長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『光をくれた人』

2019-04-03 | 映画レビュー(ひ)

M・L・ステッドマンの小説『海を照らす光』(=原題The Light Between oceans)の映画化。メロドラマかくあるべしと言いたくなるラヴロマンスだ。美しい撮影、美しい衣装、そしてマイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルという美男美女カップルを愛でるのが正しい楽しみ方だろう。舞台は第一次大戦直後のオーストラリア。戦争で心に傷を負った復員兵トムが孤島の灯台守に赴任する。町の娘イザベルと出会い、恋文を交わし合った2人は結婚、しかし子宝には恵まれなかった。そんなある日、島にボートが漂着。中にいた赤ん坊を2人は我が子として育てるのだが…。

『ブルー・バレンタイン』で注目されたデレク・シアンフランス監督は前半約1時間をかけてトムとイザベルの愛の交感を描き、実質2人芝居となるファスベンダーとヴィキャンデルは後に結婚したのも頷ける密度である。だがシアンフランス自身がその眩さに目がくらんではいないか。戦争で多くの人を殺めてしまったトムの罪悪感と、後に明らかとなる本当の母親ハナ夫婦が受けてきた迫害の苦しみは赦しというテーマに結実するハズだった。終始、眉間に皺を寄せるファスベンダーも当然それを意識した力演だが、それに見合ったストーリーテリングの掘り下げがされているとは言い難い。時代の割には小ぎれいな衣装に身を包んだ主演カップルを見ていると、ファッショングラビアのような一過性の感動しか呼び起こされないのである。ジャンル映画としてそれで十分なのかも知れないが、その向こうを描いた原作の魅力が伺いしれるだけに惜しい。

 

『光をくれた人』16・米、豪、ニュージーランド

監督 デレク・シアンフランス

出演 マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィキャンデル、レイチェル・ワイズ

 

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