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ピクサーの最新作はまたしても劇場公開を見送り、ディズニープラスの配信スルーとなってしまった。コロナ禍を機に一気に会員数を囲い込みたいディズニーの経営戦略であることは想像がつくが、これでは長年、屋台骨を支えてきたピクサーに対してあまりに不誠実だろう。劇場公開を目指し、長い時間をかけて開発された本作はスクリーンで見るべき1本である。美しく揺らめくイタリアの海、陽光降り注ぐ漁港の町並み、そして少年たちが夢見る宇宙は自宅の小さなTVで見るにはもったいない。
舞台は1950年代の北イタリア。海に暮らすシーモンスターのルカが、地上の暮らしを知るアルベルトと出会う。人間の目を忍び、陸の生活に魅了された2人の心をとりわけ捉えたのがベスパだ。2人は漁村で開かれるトライアスロン大会に出場し、その賞金でベスパを買おうとするのだが…。
少年たちのひと夏の友情、というカミングエイジストーリーとイタリアのロケーションはこれだけでも実写で十分に成立する題材であり、“シーモンスターの話はなくてもいいよな”と思わせてしまう所に演出の弱さがある。だがルカ・グァダニーノ監督のTVシリーズ『僕らのままで』と本作の連続出演で、今や北イタリアの申し子とも言うべき存在になったジャック・ディラン・グレイザーによってシーモンスターに多くの意味性が生まれており、WE ARE WHO WE AREでRight here Right nowな結末に清々しい感動がこみ上げた。
近年、ピクサーはピート・ドクター、アンドリュー・スタントンら中核監督と新人監督の作品を交互にリリースし、後進の育成に取り組んでいる。ダン・スキャンロン監督『2分の1の魔法』、ピート・ドクター監督『ソウルフル・ワールド』と続き、エンリコ・カサローザ監督の長編デビュー作である。
『あの夏のルカ』21・米
監督 エンリコ・カサローザ
出演 ジェイコブ・トレンブレイ、ジャック・ディラン・グレイザー、エマ・バーマン、マヤ・ルドルフ、サシャ・バロン・コーエン
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