長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『トランスフォーマー/ロスト・エイジ』

2018-08-05 | 映画レビュー(と)

噂には聞いていたが聞きしに勝るクソ映画でビックリした。フランチャイズを続行するためならプロットが同じだろうが、アクションシークエンスが同じだろうが、マイケル・ベイは臆面もなく劇中に広告を大量投入する。中国市場へ向けたマーケティング戦法はとても元CM監督とは思えない露骨さだ。

前作(どんな話だったかも覚えてない)から数年後、サイバトロン軍団(オートボット、ではなくあえてこう言おう)は人類の敵と見なされ、コンボイ(オプティマスプライム、ではなくあえてこう言おう)らは身を隠してひっそりと生きていた。テキサスの片田舎で廃品回収をやっているマーク・ウォルバーグはある日、ボロボロのコンボイトラックを発見。それこそがコンボイ司令官その人であった。

どう見ても体育会系なマーキーマークがドクター中松みたいな発明家という設定は謎だが、テッドだろうがウィル・フェレルだろうが抜群の相性を見せる彼は今回もマイケル・ベイ相手に頑固親父キャラという新機軸で一定のキレを見せている。娘役ニコラ・ペルツはパツキン、ホットパンツというマイケル・ベイ方程式のルックスで適役。彼氏(役名すら思い出せない)は突然「職業はレーサーだ」と現れ、カーチェイス以外はペルツとイチャこく空気要員だ。

 今回、恐竜形態にトランスフォームするダイナボットがキービジュアルとして使われているが、最後の最後で申し訳程度に出てくるだけで、相変わらずマイケル・ベイにはロボット愛が微塵も感じられない。とにかく破壊描写以外に情熱が感じられない映画だ。トランスフォーマーのCGに対して爆破や破壊はおそらくほぼ生身のスタントだろう。マイケル・ベイの破壊衝動を満たせる題材がトランスフォーマーシリーズ以外に存在しないのだ。


『トランスフォーマー/ロスト・エイジ』14・米
監督 マイケル・ベイ
出演 マーク・ウォルバーグ、スタンリー・トゥッチ、ニコラ・ペルツ、リー・ビンビン
 
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『22ジャンプストリート』

2018-06-17 | 映画レビュー(と)

“往年のTVシリーズをチャニング・テイタム、ジョナ・ヒル主演で映画化”という企画の安易さを翻す大傑作となった『21ジャンプストリート』の第2弾。前回は高校生に化けて潜入捜査をした2人だが、今回はもちろんご想像の通り大学生に化けて青春時代をプレイバックする。刑事アクションのお約束を全て逆手に取った前作、そしてレゴというおもちゃのあるあるを感動へ振り切った『レゴムービー』に続き監督フィル・ロードとクリス・ミラーのコンビは“続編”という定石を遊びながらブロマンスものへ特化、大いに笑わせてくれる。

前作を上回るほどの新鮮な驚きはさすがに得られないが、主演2人のパフォーマンスは相変わらず好調だ。特にこの年
『フォックスキャッチャー』『ジュピター』と連投したテイタムの充実っぷりといったらなく、ジョナ・ヒル以上の瞬間風速で笑わせにかかってくる。エンドロールでは『ディス・イズ・ジ・エンド』ですっかり仲良くなったアパトウギャングも援護射撃に駆け付け、今後のさらなるバカ映画出演に期待がかかるではないか。

 このエンドロールの悪ノリっぷりが“第3弾は『メン・イン・ブラック』とクロスオーバー”という冗談みたいな企画を呼び込み、一時本気で進行していた様子。案の定、酔狂として立ち消えたが続編求む!


『22ジャンプストリート』14・米
監督 フィル・ロード、クリス・ミラー
出演 チャニング・テイタム、ジョナ・ヒル
 
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『トップ・ファイブ』

2018-04-30 | 映画レビュー(と)

日本劇場未公開がもったいない痛快ラブコメディだ。
かねてよりエリック・ロメールをブラックムービーにアレンジするなど隠れシネフィルとしてのセンスを持ち合わせていたクリス・ロックだが、『ニューヨーク、恋人たちの2日間』で共演したジュリー・デルピーからの影響か、NYという借景も相まって“ウディ・アレン風ブラックムービー”とも言うべき粋な映画に仕上がった。もちろん、名匠をフォローしたからってオレ達のブラザーはお高くとまったりしない。コメディアン仲間を総動員して下ネタから自虐ネタまで笑いの絨毯爆撃だ。

バカコメディ映画のフランチャイズで大成功を収めていたコメディアンのアンドレはシリアス俳優へのキャリア転向を目指し、新作映画のプロモにも余念がない。おまけにリアリティ番組で注目を集めるバカセレブとの結婚を間近に控え、いつも以上にメディアへの露出が増えていた。彼はニューヨークタイムズの独占取材でよりスノッブなイメージを打ち出そうとするが、女性記者チェルシーの取材を受けるうちに芸人としてかつてのエッジを失っていた事に気付いていく。

ロックとチェルシー役ロザリオ・ドーソンは最高のスクリーンカップルだ。笑いの火花を発しまくる2人の掛け合いはオープニングからアクセル全開。目を離すのがもったいないくらい魅力的である(特にドーソンはキャリアを代表する作品になるだろう)。

 次々と顔見せするコメディアン達へのリスペクトと愛情に満ちたネタの数々はロックのコメディアンとしての真骨頂であり、そこには業界への批評精神よりも悦びがある。ラストシーンの多幸感といい、本作で映画作家として度量の大きさを見せた。もう1回見ようかな!


『トップ・ファイブ』14・米
監督・出演 クリス・ロック
出演 ロザリオ・ドーソン、セドリック・ジ・エンターテイナー、トレイシー・モーガン、ガブリエル・ユニオン
 
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『トゥモローランド』

2018-04-21 | 映画レビュー(と)

アニメ界の鬼才ブラッド・バード監督の実写映画デビューがフランチャイズ映画『ミッション:インポッシブル/ゴーストプロトコル』だった事を思うと、本作こそ作家性が色濃く出た実質上の実写初作品と言って良いのではないだろうか。ホームグラウンドであるディズニーランドの“トゥモローランド”を基にした夢とロマンがあふれる空想科学冒険モノの“正しさ”は、現実社会がまさにディストピア化している今にこそ相応しい。NY万博から始まる物語はボーイ・ミーツ・ガールであり、「君は誰?」という少年の問いかけに「私は未来よ」と答えるアテナ役ラフィー・キャシディちゃんの微笑に多くの男の子たちが夢を抱いてくれたら嬉しい(僕にとってのアンナ・クラムスキーやナタリー・ポートマンのように)。

しかし、TVドラマ『LOST』や『プロメテウス』でおなじみデイモン・リンデロフの脚本は風呂敷を広げ過ぎで、ブラッド・バードは収拾のために足を引っ張られ気味だ。様々な謎を散りばめながら最後は説明セリフとスケールの小さいアクションに終始してしまうのが勿体ない。リンデロフは連続ドラマのショーランナーには打ってつけだが、2時間の映画脚本にまで同じ方法論を用いてしまっている。

夢を追い続ける者にこそ夢を叶える力があり、世界に必要とされる人間であるというバードのテーマには、ケイシーとフランクの世代間に対する言及がない。大人になること、大人であること。フランクはアテナへの“こじらせ”を乗り越え、現実社会に適応するべきではないのか?ディズニーという一見ユートピアのようでいて徹底的に管理された商業主義にバードの作家性は絡め取られてしまったようだ。“処女作”はそんな歪さばかりが気になってしまう、惜しい1本であった。

『トゥモローランド』15・米
監督 ブラッド・バード
出演 ジョージ・クルーニー、ブリット・ロバートソン、ラフィー・キャシディ、ヒュー・ローリー

 
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『ドン・ジョン』

2018-02-04 | 映画レビュー(と)

ソフトマッチョでイケメンのモテモテ男、でも毎日AVでヌクのがどうにもやめられない。そんな現代のイタい“ドン・ファン”ならぬ主人公ドン・ジョンを描くラブコメディだ。スマートなテンポ運びとユーモラスなダイアログからは監督・脚本・主演兼任のジョゼフ・ゴードン=レヴィットが都会派コメディを目指したのが伝わってくる。小気味いい出来栄えだ。

レヴィット自ら演じる主人公の造形が面白い。毎夜ガールハントに余念がなく、モテるためならワークアウトも欠かさない、自分大好きなチャラ男だ。“オカズ”選びにも同じくらい熱心で、いかにどれだけ気持ち良くヌケるのか、オナニーを極めた男でもある。こういう奴は何かとカウントをするもので、毎週しっかり通い続ける教会ではヤった人数とヌイた人数を報告して神父をうんざりさせている。運転をすれば他人の車にヤジを飛ばす意地の汚い奴だ。ヤだねー、こういう男!!

そんな彼が美女スカーレット・ヨハンソンに一目ぼれする。自分の魅力を心得たスカジョはハンパじゃない。滴り落ちんばかりにフェロモンを発散させ、男がヌキたくなる理想のエロい美女を体現してみせる。当然、ドン・ジョンは首ったけになるが、なかなかどうしてガードが固く、一向にヤらせてもらえない。付き合ううちに意外やおカタいお家の出身で、少女趣味なお嬢さんである事がわかってきて…。

 セックスの対象としか異性を見ないドン・ジョンと、自分好みに相手をムリヤリ改造しようとするスカジョというワガママな二人を通して一方通行な恋愛から同棲、結婚へと発展していく物語かと思いきや、ジュリアン・ムーアの登場によって最高のセックス、無償の愛というテーマに映画はシフトしていく。試みは面白いが、テンポはややペースダウン気味で弾けない。何より“レヴィット×スカジョ”というスター共演の恋愛コメディのセオリーからすると拍子抜けな感は否めない生真面目さがタマにキズだ。


『ドン・ジョン』13・米
監督・出演 ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
出演 スカーレット・ヨハンソン、ジュリアン・ムーア、ブリー・ラーソン
 
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