虚仮と見て くたしし月の かほ盗み 身はくはしめと なるあさはかさ
*「虚仮」は愚かな人、「くたす」はそしるという意味ですね。この場合の「身」は体のことではなく、自分自身を意味します。
馬鹿だと思って馬鹿にした、あの月に例えられる人の顔を盗み、自分は美人となったその人の、あさはかなことよ。
ご存知の通り、馬鹿は陰からかのじょを馬鹿にしまくっていました。それはそれは美しい人だったからです。容貌だけでなく行動も美しかった。それが信じられなくて、どこかにおかしなところはないかと、目を皿のようにして観察し、鼻くそをひっつけては全部を馬鹿にしていた。
しかし馬鹿というのはあの美しさが欲しくてならなかった。だから必死で真似してそっくりに化け、自分を美人にした。そうしたらとたんに正体がばれて、偽物の美人の正体が世界中に知られることになった。
あれらは、人のものを盗んで自分をきれいにしている馬鹿なのだと、ばれてしまった。
しかもみんなおなじ美人の真似をしているから、みんなが同じ美人になった。
技術を尽くして、どんなに上手に化けても、馬鹿のやることはしょせん人まねですから、こういうことになるのです。
本当の美人とは人まねでは作れないものですよ。それは本当の自分自身の延長線上にあるのです。本当の自分を生きなければ、自分の美人はない。
神が創ってくださった本当の自分自身を真正直に生きていけば、人はだれしも、自分以外にはだれもいない、自分だけの美しい自分になれるのです。
その本当の自分を捨てて、ほかのひとの自分を盗んで自分がそれになりすまそうとすることほど、あさはかでおろかなことはありません。
本当の自分の美しさを、全部だめにしてしまうことだからです。