てふてふを 青き心の 糸で編み 吐息をかぶせ 野に放ちたり
*短歌が続きます。これはわたしの女性の弟子の作品です。まだ初心者の香りがしますが、かなり上手ですね。
一応、弟子という存在について教えておきましょう。実はこの媒体の周りには、わたしたちだけでなく、わたしたちの活動を邪魔しに来た馬鹿もたくさんいるのです。その馬鹿の中で、わたしの活動に興味を持ち、短歌や俳句を学んでいる者たちのことを、わたしは弟子と呼んでいるのです。
この歌は、その中のある女性の弟子に、「てふてふ」という課題を与えて、詠んでみてもらったものです。
蝶々を、わたしの青い悲しみの糸で編み、息を吹きかけて命を与え、野に放ってみたと。
どういう心があるでしょう。
蝶々を編むなどというと、レースなどのモチーフ編みを思い出しますね。小さなモチーフを編み、それをつなげて、ドイリーやテーブルクロスなどの大きなものを作る。女性はよくそういうことをしてきました。
かのじょもレース編みには一時期凝っていましたね。モチーフつなぎよりは、ショールやテーブルクロスなどの大きなものを作るのが好きだったが、モチーフ編みにも挑戦していました。小さなものをちまちまと編んで、それを積み重ねてよいものを作っていく。そういう女性の細やかな心を思い、どうにかしていいものにしてやりたいという、愛をかきたてられていた。
女性たちは昔から、そういう小さなことを積み重ねてきた。生きていく中で、つらいことも、激しく悲しいこともあった。だが、それを大きく叫ぶことはできなかった。どこにも持っていきようのない思いを、小さなものを丁寧に作っていく作業の中で、何とかしていた。
悲哀も、憐憫も、苦悩も、あらゆるいじましい感情も、ただこつこつと編み物をしていくという作業に打ち込んでいけば、いつかしら静まってくる。こつこつと仕上げてきたその小さな仕事をつなげていくと、結構大きないいものができたりする。その喜びが、悲しみの多い人生を幾分明るませてくれる。
絶望という竜が、いつも女の人生を支配している。だが女性は、その竜を、不思議な薬やアイテムで、眠らせることもできるのだ。
青い心の糸で編んだ小さな蝶に、女性たちは息を吹きかけて命を与え、どこか見知らぬ野へと放ってやる。その野とは、果たしてどんなところでしょう。女性たちが永遠にあこがれてやまない、愛の世界だろうか。
考えてみてください。