「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月 2011集英社
『小説すばる』2009年11月号~2010年11月号
伝説に残る事件を起こすなら、活き造りの魚を骨の姿で泳がすように、ホルマリン漬けの活き造り少女ってのはどうかと思った。体の肉を全部そぎ落とされて骨と内臓がホルマリン漬けになり、そこから首だけが外に出て口がまだ動いているっていう映像をネットに流すと。いやあ、さすがに中学生にはその技術は求められないか。そうだよね、水槽すら用意できなかったんだから。あと、小林アンの条件にも合わないしね。
中二病、少年A、少女A
でも結局自己評価が高すぎる。視野狭窄。思い込みは強いがただの当てつけ。でも、そんな気持ちがよくわかる。自分にもそんな記憶があるのだから。ああ、恥ずかしい。
事件が起きてしまうかどうかはめぐり合わせ、運やタイミングもあるね。
まあ、小林アンの場合はどう見ても甘いのでやれるはずがないと決めつけて、経過だけを期待して読んでいった。しかし、徳川がもっと危ないやつでタイミングも悪ければ事件は起きてしまったよね。
少女Aと私を隔てるものはあんなにも薄かった。
ネズミはけだものというところで、ハム○郎や○ッキーマウスの共食いを想像しちゃったよ。
流れがいいよね。追い詰められていく小林アンと、家族への反発、動物虐待の少年A(徳川)~そして自分の覚悟や正体に気づいていく~特にネズミからのにゃあにゃあ反転の場面~「お前なんて、殺してやる価値もない」・・・その後の本気も説得力なく、読者も『無理無理』って思うけど、だんだんと手筈が整っていくとおやおやと心配になる。アンの本気って勢いと思い込みだから、まだまだできるはずないわと思いながらも。でも、中二だから…
で、自己消滅の願望を叶えることなくしくじる。
ー私たちは、やり損ねた。
徳川側からすれば、好きな女の子から殺してくれと頼まれる。手が届かない、接点などないと思っていた相手、将来的にもその可能性は見いだせない。そんな相手を自分のものにすることができる、殺傷という形で。アンよりもずっと、かなりの間本気で殺すつもりになっていたのではないか。ただ、作中にある通り、残されてしまうことへの不安があった。厳しい言葉を吐きながら、先延ばしを求めてもいたに違いない。しかし自分がアンを追い込むことで日時まで決まってしまう。徳川からしても、独占欲の誘惑に負ける危険性は大いにあった。
殺された少女A
2015年9月29日三重県、高校3年生
2016年2月大阪、高校1年生(未遂)