長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『無垢の瞳』

2023-03-31 | 映画レビュー(む)
 『夏をゆく人々』『幸福なラゾロ』で知られるイタリアの俊英アリーチェ・ロルヴァケルの新作短編がなんとディズニープラスからリリースされている。アルフォンソ・キュアロンがプロデューサーを務める本作は、これまでロルヴァケルが見せてきたマジックリアリズムと文明批評の作風から一転、第二次大戦中の孤児院を舞台にいつにない軽やかさだ。惚れぼれするほど美しいフィルム撮影とユーモラスな画面構成はウェス・アンダーソン映画を思わせるものがあり、こんな引き出しもあったのかと驚かされた。

 クリスマスを舞台にしているだけに何か教訓めいた寓話が語られるのかと思えば、本作のスピリットは教訓めいた懲罰を強いようとする大人とファシズム社会の同調圧力に立ち向かう子供たちの“無垢の瞳”だ。厳格なシスターをロルヴァケル映画の常連にして実姉アルバ・ロルヴァケルが人間味豊かに演じていることから見落としがちだが、この38分の珠玉の商品もまたアリーチェ・ロルヴァケルらしい批評性を持った1作である。第95回アカデミー賞では短編映画賞にノミネートされた。


『無垢の瞳』22・米
監督 アリーチェ・ロルヴァケル
出演 アルバ・ロルヴァケル

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