お天気のよい秋の昼下がり、私は日本橋の高島屋の前でバスを待っていた。
そのころはまだ合理化の大ナタが振り落ろされる前で、都バスの路線がたくさんあった。
何か考え事があるたびに歩いていた私は、限界まで歩くと都バスにすがっていた。
長く柔らかい日差しを浴びて佇むところへ、品のいい老婦人に声をかけられた。
「このバスは尾張町へ行きます?」ミス・マープルにちょっと似てらして、首をかしげて可愛らしく尋ねられて、私はドッキリした。…尾張町ってどこだっけ???
木挽町なら目をつむってでもご案内できるけど、尾張町って????
『タモリ倶楽部』で古地図散策をしてくれるずっと前、長尺のインド映画を同番組が紹介していたような時代だった。
目を白黒させて、返事を言い淀んでいる私に、同じくバスを待っていた老紳士が、助け船を出してくれた。
「尾張町、通りますよ。和光と三越の銀座四丁目の交差点の辺りだよ。若い人は知らないよねぇ」ありがたや、すべてを取り計らってくれる執事のギャリソン時田に見えた。
そのころはまだ合理化の大ナタが振り落ろされる前で、都バスの路線がたくさんあった。
何か考え事があるたびに歩いていた私は、限界まで歩くと都バスにすがっていた。
長く柔らかい日差しを浴びて佇むところへ、品のいい老婦人に声をかけられた。
「このバスは尾張町へ行きます?」ミス・マープルにちょっと似てらして、首をかしげて可愛らしく尋ねられて、私はドッキリした。…尾張町ってどこだっけ???
木挽町なら目をつむってでもご案内できるけど、尾張町って????
『タモリ倶楽部』で古地図散策をしてくれるずっと前、長尺のインド映画を同番組が紹介していたような時代だった。
目を白黒させて、返事を言い淀んでいる私に、同じくバスを待っていた老紳士が、助け船を出してくれた。
「尾張町、通りますよ。和光と三越の銀座四丁目の交差点の辺りだよ。若い人は知らないよねぇ」ありがたや、すべてを取り計らってくれる執事のギャリソン時田に見えた。
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