さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

狛犬の役割を担う「獅子岩」 三重県熊野市 4

2016-03-07 22:35:44 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、三重県熊野市の世界遺産「花の窟(はなのいわや)神社」の自然崇拝の文化について触れた。
今週は「花の窟神社」の程近くにある「獅子(しし)岩」とその歴史を紹介したい。


【写真】世界遺産登録されている「獅子岩」

「獅子岩」は国道42号沿いの七里御浜にある岩山。
高さ約25メートル、周囲約210メートルの奇岩で、地盤の隆起と波の浸食により、岩山の上部が熊野灘へ向かう獅子のように見えるのが特徴。
国の名勝、天然記念物に指定、世界遺産に登録されている。

獅子岩は、ここから北西へ約5キロのところにある「大馬(おおま)神社」の「狛犬」としての役割を持つ。平安時代の武官、坂上田村麻呂(758-811)が、熊野灘で悪さを働いていた海賊を討ち、その首を埋め、その上に社殿を建てたのが始まりと、紀伊風土記に記されている。
 
坂上田村麻呂の愛馬を一緒に埋めたことから、あるいは、大きな悪魔を討った社という意が、神社の由来といわれている。
海にまつわるそれらの由縁から、獅子岩が社の狛犬と位置付けられ、現在も境内に狛犬が存在しない。
これもまた、自然崇拝のひとつといえるだろう。

獅子岩は写真の愛好家にも人気のスポット。
獅子の鋭い口が光輝くように見える、夕日をバックにした写真は絶好のシャッターポイント。
また、毎年8月17日に行われる全国的にも有名な「熊野大花火大会」では、岩をバックに討ちあがる無数の花火が獅子を浮かび上がらせるさまは、年に1度だけ観る者を魅了する特別なもの。

獅子岩へのアクセスはJR紀勢本線「熊野市駅」から新宮方面へ国道42号沿いに徒歩約10分。駐車場もあり。
自然と文化が一体となった歴史が息づく熊野市の魅力に触れてみてほしい。

(次田尚弘/熊野市)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする