の輸入を制限した。従わないと仕返し――今の米中貿易摩擦のようなものだ。日本は慌てた。自動車を日本の基幹産業にしようとしていたのに、これではもくろみが大きく変わってくる。そこでどうしたかというと、米国の柑橘類に使われている防カビ剤を、農薬ではなく、食品添加物だとして許可したのである

 農薬が食品添加物なんて聞いたことないが、自動車産業を守るために、政府は国民の健康をアメリカに売り渡したのだ。これ以降、アメリカに対するこの姿勢は現在も続いていて、トランプ・安倍の日米貿易協定にも色濃く影を落としている。


殺虫剤や防カビ剤混入の輸入小麦と異様に緩い残留農薬基準
  公開日:2020/01/30

    米国産の柑橘類に防カビ剤が塗られて輸入されていると書いてきたが、この状況は現在も続いている。

 それだけではない。日本がTPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加するとき、米国から「未指定の国際汎用添加物について、原則としておおむね1年以内に我が国の食品添加物として認める(略)とした2012年の閣議決定を誠実に実施する」ことを求められた。つまり、日本が認めていない添加物があっても、1年以内に認めるということだ。その後、米国はTPPを離脱したが、もしトランプが同じことを要求したら、日本は断りきれるだろうか。

 とくにアルミニウムを含んだ添加物が問題になるだろう。専門家はアルミニウムイオンを口に入れることの危険性を指摘しているが、米国では規制されていない。米国から野放図に入ってくる可能性があるのだ。

 さて、船で輸送中に散布するポストハーベスト農薬で問題なのは、柑橘類だけではない。私たちが毎日のように口に入れている小麦もそうだ。菓子類には必ず入っているし、パンは毎日のように食べる人もいる。
 日本は小麦の9割を外国産に頼っている。2016年に輸入した小麦は545万トン。このうち最大の輸入先がやはり米国で、全体の46%を占める。小麦もレモンと同じで、船で運ぶ途中でカビや害虫が発生する。米国から積み出す港はニューオーリンズなどメキシコ湾岸に多く、熱帯地方を通過するからだ。では、小麦に防カビ剤や殺虫剤をどうやってまくかというと、これがとんでもないものだった。

 もう10年以上も前のフィルムだったが、米国の港で小麦を積んだ貨物船にポストハーベスト農薬をまくシーンを見せてもらったことがある。私はてっきり煙で燻すのかと思ったら、そうじゃない。ハッチから、農薬の袋を開けてそのままぶっかけて攪拌するだけだった。太平洋を越える途中で農薬は気化して基準値以下に下がるそうだが、そう単純ではない。

 残留するのも多く、基準値をオーバーすれば廃棄するしかないのだが、すると米国から報復される。そこでどうしたかというと、残留農薬の基準値を上げたのだ。
たとえば、猛毒のマラチオンの残留基準値は、国産米が0・1ppmに対し、小麦は80倍の8ppm。殺虫剤のクロルピリホスメチルも、コメが0・1ppmなのに、小麦は100倍の10ppm。どう考えても米国への配慮だろう。

 当然、この小麦で作ったパンやパスタを食べれば、殺虫剤や防カビ剤も一緒に食べることになる。

 

安い輸入小麦粉を使う子供たちの給食パンは汚染されている
  公開日:2020/01/31


    ポストハーベスト農薬を使って輸入される米国産の作物で、小麦は最も危険といわれる。なにしろ、農薬がついた殻を割って、ふすま(表皮)と胚乳に分けて粉にするから、殻に付着した農薬が小麦粉に混入する。それに、コメのように炊く前に洗うわけではないからそのまま口に入る。

 この小麦粉を使ったパンを毎日食べていると、当然、体はポストハーベスト農薬に汚染される。もちろん体の代謝によって農薬は排出されるが、パン好きの人は毎日食べるだろうし、お菓子を食べない子供はいないだろうから、結局、体の中を常に農薬が循環している状態になりかねない。

 とくに問題は、給食のパンに使われる安い小麦粉だ。同じ小麦の胚乳でも、中心部分に近いほどタンパク質が少なく乳白色に近い。だからこの部分は特等、つまり上質の小麦粉になる。外側の殻に近づくほど1等、2等と等級が落ちて値段も安くなる。給食用のパンに使われるのはもちろん安い外側。外皮に近ければ農薬も混ざりやすく、それだけ危険性もアップする。
 給食の材料費は、全国平均で1食約230円(小学校低学年)から320円(中学校)と、とにかく安い。この値段で賄うとすれば、当然、パンも安い小麦粉を使うしかない。その分、子供たちは体の中に農薬を取り込みやすくなり、より危険にさらされる。

 全粒粉といって、小麦をまるごと粉にして焼いた茶褐色のパンがある。体に良いということで食べる人も多いが、国産の無農薬で育てた小麦ならともかく、米国産の小麦で作った全粒粉パンなんて恐ろしくて食べる気にもならない。

■日本人の健康よりもコスト安優先

 輸入小麦の農薬を減らす方法はないのか。

 ちなみにこれはトウモロコシの場合だが、アメリカで購入した飼料用トウモロコシ(もちろん非GM)をポストハーベストなしで日本に運ぼうとした企業があった。山口県の秋川牧園である。研究の結果、トウモロコシの水分を数%飛ばせば、農薬を混ぜなくても日本まで運べることがわかったという。小麦も同じようにすればいいのにと思うのだが、そのために追加コストがかかるので誰もやろうとしない。安さを追求するあまり、ここでも日本人の健康が無視されているのだ。

 幸い、給食の主食がパンからご飯に変わりつつある。農水省の政策でもあるが、子供たちの健康には悪くない話だ。ところが、輸入小麦の需要が減るどころか、むしろ増えている。給食用に使われていた大量の小麦粉はどこへ消えたのだろう。


  町内会の同じ班で続けて2人の方がなくなり、これから3日間お手伝い。更新できるときにしておかなければ…。これから出かけます。明日は無理かもしれません。


生活保護クレーマーになす術なし!死体遺棄ケースワーカーの孤立職場&-27℃

2020年02月09日 | 事件

みわよしこ:フリーランス・ライター
 

死体遺棄ケースワーカーを
助ける人はいなかったのか
 2019年6月、京都府向日市の生活保護ケースワーカー・Y氏(当時29歳)が、死体遺棄容疑で逮捕された。現職の公務員による犯罪であるばかりではなく、その遺体はY氏の担当していた生活保護受給者・H氏(当時55歳)と同居していた女性のものであり、H氏が自分の担当ケースワーカーであるY氏を精神的に支配し、遺体遺棄をさせたという異様な関係にあったことから、事件は日本社会の関心を集めた。
 事件への関心は、同年7月の「京都アニメーション」スタジオ放火事件によって立ち消えた形となったが、その後捜査や取り調べが行われ、10月からはH氏・Y氏およびH氏と共犯したZ氏の公判が開始されている。Y氏の公判は12月に結審し、本年1月に判決の予定であった。しかし現在は、結審が3月初旬、判決は3月末の予定となっている。
 公判を通じて明らかになってきたのは、向日市の生活保護の現場の機能不全ぶり、各ケースワーカーの孤立、そして不適切な生活保護制度の運用であった。元暴力団員とされていたH氏は、実際には暴力団との縁を切っておらず、現役の暴力団員である疑いが濃厚であった。
 申請時点で暴力団を脱退していない場合、生活保護の対象とならないわけではないが、「すぐに保護しなくては生命に関わる場合に限る」など、厳しい制約が課せられている。保護費は暴力団の活動資金ではないからだ。しかしH氏は向日市で、生活保護で暮らすことができた。そして暴力団との関係を維持していた可能性があり、暴力的な言動や“洗脳“のような手法でY氏を支配していた。
 とはいえ、死体遺棄に関しては、Y氏は結果として手を染めた。被害と加害が入り組んだ状況を、どう読み解くべきであろうか。筆者の見方では、公判の現在の焦点もこの点にある。
 生活保護の現場と運用に詳しい吉永純さん(花園大学教授、社会福祉学)は、「担当者に任せていた」という点を、最大の問題として指摘する。
吉永さんは、20年以上にわたって京都市役所に勤務し、生活保護を含む福祉業務に携わってきた。その経験を踏まえて、次のように語る。
「Yさんが犯罪に追い込まれてしまった要因は、向日市が不当要求に対してあまりに無防備で組織的に対応できず、結果として、担当者であるYさんに任せっぱなしになっていたことにあると思われます」(吉永さん)

 行政には、時に不当な要求が行われる。正当な手続きや要請を行おうとする住民が、行政から「クレーマー」呼ばわりされることもある。しかし時に、事実として、一見「クレーマー」そのものの住民もいる。特に生活保護行政の現場は、「カネ」という生々しい存在を扱っている。時に正当な取り扱いを丁寧に説明されても、“逆ギレ“する受給者もいる。
生活保護支給の現場で
感情を揺さぶる「カネ」の話
 生活保護費に限らず、カネの話は感情を大きく揺さぶるものだ。特に生活保護費は、生死そのものや生死に近いレベルの判断や選択に関係することが多い。
「しかし向日市は、不当要求を受けることに関して、組織として無防備すぎたように思われます。生活保護行政を実際に行う場面にも、組織としての方針がなかったように見受けられます」(吉永さん)
 事実であるとすれば、まことに無政府主義的な職場だ。しかもその職場は自治体、すなわち地方政府である。その「無政府主義の地方政府」は、不条理劇の中の架空の存在ではなく、日本の現実だ。
 このような職場の“ヒラ”にとって最も有利な選択は、責任を負わず判断をせず、大過なく次の異動を迎え、その繰り返しで定年まで逃げ切ることであろう。
 しかしY氏は、市職員として生活保護ケースワーカーとして、可能な限り責任を果たすことを試みたようだ。
ケースワーカーの
せめてもの抵抗
 Y氏は、日々の多忙な業務とH氏からの圧迫のもとで、可能な限り具体的にケース記録を残していたことを、12月の公判で語っている。
 直属の上司であり生活保護業務の査察指導員である係長、および課長は、立場上「知りませんでした」とは言えない。そして、H氏による毎日2時間以上の電話と不当要求にY氏が苦しめられて精神的に追い込まれた経緯、そして死体遺棄で逮捕されたという結果からは、どう考えても「管理職が適切なマネジメントを行っていた」とは言えない。
 向日市の非常勤職員として、Y氏と共に生活保護の業務に就いていた元同僚のSさんは、匿名を条件に「私は、H氏が向日市で生活保護を申請する前に退職したので、Yさんの苦悩は想像するしかないのですが」と前置きしつつ、次のように語る。
「私が在職していたときは、ケースワーカーが5名、査察指導員(係長)1名、課長1名、面接相談員1名という、非常に小さな組織でした。電話で毎日何時間も対応を迫られる“困難ケース”に、上司や同僚が気づかないはずはありません」(Sさん)
 困難ぶりは、充分に推察されていたはずだ。ケースワーカーとしての多忙かつストレスフルな業務の中で、担当している生活保護世帯に関する記録を毎日残すことは、当然といえば当然なのだが、徹底されていない職場も多い。
 2018年7月、札幌市で障害を持つ60代女性が熱中症で死亡しているところを発見された事件では、担当ケースワーカーが長期間にわたって本人と対面できていなかった。女性は、電気料金を滞納して送電を停止されており、住まいに造りつけられていたクーラーを利用できなかったと見られている。
しかし、札幌市の福祉事務所は、ライフラインが停止している事実を把握していなかった。担当ケースワーカーも記録を残していなかったため、「訪問したけれども会えなかった」のか、それとも「訪問を試みず、したがって会わなかった」のか、いずれとも判断のつかない状態だった。
 ともあれ、記録を残すことは重要だ。

孤立と絶望に追い込まれて
それでも責任を果たしたあげく…
 元同僚・Sさんは、死体遺棄へと至ったY氏の思いを、次のように推測する。
「同僚たちが尻込みして彼ひとりを矢面に立たせていた構図は、あたかも、集団いじめを見て見ぬふりする『消極的ないじめ』のようです。彼の絶望感は、計り知れないものだっただろうと思います……。誰を責めるというのではありませんが」(Sさん)
 同じ課長・係長の下で働くY氏の同僚たちは、同じ立場で、同じように職場の病理に毒されていたはずだ。しかし管理職には、その状況に関する責任がある。
 向日市の生活保護の現場では、そもそもケースワーカー数が不足していた。社会福祉法が示す標準に従い、1人のケースワーカーの担当世帯を80世帯とする場合、ケースワーカーは5人必要である。しかし4人体制であったり、5人体制ではあるが新人が3人であったりする不安定な状況が続いた。事件が発生した2019年の1月、Yさんは110世帯を担当しながら、新人の教育係を務めていた。
 適切な人員配置を人事部門に働きかけ、実現を求めるのは、本来ならば管理職の仕事である。さらに、人数だけが揃っていれば良いわけではない。生活保護業務は、短期間で移動するケースワーカーが大多数の職場で行えるものでもない。
900ページにわたる生活保護の最低限のハンドブックの内容を頭に入れるだけでも、2~3年は必要であろう。都道府県による監査事項にも、「実施体制の確保」として「人員の不足がないか」「大半の異動がないか」という点が含まれている。
 さらに向日市は、実は現役の暴力団員であった可能性があるH氏を、そのまま生活保護の対象とし続けていた。H氏の不当要求を知りつつも、組織的に対応せず、Y氏に対応と責任を求め続けていた。
自治体のガバナンス欠如を
法廷は裁けるのか
 吉永純さんは、向日市が数多くの法令や規定に違反していた可能性に加えて、ガバナンスの欠如を指摘する。
 かつて吉永氏が在職していた京都市は、2007年に「京都市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」を制定した。
「自治体職員に対する不当要求を行う人、法令に基づいて応じられない場合でも執拗に要望を繰り返す人は、時にはいます。職員が1人で対応していると、ストレスが溜まって心身共に疲弊し、屈してしまう可能性があります。ですから、組織をあげて毅然とした対応を行う必要がありますし、そのためのルールが必要なのです。それがなくては、職員は安心して職務につくことができません」(吉永さん)
 Y氏は、暴力団員に対するケースワークという「無理ゲー」を、いわば上司から「ネグレクト」された状態で強いられていた。その点からはY氏は被害者だが、結果として死体遺棄に加担している。
 この入り組んだ状況に関する判決は、3月末に示される見通しだ。
(フリーランス・ライター みわよしこ)


-27.4℃、今季ではなく、ここ数年で最も冷え込んだ日。

 朝トイレの水が出てきません。ポータブル石油ストーブをもってきて10分くらいで出てきました。江部乙の方も水は落としてあるのですが、どういうわけか出てきません。薪ストーブをどんどんたいてようやく出るようになりました。以前、トイレを凍らせたのは数年前の-24℃の時。-25℃を超えるのはほんと、しばらくぶりでした。


<子どものあした>若い力で社会変えよう

2020年02月08日 | 社会・経済

 渋谷で来月イベント、貢献活動後押し

   東京新聞 2020年2月3日 夕刊
 

 「子どもは皆、世界を変える力を持っている」-。子どもの社会貢献活動を後押しする世界的イベント「WE(ウィー) Day(デー)」が三月二十日、日本で初めて東京都渋谷区で開催される。地域や社会を良くしようと行動する子どもたちが活動を報告し、互いにエールを送り合う催し。主催団体が参加する子どもや若者を募っている。 (奥野斐)
 イベントは二〇〇七年、カナダで始まった。開催地は年々増え、一八年時点でニューヨークやロンドンなど四カ国十五都市に広がり、社会貢献活動に取り組む子どもや若者たち計約三十万人が結集した。
 ハロウィーンでお菓子の代わりに不要な食品をくれるよう呼び掛け、集めて貧困家庭に寄付した米国の子や、途上国の汚水リスクを伝える活動をしたカナダの子などがそれぞれの活動を報告し合ってきた。英国では、自らの苦境を発信できない難民や児童労働の子どもたちを思い、二十四時間、学校で話したりSNSをしないと宣言して寄付を募った子もいたという。
 各国のイベントにはノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんや英国のヘンリー王子ら著名人も出席し、子どもたちを力づけてきた。
 日本版は、認定NPO法人「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」(世田谷区)が団体設立二十年を記念して主催し、渋谷区の「LINE CUBE SHIBUYA」(渋谷公会堂)で開催する。

 カナダのイベントに参加し、触発されたという代表の中島早苗さん(47)は「会場の熱気に、自分も何かやろうと力が湧いてきた。日本では、子どもが意見を言うのをちゅうちょしたり、何をしても変わらないという無力感がある。子ども自身が『できる』と実感できるような意識改革を起こしたい」と話す。
 中島さんによると、カナダ・オンタリオ州では、四十時間の社会貢献活動が高校卒業資格を得る要件の一つになっているという。社会課題に関心を持つことで、若者の選挙の投票率も上がったとの報告もある。
 イベントへの参加を促す「ユースアンバサダー」の高校二年、大野ことみさん(17)=江戸川区=は「プラスチックごみ削減のためにコンビニで袋を断るのも身近にできること。ボランティアを遠いものと思わず、楽しんで」と呼び掛ける。
 「スペシャルアンバサダー」を歌手で女優の土屋アンナさんが務め、アフリカ・コンゴ(旧ザイール)の元少年兵ミシェル・チクワニネさんら多数の活動家・著名人も出演する。
 定員二千人で、規模にかかわらず社会貢献活動をした二十五歳以下の若者や子どもが対象。ホームページから活動内容を報告し、参加権を得る。「募金活動をした」「文化祭で社会問題のパネル展示をした」などでもいい。申し込みは二月二十九日まで(定員に達し次第締め切り)。詳細は主催団体ホームページで。


 


7月からレジ袋有料義務化

2020年02月07日 | 自然・農業・環境問題

<環境視点>優秀エコバッグ続々 7月からレジ袋有料義務化

 東京新聞  2020年2月6日

機能性やデザイン性にこだわったエコバッグが並ぶ売り場=東京都中央区の銀座ロフトで

 七月一日から全ての小売店でレジ袋の有料化が義務付けられる。プラスチックごみを減らす狙いで、義務化を前に機能性やデザインにこだわったさまざまなエコバッグが登場。環境意識の高まりの中、手に取る人が増えている。一方、袋の厚みや素材によっては例外もある。混乱しないよう、基本的な内容を押さえておこう。 (河郷丈史)
◆売り上げ8倍
 手のひらサイズに手早くたためたり、保冷機能を備えたり。銀座ロフト(東京都中央区)には、約三百種類のエコバッグが並ぶ。色や柄も多彩で、ファッションアイテムとしても良さそうだ。担当の西山舞さん(34)は「レジ袋有料化の話が出てから、次々と新しい商品が出ている」と話す。
 特に人気なのが、日常的に持ち歩くことを想定した、小さくて軽いタイプ。「NANOBAG」という製品は広げた状態で縦六十センチ、幅四十三センチになるが、生地が柔らかいため縦七センチ、幅五センチの小袋にしまうことができる。重さは二十グラムほどで、三十キログラムの重さに耐えられ、まとまった買い物でも大丈夫だ。
 有料義務化はスーパーだけでなく、コンビニも含め全ての小売店が対象で、コンビニ弁当をすっぽりと入れられる、底の広いタイプも売れ筋。レジかごにセットして商品を入れ、そのままリュックサックのように背負えるバッグも、子育て世代に人気という。二酸化炭素(CO2)の吸収力が高いジュートを使うなど、バッグの素材で環境配慮をアピールする製品もある。
 昨年四月の店舗リニューアルに合わせて商品数を増やし、昨年一年間の売り上げは前年の約八倍に。「プラスチック問題への意識が高まる中、何か行動を起こしたい人が一歩を踏み出すきっかけになっているのでは」とみる。
 レジを通した商品を入れ、そのまま持ち帰れる「マイバスケット」にも注目が集まる。スーパーなどの買い物かごとほぼ同じ大きさ、形状で、袋に詰め替える作業が不要。袋に比べ、商品を傾かせずに運べるといった利点もある。
 レジ袋削減の一環で二十年前から製造している岐阜県笠松町の「スーパーメイト」には各地のスーパーなどから「扱いたい」との問い合わせが相次いでおり、マイバスケットの売り上げは商品によって二~五割ほど増えたという。
 取締役営業部長の高橋則雄さん(64)は「有料義務化で、ようやく『何とかしよう』と動きだす企業が増えてきた」と話す。


(左)手のひらサイズの小袋に入った「NANOBAG」 (右)広げると縦60センチ、幅43センチになる。重さは20グラムほど


◆コンビニ動く
 これまで有料化に積極的ではなかったコンビニでも対応の動きが広がる。ミニストップは昨年六月から千葉市内の直営店二店舗で、レジ袋を一枚三円で提供する実験をスタート。四日からさらに店舗数を増やした。セブン-イレブン・ジャパンは一月、有料義務化を見据え、広げればエコバッグとして使えるハンカチを東京都内の店舗で発売した。
 すかいらーくグループは昨年十二月、運営するガストやジョナサンなどのレストランで順次、テークアウト用のレジ袋を石油由来から、100%植物由来のバイオマス素材に切り替えた。
◆基本のポイントQ&A

 Q なぜ、有料義務化?
 A プラスチック製のレジ袋は、石油から作られ、自然界では分解されません。近年、その一部が海に流れ込み、環境汚染を引き起こしていることが世界で問題視されています。環境省の資料によると、海外では規制が広がり、ケニアでは二〇一七年、プラ製袋の生産や使用に対して最高四年の禁錮刑か四万ドルの罰金を科す法律が施行されました。
 国連環境計画(UNEP)によれば、日本の国民一人当たりのプラ容器包装ごみは、米国に次いで世界で二番目の多さ。国は昨年、三〇年までに使い捨てプラを25%削減することなどを打ち出し、取り組みの一環としてレジ袋の有料義務化が決まりました。
 Q どんな店が対象?
 A 容器包装リサイクル法の省令改正により、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなど、全国の全ての小売業者に義務付けられます。小売業がメインでなくても、例えば、美容サロンが商品を販売し、袋を使えば、対象です。ただ、単発的なフリーマーケットへの出品など事業と見なせない場合は対象外です。
 Q 全てのレジ袋が対象になるの?
 A 国のガイドラインの定義では、まずプラスチック製であること。また、商品を入れる袋で、持ち手があることなどを挙げています。このため紙袋や、生鮮食品などを入れる持ち手のない袋は対象外です。
 ほかに例外が三つあります。一つ目は厚みが〇・〇五ミリ以上の袋。簡単に破れないので繰り返し使えることから、使い捨てには当たらないという考え方です。二つ目は「海洋生分解性プラスチック」を100%使用した袋。微生物の働きなどで海で分解されるプラスチックのことです。
 三つ目はサトウキビやトウモロコシなど、動植物由来のバイオマス素材を25%以上使ったもの。バイオマス素材は、成長する過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、燃やしても温室効果ガスの増加にならないという考え方に基づきます。
 三つの袋ともその旨をマークなどで示し、海洋生分解性プラスチックとバイオマス素材の袋については第三者機関の認定を受ける必要があります。
 Q 袋はいくら?
 A ガイドラインでは、価格は一円以上で、事業者の判断で設定することになっています。既に有料化を導入している小売店では一枚当たり二円や三円、五円といった価格が多いです。
 あくまで袋一枚につき、料金を取ることがルール。袋を辞退した客に値引きをしたり、ポイントを付与したりする方法などは有料化とは見なされません。自治体のごみ袋を店がレジ袋代わりにサービスで渡しているケースもありますが、これも有料化の対象となります。


◆プラごみ問題 皆で考えて識者
 有料義務化を、消費者はどう受け止めればよいのか。環境経済学が専門の細田衛士・中部大教授(66)は「使い捨てのライフスタイルを変える小さな一歩になる」と期待。一方、「レジ袋をやめれば問題が片付くわけではない」と指摘する。
 細田さんによると、国内のレジ袋は年間二十万~三十万トンとされ、プラごみ全体の2~3%程度。さらに、プラ製のエコバッグをすぐに捨てたり、市販のプラ製袋をレジ袋代わりに使い捨てたりすれば、かえって環境への負荷が大きくなる可能性もある。また、プラ包装は食品の保存性を高め、食品ロスの削減に役立っているとの見方もできる。
 「本当に問題解決になるのか、全体をよく俯瞰(ふかん)して見ることが大切だ。レジ袋有料化を一つのきっかけにして、プラスチック問題解決への道筋を皆で考えていく必要がある」と話す。


今日のお散歩。

 


トランプに握られた日本人の胃袋 (3)

2020年02月06日 | 食・レシピ

GM作物は子供が好む菓子に含まれているがなぜか表示はない
        日刊ゲンダイ 公開日:2020/01/22


 昨日は、日本が中国に次ぐ遺伝子組み換え(GM)作物の輸入大国であることを書いたが、ほとんどの人は自分がGM食品を食べている意識はないだろう。なぜなら「遺伝子組み換えでない」という表示は見ても、「遺伝子組み換え」という表示は見たことがないからだ。

 日本の輸入トウモロコシは約1600万トン。うち9割がアメリカに依存し、ほとんどは遺伝子組み換えだ。結果、日本は世界一のGMトウモロコシの輸入大国である。

 輸入トウモロコシは、そのうち65%は飼料用で、35%(約560万トン)は人間の口に入ると書いた。ただし、そのまま食べるのではなく、57%はコーンスターチ(でんぷん)になる。重量にすると約320万トン。ものすごい量だ。残りはアルコールやコーンフレークなどになる。ちなみに現在、ビールメーカー各社の発泡酒は、遺伝子組み換え由来のコーンスターチから造られている。
コーンスターチがこれほど使われるのは、ケーキ、アイスクリーム、ソース、スープ、ビスケットなど、あらゆる食品に使われるからだ。菓子などのラベルに「ぶどう糖果糖液糖」と表示されているのを見たことがないだろうか。この原料の9割がコーンスターチだが、商品には「遺伝子組み換え」の文字はない。

■消費者に極力“見せない”仕組みの数々

 では、GMトウモロコシはどこかに消えたというのか。そこには巧妙な仕掛けがある。

 まず、家畜のエサには表示義務がないから、GMトウモロコシやGM大豆で育てた牛や豚の肉、さらに牛乳や乳製品なども表示しなくていい。

 油や醤油のような液体も、検査できないという理由で表示義務なし。コーンシロップや果糖、ぶどう糖、水あめなどの甘味料もそうだ。
加工食品で表示義務があるのは、大豆が原料の豆腐や納豆など、トウモロコシ原料のコーンスナックやポップコーンなどといった33の食品群のみで、それ以外は対象外。なぜかコーンフレークも表示義務がない。

 それだけではない。加工食品で表示義務があるのは原材料のうち上位3品目だけ。たとえばチョコレートの原材料はカカオ、小麦粉、砂糖だから、4番目にGMトウモロコシ由来の水あめが入っていても表示する必要はない。子供が好きな菓子類のラベルを見ると、半分以上がGM作物からできているが、こうした抜け穴のせいで表示されない。

 さらに昨日書いたように、日本は「重量の割合が5%以上」にしか表示義務がないから、コーンスターチでも少量ならOKというわけだ。この国は表示義務があるように見せながら、極力見せない仕組みができている。誰が考えても、変だろう。


子供には食べさせたくない 高カロリーな異性化糖入り菓子
  公開日:2020/01/23


 この国は、遺伝子組み換え(GM)作物を使った食品には表示義務があるように見せかけて、なんだかんだと抜け道をいっぱいつくって、米国同様に表示しなくてもいいようになっている。

 そんな中で、「GM」と表示されないが、子供たちに食べさせたくないのが異性化糖だ。異性化糖とは、GMトウモロコシから作られたコーンスターチを原料にした高カロリーの甘味料のことである。

 子供たちが好きなお菓子の箱に書かれた原材料名を見ると、小麦粉などに次いで、植物油脂、果糖ぶどう糖液糖、デキストリン、でんぷん、タンパク加水分解物、調味料(アミノ酸)、乳化剤などと書かれている。実はこのほとんどがGM作物から作られている。

 タンパク加水分解物と乳化剤はGM大豆から、それ以外はGMトウモロコシからだ。これほどたくさん使われているのに「遺伝子組み換え」と表記されていない。
トウモロコシにはでんぷんとタンパク質が含まれていて、でんぷんはコーンスターチをはじめ、異性化糖、ぶどう糖、果糖など糖類の原料になる。水あめやデキストリン(食物繊維不足を補う目的で作られたが増粘剤として使われる)もそうだ。タンパク質は、タンパク加水分解(うま味を添加する)に加工され、調味料になる。

 それはさておき、この中に「果糖ぶどう糖液糖」というのがある。どういうわけか、天然甘味料と書かれていることもある。これは、糖のうち果糖の割合が50~90%未満の異性化糖で、もし順番が違って「ぶどう糖果糖液糖」となっていれば、果糖が50%未満の異性化糖だ。炭酸飲料やジュース類、スポーツドリンク、ジャム、ケチャップなど、あらゆる食品に使われている。

■米国でも禁止の動きなのに、野放し状態

 さて、問題はこの異性化糖が、摂取量によって肥満、高血圧、糖尿病の原因になるとわかって大きな問題になっていることだ。果糖は肝臓で代謝されて中性脂肪などに変換されるため、余ったものは脂肪として蓄えられるからだろう。
「果糖は果物の糖なのに、どうして健康に良くないの?」と思うかもしれない。果物や野菜から取るときはゆっくり吸収されるので心配する必要はない。問題は異性化糖なのだ。

 かつてメキシコは痩せた国民が多かったのに、いまは男も女もプロレスラー並みの巨体が多い。世界一のコーラ消費国になったことと関係があるのだろうか。

 米国では異性化糖の使用を禁止する運動が広がっているが、日本は今も野放しの状態なのだ。


日本は食べ物に関しても米国に何も言えないという現実
  公開日:2020/01/24

 これまで遺伝子組み換え(GM)作物がどれだけ怖いかを説明してきた。だからこそ、GM作物に対する反対運動は世界中に広がり、日本国内でも多くの団体が反対運動を続けている。しかし厚生労働省はそうではない。GM作物とアレルギーに関しても「アレルギーを起こすような作物は市場に出回らない」と否定し、GM作物そのものも安全性に問題ないとして流通・販売を認めている。

 ちなみに厚労省が安全であるとする根拠が「実質的同等性」という概念だ。これは、GM作物が、昔から食べられてきた元の作物と、形、主要成分、性質などがほぼ同じであれば安全であるという考え方である。

 1992年に父親ブッシュ政権下の米国政府が、GM作物の安全性を評価するためにつくった概念で、のちに世界標準にしたものだ。これによって政府による安全性試験は不要とされた。つまり、認可してほしいバイテク企業が安全性試験をし、そのデータを添付して申請すればいいというわけだ。本来は国民が毎日食べる物なのだから、むしろ医薬品以上に厳格な検査をするべきなのに、あまりにもずさんというべきだろう。

■EUとの違いは歴然

 そんな米国基準に真っ向から反対したのがEUであり、日本は言われるまま追随してきた。そんな背景には、日本の食料自給率が4割程度と低く、重要な穀物類の大半を米国に依存している事情がある。要するに、米国に胃袋を握られた日本は、米国が機嫌を損ねて輸出をストップしたら、家畜のエサすら足りず、国内の畜産が一気に崩壊する。多くの食品業界も致命的な打撃を受ける。だから米国の言うことには逆らえないのだ。

 一方の米国にとって、食料は武器と同等であり、安全保障の要なのだ。このことは、食料を売りたい米国の巨大企業の利益とも一致した。だからこそ農家に巨額の補助金を出して安い農産物を輸出し、相手国の胃袋を握ろうとする。それが米国の国家戦略であり、もっともカモにしやすかったのが日本だったのだろう。
GM作物の恐ろしさを一番知っていたのは、開発したバイテク企業かもしれない。

 1999年にAP通信が、遺伝子組み換えを研究しているバイテク企業の食堂ではGM食品が禁止されているというニュースを配信した。バイテク企業は否定したが、AP通信は記事を取り消していない。何を恐れたのか不明だが、そんなものが毎日のように日本へ輸出され、日本人はそれを毎日消費せざるを得ない状況なのだ。


今季一番の寒さだったかどうか?

 


雨宮処凛 生きづらい女子たちへ90

2020年02月05日 | 自然・農業・環境問題

20年以上前の言動を「徹底総括しろ」と言われたら
  Imidas 連載コラム 2020/02/05


 それは元衆議院議員・三宅雪子さんの訃報。1月2日、東京湾付近で遺体で発見されたという。入水自殺とみられ、6日になってからメディアで報じられた。
 私は三宅さんと親しかったわけではない。集会か何かでお会いした際、挨拶を交わした程度だ。しかし、問題意識が近いと勝手に感じていたし、私の記事などをリツイートしてくれることもあった。その三宅さんが「自殺」と聞いて、目の前が暗くなった。
 三宅さんの死をめぐる報道では、彼女がネットでのバッシングや誹謗中傷に悩んでいたらしい、ということも報じていた。詳しいことはわからない。が、親しい人にそんなことを打ち明けていたようで、相当気に病んでいたようである。もちろん、彼女の死の原因はわからない。が、もしネットでの嫌がらせが彼女を追い詰めていた一因だったとしたら。そこまで考え至って、他人事とは思えなくなった。
 なぜならこの1年以上、私自身、ネットでの自分に関する批判に悩み続けてきたからである。彼女の死を知って、そしてその背景にネットでのバッシングがあったかもしれないと知って、まず私がしたこと。それは、自分が悩んでいる問題について弁護士に相談することだった。このまま放置していたら、ふとした弾みで取り返しのつかないことをしてしまうかもしれない――。三宅さんの死に、私は「他人事じゃない」と震えた。

 どのようなことがあったかを書く前に、私が一番死にたかった時期のことを書きたい。
 それは10代後半から20代前半までのフリーター時代。中学時代のいじめを発端として人間不信となり、生きづらさをこじらせていた私は、25歳で物書きデビューするまでずっと自殺願望の塊だった。リストカットを繰り返し、精神科でもらった薬をたくさん飲んで救急車で運ばれ、胃洗浄を受けたこともある。
 その頃になると、もう生きづらさの原因なんて分からなかった。ただただ生きてることが、息をしていることがつらくて、自分のことが大嫌いだった。信じられる人なんて一人もいなくて、自分を使い捨て労働力としてしか必要としない社会も大嫌いだった。
 そうして、時にそんな使い捨て労働力としてすら、「いらない」と言われてクビを切られた。そのたびにリストカットやオーバードーズをした。何もかもが悪循環だった。そんなふうに世の中への恨みをこじらせまくっていた頃、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた。1995年、私は20歳だった。
「世界を燃やし尽くしてやる」と、当時大好きだった筋肉少女帯の歌詞のようなことばかり思っていた私は、サリン事件に興奮し、連日テレビにかじりついていた。私は一連のオウム事件にハマり、オウムに入りたいとさえ思った。なぜなら、もう自分の足りない頭でいろいろ悩んで苦しむより、手っ取り早く誰かに洗脳してほしかったからである。誰にもどこにも必要とされない「こっちの日常」より、オウムの世界観にハマれば「生きる意味」が手に入る気がしたからである。

 そうして事件後、私は脱会したオウム信者たちのイベントなどに通うようになる。例えば当時、「サブカルの聖地」と言われたトークライブハウスの新宿ロフトプラスワンでは、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』とオウムをテーマにしたイベントなんかをやっていて、脱会した信者たちも出演していた。
 私はそんなイベントに通い、脱会信者たちと仲良くなり、彼らと朝まで語り合ったりした。それまで私の周りには深い話ができる友だちが一人もいなくて、だけど元オウム信者たちとは意気投合した。自分の生きづらさや「生きづらい社会の仕組み」なんかについて思う存分語り合った。
 ということを、私は自分の本でも書いてきたし、言ってきた。が、1年ちょっと前、そんな私の当時の発言が切り取られて一気に拡散。大きな批判を受けたのだ。
 その発言とは、私がデビューする前、「自殺未遂者」の一人として応じたインタビュー記事である。ある女性ライターのインタビューに答え、私は以下のように語っている。話の流れでオウムへのシンパシーについて問われた時だ。
〈ムチャクチャありますよ。サリン事件があったときなんか、入りたかった。「地下鉄サリン、万歳!」とか思いませんでしたか? 私はすごく、歓喜を叫びましたね。「やってくれたぞ!」って〉
 この発言については、本当にバカだったとしか言いようがない。

 当時の私は、自分が死にたいことばかりに目が行って、世の中を恨みまくっていた。被害者のことなんて、これっぽっちも考えていなかった。インタビューに応じたのは98年。私は23歳で、自分がその後、物書きデビューするなんて露ほども想像しておらず、どうせ数年以内に自殺するんだろうと思っていた。
 しかし、この「自殺未遂者として受けたインタビュー」は、書籍として残ることとなった。なぜなら翌99年、私にインタビューをした女性が27歳の若さで亡くなったからである(この辺りの話については、本連載の「AVで処女喪失したあの子の死 」で読んでほしい:『「女子」という呪い』雨宮処凛著 にも収録されています【編集部】)。そうして2002年、彼女の死について書かれた『井島ちづるはなぜ死んだか』(河出書房新社)という本が出版された。その本に、私へのインタビュー記事が彼女の「生前の仕事」として収録されたのだ。
 当時、すでに私は物書きとしてデビューしていた。しかし原稿チェックの段階で、私は自分の愚かすぎる発言を直さなかった。それは書き手が亡くなっていたからで、死後に直すのは何か卑怯な気がしたからである。
それが発言から20年以上の時を経て、ネットで「炎上」したわけである。きっかけはあるライターの方がその記事をネットで引用し、それを別のジャーナリストの方が引用したことで、一気に拡散した。切り取られた言葉は瞬く間に広まり、「許さない」「徹底総括しろ」などの声が私のもとに届くようになり、それは今も続いている。

 ことあるごとにその手の発言が引用され、あっという間に1000を超えてリツイートされることもある。切り取られた言葉を見て、「20数年前のデビュー前に自殺未遂者としてインタビューを受けた発言」ではなく、最近の発言と思い込んでいる人もいる。また、その発言をもって、私の講演会に「中止しろ」という抗議が来たこともある。
 それに対して私はただただ沈黙してきた。なぜなら、拡散されているのは「デマ」ではないからだ。デマや事実無根のことであれば、いくらだって反論できるし、法的対応ができる。

 しかし私の場合は、20数年前とはいえ自分自身の発言なのだ。いくらそれが「自殺未遂者」として、デビュー前の自分が受けたものだと言ったところで、何もできないのではないか。
 しかし弁護士に相談すると、デマではない場合でも、法的な問題になる場合があることを知った。その言葉を聞いた瞬間、真っ暗闇の中、わずかな光を発見したような気持ちになった。こんなバカな自分でも、少しは守られるかもしれないのだ。法的な対応ができるのだ。なぜもっと早く相談しなかったんだろう。そう思った。
 2019年10月28日付の朝日新聞記事「ネットの中傷、被害深刻 実名さらされた子、外出もできず 」によると、ネットの中傷・トラブルとしてよくある相談例は〈1 現実でのいざこざ ・いじめ ・特定の企業・人物をおとしめるため、ライバルがデマ・悪評を投稿 2 過去の行為 ・暴走族に入っていた過去や「バイトテロ」をした事実が残り続ける……〉だという。
 私の場合、まさに過去の言動だ。

 それに対してこの1年以上、「徹底総括しろ」などと、まったく知らない人たちからネットで言われてきた。それに対してどうすればいいのか、本当に困り果ててきた。
 私自身、今は猛省している。だけどどうすれば「総括」できるのか、どうすれば今は違う、変わったと証明することができるのかと悩み続けてきた。というか、そもそも「総括」とはどうしたら「できた」と認めてもらえるものなのだろう。土下座したら? いや、それとも自殺すればいいのか? 本当に本当に、何度も考えた。今の仕事をすべてやめて「雨宮処凛」と名乗ることもやめ、まったく別の生き方、別の仕事をするしかないとも考えたし、「もう日本にいられないから、どこか別の国に行くしかない」とも考えた。
 それでもまだ、弁護士に相談なんてできなかった。自分にそんな資格はないと思ってたし、自分よりずっと大変な目に遭ってる人がいるとも思った。人から見たらきっと「そんなことで」と笑われると思った。それ以上に、自分がそんな目に遭っているのが恥ずかしくて、情けなくて、すべては身から出た錆だということも惨めすぎて、誰にも知られたくなかった。だけど22年前の自分の発言は、取り消すことができないどころか拡散され続け、多くの人を「許せない」と怒らせているようなのだ。
 「総括」という言葉で思い出すのは、1972年に起きた連合赤軍事件だ。「総括」の名の下にリンチ殺人などが行われ、十数人が死亡している。あの事件において「総括」を求められ、生き残れた人はほぼいない。ほとんどが「総括が足りない」と極寒の冬山の野外で縛られ、また仲間に殴られ、刺され、死んでいった。「総括」は、誰がどうやって何に基づいて「できた」「できない」を判断するのだろう。というか、私に執拗に「徹底総括しろ」と言っている人は、そもそもいったいどこの誰なのだろう?

 考えに考えた結果、私は今、45歳の自分を見てもらうしかないと思っている。25歳で物書きデビューし、今年で20年。そんな自分の大きな転機となったのは、2006年、31歳で反貧困運動に出会ったことだった。
 それまで、信じられる人なんかいなくて、人間なんて最低最悪の存在で、世の中もすべての人もクソなんだと思ってた。だけど反貧困運動の現場で出会った人たちは、違った。生活に困った人、ホームレス寸前の人、路上生活が長く体調を崩した人なんかに当たり前に手を差し伸べ、鮮やかに支援に繋げるプロたち(しかも多くがボランティア)の姿を見て、世界が180度反転するような衝撃を受けた。生まれて初めてくらいに、私は「この世の中って、人間って、捨てたもんじゃないのかもしれない」と思った。
 それから自分も支援に加わるようになってみた。炊き出しの現場で手伝いをしたり、所持金も住む場所も失った人の生活保護申請に同行したり。そしてそんな現場のことを書いてきた。結局、私はそんな活動にハマり、14年間、反貧困の運動を続けている。
 こんな日々の積み重ねが、私にとっての「徹底的な総括」だ。
 思えば、恥多き人生を生きてきた。というか、恥しかない人生だ。だけど私は知っている。これまでの人生で、一度も非難されるべき言動をしたことがないという人など存在しないことを。その中でも、20代の私はブッちぎりで、手のつけようがないほどに愚かだった。しかし、多くの人が若かりし頃、愚かだったことを知っている。そして人間は、「変わる」ということも。愚かだった人が愚かでなくなることもあれば、素晴らしい人格者が金の亡者になることだってある。人は変わる。20年経てば、多くの人は変わる。そして私は、いい方向に変わりたい。

 この経験を通して、改めて、いろいろなことを考えた。
 特に今は、ネットにすべての証拠が残る。SNSをたどれば、何をしていたかもわかってしまう。その上、自分の言葉そのものがネットに残る。そして、文脈もすべて無視して切り取られた言葉が、自分に凶器となって返ってくる。今、私はそれを経験している。だからこそ、伝えておきたい。誰かを匿名で貶めたり、デマを流したり誹謗中傷したりヘイト発言をしている人は、その言葉に20年後、苦しめられるかもしれないと。死を考えるほどに追い詰められるかもしれないと。一生、苦しむ可能性があると。
 私は自分の発した言葉を、一生背負っていくだろう。一方であの頃の、世界をすべて憎んでいた自分の気持ちも決して忘れたくない。なぜなら、あの死ぬほど生きづらかった時期が、書き手としての自分の原点だからだ。
 今日もネットではいろんなことが「炎上」し、誰かが誰かに石を投げている。その石は、もしかしたら次の瞬間、あなたに向かうかもしれない。


 わたしも人は変わりえるものと考える。そのきっかけは大きな力によることが多いと思う。自然災害であったり、身近な人の「死」であったり、「教育」であったり、それは不確定なものではあるが「可能性」を秘めている。自分自身の力ではどうしようもないこともある。多くの経験がものをいうこともある。とにかく「動かなければ」・・・


内田樹 桜を見る会再論

2020年02月04日 | 社会・経済

 BLOGOS 2020年02月01日 

  もうこの話をするのにも飽き飽きしている。「桜を見る会」についての話である。
 どうして「飽き飽き」しているかというと、ふつうの人間の受忍限度を超えて、この話が続いているからである。

 続く理由は簡単で、ふつうは申し開きのできない証拠をつきつけられて「申し訳ありませんでした。私がやりました」として「犯人」が白状して、火曜サスペンス劇場が終わるところで、ぜんぜんドラマが終わらないからである。

 でも、「私がやりました」と言わないというのは、ある意味では「合理的な」ふるまいなのである。

 昔、東京地検に勤めていた友人から、推理ドラマはあれは嘘っぱちだという話を聴いたことがある。検察官に供述の矛盾を衝かれて、顔面蒼白となって、「もはやこれまで」と自白するのは「自分が知性的な人間である」ということにおのれの存在根拠を置いている人間だけだというのである。

「そんな人間は実はめったにいないんだよ。そんなのはね、ウチダみたいな『自分は頭がいい』と思っているやつだけなんだよ。そういうのは、落すの簡単なんだ。供述のわずかな矛盾を指摘しただけで、がたがたっと崩れちゃうから。」

 なるほど。
 だから、ヤクザなんかは供述の矛盾をいくら指摘しても、平気で、「オレ、そんなこと言いましたっけ。あ、それ間違いですから、消しといてください。今日話したのがほんとの話です」と済ませてしまうのだそうである。

 彼らは供述の矛盾や変遷は、それだけでは有罪性の根拠とならないことをよく知っている。
 だから、誰も信じないようなでたらめを言い続ける。「そんなことあり得ないだろう!」と怒っても、「世の中、そういうことがあるからびっくりですよね」と平気で言う。

 自分は矛盾とか、因果とか、蓋然性とか、そういうことはぜんぜん気にならない人間なんです。「ふつうに考えて」という想定ができないんです。「論理的に言って」ということがわからないんです。
 そう言い続けると検察官に「敗けない」ということを彼らは知っているのである。

 自分の知性が健全に機能していないということを「切り札」にしている人間を「理詰め」で落とすことはできない。
「桜を見る会」の国会審議でわれわれが見せられているのは、「ヤクザと検察官」の戦いのひとつの変奏である。

 官僚たちも政治家たちも、平然と自分の知性がふつうに機能していないことを認めている。

「桜を見る会」の招待者名簿にしても、ホテルニューオータニの「前夜祭」領収書にしても、それを「はい」と提示すれば、首相の潔白が満天下に明らかになる文書を、なぜか官僚たちも安倍講演会の人たちも、全員があっという間に捨ててしまった。それが「桜を見る会」と「前夜祭」の合法性を何よりも雄弁に証明できる書類である以上、仮に廃棄期限が来ても、官僚でも後援会員でも少しでも論理的に思考できる能力があるなら、「もしものことがあったら困るから、一応とっとこう」と思うはずである。

 そう思った人間がなんと一人もいないのである。
 つまり世にも例外的に頭の悪い人たちだけで内閣府や安倍後援会は組織されていたというきわめて蓋然性の低い主張によって、首相は「不正が証明できない以上、私は潔白だ」という言い続けているのである。

 こういうドタバタがもう3ヶ月も続いている。
 もう終わりにしたいと思う人は自民党内にもいるらしく、先日は参院自民党に示達された「招待者名簿は公開請求の対象であるので取り扱いに注意」という内部書類が共産党議員によって委員会で暴露されてしまった。

 だが、これほど「申し開きのできない証拠」を突きつけられても、首相の「申し開き」は続いている。

 首相は数日前に、招待者について「幅広く募っているという認識」ではあったが、「募集しているという認識ではなかった」という没論理的な答弁をしたが、今回は招待者名簿について「公開の対象とは書いてるけど、公開されるとは書いてない」という小学生のような答弁をしてみせた。

「開示請求があった場合に公開しなければならない」という注意なのだから、要するに「人選には配慮すること。開示請求があったときに『捨てました』というような無様なことがないようにちゃんと管理すること」というお達しである。自民党総裁としては自民党が示達した注意を二つながらまるまる無視して招待者を選定した上に、書類をさくさくとシュレッダーにかけた内閣府の役人については殺してやりたい「気分」になっていいはずだが、そんな気配もない。

 首相は「自分は論理的に思考しないので、『論理的にあり得ない』ことがあっても別にそれが不思議だと思わない。言葉の語義はわかるけれども、それが含意しているコノテーションはわからない」という「おのれの知性が普通の人よりも不調である」という主張によって有罪性を免れようとしている。

 裁判において弁護人が被告の「心神耗弱」で無罪を勝ち取ろうとするのと同じである。
 この「愚者戦略」はこれまでのところ成功している。

 それは社会制度は世界どこでも「ふつうの人はわりと論理的にものを考える」ということを基準に設計されているからである。だから、その基準にはずれる人間については対処するマニュアルがないのである。

 これから後も首相は有罪を免れるために、あらゆる「申し開きのできない証拠」に対して、「論理的に思考できないふり、日本語がわからないふり」をしてみせるだろう。

 この成功体験が広く日本中にゆきわたった場合に、いずれ「論理的な人間」は「論理的でない人間」よりも自由度が少なく、免責事項も少ないから、生き方として「損だ」と思う人たちが出て来るだろう。

 いや、もうそういう人間が過半数に達しているから、「こういうこと」になっているのかも知れない。


  久しぶりの大雪になった。家の前と江部乙のママダンでの除雪作業で、大方、今日の目標歩数は確保できそうだ。まだ降っているのでまた夜に作業しなければならない。というわけで今日のお散歩話(は無し)。


雨宮処凛がゆく!第509回:相模原事件裁判、1月20日・24日傍聴記録。の巻

2020年02月03日 | 社会・経済

「戦争をなくすため、障害者を殺す」「幸せになるための七つの秩序」。


   「戦争をなくす」「世界平和のため」。その日の法廷で、何度か耳にした言葉だ。
 同時に多く耳にしたのは、大学のフットサルサークル、バーベキュー、スノーボードという「青春真っ只中」な言葉たち。そんな言葉の合間に、「意思疎通ができない障害者を殺す」という言葉がぬっと顔を出す。何度も、何度も。2度目に傍聴した裁判で、私はさらに混乱した。
 1月20日、横浜地裁101号法廷。この日、午前10時30分から午後4時45分まで、相模原事件の第6回公判が行われ、傍聴した。
 初公判では見ることができなかった植松被告の顔を、この日はよく見ることができた。傍聴席に座るとすぐ、右側の入り口から5人の刑務官に付き添われ、手錠をつけられた植松被告が入ってきた。青いトレーナーに黒いズボン、黒い靴に青い靴紐。事件当時金髪だった髪は真っ黒で、長い髪を後ろでひとつに結んでいる。初公判の日(とその翌日)、噛み切ろうとした右手小指には包帯が巻かれている。植松被告が入廷する際、その姿が遺族などには見えないよう、遺族や被害者が座る傍聴席の前には白い幕が張られていた。
 この日は、弁護人によって多くの供述調書が読み上げられた。高校時代の交際相手から始まって、同級生、友人、幼なじみ、果ては植松被告が通っていた理髪店の担当者のものまである。
 それらを総合すると、少なくとも事件前年までの植松被告はごくごく普通の青年だったようだ。小中学校時代は知的障害がある同級生がいたものの、植松被告から差別的発言がなされたことはなく、障害がある生徒を同級生として当たり前に受け入れていたという。小学4年生から高校3年までバスケットボール部に所属し、高校ではクラスのリーダー的存在という証言も。高1の夏、クラスメイトの女の子に告白して交際をはじめ、付き合って1周年の日には指輪をプレゼントしている。それはサイズが合わなかったそうだが、彼女は「嬉しかった」と供述調書で振り返る。また、植松家はオープンな家庭だったようで、植松被告は彼女とデートでどこに行ったかなどを隠すことなく両親に話していたそうだ。和気藹々となんでも語る「友達親子」という言葉が浮かぶ。
 地元の友人たちの証言によると、高校時代までの植松被告は空気が読める明るいタイプで、「ヤンチャ系」だった友人たちからは真面目な雰囲気に見えたという。が、大学生になると髪を染め、刺青を入れ、脱法ハーブを吸ったりと「チャラい」方向に変わっていった。しかし、髪を染めたりタトゥーを入れたりといった行為は若者にはよくあることだ。
 一方、高校時代の交際相手の供述からは、純粋な一面も垣間見える。例えば二人は別れたあとも連絡をたまにとっていたのだが、大学三年生の頃にかかってきた電話で植松被告は「俺、大学生になってから、付き合ってない女と関係を持つようになった。俺は汚れた」などと話していたという。ちなみにこの部分の読み上げを聞いた時の植松は、「いやいや」という感じで首を傾げ、バツが悪そうに笑って否定している様子だった。このように、法廷で読み上げを聞きながら、植松被告が反応する瞬間も何度かあった。
 そんな植松被告が変わっていくのは、やはり事件の前年、2015年頃からだ。
 12年に大学を卒業した植松被告は、自販機に飲み物を補充する仕事をしていた。が、体力的にキツいということで、友人(津久井やまゆり園で働いていた)の紹介で13年、津久井やまゆり園に勤め始める。その頃くらいから脱法ハーブではなく大麻を吸うようになったらしい。
 働き始めた頃は、「年収300万、安い」とぼやきながらも「障害者はかわいい」と友人に言い、また就職で悩む後輩には、「仕事はお金ではなくやりがい」「施設では、刺青がある自分にも障害者はキラキラした目で接してくれる。今の仕事は天職だ」などと語っていたという。しかし、働き始めて2年もする頃には変わっていく。印象的だったのは、植松被告がしきりに障害者を「かわいそう」と言い始めることだ。
 「障害者はかわいそう。食べているご飯もドロドロでひどくて、人間扱いされていない」「車椅子に縛り付けられていて、拷問だ」「重複障害者はかわいそう。親もかわいそう」
 同じ頃、友人たちは一様に、世界の出来事を予言するという「イルミナティカード」について植松被告に聞かされている。
 幼稚園からの幼なじみは、事件が起きた年の16年2月、「相談がある」と電話を受け、以下のような会話を交わしている。
植松 世界に重複障害者は〇〇人、その金を使えば戦争がなくなる。俺は施設で働いてるから政府の代わりに殺せる。600人は殺せる。
友人 障害者が死んでも税金は余らないと思う。
植松 いや、いるだけで迷惑なんだよ、親も迷惑してる。
友人 みんなが迷惑してるとは限らない。
植松 いや、迷惑してるんだよ。自分は選ばれた存在だから。イルミナティカードで救世主と予言されてる。UFOを見た。
友人 都市伝説でしょ? さとくん(友人は皆一様に彼のことをこう呼んでいる)は選ばれた存在でもなんでもない。
植松 成功したら名前も顔も変える。一生遊んで暮らす。100億円もらう。安楽死や大麻合法化などの法律を作る。
 植松被告は、友人たちにこんな調子で電話をかけまくっている。別の友人には、「知ってるか、世界でいくら無駄な税金が使われているか。世界に障害者が〇〇人いて、そのために〇〇円も税金が無駄になっている」「殺せば世界平和に繋がる。トランプ米大統領は殺せば大絶賛する」などと語り、安倍総理に手紙を書いたから聞いてほしいと電話口で読み上げている。これは何人もの友達にやっている。例の「障害者は不幸を作ることしかできません」という手紙だ。
 そうして彼は、友人の一人にこう言っている。
 「安倍総理の許可もらったら実行するよ。お金もらったら遊ぼう」
 あまりの屈託ない様子に、傍聴席で頭がクラクラした。植松被告は本当に、本心から、「事件を起こしたら安倍総理らに褒められてお金をもらえると信じていた」のだろうか? だとしたら、やはり普通の精神状態とは思えない。また、「そんなことしたら捕まるよ」という友人の忠告への答えも妄想じみている。
 「2、3日したら捕まえられて安倍総理に会える」
 結局、2月に手紙を持参して衆院議長公邸前に行き、それがきっかけで措置入院になるわけだが、植松被告は公邸前で、手紙を受け取ってほしいと何度も土下座している。わざわざスーツを着て、ネクタイを締め、「障害者を殺せる」と書いた手紙を衆院議長に読んでもらうために道端で土下座する。やはり正気の沙汰とは思えない。
 また、措置入院が解除された後には、心理カウンセラーにも障害者の安楽死について語り、「誰かがやらなければ」と語っている。ちなみにこの心理カウンセラーは植松被告の両親の知り合いで、小さな頃から家族ぐるみの付き合いをしていたそうだ。植松被告の両親に依頼されて、退院後、電話で話したり、ラーメン屋で会って話したりしていたという。
 「どうしてさとしが?」。カウンセラーがそう植松被告に問うと、イルミナティカードの画像を見せて、語呂合わせすると自分の名前になると言ったそうだ(何かを逆に読むと、3、10、4になり、それが「さとし」と読めるということらしい)。
 「イルミナティは裏で地球を牛耳ってる。高度な宇宙人が関与してる」「イルミナティが政府に手を回して自分を解放してくれる」「コンピュータに脳を移植してもらって不老不死を手に入れる」と熱心に語っている。
 友人やカウンセラーだけでなく、行きつけの理髪店でも障害者を安楽死させた方がいいと力説している。
 また、津久井やまゆり園の同僚には、同僚家族への「養子縁組」の話を持ちかけている。夜勤で一緒になった同僚(ほとんどそれまで話したことがない)と雑談中、同僚の夫の兄弟(?)がベルギーに住んでいると知った植松は興奮し、「今、友人とベルギーに移住したいと考えている」と言い、こう続けたという。
 「絶対に言わないでくださいね。大麻、どう思いますか? ベルギーは大麻が合法だから。でも永住権がいる。養子になれば永住権が取れる。(夫の兄弟?)を紹介してほしい。養子にしてもらいたい」
 それからずっと、フリーメーソンや秘密結社の話をとめどなくしていたという。
 変だと思う。他人との距離感もおかしく、やはり普通ではない気がする。
 法廷での植松被告は、表情の読み取りづらい顔をしていた。少し顎を上げた顔の角度からは「不敵」という言葉が浮かんだ。時々、馴染みの記者とアイコンタクトしたり黙礼をしたりもしていた。
 私は、初公判は傍聴したものの、第2〜5回公判は傍聴できていない。しかし、第6回公判を傍聴して思ったのは、働いて2年目、障害者を「かわいそう」と言い出した時期から、明らかに何かが変わったということだ。
 事件のあった年の2月、植松被告は元交際相手に「重複障害者はいらない」などとLINEを送っている。そこにあった「ドロドロの食事」という言葉を見て、彼女は自身が高齢者介護の仕事をしていた頃のことを思い出したという。ドロドロにしたご飯に、デザートのいちごも混ぜて出していたそうだ。そのことが「この人にとって良いサービスなのか」と疑問だった。だからこそ、植松被告の気持ちが少しわかる気がしたという。高齢者を助けたいという思いで介護の仕事に入っても、理想と現実のギャップを感じていたという。
 それはおそらく、ケアの仕事につくすべての人が感じている葛藤ではないだろうか。そして植松被告はその葛藤に、耐えきれなかったのではないだろうか。葛藤しながら向き合うのではなく、いろんなことをすっ飛ばして、最悪の解答を導き出した。おそらく、葛藤から解放された彼自身は「楽」になっただろう。もしかして、それほどに彼の葛藤は深かったのか。わからない。いくら考えても疑問符ばかりだ。
 そんな第6回目公判の2日後、朝日新聞1月22日夕刊(大阪本社版をのぞく)である言葉に出会った。『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』で大佛次郎論壇賞を受賞した東畑開人氏は、「ケアの価値見失う大きな社会」という記事で以下のように書いている。
 「母親が子供の世話に疲れ果ててしまうとき、教師がうつになって学校から離れるとき、援助者であった人が自分の仕事と利用者を憎むようになるとき、彼らを追い詰めているのは、自身の資質ではなく、社会の歪みだ」
 何かこの言葉に、ヒントがある気がした。
 同時に私たちはこの「失われた20年」の間、「少ないパイを奪い合わなければ生き延びることなどできない」という脅迫に晒されてきた。そんな空気を彼は一身に、誰にも頼まれてないのに勝手に背負っているようにも見えて仕方ない。
 「重複障害者を生かしておくために、莫大な税金が使われています。お金がなくて戦争するなら、もっと考えることはあるはずです」
 彼がLINEで友人たちに訴えていたことだ。戦争に反対して、日本の借金を憂いて、彼は障害者を大量殺戮した。
 植松被告の自宅に残されたメモには、以下のような言葉があった。
 「失敗した憲法に縛られるのではなく、全人類のためにお力添えをお願いします」
 と、ここまでにしようと思ったのだが、ダメ元で行った1月24日の第8回公判も傍聴することができたのでレポートしたい。しかも被告人質問の1日目だ。この日は1日、弁護側からの質問だった。
 ということで、1月24日10時30分、植松被告は手錠を外され、横浜地裁101号法廷の証言台に立っていた。黒いスーツに白いシャツ、ネクタイはしていない。
 「今、どこにいるかわかりますか」
 被告人質問は、弁護士のこの一言から始まった。植松被告は、自分は裁判所にいること、この裁判が19人を殺害した事件の裁判だとわかっていることなどを発言。ハキハキした口調で、声も大きい。
 「この裁判で、弁護側がどのような主張をしているか知っていますか?」
 そう聞かれた植松被告は「心神喪失、心神耗弱による無罪を主張しています」と述べ、続けた。
 「自分は責任能力を争うのは間違っていると思います。責任能力がないものは、即、死刑にすべきだと思うからです。自分には責任能力があります」
 「正しい考えに基づいて行動したということですか」と聞かれ、「はい」と答えた植松被告に、弁護士は3年前、植松被告から渡されたノートの話をした。そこには何が書かれていたか問うと、植松は「より多くの人が幸せになるための七つの秩序」と回答。その七つが「安楽死」「大麻」「カジノ」「軍隊」「セックス」「美容」「環境」であるとスラスラ答えた。
 午前の法廷は、この「七つの秩序」についての質問となる。
 まず「安楽死」について問われると、植松被告は「意思疎通のできない人を安楽死させるべきです」と事件時と変わらない主張をした。
 なぜか、という問いには待ち構えていたように「無理心中、介護殺人、社会保障費の増大、難民問題などを引き起こすもとになっていると思うからです」と述べた。暗記して練習していたかのような、畳み掛けるような口調。その後も「家族、子どもが障害を持っていたら守りたい気持ちはわかるが、お金と時間を奪っている限り、守ってはいけない」と主張。
 障害者を安楽死させると世の中はどうなるかと問われると、「生き生きと暮らすのではなく、生き生きと働ける社会になります」と答え、続けた。「仕事をしないから働けなくなったり、ぼけてしまう」「働かない人を守るから働けない人が出てくる。支給されたお金で生活するのは良くないと思います」。
 どうやら植松被告には、「働かざる者人に非ず」というような強い意識があるようだ。が、自身が一時期生活保護を受けていたことについてはどう思っているのだろう。そしてこの3年間、ほかならぬ植松被告こそが税金で暮らしていることを。
 ちなみに「日本は借金だらけで大変」というのは植松被告がよく主張することだが、それを知ったのは、お金が欲しくて世界情勢を調べたことがきっかけだという。津久井やまゆり園で働くうちに、その考えはあるところに行き着く。法廷で、植松被告はひときわ大きな声で言った。
 「重度障害者は必要ないと思いました」
 七つの秩序の二つ目・大麻については、自説を展開しまくった。
 「本当に素晴らしい草で、深く感謝しています。嗜好品として使用、栽培が認められるべきです」
 大麻が禁止される理由を弁護士に問われると、「病気が治ると薬が売れなくなるからだと思います。大麻は250の疾患に聞くと言われています。楽しい心が身体を回復させます」。また、大麻を使うとどうなると問われて「脳が膨らみます」「多幸感を与えてくれます。ビル・ゲイツさんも、『物事を別の角度から見られる人生最大の経験』と言っています」。
 21〜24歳まで吸っていたという脱法ハーブについては「最悪」「バカになってる実感あった」とコメント。大麻は23、4歳から事件まで吸っており、その頻度は週2〜4回だったという。また弁護士に大麻が合法の国について聞かれると、「待ってました」とばかりに「オランダ、ベルギー、アメリカ、カナダ、ブラジル、オーストラリア。医療大麻はロシア、イギリス」などと得意げに国名を羅列するのだった。
 弁護士が話題を「カジノ」に移そうとすると、「大麻についてもう少し話したい」と遮り、「安楽死が認められている国は大麻が合法の国が多い。大麻で考えが深まっているからだと思います」と自説を展開。「日本人も大麻を吸って楽しい生活をすれば安楽死を認めると思います」と述べたのだった。その後、カジノについては、カジノは認めていいものの、「カジノではなく小口の借金が悪いと思った」とよくわからないコメント。
 しかし、このように「七つの秩序」について質問され、一つひとつに答えていく植松被告は得意げな様子だった。彼は、「俺が世界を変える方法」みたいなものを編み出して、こうやってインタビューされることが夢だったのではないだろうか。それが今、変則的な形で叶っているのかもしれない。法廷を見ながら、そんなことを考えた。
 次の「軍隊」について聞かれると、「男性は18歳から30歳の間、1年間訓練すべきだと思います」と主張。そう思ったのは、「韓国の俳優さんを見て、気合い入っててカッコいいと思った」かららしい。「鉄は熱いうちに打てというように、精神が柔軟なうちに厳しい試練を与えれば簡単に心が折れなくなると思う」。(今の日本人は弱いと思うかと問われ)「はい。ひきこもりが多いのも試練を乗り越えていないからだと思います」。(兵役を義務にするとひきこもりが減るかと問われ)「そう思います。身体が健康になれば精神も健康になる」。ここで弁護士に「日本の戦前のようなイメージですか?」と聞かれた植松被告は少し動揺した。「戦争より前? ……ちょっと、勉強不足で、すいません」。兵役と戦前、というのが彼の中ではすぐには繋がらなかったらしい。弁護士が「韓国のイメージ?」と質問を変えると「そうです」と頷いた。肉体、精神を鍛えている韓国男性を見て憧れを持ったらしい。
 なんとなく、ひきこもりを否定したり健全な肉体には健全な精神が宿るという言い分であったり、昭和っぽい価値観だが、韓国には肯定的というスタンスだ。
 次のテーマは「セックス」だが、これは弁護士によって「男女について」と言い換えられた。植松はかしこまった感じで「性欲は、間違った快感を覚えると他人を傷つける可能性がある」「避妊をもっと当たり前にする」「ピルがコンビニで買えればいい」と主張。
 その次のテーマは「容姿」だが、弁護士が「女性の体型や容姿」について質問すると、またしても自説が展開された。
 「女性だけでなく、人間は美しい方がいいと思います。美は善良を生み出すと思います。そのために整形の費用を国が一部負担していいと思います。また、子どもは遺伝子を受け継ぐので、交際前に(整形していることを)報告すべきだと思います」。そうして「みんな整形した方がいい?」と聞かれると、「医療脱毛の方が大切かもしれません」と答えた。
 実は植松が裁判にあたって「医療脱毛したがっている」ということを、私は面会している人から耳にしていた。人前に出る機会ということから、おそらく髭だと思うのだが、医療脱毛を希望していたというのだ。この日、植松被告は「一番大切なのは医療脱毛」と強調し、事件の一年前に自身が医療脱毛をしていたことを述べた(そのことは初めて知った)。そんな医療脱毛の感想について植松被告は、「身体が綺麗になり、心も綺麗になったと思います」と述べている。その一年後に事件を起こしているのだが……。
 ここで最後のテーマ「環境」だ。「環境については」と聞かれると、植松被告は理解不能な言葉を口にした。
 「深刻な環境破壊による温暖化防止のために、遺体を肥料とした森林再生計画に賛同します」
 最後に弁護士が、この「七つの秩序」のノートをくれたのは3年前だが、今も考えは変わらないか聞くと、言った。
 「考えが深まりました。どうして大麻と安楽死を認めた方がいいのか、説明できるようになりました」
 そうして午前の法廷は、残り時間30分近くを残して午前11時35分、休廷となった。
 始終、自意識過剰な若者の「俺が独裁者になったら」みたいな稚拙な話に付き合わされている感覚だった。あるいは、「小説も書いてないのに『俺は芥川賞とる』と言い張ってて、インタビューの受け答えの練習のみをしている中二病の友達」の話に延々と付き合わされてる感じだった。が、本人はかなりの高揚の中にいるようにも見え、時々ハンカチで汗をぬぐっていた(法廷が暑いということもあるが)。
 午後、植松被告の話はさらに混迷を極めていく。
 午後の被告人質問が始まってすぐ、なぜ、事件を実行しようと思ったか問われた植松被告は堂々とした口調で答えた。
 「自分が気がついたからです」
 実行は、措置入院中に思いついたという。その頃欲しかったのは「お金」。お金を得るためには「人の役に立つか人を殺すか」だと思ったという。「殺す」という意味について問われると、「詐欺をしたり、覚醒剤を売ったり、安い賃金で働かせたりすることです」という答え。よくわからない答えだが、「障害者を殺すのは役に立つことだと思ったのか」と聞かれ、「役に立つと思いました」と頷いた。が、当然ながら植松被告はそのことによってお金など得ていない。
 「(どうやって誰からお金が入るかなど)細かいことは考えていませんでしたが、お金が入る権利はあると思いました」。
 衆院議長に出した犯行声明の手紙について聞かれると、政府の許可が欲しかったと発言。誰の許可かと問われると、「総理大臣とか偉い人です」。(総理大臣に何を期待してたのかと問われ)「自分の中でいいアイディアだと思ったので伝えたかったんだと思います」。(そもそも政府の許可は必要? と聞かれ)「はい、犯罪だから必要です」と淀みなく答えた。
 その手紙がきっかけで措置入院となるわけだが、入院させられた時の気持ちを聞かれて一言、「ヤバいと思いました」。トイレと監視カメラしかない部屋に閉じ込められ、このまま出られないのではと思ったという。
 そんな措置入院中も、植松は多くの医者、看護師に「重度障害者は安楽死させた方がいい」と主張していた。医者も看護師もその発言には皆、首を傾げたという。それに対して植松被告が述べた言葉に驚いた。
 「重度障害者もいる精神病棟なので、否定できなかったんだと思います。『一理あるな』と感じて頂いたと思います」
 この解釈は、どう考えてもおかしいと思う。一方で植松被告は、退院するための計算もちゃんとしている。
 「(退院するために)礼儀正しく過ごしました。安楽死についても言わなくなりました。そうしたら少しずつ制限が軽くなっていきました」
 そして唐突に、植松被告は言った。
 「今は悪いことの方が儲かるから、悪いことが流行ってるんだと思います。いいことをしても儲かりません」
 弁護士からの質問が、世界の出来事を予言するというイルミナティカードに変わった。植松被告がハマっていたというカードで、この話題になるといつにも増して饒舌になる。どういうことが書かれているか問われると、植松被告は言った。
 「なるほどと思う真実ばかりです。例えば、コマーシャルに出ている俳優の足元に大金があったり。お金を貰えばなんでも話すということです」「他には、『ケチャップは野菜だ』『大切な要求は拳銃を突きつけた方がいい』『日本は滅びる』」。(いつ滅びるか聞かれて)「たぶん今年滅びます。首都直下型地震から、いろいろと問題が起きます」。(ここ横浜でも何かあるかと聞かれ)「原子爆弾落ちてました。たぶん6月7日か9月7日。『闇金ウシジマくん』に書いてありました」
 ほかにカードで書かれていたことについて聞かれ、9・11やビットコイン、トランプ大統領、世界情勢、3・11と答えている。
 そんなイルミナティカードを植松被告は友人たちに興奮気味に話していたようだが、信じる人と信じない人に分かれたという。
 「人生がうまくいっている人はあまり興味を持ちませんでした」
 そういうところは、妙に冷静に観察している。そんなイルミナティカードで、植松被告は特別な存在とされているようだった。「自分をどういう言葉で言いましたか」と問われ、「伝説の指導者になれるかもしれない、と言いました」と言った植松被告は、「ネットに書いてあったんで」と慌てた様子で付け足した。それは本当に素の感じの言葉で、なかば照れたように「いやいや自分で言い出したわけじゃないんで、俺そんな自信家じゃないんで、ほんとにネットに書いてあったんで」という感じで、植松被告がそのカードにまつわるものを心底信じていたことがうかがえた。
 そんなカードにハマった植松被告は、友人たちに「革命を起こす」「障害者を殺す」としきりに言うようになる。50人くらいには言ったという。
 「半分以上に同意、理解してもらいました。自分は冗談をよく言いますが、一番笑いがとれました。真実だったから笑いが起きたんだと思います」
 イルミナティカードを知り、「日本はヤバいと思」ったという植松被告。そして日本が滅びないために、社会に貢献しようと思い立ち、起こしたのがあの事件だった。
 植松被告が措置入院していたのは16年2月。その頃の世の中について聞かれると、植松被告は答えた。
 「ISISが暴れていました。恐ろしい世界があると思いました」
 トランプが選挙に出ていたことにも触れ、トランプ大統領の絶賛が始まった。
 「とても立派な人。今も当時もそう思います」「勇気を持って真実を話しているところです。メキシコ国境に壁を造るとか」(それはいいこと? 悪いこと?と問われ)「わかりませんが、メキシコマフィアが怖いのは事実です」「トランプ大統領はカッコ良く生きてるな、生き方すべてがカッコいいと思いました」「見た目も内面もカッコいい」「カッコいいからお金持ちなんだと思いました」(トランプ大統領の影響を聞かれ)「真実をこれからは言っていいんだと思いました。重度障害者を殺した方がいいと」
 事件を起こすことでトランプから反応があると思ったかについて問われると、言った。
 「あってもおかしくないと思いました。おかげでプーチン(ロシア)大統領から反応をいただけて光栄です」(どんな反応? と問われて)「追悼のお言葉を頂きました」「重大な問題であると伝わったと思います」
 その後、トランプ大統領、プーチン大統領以外で気になる人はと問われ、ドゥテルテ(フィリピン)大統領、金正恩(朝鮮労働党委員長)の名前をあげた。ドゥテルテ大統領が覚醒剤根絶を掲げて売人を殺していることに触れ「覚醒剤を根絶するのは大変な仕事だと思いました」。金正恩につていては「若いのに国を背負っている」、立派だと事件後に思うようになったと言った。
 事件の時期は、トランプ大統領の選挙にも関係していたようだ。選挙が11月なので、その後に事件を起こすとトランプ大統領に迷惑をかけると思っていたという。「トランプみたいな人が大統領になったからこんな事件が起きた、と言われるのでは」という懸念を抱いていたというのだ。一方で、10月1日が「1001」と門のような字面であること(友人が門出の日と言っていたらしい)、自分の貯金残高(これは大事な点だと思う)を考えると、10月までには事件を起こそうと思っていたという。また、普段から「殺す」と言っているうちに、「殺す世界に入っていた」とも言う。それだけではない。あまりにも多くの人に「障害者を殺す」と言っていたことから、そんなことを言う自分が殺されるのではないかとも思い始めたそうだ。
 そうして話題は事件前日から事件当日に触れる。前日、ホームセンターでハンマーや結束バンドを買った植松被告は、都内に一日に二度も出向くなどの行動を取り、事件現場に向かっている。犯行は計画通りだったか聞かれた植松は「ベストを尽くしました」と答えた。
 逮捕され、警察署、拘置所で何かを考えたかと聞かれた植松は、「環境に対して何ができるか、どうすればいい社会になるか、そのときそのとき考えてきました」と述べた。また、持論を展開。人口が増えすぎているので全世界で「二人っ子政策」をすべき、「恋愛学」を義務教育で教えるべき、といったものだ。ちなみに恋愛学とは、恋愛は大切なものなのに何も教わっていないので基本的なことを教える義務があるというもの。内容は、束縛してはいけないとか、浮気されても自分に原因があるなど。
 それ以外にも難民問題、幼児への性的虐待、人身売買、臓器売買などの言葉を羅列し(具体的な内容への言及はない)、「日本のこと?」と弁護士に聞かれると「わかりません」と回答。また、日本には年間8万人の行方不明者がいるということをこの日幾度か強調し、話はまたしても大麻に戻った。大麻とコカイン、覚醒剤は性質がまったく違い、「麻薬」という字が「麻」という字だから大麻が誤解される、「ま薬」にすべき、という主張だ。
 この日の裁判の最後に述べたのは、「被害者遺族に損害賠償請求をされたが彼らは間違っている」「お金や時間を奪っていることを考えないようにしているから客観的視点をもってほしい」「複数の重度障害者家族と会ったが、文句を言っている家族は精神が病んでいる」など。「もし自分に死刑判決が出ても、自分の両親は文句を言いません、仕方ないとわかっているからです」と述べたところで裁判は終わった。
 しきりに汗を拭いていた植松被告。確かに法廷は暑かったが、汗の理由はそれだけではないように思えた。
 法廷の植松被告は、措置入院中にとった作戦のように、終始礼儀正しかった。弁護士から「これから〇〇のことについて聞きます」と言われるたびに「よろしくお願いします」と言い、汗をかいていることを「大丈夫ですか?」と聞かれると「大丈夫です、ありがとうございます」と頭を下げる。言葉使いも丁寧で、ハキハキとした喋り方は面接なんかでは好印象を与えるだろう。
 何より印象づけられたのは、彼は有名人だったり権力者だったりと力を持つ人が大好きなんだということだった。世界各国の大統領などの名を口にして「立派な方」と絶賛し、ビル・ゲイツなど有名人には必ず「さん」をつける。20日の法廷では、「天才・堀江さんは」という言い方もしていた。おそらく堀江貴文氏のことだろう。
 自意識過剰で、目立ちたがり屋で、有名人や権力者が大好きで、そういう人を崇めればおそらく一体化できると感じていて、イルミナティカードなんかの都市伝説が好きで、カッコよくなりたくて、人生がうまくいってなくて何かで一発逆転したくて。そんな若者は、世界中に掃いて捨てるほどいる。が、何をどう間違ったのか、彼はトンデモない一線を踏み越えた。
 あまりにもわからないことだらけだから、私はまた横浜地裁に足を運ぶ。


安倍政権の“検察懐柔”(危なくなってきたからまわりをかためるつもりか!?)

2020年02月02日 | 社会・経済

大どんでん返しの検察トップ人事! 前代未聞の「定年延長」が意味する安倍政権の“検察懐柔”
  文春オンライン 平野太鳳


検察組織は果たして安倍政権の軍門に降ったのか——。
 1月31日、衝撃的なニュースが飛び込んできた。内閣はこの日、東京高検検事長の黒川弘務氏(62)の定年を延長する閣議決定をしたのだ。この極めて異例な「人事介入」は、親安倍派の黒川氏を次期検事総長にすることを事実上意味し、政権が検察を懐柔できるようにしたとの憶測も流れる。

    黒川氏は東京都出身で、東京大法学部卒。1983年に検事任官し、若手有望株として薬害エイズ事件やリクルート事件などの捜査に関与した。さらに、法務官僚のホープのポストである秘書課付や刑事局付を経験した後、司法制度改革を担当するため、内閣官房にも出向した。その後、法務省の幹部としては、刑事局総務課長、秘書課長、官房長を歴任。大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を受けた検察改革でも大きな役割を果たし、2016年に法務省事務方トップの事務次官に就任した。
    しかし、黒川氏には唯一無二のライバルがいた。現・名古屋高検検事長の林真琴氏(62)だ。愛知県出身で東京大法学部卒、同じく1983年任官の林氏もまた、法務・検察組織で若い頃から有望視され、黒川氏と同様、リクルート事件などに関与し、法務省では刑事局付や秘書課付を経験。在フランス日本大使館勤務などを経て、黒川氏の次に刑事局総務課長に就き、その後も人事課長、刑事局長など重要ポストを歴任してきた。
「政治色のないリーダー」として林氏を慕う若手も多かった
 黒川氏と林氏は任官年が同じで、どちらも「司法修習35期」。学年でいうと林氏が1年若いが、同期でどちらが将来の検事総長になってもおかしくないと言われ、検察内では「35期問題」と呼ばれてきた。これまでのポストの経緯をみると、黒川氏の方が若干リードしてきたようにみえるが、検察内部では「最終的には林検事総長じゃないか」との見方も強かった。菅義偉・内閣官房長官など政権中枢に近い黒川氏に比べ、林氏は「政治色のないリーダー」として慕う若手も多いためだ。
そして、今回、その2人が雌雄を決する時が来た。どちらが検事総長になるのか。
 それは、現検事総長の稲田伸夫氏(63)の決断にかかっていた。検事総長の定年は65歳であるため、稲田氏は2021年8月の65歳の誕生日まで総長を続けられる。一方で、検事総長以外の検察官の定年は63歳。稲田氏がこのまま総長を続ければ、黒川氏は2月8日の誕生日で63歳になり、東京高検検事長のまま、定年退職を迎えることになる。

「稲田氏は黒川氏の63歳の定年日より前にやめるつもりはない」
 検察内部でこの意向が明らかになった時、誰もが「黒川検事総長の目はなくなった。とすると、稲田氏は、(7月に63歳の誕生日を迎える)林氏を後任とするつもりだ」とみた。つまり、「稲田氏は、林氏が63歳の誕生日を迎える前にやめる」という構想だ。
 しかし、今回、世紀の大どんでん返しが起きた。内閣が「閣議決定」という形で、黒川氏の定年の半年延長を決めたのだ。発令は2月7日付で、黒川氏の定年は8月7日に延期された。この結果、ライバルの林氏が7月に先に定年を迎える見通しだ。
政府への忖度を期待できる黒川氏の総長就任を望んだ?
 近年の検事総長は、おおむね2年で交代してきており、18年7月に検事総長になった稲田氏も、さすがに黒川氏の定年延長の日の前には後任に道を譲るとみられている。つまり、今回の閣議決定は黒川新総長の誕生を意味するといわれる由縁だ。
 元より、検事総長を任命するのは内閣だ。しかし、これまで検事総長人事は前任の検事総長が決めることが慣例となってきており、今回の閣議決定はそれを妨げる格好になったといっていい。法的には、国家公務員法が「任命権者は、定年に達した職員が退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、定年退職日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる」としており、内閣はこの規定を根拠としたとみられる。
 さらに、関係者によると「昨年末にカルロス・ゴーン被告が国外逃亡しており、東京高検検事長として捜査指揮に関与した黒川氏が引き続き、ゴーン事件の落とし前を付ける」との具体的な理屈もあるようだが(名古屋高検検事長の林氏はゴーン事件の捜査に関与していない)、「安倍政権が政府への忖度を期待できる黒川氏の総長就任を望んだ」ことが背景にあるとの分析もある。
「IR汚職事件も収束に向かうだろう」
 今回の異例の人事に、法曹界では多くの派生した見立てが飛び交う。「政権に近い黒川氏が総長になれば、自民党が主な標的のIR汚職事件も収束に向かうだろう」「検察が事実上、安倍政権の支配下に入ったようなものだ」といった〝悪評〟もあるが、「黒川氏が政権を利用して検察組織のプレゼンスを高めるかもしれない」とその腕力に期待する向きもある。
 しかし、気になるのは、法曹界の人事に対する内閣の関与の度合いがますます強まっていることだ。2017年、内閣が最高裁裁判官に法学者で弁護士の山口厚氏の就任を決めた閣議決定でも、法曹界では「政府提出法案に反対する日本弁護士連合会の推薦弁護士を認めず、弁護士と言っても事実上の『学者枠』の山口氏を選んだ。内閣が日弁連の推薦弁護士をそのまま採用してきたこれまでの慣習が破られ、最高裁裁判官の『弁護士枠』が1人分減らされた」との懲戒的な見方が広がった。
 法曹界の独立、ひいては、検察組織の独立はどうなるのか。東京地検特捜部は今後、政権中枢や与党議員の疑惑をつかんでも捜査しにくくなるのか。あるいは、検察組織は法曹三者の中で存在感を強めるのか。このまま黒川氏が新検事総長になった場合、手腕と動向は大いに注目されよう。


 さっさとやめてほしい安倍だが、しぶとい。ここまでやるとは。

今日のお散歩

 畑にはウサギの足跡がたくさん

 


トランプに握られた日本人の胃袋(遺伝子組み換え)

2020年02月01日 | 食・レシピ

米国の遺伝子組み換え穀物に賛否 何が不気味で問題なのか
  日刊ゲンダイDIGITAL 2020/01/15


 米国から輸入される不気味な食品は、なにもホルモン漬けの牛肉だけではない。肯定論、反対論いろいろある遺伝子組み換え(GM)作物もけっこう怖い。
そもそも作物の遺伝子を換える必要性はどこにあったのだろうか。

 本来、私たちが食べている作物は何千年もかかって品種改良をしてきた。たとえば、イネの野生種は小さな種をつけた雑草のような植物だったのを、人間が1万年以上かけて改良したのだ。ところが、1970年代になって遺伝子を組み換える技術が実用化されたことからこの流れが変わった。植物も動物と同じで、細胞の中にある遺伝子がその生物の形や性質を決める。つまり、遺伝子を換えれば植物を思い通りに変えられるというわけだ。

 96年、この技術を使って、あらゆる雑草を枯らしてしまうラウンドアップという除草剤に耐性のある大豆とトウモロコシが作られた。
 ラウンドアップは、雑草だけでなく穀物も枯らしてしまう強力な除草剤だ。まるでベトナム戦争で使われた枯れ葉剤のようなものだが、製造したのが枯れ葉剤を作っていた企業である。だが、穀物までが枯れてしまったら元も子もない。そこで、遺伝子を組み換えることでラウンドアップに耐性のある穀物を作った。そしてこの穀物のタネと劇薬の農薬をセットで売ったのである。

 同時期に、害虫が作物をかじると死んでしまうように遺伝子を組み換えたタネも販売された。害虫が感染して死んでしまう細菌の遺伝子をトウモロコシに組み込み、穀物が自ら殺虫成分を作るようにしたのだ。

 現在この2種類が遺伝子組み換え作物の主流になっている。

 農作物を育てた経験のある方なら分かるだろうが、一番厄介で手間がかかるのが害虫や雑草の駆除だ。放っておくと作物が育たなくなる。それが米国のように広大な農地となると、生半可ではない。その点、飛行機から劇薬をまいて雑草だけを全部枯らし、害虫が農作物をかじったらコロッと死んでくれたら、こんな楽なことはない。というわけで、またたく間に拡大していった。
 しかし、猛毒の除草剤を大量にまいたら、それに耐えたトウモロコシや大豆に残留する。当然これを食べれば人間の体に入る。念のためにいうが、この残留農薬は洗っても落ちない。また、昆虫が食べたら死ぬような穀物を、人間が食べて大丈夫だろうかという素朴な疑問も湧く。そんなGM作物が日本に大量に入っていて、さらに拡大しようとしている。「不気味」だけでは済まない問題になっている。


知らずに大量に食べている遺伝子組み換え穀物の危ない事実
  公開日:2020/01/16


 前回は、危ない遺伝子組み換え(GM)作物がなぜ生まれたのか、その経緯を書いた。別に遺伝子なんて組み換えなくても、従来の大豆やトウモロコシで十分なのに、なぜみんなが不安になるようなGM作物なんて作ったのかと思うかもしれない。

 それには米国の企業風土が大きく影響している。企業利益至上主義の米国では、作物以外の雑草をぜんぶ枯らし、害虫を寄せ付けないGM作物は、生産量も上がって効率的だし、大規模栽培に便利だからである。だから反対意見があっても、大規模農家はそれに目もくれずに普及させた。いまや米国は、GM大豆の作付面積が94%、GMトウモロコシは92%と、勝利を目前にしている。

 日本は、穀物としてのトウモロコシはほぼ全量輸入だ。年間1600万トン。このうち9割をアメリカに依存し、ほとんどが遺伝子組み換えだ。65%が家畜の飼料で、残りはコーンスターチのほか、コーンフレークや甘味料となって日本人の胃袋に収まる。
 また、日本の大豆の自給率もたった6%で、ほとんどが輸入。輸入大豆の7割、230万トンが米国からだ。もちろんほぼGM大豆。7割弱から油を搾り、搾りカスは牛などの飼料になる。残りの大半は食用だが、このうち米国産GM大豆は約52万トン。ぞっとする数字だ。私たちは知らないうちに、GM大豆を味噌、醤油、豆腐、納豆などで食べている。

 国民が不安に感じているGM作物について、日本の厚労省は、食べても胃と腸で全て消化されるから問題はないとしている。その後、イギリスの研究グループが、人工肛門の患者で人体実験をしたところ、便の中にGM大豆のDNAが分解されないまま残り、除草剤に耐性となった腸内細菌も検出された。

 人間の腸には100兆個といわれる細菌がすんでいる。この細菌は人類が誕生したときから人間と共生してきた。今ではこの細菌は腸に入ってくる化学物質を無毒化したり、胃や腸で消化できなかった繊維やでんぷんを消化したり、ホルモンを作ったりしている。もっとも重要なのは免疫に関わっていることだ。
 しかし、除草剤耐性菌などが増えて腸内のバランスが崩れると薬物アレルギーや食物アレルギーなどを引き起こし、免疫疾患やぜんそく、肥満、自閉症といった現代病の発症につながるといわれている。

 遺伝子組み換え作物と人体の健康のことをさらに掘り下げていきたい。


GM作物の毒性は2年間の実験で分かるのに行われない不可解
 公開日:2020/01/17

 遺伝子組み換え(GM)作物について、多くの人が不安に感じているのは、人間が食べて大丈夫なのだろうかということだろう。

 なかでも関心が高いのが発がん性だ。では、本当にがんになるのかといえば、よくわからない。通常、食べ物の毒性はラットに食べさせて実験する。これは遺伝子組み換え食品でも同じだ。ただし毒性試験は90日間。これを人間に当てはめれば、通常はわずか10年にすぎない。

 がん細胞が発生して、がんの塊になるまで20年以上かかるといわれる。だったら人間の一生に相当する期間をラットに食べさせればいいじゃないかと思うが、実はこれが莫大なお金がかかる。だから企業はやらない。

■唯一、仏の教授が挑戦した結果は

 ところが、それにチャレンジした人物がいる。
2012年、フランス・カーン大学のセラリーニ教授だ。世界で初めて遺伝子組み換えトウモロコシの毒性を確かめる長期実験を行った。実験に用いたのは強力な除草剤に耐性のある遺伝子組み換えトウモロコシ。これをラットに2年間食べさせた。2年間というのはラットの一生である。

 結論からいうと、除草剤を使って栽培した遺伝子組み換えトウモロコシを与えたラットは、そうでないトウモロコシを食べたラットの2~3倍の腫瘍ができた。また腫瘍が発生するスピードも違っていて、普通のトウモロコシを食べたラットも晩年になると腫瘍ができたが、遺伝子組み換えトウモロコシを食べたラットは4カ月目に腫瘍があらわれ、11カ月目から爆発的に増えた。とくにメスは乳房に腫瘍が多発したという。

 この実験はGM推進派を驚かせ、セラリーニ教授に猛烈な抗議が寄せられ、掲載した学術雑誌はこの論文を取り消すという騒動に発展。最終的に別の学術雑誌に掲載されたが、論文を批判する前になぜ追試験をしなかったのか。誰もが疑問に思うはずだが、誰も追試験をしなかった。お金がかかるから。人間の安全よりもコストなのだ。
 セラリーニ教授は「腫瘍は必ずしもがんではない」と語っているし、ラットに腫瘍ができたからといって、人間にもできるとは限らない。ただ人間に近いラットで腫瘍ができれば、人間にも腫瘍ができる可能性を否定できないということだ。

 危険かどうかはっきりさせたいというなら、人間に長期間食べさせることだ。いや、冷静に考えれば、大量のGM作物を食べている日本人は“ただいま人体実験中”なのかもしれない。もちろん毒性がわかったときは元に戻せない。それが嫌なら、疑わしき食べ物は避けるしかない。


遺伝子組み換え表示を隠蔽…輸入大国日本の緩すぎる基準
 公開日:2020/01/21

 今週も、遺伝子組み換え(GM)作物の話を続ける。その評価はいまだに「危険」と「安全」の真っ二つに分かれているが、何度も書いてきたように、GM作物が人間にとって有害か安全かを立証することはまず不可能である。

 とすれば、何を信じるかだろう。GM作物が安全だと思うなら、どんどん食べればいい。危険だと思えば食べなければいい。少なくとも、GM作物であることを隠蔽して食べさせることは絶対に許されない。ところが、日本は巧妙に隠蔽しているとしか思えないから問題なのだ。

 EUでは、GM作物が占める割合が0・9%以上の食品に表示を義務付けたところ、GM食品はパタッと売れなくなった。実際、フランスのスーパーに行っても「GM」を表示している食品示義務がないなどの抜け道をつくったために、事実上の「非表示法」だといわれている。

■米国では事実上の「非表示法」

 米国では表示義務はなかった。バーモント州で牛乳に遺伝子組み換え成長ホルモンが入っているかどうかの表示を義務付けようとしたら、バイテク企業から訴えられて、州は表示義務を断念。また、オバマ大統領の時代に連邦政府はGM食品の表示を義務付けたが、QRコードを入れれば表示義務がないなどの抜け道をつくったために、事実上の「非表示法」だといわれている。
 「遺伝子組み換え」の表示に抵抗するのは、表示すれば買ってもらえなくなるからだ。そんな米国に忖度したのか要求されたのか、日本では「遺伝子組み換え原料使用」なんて書かれた商品はまず目にしない。

 それには理由がある。EUの表示義務が混入率0・9%以上に対し、日本は5%以上という、世界でもまれに見るゆる~い基準を設定したことだ。韓国でさえ3%未満なのである。さらに、虚偽表示をすると、韓国は3年以下の懲役か、3000万ウオンの罰金なのに対し、日本は農水大臣の指示に従わない場合に限り50万円以下の罰金。
 表示義務がある食品も、大豆やトウモロコシなど8作物と、豆腐や納豆、コーンスナックなど33加工食品のみで、大量に消費されている食用油は除外した。外食産業も表示義務の対象外だ。

 こうして日本は、中国に次ぐGM作物の輸入大国でありながら、「遺伝子組み換え」の表示が見られないという不思議な国になったわけだ。日本人はGM作物が好きなのではない。知らずに食べさせられているのである。


 また、記事がたまってしまいました。それでもまだ未掲載分がありますので、また数日分掲載させていただくことになるでしょう。あしからず。

今日のお散歩。

いい天気になりました。