「冷たい校舎の時は止まる(上下)」辻村美月 2007講談社文庫(2012年22、23刷)
2004講談社ノベルス
第31回メフィスト賞受賞~デビュー作~
デビュー作でこのボリュームって、メフィスト賞ってどんなん?
おお!『面白ければ何でもあり』な持ち込み的賞なのか!!!
西尾維新も受賞者にいるじゃないか!
もうね、突然作者の名前(点が少ない)が登場人物の中にあった時点で『こいつは!』と思うでしょ。そのうえ、それが構成上のヒントにもなったりしているあたりがすごいですよ。(誰かの頭の中の世界であり、その者の思い通りになるわけで、それは作者の思い通りになる世界(作品)というわけで)
もうね、前提になることが登場人物たちの仮定ばかりだから『そんなのどうなるかわからないぞ』と自分に言い聞かせながら読んでいく。『わからない、悔しい』と思いながらもワクワクしながら読み進めていく。『2か月で笑顔になれる相手?』『学祭とは限らないよね』『生きているのか死んでいるのかも』まあ、自殺したのがだれかは予想できたし誰の想いかも気づいちゃう(読者を満足させる作者の誘導か)んだけど、そうなる展開が想像できずに確信が持てない。そこら辺を納得させてしまう設定と構成がすごいわ。そして、読後感をすっきりさせているのが作品の格を上げているね。
展開がうまいのは、読者に『こうすればいいのに』『普通こうするだろ』と思わせておいて、ちゃんとやっていることだね。それを少し繰り返せば、作品に対する読者の意識がそこから肯定的になるわけだ。それもページ数を増やすんだけど。
名前の使い方。~違う目線での再読~
時間の展開。
『被害者と加害者の逆転』
深月は結局そのままの自分でいたかったのに、『正しい』対応・方向へ導かれちゃったわけで、それが『責任』だったわけだね。
春子も深月もスイッチのタイミング、逃げ、すり替え
彼女たちの気持ちと行動は目的がわからない。目的はわからないけれど気持ちはわかる。人はそういうものか。
深月のあとから榊が飛び降りて追いつくことは物理的にはないけれど、何でもあり(願望)の世界ではありだ。そして、そこには榊への深月の気持ちが見て取れる。鷹野じゃなかった。だよね?あ、単に立場による役割分担か。
それにしても、並べられた事例ではかなりの時間経過があるのに、この件ではほとんど時間経過がない夢的な扱いなんだな。