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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning』

2025-02-10 | 映画レビュー(き)
※このレビューは映画の重要な展開に触れています

 庵野秀明とスタジオカラーが満を持して挑むガンダムシリーズ最新作は、開始1秒で重力に魂を引かれたオールドファンを仰け反らせる。なんと1979年の第1作『機動戦士ガンダム』第1話、『ガンダム大地に立つ』がそっくりそのまま再現されるのだ。アヴァンシークエンスが終わると、連邦軍のV作戦をキャッチしたシャア率いる3機のザクがサイド7に潜入する。うるさ型のファンはここで気付くだろう。1979年、もとい宇宙世紀0079にシャアはサイド7に入っていない。部隊は開発中の連邦軍モビルスーツを発見。シャアは白い機体に乗り込む。こいつ、動くぞ!

 本気か?歴史は塗り替えられる。一年戦争はジオン軍の勝利に終わる。『ジークアクス』の真の物語が始まるのはここからだ。未だ正式な放映日はアナウンスされていないものの、序盤数話を編集したと思われる劇場版『Beginning』はガンダム史上最も自由な新作だ。既存作品と世界観を並行する“マルチバース”である本作は、『スパイダーマン:スパイダーバース』よろしく作画はバラバラ。元祖、安彦良和画をアップデートした前半部、『エヴァンゲリヲン新劇場版』から継承されている戦闘シーン、そして本編は今日的な頭身バランスのコミックキャラ。米津玄師、星街すいせいらが歌う中、マッシヴで生々しいモビルスーツが宇宙(そら)を舞う。

 映画の中心にはセカンドインパクトよろしく“ゼクノヴァ”現象によって消息を絶ったシャア・アズナブルという空洞がある。振り返れば1988年、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が庵野にとって初めて携わったガンダムシリーズだった(庵野は同人誌を出すほど心酔したという)。この作品で小惑星アクシズを押し返す最中、アムロとシャアは光の彼方に姿を消し、79年から始まったシリーズは一応の完結を迎える。『ジークアクス』後半の時代設定は宇宙世紀0085年。0080年でもなければ0083年でもなく、0085年が選ばれた理由はファーストの正統続編、『機動戦士Zガンダム』の“放映年”が1985年だからかもしれない。そして『Z』の企画初期サブタイトルが“逆襲のシャア”であったことは思い返されてもいいだろう。宇宙世紀のマルチバースを辿る本作は、シャアの“キラキラ”に導かれ、新たなニュータイプが集う物語になるかもしれないのだ。

 そんな考察沼はどうでもいい。初めてガンダムに遭遇する子どもたちよ。「よくわかんないけど、なんかわかった!」それでいい。あとは君たちが生き延びてくれたら、それでいいのだ。


『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning』25・日
監督 鶴巻和哉
出演 黒沢ともよ、石川由依、土屋神葉

 
 
 

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