多慶屋裏

かつて、御徒町の多慶屋レデイス館裏手に猫がゐた。
人なつこい猫で、多慶屋に買ひ物に来た人に可愛がられてゐた。多慶屋裏手にゐるから「タケちやん」と名が附けられてゐた。誰かが、雨露をしのげるやうに、ダンボール箱の猫小屋を置いてもゐた。
私も多慶屋に来るたび、頭を撫でてやつてゐた。

しかし、いつの間にか、猫小屋は撤去され、猫も姿を消した。
多慶屋裏手の電柱には、この猫の居所に心当たりはないかといふ貼り紙がつけられてゐた。

写真はその「タケちやん」。

（2002年、台東区台東、富士フイルムネクシアＱ１）