人の世は、滞在期間の定め無き、今日一日の旅の宿

 時 人を待たず、光陰 惜しむべし
 古より有道の人、国城 男女 七宝 百物を 惜しまず
 唯 光陰のみ、之を惜しむ

方剤:茵蔯五苓散

2019-08-19 | 日記


次は茵蔯五苓散です。
これは金匱要略に出てくる薬で、茵蔯蒿五苓散は対等なのですね。
五苓散は主にに作用します。それから肺腎関係に働きます。
そして、もうちょっと水に働かせようとして、
脾から肺への部分にも作用します。これだけでも結構良い薬なのです。
ところが脾の働きが悪くなると、やはり水を一番基本的なところで回せなくなり、
それが皮膚に現われてくると蕁麻疹になり、脾そのものの働きが悪くなると
黄疸が出ます。(復習、胆汁排泄は脾の働き。脾の色は黄色。)
それで全体的に水が停滞します。このの所を働かして上げるのが茵蔯蒿です。
これと五苓散の水を動かす作用と一緒に働きます。

後で出てくる葛根湯も併用することがあります。
脾は水を口から取ります。腎からも少し取ります。
そして水を肺に送り、肺から全身に分配します。
肺は腎に水を降し、腎から排泄します。ところが五苓散は
脾の付近(腎から脾、脾から肺)に働く作用があまり無いのです。
この附近に働くのが葛根です。特に葛根はからへの水の道に働きます
葛根は太陰の主薬ですからそういう働きをします。
そうして五苓散で腎の附近の働きをカバーします。

葛根湯五苓散を合方すると最強の利尿剤になるというのは、
葛根湯の中の麻黄が肺から腎への水の働き、即ち肺腎関係を
更に強力にするからです。茵蔯五苓散葛根湯を合方すると
腎脾肺の水の廻り全体を万遍なく働かせるのです。
この合方を一番よく使うのが慢性の蕁麻疹です。
要するに水の停滞のあるものに使います。結構これはあります。
アレルギーは副作用が無ければ西洋医学でも何とかなるのです。

アレルギーの蕁麻疹は西洋薬の副作用でよくよく懲りた人しか
私のところには来ません。ところが水毒による蕁麻疹は
西洋医学では治せないのセす。
それこそ、ミノフアーゲンCなどを使えば効くことはありますが、
もう出なくするということは出来ないのです。
でも、この茵蔯五苓散葛根湯を飲ませたら、その日から
蕁麻疹が出なくなります


本当は五苓散と葛根湯で治るのですが、
茵蔯蒿での部分を更に作用を増強させる方が良いかなということで
茵蔯五苓散と葛根湯を合方し ます。

他に茵蔯五苓散は軽い黄疸のある肝硬変に使います。
肝硬変になると肝が衰えているので柴胡をつかえないのです。
芍薬でもこたえる場合があります。香附子、竜胆も使えません。
肝硬変になると一般に五苓散と人参湯を使います。
あるいは五苓散と紅参を使います。そして、少し黄疸があると
五苓散の代わりに茵蔯五苓散を使います。

原発性胆汁性肝硬変(PBC)と診断される患者は、
東洋医学的に治療すると、いわゆる肝硬変にまでならないで
10年も20年も慢性肝炎の状態で治まっています。
でも、PBCには茵蔯五苓散を使わないで梔子柏皮湯を使います。
原発性胆汁性肝硬変は柴胡剤は使っていません。
いわゆるウイルス性の肝炎には柴胡剤を使うのですが、
PBCはちょっと違う流れのようす。
かえって黄連解毒湯系統の薬を使いますから、
普通の肝炎や肝硬変とちょっと違います。

PBCはあまり多くはないです。
私のところでも10人ぐらいです。そういうことで、
茵蔯五苓散慢性蕁麻疹とかやや衰えた肝硬変に使っています

第12回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda12.htm