入院中に栄養士さんの栄養指導があって、食事の栄養バランスが大事だと言われました。
たしかに入院中の病院食でコレステロールも中性脂肪も体重さえ下がったのだから、
食事がいかに大事かということは痛感しました。
でも、一人暮らしだと毎日料理をするのも億劫で、食材も残るしで、コンビニやスーパーのお弁当という日が多くなってきました。
そんな時に、この本を読んだらもう目からウロコ。
「一汁一菜でよいという提案」土井善晴著(新潮文庫)
著者は有名な料理研究家で、やはり料理研究家の土井勝氏のご子息です。
初版は2016年なので(2021年に文庫化)すでにご存じの方も多いかと思いますが、私は初めて読みました。
この本は単なる料理本ではありません。
本の冒頭にはこう書いてあります。
「この本は、お料理を作るのがたいへんと感じている人に読んでほしいのです。」
何しろ、料理研究家なのに、家庭料理は一汁一菜でよい、
ごはん、味噌汁、お漬物、
この三点セットでよいというのですから。
(ただし、お味噌汁は具沢山)
料理本というより、思想書といえばいいか。
日本には「ハレ」と「ケ」という概念があって、日常の食事は「ケ」なので味噌汁とご飯でよい、
ご馳走は「ハレ」の日に食べればよい、
と言い切っているのです。
毎日の料理には時間をかけなくてもよい、ただし愛情をかけよ、日々をていねいに一生懸命生きよ、というのです。
主婦たちの間で救世主のように言われているのも当然です。
主婦ばかりでなく、私のような高齢の一人暮らしの人間にとっても、救世主のような本です!
毎日の料理に疲れはてている主婦、あるいは今日は何を作ろうかと悩んでいる主婦の人たち、
「おいしいもの」を作らなくてはと強迫観念的にかられている女性たちに、
ぜひ、一読をお勧めします!
それだけでなく、日本人が古来より持ち続けている知恵のありかや、その道筋はどこから来たのかにまで言及されていて、読み応えのある本です。
写真も多数入っており、読みやすい本でもあります。
ちなみに土井善晴氏のYouTube動画を貼り付けておきます。この他にもたくさんあります。
これを読んで、久しぶりに「ハレ」と「ケ」という言葉を思い出しました。
日本人が育んできた食文化の奥深さを、改めて思い知らされた気がします。