「緊急解説! 福島第一原発事故と放射線」水野倫之・山崎淑行・藤原淳登 2011NHK出版新書
(2011年06月発行、05月執筆)
事故2ヶ月のまとめ
政府への批判はあるものの、その表現は各方面に対して当たり障りのないようにかなりオブラートの包まれている。
やっぱりNHKの限界か。一生懸命裏読みする必要がありそうだ。
山崎さんは日本の技術開発を進めていれば事故にならなかったという考え方らしい。
もう半年になろうとするが、『収束』の見通しは立っていない。
これは続編的な改訂版が必要だ。
半年、一年で何がわかったのか、何があったのかをNHK的立場で記録してくれればいい。
この2ヶ月段階では、結局たいした評価は出来ていないということなのだから。
そして、すこしづつ明らかになる被爆国としての実態に合わせ、その中でどう生きるのかをNHKさんにもそろそろ提案、公表していってもらいたい。
健康被害は当事者以外は気付かない程度であり、社会はそのまま動いていくのだから。
1955「日米原子力協定」「原子力基本法」「日本原子力研究所(現在の独立行政法人日本原子力研究開発機構)」
1956「原子力委員会」「原子燃料公社」
1967「動力炉・核燃料開発事業団」(98年に核燃料サイクル開発機構に1998年改組、2005年に原研と統合)
1978「原子力安全委員会」~5人しかいなかったが、1999年の東海村臨界事故で100人に増やす(非常勤など形式的なもの)
「オフサイトセンター」2011機能せず
2001「原子力安全・保安院」設立当初から組織の立ち位置に問題視
情報を隠そうとする原発関係者~これは法律違反なので、記者さんも訴えればよかったのに。
「想定外ではなく想定しようとしなかった」NHK関係者がこれを言うのは重大ですね。原発関係者も認め始めており、それから論理的に考えれば現存の原発は全て「審査から見直し」をする必要があると言える。当然、再稼動などは以ての外となる。
核燃料サイクルについてももっと言及してもらいたかった。完成の見込みが立っていない技術ですよね!
日本政府(やNHK)は「ICRPの勧告に従っています」というスタンスをとっているが、都合よく解釈しているだけ。ICPRの方は「必要のない放射線はできるだけ浴びない方がいい」という100ミリシーベルト以下でも発ガンリスクは上がるという考え方をとっている。
ICRPの勧告の原則は放射能被曝は「経済的および社会的な考慮を行った上で合理的に達成可能な限り低く維持する」・・・もう少し国民(特に福島のこどもたち)の健康を考えた政策・対策がとられるべきだった。それはできたはずだ。
「必要のない被曝は合理的に可能な限り避けるべき」であって、「この程度の被曝では(ただちに)健康に影響はない」などと言うのは愚の骨頂である。
IAEAの基準では「屋内退避」は2日間、「避難」は7日間。
食品、暫定基準の説明不足、調査不足、公表不足。
政府のやるべきことはできる限り被曝料を減らすことと情報公開、文書の記録。
この本が書かれた時期にはまだチェルノブイリの10分の1とされていたが、最新の推定ではすでに3割に達しているとも言われる。それが事実であるとすれば、年内にもチェルノブイリを超えるかもしれない?(福島第一原発の地面から水蒸気が噴出していると言う噂も)