今回は、2010年12月にお会いしたイスラエルのドラゴンフルーツ研究者M氏に伺った「ドラゴンフルーツの育種」に係る話題の備忘録をつけたいと思います。
ドラゴンフルーツの育種と云えば、日本でも2007年12月に「ちゆらみやらび」が品種登録されています(「ちゅらみやらび」だと思っていました!)。
「ちゅらみやらび」は、果肉が淡いピンク色で、糖度が高く、クリーミーな食感といった特徴を備え、ドラゴンフルーツの品種改良の有用性を示してくれた品種です(写真1)。
ただ、果肉のピンク色については「ちゆらみやらび」でなくても、実生で株を育てた際には、よく現れる形質の様です(写真2)。
写真2:実生で育成した複数株より得られた果実の断面
果肉がピンク色のドラゴンフルーツが全て「ちゆらみやらび」ではないので注意が必要です。
イスラエルはドラゴンフルーツ育種の先進国です。
M氏は、ドラゴンフルーツの育種(品種開発)に携わる研究等を長年に渡り行ってきた方です。
以下にM氏から伺った話題をQ&A方式で記します。
Q1:イスラエルでのピタヤの育種の概要を教えてください。
A1:イスラエルでは約80年からピタヤの育種を行っており、国内8ヶ所の圃場(全体で80ha程度)で選抜を行っている。これまでに250系統 程度が収集、育成されている。
Q2:イスラエルでは、ピタヤは重要品目ですか?
A2:地中海を経て、ヨーロッパに輸出している重要品目である。
Q3:ピタヤの品種育成に要する期間を教えてください。
A3:概ね10年である。
Q4:播種~初収穫までに要する期間を教えてください。
A4:2年と考えている。
Q5:ピタヤの味は、父本または母本由来のどちらと考えていますか?
A5:どちらもありえると考えている。
Q6:これまで得られた系統・品種の中で特徴的なものは、どの様な特性を備えていますか?
A6:Selenicerus属(イエローピタヤ)とHylocereus属(ドラゴンフルーツ)の交雑系統(赤肉)を得た。これは、開花から収穫までに2ヶ月程度を要する。他にもイスラエルで は、台木用の品種もある。
Q7:ピタヤの栽培を考えた際に、イスラエルと沖縄県を比較してイスラエルが有利だと思う点はどこですか?
A7:イスラエルは湿気が少ないため病気が少ない。また、露地で潅水量の調節が可能である。あと、台風がない。
Q8:逆に、沖縄県が有利だと思う点はどこですか?
A8:イスラエルは昼温と夜温の差が大きく、地域間の環境差も大きい。あと、沖縄県は水が豊富にある。
Q9:潅水量の調整が可能とのことですが、潅水量と果実の甘さに相関がありますか?
Q9:相関はない(低い)と思う。
Q10:ピタヤの栽培で特に気をつける作業を1つ挙げるとすれば何ですか?
A10:枝(結果枝)が重ならない様にすること。とても重要である。
Q11:ピタヤの育種を行う際の選抜基準を教えてください。
A11:一律の数値基準があるわけではないが、以下の7点を重視している。
1.耐暑性および耐寒性
2.味(Brix だけでなく達観による食味が重要)
3.貯蔵性(10℃で3週間+常温で5日間)
4.果実の大きさ
5.果実の形状および容姿
6.生産量(反収)
7.倍数性→F2を作る際に重要
以上です。
多忙なスケジュールにも関わらず、丁寧に対応していただきましたM氏に改めてお礼を申し上げます。
〇参考サイト
・「農林水産省 品種登録ホームページ」
貿易会社に勤めていて、仕事でピタヤについて調べています。
レッドピタヤとホワイトと、同種であるといえないでしょうか。
もし、言えるのであれば、何を根拠にしているか、文献を教えていただけないでしょうか。
目録の文献を探したのですが、(有)カミスも見つけることが出来ませんでした。
どうぞよろしくお願いします。
はじめまして。
書き込みありがとうございます。
せっかく質問をいただいたのに、回答が遅くなり申し訳ありません。
さて、質問の「レッドピタヤとホワイトと、同種であるといえないでしょうか。」ですが、結論から書くと「レッドピタヤはホワイトと同種とする説もあります」。
根拠となる資料は、
・Morphometric Analysis of 21 Pitahaya (Hylocereus undatus) Genotypes(21種類の遺伝子型のピタヤにおける形態解析)
がネットで無料閲覧できます。
http://www.jpacd.org/downloads/Vol9/V9P99-117.pdf
この文献では、Hylocereus属のピタヤは、果皮色や果肉色が違っても、分類の基礎となる茎や花の形態的特徴を比較すると Hylocereus undatus の変異内であり同種である、といったことが書かれています。
ピタヤの分類は、近年10年で色々と議論されている様です。