長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ジャッキー・コーガン』

2020-04-12 | 映画レビュー(し)

 一見、マフィアの賭場襲撃者を探すフィルムノワールかと思いきや、そんな犯罪映画の華は持っていない。サブプライムローンが破たんし、打ち捨てられた住宅が軒を並べ、スラムと化した地方都市が舞台だ。『グッドフェローズ』のヤクザ俳優レイ・リオッタはあっさりと殺され、『ザ・ソプラノズ』のジェームズ・ガンドルフィーニが現れたと思えばうつ病の殺し屋役。その他、サム・シェパード、リチャード・ジェンキンスら声も顔も渋いオッサン達の間をバッチリ決めたリーゼントヘアのブラピが行ったり来たりするだけである。

 しきりにオバマの演説、経済危機を報じるニュースを背景音にしている事からもリーマンショック後のアメリカ経済をギャング映画のレトリックで語り直している事がわかるが、その説明が過ぎる演出は時に野暮ったく、成功しているとは言い難い。『ジェシー・ジェームズの暗殺』でもブラッド・ピットとタッグを組んだアンドリュー・ドミニク監督はバイオレンス描写に冴えを見せるが、前作で撮影ロジャー・ディーキンスが見せていた詩情は皆無だ。

 自由の国アメリカにおいてサブプライムに金を突っ込んだ事を“自己責任”としながら、なぜ破たんした金融会社に税金が当てがわれるのか。「いいから金を払え」と言うブラピのヤキはイマイチ凄みが足りなかった。


『ジャッキー・コーガン』12・米
監督 アンドリュー・ドミニク
出演 ブラッド・ピット、リチャード・ジェンキンス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、レイ・リオッタ、ベン・メンデルソーン、サム・シェパード
 

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