1年前のある日、私は上野公園を歩いてゐた。
まもなく五條天神前にさしかかる頃、アコーデオンの音が聞こえてきた。
それまでの私は、大道芸にあまり関心がなく、横目で通りすぎることが多かつた。
三鷹市に在住してゐた頃、井の頭公園で「人間美術館」と「顔面紙芝居」を観た記憶があるだけだつた。
しかし、そのアコーデオンはそんな私の足を止めさせた。しばらく聴いてゐたいと思はせるやうな音色だつた。
しかし、芸人の周りには誰もゐない。大道芸慣れしてゐない者には、1人だけ芸人の前に立つといふことはかなり勇気のゐることである。なにしろ私は“蚤の心臓”どころか“ミジンコの心臓”といふべき小心者である。そんなわけで、少し離れたところに腰掛けて聴いてゐた。長時間じつくり聴きたい、酒を飲みながらじつくり聴きたいと感じた。
その後の記憶は今となつてはあまり鮮明ではないのだが、投げ銭を払はずにその場を立ち去つたやうな気がする。ただ、芸人の足元に置かれた銀杏のマークのホワイトボードには「みぎわby蛇腹美音」と書かれてゐたことは記憶してゐる。
その日以降、私は様々な大道芸人の芸を見物するため都内のみならず、横浜やつくばまで足を運ぶやうになつた。
写真は当ブログ「音楽は酒の肴」(2007.9.20)でもとりあげたみぎわさん。以前掲載した写真は真剣な眼差しで演奏してゐる姿を捉へたものだが、今回は演奏を終へて一息、笑みがこぼれたところを捉へた写真である。
この写真を含む3枚が、みぎわさんのホームページに掲載されました。
(2007年9月、台東区上野公園・東京都美術館前、ニコンNewFM2,タムロン70~210㎜F4~5.6)
※みぎわさんのブログ「続*屋根裏の歌姫」