ここ半年というもの、憂鬱の風に吹かれて、日記を書き始めては上げられずに閉じる、という内省の日々を送っていた。
下書きばかりで収拾がつかないのも、パソコンの蓋を重くした。
コロナの魔手に絡め取られるわけにはいかないので、緊急事態宣言中はお稽古を自粛したり、準備していた演奏会が中止になったり…また出掛けるにも人混みを避け、考え得る万全の対策をして玄関を後にするので、帰宅するととても疲れてしまう。
精神的疲労が肉体的疲労に勝る日常は、想像以上に、人間のモチベーションを削ぐものであると思い知った。
一年前もこの夕暮れ時の麗しい時季に、家に鬱々と籠っていたので、梅雨の晴れ間なのか、陽射しが落ち着いて地熱が鎮まりつつある暮れ方のひと時、吹き抜けてくる風に身をゆだねる心地よさを想い出した。
植木が育ってゆくのを無心に眺める愉しみは、魂の養生である。
なんと嬉しいことか、昨年は徒花であった檸檬樹に、青い実が育ってきた。
しかし、何たる豊穣の一枝でありましょうか、四ツ目結いのような様相。
趣味の園芸としても、こうなると間引かなくてはならないのだろうか…という苦悩が生じる。
過ぎたるは猶及ばざるが如し。
幾度となく繰り返される朝、昼、夕暮れ、日没、夜。
4月13日、橘の実のような莟をつけた檸檬が、風に吹かれたり雨に揺すられたり…
風に吹かれて…2021