「レイクサイド」東野圭吾 2002実業之日本社
これは!
この作品はわざと前後の重要な部分を書かないことで読者に想像させようとしたのか?
主人公の『家族』と『父子』の関係、そして、子供たちが大きくなっていった後の展開。
作品中の、どうにも納得のいかない展開。
それは主人公の思いだけでなく、その主人公に対しての読者の思いでもある。
やがて、その理由がだんだんと明かされていく。
ドラッグや裏口入学くらいは想定内だ。しかし、『それ』は考えなかった!
中途半端な若さと、中途半端な成功、中途半端な子供への愛。
そして納得した気になってしまうのだが、どうももやもやが残る。
私なら、関係者を集めて問い詰める前に警察に連絡をしている。
そうしなかったのは、なぜだ。
ミステリの謎解きと、その後の展開のためだと言うだけではいけない。
すでに醒めてしまっている夫婦の愛。
ならば、子供との間に特殊な関係、想いがなければならない。それは主人公の心の傷か、その生い立ちに何かあったのか。父親との関係にトラウマが?その家庭環境は?それとも、その子供が何か特別な存在だったのか。
血のつながりのない息子が父親を求めていたことを知り、そのために自分も共犯者となる道を選ぶラスト。
だが、その歪んだ美しさに納得してはいけない。
そこまで周りを追い込んだ頭の良い主人公が、その後の展開を想定できないほど馬鹿とは思えない。
必ずその後に大きなミステリー展開が起こるに違いないのだ。
裏口入学に子供たちが4人とも成功するだろうか。
また、成功したとしてもそのカリキュラムについていけるのか。親と同等以上の社会的成功ができるだろうか。
運命共同体となった親たちの関係は、どこかで破綻するのではないか。破綻しないまでも子供たちにばれる可能性はないのか。
社会的にはじき出されたそのときの子供が、自分がそうなった原因を探ろうとして親たちの秘密を嗅ぎ出す。そして、その別荘地で起きた事件を知ることになる。それは、成功しているほかの子供たちへの脅しの材料となるのだった。
互いが秘密を共有して運命共同体になるということは、生涯にわたって互いを監視し合う間柄になるということだ。
果たしてこのメンバーでいつまでそれに耐えられるだろうか。
子供たちが全員社会的に成功できたとしても、どこかでほころびが生まれるような気がするのだった。
作品そのものよりも、書かれていない部分にわくわくするぞ。
でも、それは一読者の独りよがりだから、もやもやするんだな。