浮世絵を 三味線と 踊りで愉しむ
第一回 江戸音風景
花鳥風月。四季折々の清やかな景色や、
市井の人々の暮らしを、生き生きと写した浮世絵の数々。
その美しい世界を、視覚だけではなく、聴覚でも味わっていただきたい。
ならば、その時、
画面からあふれ出すメロディは、
やはり日本で同時代に生まれた、独自の音楽でありましょう。
長唄は江戸で生まれた三味線音楽です。
都市の華やかさだけでなく、
憂鬱をも内包した、奥深くバラエティ豊かな音色を、
3D浮世絵=日本舞踊とともにお愉しみください。
【番組】
長唄「都風流/みやこふうりゅう」
劇団文学座発起人としても知られる久保田万太郎の作詞。
江戸から東京へ続く街の景色、移ろう季節の風情を、歳時を織り込みながら綴る。
舞踊「俄獅子/にわかじし」
江戸遊郭・吉原が総力を結集した春秋二度の祭礼での、芝居仕立ての仮装イベントが俄。
華やぐ廓情緒と遊女の哀歓を描く粋な獅子もの。
【展示する浮世絵】
廣重、栄之、栄昌、英山、國芳など、11点ほど
トクオウは激怒した。(ぃぇ、それほどでも…)
必ずかの高ピッチ至上の風潮を除かねばならぬと決意した。
トクオウにはDTMがわからぬ。
トクオウは長唄の師匠である。三味線を弾き、伝統芸能と遊んで暮らしてきた。
けれどもインプレッションに対しては、人一倍に敏感であった。………
表題写真の説明をしようと思ったら、思わぬ回り道(三日ぐらいかかる?)をしてしまいました。
怒りというものは、人間の行動の原動力になります。
そもそもが私は、自分が好まぬこととはかかずら合いたくない、できれば、他人が汗水たらしてエンターテインメントに励んでいる姿を柱の陰から静かに見ているだけで済ませたいという、不精な人間です。
しかし、自分が生業(なりわいと読んでね)としている長唄というものが、こうまで世の人々の知らないジャンルとなってしまったことに対して、どうにかせねばならぬ、と感じておりました。
例えば…私は子供のころから絵が好きで、小学生の頃は絵本作家になりたくて、中学生の時は美術部に所属し、高校生ではマンガ研究会なる倶楽部に身を置き…というのは、このブログをご覧になってくださる皆さんはご存知のこととは思いますが……
近年、一昔前までの欧米至上の企画とは全く異なり、日本の美術というものに目が向けられるようになりました。特に、浮世絵関係の展覧会の夥しい数にはびっくりするばかりです。
それは今までマイナーな嗜好とされた分野に身を置くものにはうれしいことでした。
しかし、テレビにおける美術番組で、それらの絵を紹介するときのBGMは、なぜか当然のように欧米の音楽なのでした。日本の絵画を多く収蔵している美術館で、とある展覧会でアトラクションとして音楽会が催されたのですが、やはりクラシックの室内楽だったのでした。
なぜに、なにゆえに長唄ではないのだ…。
三味線音楽といったら、本来は第一に長唄なのです。浄瑠璃系の三味線音楽は語り物で、お芝居の心得がないとできませんが、長唄は気軽に唄える性質のものなんです。メロディーラインも取り扱うテーマも、邦楽隋一の豊富な特性を持つのが長唄なんです。
岡本喜八監督が昭和38年に映画化した、かの山口瞳の直木賞受賞作『江分利満氏の優雅な生活』だってさ、小林桂樹が一家の家計を計上するその中に「妻の稽古事、長唄の月謝、三千円…」とかいう台詞もあったのですょ。平成の初年頃、名画座でその1シーンを見た私はなんだかドギマギして嬉しかった。奥さん役は細腕繁盛記の美しき新珠三千代でした。
エブリマン氏、なんですょ。
そんなわけで、私は憤っていたのでした。
このたび「長唄絵合せ」という、たぶん、本邦初の浮世絵+長唄+日本舞踊の鑑賞会を開催することとなりました。
ライヴで、本物の浮世絵の名品に触れ、その絵と世界を一にする音楽を味わっていただけたら…という企画です。何とぞよろしくお願い申し上げます。
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