マティス展を見た時にシンプルに思ったのは、マティスと言う人はバランスの取れた穏やかな人だったんだろうな
と言うこと。
絵画の世界を模索しながら描いた作品は、どれも攻撃性が感じられない
バランスの取れた色彩と線で描かれていました。
実際マティスはこのように言っています。
「私が夢見るのは、すべての人の心を癒す、よい肘掛椅子のような芸術である」
今回は150点もの作品が展示されていましたが
絵を描き始めたころから晩年の作品が順序だてて展示されていて
到達点を目指すマティスの険しい道のりを感じました。
(1869-1954)
1948年に制作された〈赤の大きな室内〉は、マティスの油絵の集大成の作品と言われています。
室内の上の長方形の二つのものは、壁にかかっているマティス自身が描いた絵
その下にはテーブルが二点
一番下には獣の敷物がこれまた2点描かれています。
説明には『マティス絵画に繰り返し現れるテーマー赤、アトリエ、「画中画」を巧みに融合しながら
モチーフを2点で一対として組み合わせ、音楽の対立法に相当する視覚的効果を作り出している』
と書いてありました。
他に私が特に好きだった作品をご紹介します。
1935年に描かれた〈座るバラ色の裸婦〉
マティスは、ただの線だけというような抽象的表現は好まなかったようですが
これくらいシンプルに省略された作品はいいなぁ、と思いました。
〈緑色の大理石のテーブルと静物〉1941年制作
何といっても可愛い
何からも解放された感がある、まるで子供が素直な気持ちで描いたような
この作品がとても気に入りました。
そして、私が今回マティス展を見たいと思った一番の要因
マティスが病を患い絵筆を持てなくなって
ベッドで制作した切り絵の数々
これらの作品が本当に素晴らしかったです。
(1950年くらいから制作を始めました)
この自由さ、私には今までの作品の一つの到達点のように感じられました。
見ている人たちの魂を開放し喜びに導くような作品たち
いつまでも見ていたかったです。
ポストカードを買いましたが、やっぱり本物が放つオーラとは全く違いました。
そしてそしてマティスが最晩年に自身の集大成として手掛け、
最高傑作の一つともいわれる南仏プロヴァンスのロザリオ礼拝堂
この映像が展覧会内で上映されていたんですが
本当に感動しました。
時間によって光の当たり具合や量を変えて美しく室内を照らすステンドグラス
会衆席の背後に掲げられた《十字架の道行》。その過酷さを表現するため、マティスは敢えて荒々しい筆致で描いたという。
右は《聖ドミニコ》のタイル画
《聖母子像》。会衆席を挟んで向かい合う椰子の木のステンドグラスが映り込む。
マティスがデザインした祭服
4年をかけて制作したロザリオ礼拝堂
本当に素晴らしかったです。
これを制作しているマティスの姿はもうそれ自体が芸術のようでした。
(ロザリオ礼拝堂の画像は〈家庭画報〉さんからお借りしました)