長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ビートルジュース ビートルジュース』

2024-10-13 | 映画レビュー(ひ)

 今年は期待値の低かったハリウッドフランチャイズが軒並み批評、興行面で結果を出しているのが嬉しい誤算で、36年ぶりの続編となる本作『ビートルジュース ビートルジュース』も本稿執筆時点で2億ドルを超える特大ヒットを記録している。精細を失って久しいティム・バートン監督を筆頭に、キャリア復調とはいえ今年73歳のマイケル・キートン、52歳のウィノナ・ライダーが再演する座組はハリウッドの懐古主義がありありと伺えるのだが…。

 結論から言うと『ビートルジュース ビートルジュース』は先行した『ツイスターズ』『エイリアン:ロムルス』のような絶賛すべき続編ではないが、バートンがかつて最も独創的なヒットメーカーであったことを思い出させてくれるには十分な1本だ。前作『ビートルジュース』はヒットこそしなかったものの、後にカルト化。なにより撮影当時15歳だったウィノナが後に90年代を席巻する“ウィノナ・フォーエバー”の幕開けだった。彼女が体現した仄暗い美しさはそれから36年を経て、ジェナ・オルテガに引き継がれる。バートンの復調作であるNetflixのTVシリーズ『ウェンズデー』に主演したオルテガを、ウィノナ演じるリディアの娘役にと考えたキャスティングはオスカーものだろう(キャスティング賞創設は2025年度だけど)。動脈硬化寸前の俳優陣において唯一人の若手であるオルテガは『ビートルジュース ビートルジュース』の上映会場を老人たちの同窓会で終わらせることなく、『ウェンズデー』でミーム化したヘンテコダンスも披露してくれる。

 パートナーを白塗りにしたがるティム・バートンによって担ぎ出されたモニカ・ベルッチや、頭蓋骨が半分しかないウィレム・デフォーらがくんずほぐれつに合流するプロットはてんこ盛りが過ぎるものの、渋谷の路上でなければ“ハロウィンパーティー”にケチをつけるのも野暮か。600歳のビートルジュースが36年で老けているのは御愛嬌で、キートンは衰え知らずのキレで底知れない才能を発揮。しかし、誰よりも笑いを呼ぶのはリディアの継母役キャサリン・オハラで、36年間浮き沈みすることなくキャリアを正統進化させ、近年も『シッツ・クリーク』で頂点に達している彼女はあらゆる場面をさらっている。

 特殊メイクにストップモーションアニメまで縦横無尽に盛り込んだバートンのキッチュな世界観は、僕の身近な0年代生まれに言わせれば“昭和レトロ感”(便利な言葉になったものだ)。バートンはディズニーでスポイルされた悪ふざけとグロを取り戻してギャグもノリノリ。死者をあの世に運ぶ列車の名前は“ソウルトレイン”。もちろん選曲は…それ完全にオヤジギャグだよ!奇才も御年66歳である。


『ビートルジュース ビートルジュース』24・米
監督 ティム・バートン
出演 マイケル・キートン、ウィノナ・ライダー、ジェナ・オルテガ、キャサリン・オハラ、ウィレム・デフォー、モニカ・ベルッチ、ジャスティン・セロー
 

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