長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『トリプル・フロンティア』

2019-04-10 | 映画レビュー(と)

元々は監督キャサリン・ビグロー、脚本マーク・ボールの『ゼロ・ダーク・サーティ』コンビの次作として企画されていたが、その後J・C・チャンダー監督に引き継がれ、Netflixを通じて全世界配信となった。南米”トリプル・フロンティア”と呼ばれる麻薬密造地域が題材でこのメンツと聞けば先のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、テイラー・シェリダン脚本の『ボーダーライン』シリーズに匹敵した麻薬戦争ドラマ、それも超重量級の社会派アクションになるのではと期待は高まった。

ところがそれは思いがけない方向に裏切られる。ヤマ師同然の傭兵達が麻薬王の金を強奪するケイパームービーだったのだ。チームリーダーにオスカー・アイザック、ブレーンにベン・アフレック、逃し屋にペドロ・パスカル、実行部隊にチャーリー・ハナムとギャレット・ヘドランドというアクションも演技もイケる実力派俳優達が揃った。おまけに中盤からは札束を担いでアンデス越えというこの手のジャンルではお目にかかれない展開になって退屈しない。

だがこれではいくら何でも薄味過ぎるだろう。ビグローならば4人の同士愛にもっと密着できたし、見せ場も作れたハズだ。これまで主にアメリカ経済を題材に社会批評してきたチャンダーはアクションのキレ味が鈍く、前述のテイラー・シェリダン作品群(『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』『ウインド・リバー』)に比べて遥かに見劣りする。他国に土足で上がり込むアメリカの対外政策に対する批評も必要だったろう。このジャンルは既にシェリダンによって更新されてしまっていたのだ。

ジャンル映画にこれらを求めるのは野暮かも知れないが、それだけの才能が結集した作品だけに拍子抜けの感は否めない。

 

『トリプル・フロンティア』19・米

監督 J・C・チャンダー

出演 ベン・アフレック、オスカー・アイザック、チャーリー・ハナム、ペドロ・パスカル、ギャレット・ヘドランド

※Netflixで独占配信中※


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