「和歌山へ行こらよ」。ここは南海電鉄難波駅。2階中央改札口から和歌山市方面行きのホームへ向かうコンコースに、和歌山への始発駅にふさわしく楽しい掲示物がある。
昨年の加太線開業100周年を記念し、地元大学生のグループが作成した「和歌山おもしゃいマップ」。
和歌山市から加太までの各駅とその周辺にある名所・旧跡やお店の情報が細かく書かれている。
コンセプトは「あなたの知らない和歌山を再発見」。
ガイドブックには載っていない、極めてローカルでかつ大学生の目線で作られたガイドマップは、列車待ちの時間を退屈にさせない。
このようなガイドマップをどこかで見たことがある。
神奈川県の藤沢と鎌倉を走る江ノ島電鉄(通称・江ノ電)だ。江ノ島電鉄線は加太線と同様に沿岸の街を走り路線距離は10㎞。
加太線の9.6㎞とほぼ同じ。沿線には小さな店が建ち並び、大勢の観光客で賑わう風情のある街であることをご存知だろう。
観光地と住宅地が融合でき、それぞれの価値を高め合っている。
加太線は新日鐵住金等への通勤路線で、かつ、夏のシーズンには二里ヶ浜や磯ノ浦、加太への海水浴客を運ぶ行楽路線。藤沢や鎌倉と同様、都心部から約1時間と立地は同じ。
かつてから存在する名所・旧跡、観光地などの地域資源に差があることは否めないが、田舎に帰ったような気持ちになれる、港町を感じられる、などの共通項はたくさんある。
何気ない日常の風景を魅力的な街に見せるには、まずは身近な街に何があるかを知り、その情報を発信する。知ることで街をもっと好きになる。
大学生グループの試みは、加太を「関西の湘南」と言わしめる程にまで発展させるかもしれない無限大の可能性を秘めている。
(次田尚弘/大阪)