敬語(けいご)は、言葉で表現する人(書き手、話し手など)と聞き手(読み手)やその話題中の対象となる人との上下関係、話題中の人物同士の上下関係などを言葉の内に表現するために用いられる語法。
概要
ここでいう上下関係とは年齢や地位といった社会的な関係に固定されたものではなく、相手が商売上の客であったり見知らぬ人であったりする場合にも使われ、場面によって変化する。親しさ・疎遠さとも関係している。また、暗に相手を見下したりするために用いられることもある。話者の他者への敬意の有無・程度をそのまま反映しているとは限らないが、言葉とは敬語に限らず話者の本意を表しているとは限らぬものである。
日本語などで発達しているが、ヨーロッパ近代語では日本語ほど体系的には発達していない。ヨーロッパ近代語に敬語があるかないかは敬語の定義次第である。敬語を広く「人物間の上下関係や親疎関係を反映した言語表現」と定義すれば、英語で丁寧な命令文に please を付けることなど英語を学習し始めた者でも知っている例を始め、ヨーロッパ近代語にも敬語があるといえる。一方、日本語のように「人物間の上下関係を反映した言語表現が体系的に文法化された形式」をもつものに限って定義すればヨーロッパ近代語には敬語はないことになる。この違いは敬意の表現方法が、日本では言語を中心になされるのに対し、欧米では言語と行為によってなされるという点によるものであり、欧米文化から見れば日本人は行為面での敬意表現が少ないと評価されることもある。また、このため日本では敬語を使わないことが、即敬意を持っていないことにつなげられて解釈されやすい。
敬語の用法は文化によって異なる上下関係に依存しているため、非母語話者にとっては学習上の難点となることがある。日本語の場合は、外国人でも教科書を丸暗記すれば「正しい敬語」が使えるので、むしろ学習が容易だとする意見もある。日本語ほど体系立った敬語を持たない言語では敬意を表す上で抑揚、発音、表情、態度、話の運び方など表面上の言語表現以外に頼る部分が日本語より大きく、活字化しにくいこれらの要素のほうが非母語話者にとっては学習が難しいというわけである。
近年、敬語という語は、差別的なものに関わるという批判や、目上に対するものだけを意識したもので目下に対する言語表現が無視されているという批判から、待遇表現という人間同士の様々なつきあいの中で見られる言語形式の一部として取り上げられることがある。
昔は親に対して敬語を使うのが基本とされていたが、現在だと親に対しての敬語は距離感の象徴と受け取られる。
日本語における敬語表現
一般的には敬語を尊敬語・謙譲語・丁寧語の三つに分類する。日本語学においてはさらに丁重語・美化語を立てた5分類が多く使われている。
文化審議会は2007年2月2日に「敬語の指針」を答申し、その中で尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語と5つに分類している。
敬語にはその性質上、話題中の人物を高めるもの(素材敬語)と話し手が対面している聞き手を高めるもの(対者敬語)があるが、5分類は、従来の3分類を元に、両者を区別することで定義されたものである。また美化語は「敬語」からは外されることが多い。
尊敬語
話題中の動作や状態の主体が話者よりも上位である場合に使われる。動詞(助動詞)・形容詞の語形変化を指すが、名詞の語彙を変えることも尊敬語に含む場合がある(例:だれ→どなた)。
動詞の語形変化には以下のような方法がある。
語彙自体を変える - 例:いる・行く→いらっしゃる。食べる→召し上がる。見る→ご覧になる。する→なさる。
お/ご~(i)になる - 例:待つ→お待ちになる。掛ける→お掛けになる。
お/ご~(i)です - 例:待つ→お待ちです。掛ける→お掛けです。
(a}れ/られ - 例:待つ→待たれる。掛ける→掛けられる。
形容詞・形容動詞の語形変化には語の前に「お/ご」を付ける。
忙しい→お忙しい。多忙→ご多忙。
人名には後に「様」「さん」「殿」「陛下」「先生」「先輩」「閣下」「社長」「部長」などをつける。
名詞には前に「お」「ご」「御(おん)」「み」「尊」「貴」「玉」などをつける。通常大和言葉には「お」を、漢語には「ご」を付けることが多い。「お」「ご」の2つは美化語としても用いられる。「み」以降は付けられる名詞が決まっており、造語力が低い。
車→お車
亭主→ご亭主
心→お心、み心
父→ご尊父
会社→貴社
原稿→玉稿
尊敬語はその昔、階級によりその用い方が決められていたものがある。今日においても皇室典範などや慣習によって、それらの用い方も残っているケースも多い。
誕生
ご誕生が一般的だが、古くは皇族の誕生を降誕といった。
死亡
法皇・上皇・天皇・三后の死去 - 崩御
親王・大臣の死去 - 薨御
皇族・三位以上の公卿の死去 - 薨去
五位以上の貴族の死去 - 卒去
それ以下の人物の死去 - 逝去
謙譲語
話題中の動作の受け手(間接的である場合もある)が話題中の動作の主体よりも上位である場合に使われる。そのため謙譲語は話題中に2人以上の人物が登場しなければならない。
語形変化には以下のような方法がある。
語彙自体を変える - 行く→伺う。見る→拝見する。する→致す。
お/ご~(i)する - 待つ→お待ちする。掛ける→お掛けする。相談する→ご相談する。
名詞に関しては規則的に謙譲語を生成することができないが、下記のような例がある。
茶→粗茶
品→粗品
妻→愚妻(同様に愚息、愚兄、愚弟、愚妹)
著作→拙著
理論→拙論
我が社→弊社
ブログ→拙ブログ
丁寧語
聞き手が話し手よりも上位である場合に使われる語をいう。広義として聞き手に対する配慮を表すもろもろの語を含める場合があるが、文法的に語末に使われる現代語の「です」「ます」「ございます」、古語の「はべり」「候ふ」などを指す。
聞き手が上位の場合の「です・ます」で終わる文体を敬体、同等や下位にある場合に使われる「だ」や動詞・形容詞の終止形で終わる文体を常体と呼ぶ。
丁寧を表す語形変化は以下の通りであるが、文法カテゴリーに応じて語彙を変える場合があり、文法的には丁寧語というよりも丁寧体として分析される。
ます - 見る→見ます(意志)/見た→見ました(過去)/見ない→見ません(否定)/見よう→見ましょう(勧誘)…
です
形容詞 - 忙しい→忙しいです(現在)/忙しかった→忙しかったです(過去)/忙しくない→忙しくありません(否定)/忙しいだろう→忙しいでしょう(推測)…
形容動詞 - きれいだ→きれいです(現在)/きれいだった→きれいでした(過去)/きれいではない→きれいではありません(否定)/きれいだろう→きれいでしょう(推測)…
名詞+コピュラ - 学生だ→学生です(現在)/学生だった→学生でした(過去)/学生ではない→学生ではありません/学生だろう→学生でしょう(推測)…
丁重語
聞き手が、話し手よりも上位であることを表す動詞の語彙をいう。必ず丁寧語「ます」を伴うことが特徴である。また話し手は、話題中の動作主であるか動作主と同じグループに属する。従来、謙譲語として扱われてきたものであるが、謙譲語と違って動作の受け手が存在しなくてもよい。その多くは謙譲語を兼ねているが、丁重語だけに使われるものに「おる(おります)」がある。たんに丁寧語「ます」だけを使うよりもより丁寧である印象を相手に与える。このため自分を上品に見せるための美化語に分類する人もいる。
今、自宅にいる→今、自宅にいます→今、自宅におります
出張で大阪に行った→出張で大阪に行きました→出張で大阪に参りました
山田と言う→山田と言います→山田と申します
美化語
美化語とは話者が聞き手に上品な印象を与えるために使う語のことである。文法的に見て敬語とは言えないが、聞き手に対する配慮を示しているということで敬語に準じるものとされることが多い。これを丁寧語に分類する人もいる。名詞に「お」や「ご」を付けたり、語彙を変えたりして作られる。これには普通に使われるもの、男女に差があるもの、たまに使われるものなどレベルが分けられる。また丁重語を美化語に入れる人もいる。
「お/ご」をつける - 店→お店/茶→お茶/菓子→お菓子/食事→お食事/飲み物→お飲み物/下劣→お下劣/下品→お下品…
語彙を変える - めし→ごはん/腹→おなか/便所→お手洗い
[編集] 敬語以外の待遇表現
敬語以外の待遇表現も話題中の人物に関する素材待遇表現と、聞き手に対する対者待遇表現に分けられる。素材待遇表現には、尊大語・侮蔑語がある。対者待遇表現は丁寧語である「です・ます」をつけないぞんざいな語を用いることで聞き手が同等あるいは下位であることが表現される。また、特に聞き手を卑下し、罵倒する表現を卑罵語として分類することがある。
[編集] 尊大語
通常の敬語表現とは逆に、相手の側に謙譲語を、自分の側に尊敬語を使う表現。万葉集の頃から見られる表現だが、絶対的な身分の違いを前提とした表現なので、そのような身分関係のない近年では日常会話に冗談以外で用いられることは無い。
「正しい敬語」が体系づけられる前からあるものなので昔の人はそのようには意識していなかっただろうが、現代の学校教育を受けた者にとっては、敬語の使い方をわざと間違えることで相手に対する軽蔑や自らの身分の高さを表すものだと考えると分かりやすいかもしれない。
今日、尊大語が見られるのはフィクションの中が主である。時代劇においてお殿様が使ったり、SFにおいて人類をはるか下に見下す悪魔のような存在が使ったりする。あるいは一種のギャグとして現れることもある。
貴様を倒すのはこの○○様だ。(自らに尊敬語の「様」を付加)
呼ぶまでそこで待っておれ(「居(い)る」の謙譲語「おる」を相手に対して使用)
車を用意致せ(時代劇に現れそうな例)
人間どもよ、崇め奉るがよい(SFに現れそうな例。私どもに見られる謙譲語の「ども」を相手への呼びかけへ用いている)
侮蔑語
尊大語が通常の尊敬語と謙譲語を逆用することによって話題中の人物が下位であることを示すものであるのに対し、尊敬語とは逆の機能をもち、話題中の人物が話し手よりも下位であることを示すために用いられる語彙や言語形式がある。これを侮蔑語あるいは軽卑語という。ある種の下品な表現のためあまり注目されないが、日本語の待遇表現の一角を成すものではある。
謙譲語とは動作の主を低めるという機能は同じだが、謙譲語が動作の受け手を相対的に高めることに主眼があるのに対し、侮蔑語はもっぱら動作主を低めるために用いられる。
動詞には「~やがる」「~くさる」「~よる」など侮蔑の助動詞を接続するほか、「死ぬ-くたばる」「食べる-食らう」「言う-ぬかす/ほざく/こく」など、特別の形をもつものもある。
名詞には「糞」「腐れ」などを前置する。
人名に関しては、呼び捨てにすること自体が軽蔑表現になる他、「~の野郎」「~のガキ」のような表現がある。
「敬語」も「日本語の美しい要素」だと思っていたが、それだけでは無い様だ。「言語」は使われていくうちに、徐々に変化していくものだという事がよく分かる。
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