さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

塩はスイカの名脇役 甘味を引き立てる「対比効果」

2024-09-01 16:52:52 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
メロンと並ぶ夏の風物詩であるスイカ。砂地を適地とするスイカは和歌山県内でも盛んに栽培され、近畿では兵庫県と並ぶ産地である。
スイカを食する際に塩をかける方もいらっしゃるだろう。では、甘いスイカになぜ塩なのか。


【写真】主役の「スイカ」と脇役の「塩」

塩をかける理由は、スイカの甘味を強く感じるため。
人間の舌には味覚を感じる「味蕾(みらい)」があり、塩味・甘味・酸味・苦味・うま味を識別している。この5種類の味を「基本味」という。

一般的に食べ物は複数の基本味で構成されており、味の組み合わせにより、味の強みや弱みを感じる。スイカの魅力は豊富な水分とその中にある甘味であるが、この甘味をより一層引き立てるために有効であるのが、味に対比を与えること。

2種類の味を味蕾で同時に感じると、どちらかの味が引き立つというもので、これを「対比効果」という。一方の味が強く、他方の味が弱いときに起こる現象で、スイカに塩をかけすぎると塩味を強く感じる。
スイカの甘味を引き立てるための名役として、塩が存在しているといえよう。

これは、甘いお汁粉に少量の塩を加えることと同じ。有塩のトマトジュースの方が無塩のものよりも甘く感じるのも、この対比効果が作用している。

塩の効果はスイカの甘味を引き立てるだけではない。日本食品標準成分表(2020年版)によると、スイカ100gあたりのカロリーは41キロカロリーと控えめながら、糖質は9.2gと適度に含まれる。
エネルギー転換が早く血糖値の上昇を抑えながら水分を体内に吸収しやすいため、塩を同時に摂取することで、効率よく体内に塩分を補給することができ、熱中症予防の効果もある。

美味しく、健康に夏を乗り切るための先人の知恵がここにある。

(次田尚弘/和歌山市)
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品種改良の恩恵は無くとも 家庭でも育てられる「メロンの種子」

2024-08-25 16:46:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、容易にできる「桃の湯むき」について取り上げた。
たいていの果実に存在し、食する人にとって少々厄介な存在が「種子」である。桃であれば、果実の中央に位置し、夏の風物詩のひとつ、スイカやメロンは中央部分に細かい種子が多数存在する。

スイカの種子を庭に飛ばし、そこから発芽したものが大きなスイカに育つのではと、子供心にワクワクした記憶がある。
先日、メロンの種子の一部がキッチンのゴミカゴに残り、知らぬ間にそこから発芽するという出来事があった。そもそも、果実の種子から二世代目の果実はできるのか。二十数年越しにその疑問について調べてみた。


【写真】発芽した「メロンの種子」

結論から申し上げると、食せる果実にまで成長するが、病気にかかりやすく、味が低下する可能性が高い。

その理由は、種子を持つ果実(親)は、そもそも、病気に耐性があるAという品種と、味に魅力があるBという品種を掛け合わせたCという品種であることが多い。同じ畑でCという同じ品種同士が交配してできた果実の種子は、親の品種と同じ(クローン)では無く、親の品種よりも劣る可能性が高くなるというもの。

通常、メロンの種まきの時期は3〜4月で、生育には25度以上の気温が維持されることが望ましい。今の時期に発芽してもこれから気温が下がる季節になるため露地栽培で果実になるまで育てるのは難しいが、春まで種を保管し、適切な時期に発芽させることはできる。

同じ労力をかけて育てるならば、病気に強く美味しさ重視の種子を購入したいところだが、自分が食した果実の種子から、次の果実を育てるというのも悪くない。

あまり実用的な情報ではないが、大人の夏休みの課題として笑納いただければ幸いだ。

(次田尚弘/和歌山市)
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もっと気軽に食べやすく 容易にできる「桃の湯むき」

2024-08-18 22:23:24 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、桃の概念を覆す、濃厚で芳醇な味わいが特徴の「黄金桃(おうごんとう)」を取り上げた。
桃は美味しいけれど、皮を剥くのが難しくて億劫という方がいらっしゃるかもしれない。
今週は、容易な桃の皮むきの方法を紹介したい。


【写真】湯通しの時間と氷水がコツ

桃の皮むきとして一般的であるのが、包丁の柄に近い方の腹を外皮に優しく当て、少しずつ剥いていく方法。桃の固さによっては剥きづらさを感じることがあるだろう。そこで、おすすめしたいのが「桃の湯むき」である。

要領はトマトの湯むきと同じ。まず、桃の上部に包丁で十字に切り込みを入れる。続いて鍋で湯を沸かし、沸騰したタイミングで桃を入れる。10秒程度すれば鍋から取り出し、氷水を張ったボウルに入れよく冷やす。

すると、上部に入れた十字の切り込み部分の外皮がふやけてくる。外皮を指で摘まんで、下部に向けてゆっくりと剥いでいくと、スルスルと皮が外れ、桃の果実が現れるというもの。

せっかく桃を冷やしたのに熱湯に入れるのかと抵抗を感じるかもしれない。筆者もそう感じたが、実際に試してみると気になることはなく、美味しくいただくことができた。果実の中心まで熱が通らないよう、熱湯に浸けるのはできる限り短時間とし、氷水でしっかりと冷やすことがコツのようだ。

さらに、果実に一定の固さがあれば、外周に沿って桃の中心部分に、種に当たる深さで一周の切り込みを入れ、上下を両手で掴み、それぞれの手を逆方向に回すことで、桃を半分に分離できる。

その時の桃の状態により左右されるが、様々な方法を試すなかで、湯むきが最も容易であるように感じた。
シーズンは終盤となってきたが、皮を剥くのが苦手な方は、ぜひ試していただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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桃の概念を覆す 濃厚で芳醇な味わい「黄金桃」

2024-08-11 19:47:15 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、鰻と梅干しの食べ合わせについて取り上げた。食欲が落ちる猛暑の夏でも、美味しく水分と栄養分を摂取できるのが桃。
この時期に出回る、一風変わった桃が「黄金桃(おうごんとう)」だ。外皮が一般的な桃の色とは異なり、美しい黄色をした品種。今週は黄金桃を紹介したい。


【写真】まるでマンゴーのような「黄金桃」

黄金桃は「川中島白桃」の偶発実生として誕生したもの。果実のサイズは300g程度とやや大きめ。見た目が可愛らしく香りも良好である。袋を被せて栽培したものは美しい黄色に仕上がるが、無袋で栽培したものは果皮が赤くなる特徴がある。

食してみる甘味が強く、程よい酸味もあり、極めて濃厚な味わい。緻密な果肉と豊富な果汁から、熟したものはまるでマンゴーのような舌触りになり、見た目も味も、桃の概念を覆してくれる。

一般的な桃と同様に、そのまま食するのがシンプルでその味わいを堪能できるが、酸味を活かして、ケーキやタルトに使うことも。
また、マンゴーのようにミキサーにかけ、スムージーにしても美味しくいただける。

農水省統計(2020年)によると、主な生産地は、長野県(35ha)、山梨県(31ha)、山形県(28ha)、福島県(20ha)、新潟県(3ha)と、甲信越と東北。
和歌山県は第10位で2ha程度と栽培面積は僅かであるが、とくに今年は産直市場などで目にする機会が多い。

黄金桃は晩生種とされ、全国的には9月中旬頃まで出回るが、和歌山県内では7月下旬には市場に並ぶ。今が食べ時の黄金桃。桃の概念を覆す、極めて美味しい筆者おすすめの品種。ぜひ、食べてみて欲しい。

(次田尚弘/和歌山市)
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猛暑の夏に効果あり? 「鰻と梅干し」の食べ合わせ

2024-08-04 19:02:30 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、冷凍した実山椒を使った「粉山椒」の作り方を取り上げた。
今年は2回ある土用の丑の日。先月24日に続き、今月5日にも食べようと検討されている方もいるだろう。猛暑が続き、塩分補給のために梅干しを食べる方も多いと思う。
祖母が健在な頃、鰻と梅干しの食べ合わせは良くないと聞いた記憶がある。暑い季節に欠かせない存在の両者。本当に同時に食べることに問題があるのか、調べてみた。


【写真】食べ合わせが心配される「鰻と梅干し」

結論からいうと、この食べ合わせに問題があるという医学的根拠は無く、あくまで迷信であるという。医学的には、鰻の油分の消化を助けるために、胃酸を濃くする作用がある梅干しは、むしろ良い組み合わせ。筆者も試してみたが、体調に変化は無かった。
ただし、個人ごとに持病の有無などで何等かの不都合が起きる可能性は無いとは言えないため、不安な方は医師に相談されたい。

迷信ができた理由を探ると、民俗学に関係する。一説に過ぎないが、梅干しは胃酸を分泌させることで食欲が増し、高価な鰻を過食してしまうため、健康的にも、贅沢という観点からも、それらを戒めようというもの。

他には、暑さで鰻が腐敗していると酸味が出るが、梅干しを同時に食べると、どちらの酸味であるか区別が付かないというもの。昔の方々の生きるための知恵から、鰻と梅干しの迷信が生まれたことに合点がいく。

だが、迷信であると聞き流してはいけない食べ合わせは存在する。例えば、鰻とスイカ。水分の多い食物と油分の多い食物を食べると胃液が薄まり、消化不良を起こすことがあるという。胃腸に自信が無い方は、避けた方がよさそう。

暑さが厳しいこの季節。健康第一で乗り切りたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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