弁護士や大学教授など、労働問題の専門家でつくる「ブラック企業対策プロジェクト」は8月29日、経団連に対し、求人票と比べて実際の労働内容が劣悪な「求人詐欺」の予防措置をとるよう要望書を提出した。求人詐欺は現行法で取り締まることが難しいとされており、政府も罰則も視野に対策を急いでいる。
同プロジェクトが経団連に求めているのは、2017年度卒の学生の正式な内定日(主に10月1日)までに、労働条件通知書を交付するよう会員企業に啓発すること。新卒の学生の場合、内々定をもらって就職活動を終えても、正確な労働条件の通知を受けるのは、半年以上あとになることが多い。労働条件で内々定先を比べることが難しく、入社直前・直後に求人票と違う条件だったことが分かっても、新しく就職先を探すのは困難だ。
提出後、厚労省記者クラブで記者会見が開かれ、プロジェクトの事務局長を務める嶋﨑量弁護士が、「求人詐欺は労働者だけの問題ではない。求人詐欺が横行し、労働市場が機能しなくなれば、社会全体の労働生産性や経済活動が停滞する。よい条件を出せる企業ほど、情報をオープンにしていった方がいい」と話した。
●「ほかにも内定先があったのに…」
会見には、実際に求人詐欺の被害にあった、社会人1年目の女性(23)=愛知県=も出席。この女性は、大学卒業後、中堅学習指導塾の指導スタッフとしてこの春、正社員採用された。しかし、「営業はない」と聞いていたのに、いざ就職すると学習指導はやらせてもらえず、厳しいプレッシャー
新卒の求人詐欺防止へ「労働条件通知書を内定日までに出して」経団連に要望書