【MOVIE】
監督 ジョシュア&ベニー・サフディ
監督 スパイク・リー
監督 ジェームズ・マンゴールド
監督 グレタ・ガーウィグ
監督 サム・メンデス
6、『はちどり』
監督 キム・ボラ
監督 ペドロ・アルモドバル
監督 タマラ・コテフスカ、リュボミル・ステファノフ
監督 コリー・フィンリー
10、『最高に素晴らしいこと』
監督 ブレッド・ヘイリー
監督 アンドリュー・パターソン
【TV SHOW】
監督 ヴィンス・ギリガン、他
監督 マリア・シュラーダー
3、『ウォッチメン』
監督 ニコール・カッセル、他
監督 マーク・マイロッド、他
監督 リサ・チョロデンコ、他
監督 ジェイソン・ベイトマン、他
監督 ジョナサン・エントウィッスル
8、『ウエストワールド』シーズン3
監督 ジョナサン・ノーラン、他
9、『ハリウッド』
監督 ライアン・マーフィー、他
10、『セックス・エデュケーション』シーズン2
監督 ベン・テイラー、他
【コロナショック】
こんな事になるなんて、いったい誰が想像しただろう?
新型コロナウィルス感染症により7/3現在、世界中で約1070万人が感染し、死者は51万人を超えた。経済活動は停止に追いやられ、アメリカは3か月以上に渡って映画館が閉鎖。新作の撮影も全て中止となっている。例年5月から始まる夏休み興行も未だブロックバスターが1本も公開されていない状態だ。
ここ日本でも4月から緊急事態宣言が発令され、映画館は閉鎖に追い込まれた。6月の解除後、全座席の半分のみを稼働する事で再開しているが客足は遠い。
こんな状態で半期のベストテンを出す意味はあるのか?
もちろん。日本で上半期に見ることのできたアメリカ映画は昨年、下半期に各賞レースを賑わせた傑作群であり、Netflixはじめ配信という形態で新作は世に出てきている。TVシリーズも相変わらず充実のラインナップであり、『ベター・コール・ソウル』シーズン5という大傑作も登場した。
近年、ハリウッドを揺るがしてきた配信映画の台頭はこのコロナショック下において救済となった。劇場公開を見送った各社はNetflixへの払い下げや、自社オンデマンドサービスでの配信で一定数の収益を得ている。ユニバーサル製作の『トロールズ/ミュージックパワー』は1億ドル超を記録し、「今後は劇場公開と同時に配信も行う」というやや勇み足な発言も飛び出した程だ。アカデミー賞は2020年度に限って配信公開のみの作品も選考対象にすると発表している。配信形態への移行はこれからの10年で活発化すると思われたが、意外な形で時計の針は早まったようだ。
しかし、失われた物は大きい。公開が見送られた期待作は思いつく限りでもキャリー・ジョージ・フクナガが監督を務め、ダニエル・クレイグのボンド引退作となる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(4月公開)、MCUフェーズ4の幕開けとなる『ブラック・ウィドウ』(5月公開)、大ヒットホラー続編『クワイエット・プレイスPartⅡ』(5月公開)、DCの屋台骨とも言える続編『ワンダーウーマン1984』(6月公開)、そしてトム・クルーズが出世作の続編に挑む『トップガン/マーヴェリック』(6月公開)などがある。いずれも年内後半の公開日が再設定されているが、それらの命運を握るのは全米で8月12日に公開されるクリストファー・ノーラン監督作『テネット』だ。ノーランは自らの新作が劇場に観客を戻す起爆剤になる事を期待しており、配給のワーナーも監督との長年のコラボレーションからその意志を尊重している。だがアメリカで再び感染拡大が起きている今、その見通しも危ういのではないか。仮に『テネット』の公開が見送られれば、ドミノ倒し的に後の大作群も再延期の道を取るかもしれない。正念場はこれからだ。
【今は夜明け前なのか?】
さて“1999年以来のキラーイヤー”と言われた2019年のアメリカ映画群はバラエティに富んだ作家映画が並び、豊作だった。ジェームズ・マンゴールドが『フォードvsフェラーリ』でいよいよ名匠の風格を漂わせ、サム・メンデスは映像美の『1917』とリーマン・ブラザーズ創業一家の隆盛を描いた舞台『リーマン・トリロジー』(NTLで上映)で現役最高峰の演出家である事を改めて実証した。グレタ・ガーウィグ、タイカ・ワイティティら新鋭がのびのびと快作をモノのにし、『ハスラーズ』や『ミッドサマー』といった若手の作品が続々とヒットした事も嬉しいニュースである。一方で巨匠イーストウッドが『リチャード・ジュエル』で淀みない名人芸を披露しながらある失敗を犯している事が興味深かった。
スターが出演作をセルフプロデュースするようになってしばらく経つが、女優の筆頭格はシャーリーズ・セロンだろう。昨年の『タリーと私の秘密の時間』や『ロング・ショット』、そしてオスカー候補に挙がった『スキャンダル』と全方位向かうところ敵ナシである。
これらを凌駕するインパクトを残したのがオスカーには無視されたサフディ兄弟の傑作『アンカット・ダイヤモンド』だった。僕みたいな頭でっかちの映画ファンに「理屈じゃないんだよ!」と叩きつける血気盛んな1本である。
『アンカット・ダイヤモンド』は残念なことに日本劇場未公開で、Netflixでのみ観る事ができる。先述の通り、今年の3月~6月は新作が公開されなかったため、筆者は配信新作を意欲的に見るようにしていたが、Netflixもそんな映画ファンの飢餓感に応えてくれるようなラインナップだった。クリス・ヘムズワース主演の『タイラー・レイク』はまさに劇場で見るべきポップコーンアクションだったし、『ハーフ・オブ・イット』やAmazonの『ヴァスト・オブ・ナイト』は本来ならミニシアターでしか発見できない映画だろう(いや、そもそも日本で公開されたかどうかも怪しい)。日本でHBO作品を独占的に扱うスターチャンネルも本国公開からのタイムラグを徐々に短くしており、ヒュー・ジャックマンが新境地を見せる『バッド・エデュケーション』はもっと話題になって良かった。人気作『ウエストワールド』シーズン3の日米同時放送は大いに盛り上がれて楽しかった。
そして『ザ・ファイブ・ブラッズ』はスパイク・リー抜群の嗅覚もあってBlack Lives Matter運動が激化する只中にNetflixから配信された。時代に応えるかのようなリーの多弁さは圧倒的であった。撮影が再開されれば作家達は今回のコロナショック及びBlack Lives Matter、そしてトランプに対して即座に反応していくだろう。TVシリーズでは『キング・オブ・メディア』(晴れて邦題が統一されたので、今後この表記で行く)などの現代劇が時勢を取り入れるべく、急ピッチでリライトを行っているハズだ。
This is awesome @MayorBowser! #BlackLivesMatter pic.twitter.com/IdyuSo8ipe
— Biz Stone (@biz) June 6, 2020
一方、時代を先駆けたのが全米では2019年にOAされた『ウォッチメン』だ。白人至上主義者によって黒人が大虐殺された歴史を持つ街タルサを舞台にした本作はスーパーヒーローものの域を超え、早くも2020年代最重要の1本になった。先頃、事もあろうにトランプがこの町で選挙集会を開いた事や、大通りに本作のタイトルと同じフォントで“Black Lives Matter”と描かれた映像を見た時にはフィクションと現実の融解に眩暈を覚えた。
社会が混迷を極めるほど複雑化し、豊潤になるのがアメリカ映画である。今は新しい時代の夜明け前ではないだろうか?
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