次は大黄牡丹皮湯です。これは随分話していたように、
桂枝茯苓丸とはほんのちょっとした違いなのです。
駆瘀血丸中の三つの薬は皆微妙に薬味が違うだけです。
桃仁、牡丹皮と、それに黄芒組に冬瓜子が加わっているのが、大黄牡丹皮湯です。
でも逆に言えば、現実に大黄牡丹皮湯証の人に接すると、
桂枝、茯苓が入っていないということで、そういう精神症状があまりないのです。
※駆瘀血丸 (桂枝茯苓丸, 桃核承気湯, 大黄牡丹皮湯の併用)
=茯苓, 桂枝, 赤芍, 桃仁, 牡丹皮, 大黄, 芒硝, 甘草, 冬瓜仁
https://www.kigusuri.com/kampo/kampo-care/019-28.html
先程言った様に桂枝茯苓丸証の人は、やはり少し何かあったらのぼせるかな、
精神症状が出るかなという感じです。
そして桃核承気湯はもうちょっと激しいのです。
承気湯ですから、もう気がめぐらなくて、
本当にイライラしている感じが分かります。
大黄牡丹皮湯の人は結構静かでゆったりとした感じを受けるのです。
本当に最近の若い女性に多いです。
スポーツマン的なゆったりとスポーツをやっていて大らかな感じの
若い女性に大黄牡丹皮湯証が多いのです。
僕が漢方を始めた頃の文献には、
大黄牡丹皮湯証はそんなに多くはないと言われていました。
桂枝茯苓丸か当帰芍薬散か加味逍遙散か、
この三つに婦人薬というのは分れると言われていました。
今、若い女性が来たら半分近く大黄牡丹皮湯の人のような気がします。
それだけ体質が変ってきているのだと思います。
別に僕の思い込みで出しているのではなくて、はっきりそうなのです。
この大黄牡丹皮湯証の、昔からいわれているお腹の圧痛は
はっきり右側に来るのです。
血の道証は左に来ることが多いのですが、
右のほうに来るというのは気の異常もかなりあるのでしょうね。
解剖学的に考えると左に圧痛が来るというのは、
やはり下行結腸系統に何か熱や炎症を含んでいることが多いのですが、
大黄牡丹皮湯証の場合はそれが上行結腸に来るのです。
その意味はまだ完全には分からないのですが、
強いて、血の道とは又別の考え方で言えば、
左がどちらかと言ったら肝と脾が争っている状態で、
右側が肝と肺が争っていることが多いから、
それで便秘にもなってくるし(肺の子分の大腸の異常)、
そういうことなのかなとも思いますが、
まあちょっとその附近どうして右左に別れるのかよく分からないのです。
最近、どうして若い女の子が大黄牡丹皮湯の方になってきているのか
ずっと考えていますが、不足を知らないで、イライラしないで、
ゆったり育てられるとこうなってくるのかなと思ったりします。
結果としてそのまま受け止めています。
何故といわれると、ちょっと今、答え切れないという状況です。
昔は虫垂炎などにも使われていました。
更にもっと悪化した状態には、薏苡附子敗醤散とかが使われていました。
軽症で、下剤を使ってもいいぐらいの虫垂炎に、
抗生剤と併用して使うことは今でもあるような気はしますが、
あえて腹膜炎をおこしかかっているのに使うというよりも、
大部分慢性の疾患で右の下腹部で丁度、桂枝茯苓丸と対象の位置に圧痛を示して、
少し便秘をしていて、全体的には精神症状が軽い、そういう方に
使っているというのが実情です。
第8回「さっぽろ下田塾」講義録
http://potato.hokkai.net/~acorn/sa_shimoda08.htm
大黄牡丹皮湯