最近見たホラー映画
「ヘレディタリー/継承」(アリ・アスター監督作品 2018年)
を紹介します。
怖いと評判だったので、怖いモノ見たさに、アマプラで500円払って見たのですが、
あんまり怖くなかった、というか全然怖くなかった。
アリ・アスター監督の初長編作品だそうで、なるほどあちこち粗が目立ちます。
「批評家から絶賛」「2018年で最も怖い映画」と評されてはいますが、どうかしら・・
主人公のアニーを演じたのは、トニ・コレット(「シックス・センス」のお母さん役)。彼女がとてもよかった。そして、アニーの夫役が、以前ここでも紹介した「イン・トリートメント」のセラピストを演じたガブリエル・バーン。この人がなかなか渋くていい。
ホラーなのでストーリーはあるようでない。荒唐無稽な話です。
(以下、ネタばれ)
アニーはドールハウスの制作者。最近高齢の母を亡くしたばかり。
このドールハウスは「シャープ・オブジェクツ/KIZU傷」にも出てきますが、「シャープ・オブジェクツ/KIZU傷」のほうがはるかに使い方が上手い。(5月9日の記事参照)
ここでは単に、アニーの生業がドールハウス制作というだけで、広くて陰気くさい家の、いたるところに彼女が制作したドールハウスがあるのがなかなか不気味です。
アニーには高校生の息子ピーターと中学生の娘チャーリーがいます。
ある日、ピーターは友達のパーティに行くのにチャーリーを連れていってほしいと母に頼まれます。
ピーターは嫌だといいますが(パーティに妹連れで行くなんてティーンエイジャーにとっては最悪)母のたっての頼みを断わりきれず、チャーリーを連れて車で出かけます。
帰り道でチャーリーが喘息の発作に襲われ、気をとられた隙に車は電柱に激突。あろうことか、チャーリーの首は(垂れ下がった電線か何かで)ちょん切られて死んでしまうのです。
ここがねえ、よくわからないのですよ。
事故の衝撃が描かれ、ピーターが呆然としている顔が映しだされ、次にピーターが家に戻ったシーンが映されるので、なんだ大丈夫だったのね、と思ったのですが、
翌朝、道路上に血まみれのチャーリーの首が転がっていた・・ってどういうシチュエーションなん?
いたるところに首をちょん切るシーンが出てきます。
たとえば、チャーリーは学校で窓ガラスに激突して死んだ鳥の頭部をハサミでちょん切って持ち帰り、スケッチしたりするのですね。
気味の悪い家族です。
チャーリーの死に、母はすっかり狂乱状態になります。
後半は、狂った母の妄想が生みだした非現実的な世界で、ひょっとすると最後まであれは母の妄想であり、その妄想を引き継いだ(遺伝的に)ピーターの妄想かもしれないと思えてきます。
悪魔教のカルトなんかも絡んできて、もう何がなんだか、の世界です。
なので、全然怖くない。
映画解説によると、アスター監督はロバート・レッドフォードの「普通の人々」を参考にしたとあり、一人の死によって家族がバラバラになっていく話を作りたかった、というのだけど、それにしてはあまりに荒唐無稽で説得力がないよね、と思いました。
「シャープ・オブジェクツ/KIZU傷」のような歪んだ人間の心理のほうがはるかに怖いです。