日常的に使う乗り物が、移動手段という役割を超えた力を発揮することがある。
先日、山陽新幹線のこだま号を利用した際、新大阪方面の先頭車両で子供向けの体験型の運転台を見つけた。
JR西日本によると平成21年9月から500系車両に設置され、新大阪~博多の一部のこだま号で運用に着いているという。
実物を再現した運転台に加え、壁全体のイメージ写真は子供たちに夢を与えている。
設置されている車両は自由席車なので自由席券があれば誰でも利用できる。
【写真】子供向けの疑似運転台が設置された山陽新幹線の車内
これを乗り物×子供の夢と言うならば、乗り物×観光という発想ではトロッコ列車をはじめ、車窓の景色を楽しめる座席配置など工夫されたものが各地にある。
乗り物×高級ホテルとしては来年10月から九州を一周する豪華な寝台列車として運用が開始される、日本初のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」は旅好きな方やファンの注目の的だ。
優等列車やトロッコ列車は利用者の目的意識があってこそ利用され、旅を演出する役割が発揮されるもの。
和歌山電鐵貴志川線の「いちご電車」や「たま電車」「おもちゃ電車」は特別な料金を払わなくても乗車できる、いわば日常的な存在。
通勤、通学や買い物で、沿線地域の宝や鉄道会社の施策をコンセプトとして表現された空間を日常生活で体感できる例は数少なく、県外の方から羨ましいとよく言われる。
沿線住民にとって安らぎの空間を、観光客には旅を演出し目的地へエスコートしてくれる同列車に乗って、今までと違った目線で和歌山を見つめていきたい。
(次田尚弘/広島)