amazonプライムで見た映画がなかなかよかったので紹介します。
「家(うち)へ帰ろう」(パブロ・ソラレス監督 2018年)
アルゼンチンの映画です。
(以下、ネタバレです)
アブラハムは、ナチスのホロコーストを生き延びたポーランド生まれのユダヤ人で仕立て屋です。
ポーランドからアルゼンチンに来て70年が過ぎましたが、一つだけ心残りがあります。
戦時中彼の命を助けてくれた友人に手紙の一つも出さずに来たことです。
娘たちが彼の家を売り、彼を老人ホームに入れようとしたので、彼は人生最後の旅に出ようと決心します。
ポーランドに行ってその友人に会い、彼が最後に仕立てたスーツを届ける、というものです。
これは、その道中の物語。
アブラハムはなかなかの頑固じいさんだけど、ユーモラスな人物でもあります。
行く先々で様々なトラブルを起こし、また様々な人と出会います。
持参したお金を盗まれてしまったり、長年会うことのなかった娘と再会したり…
人々との出会いがとてもいい。彼が出会う人たちもとてもいい。
そして、最後に彼はとうとうポーランドの故郷に行き着くのですが、果たして彼の友人は…
友人の家が近づくにつれて、彼はどんどん不安になっていきます。
アブラハムは言います。
「会えないことも
会えることも
すべて怖い…」
70年という時間はとてつもなく長い。
でも、青春時代というのは、人生の中で一番輝いている時間なのですね。
現に、私の祖母(105歳まで生きました)が最後の日々に語っていたのは女学校時代のエピソードでした。まるで昨日のことのように祖母は語ったものです。
88歳のアブラハムにとって、ポーランドにいた青春時代がつい昨日のことのように思われるのは、本当にその通りなのだと思います。
ただ、やはり時間の経過は現実で、過酷でもあります。
友人もまた同じように感じてくれるかどうか、そして、もしかして彼はもう死んでしまっているのではないか・・
アブラハムは不安に押しつぶされそうになります。
そして、最後の最後に、彼は行き着くのですね。友人のもとに。
お互い、目を合わせたとたん気づきます。
「アブラハム!」
70年の時間が消えた瞬間です。二人はしっかり抱き合います。
友人は言います。
「アブラハム、
うちへ帰ろう」
最後は涙なくしては見られません。
ナチスの映画はたくさんありますが、これは最後の最後に気持が軽くなり、温かくなる映画です。