視聴率(しちょうりつ)とはあるテレビ番組をその地区の住民の何パーセントが視聴したかを表す推定値である。視聴率には個人視聴率と世帯視聴率があるが、一般的に視聴率といえば世帯視聴率のことを指す。
視聴率を測定する理由は、民間放送会社が番組の制作費および放送におけるコストをスポンサーからの広告収入で賄う上で、テレビを所有する世帯のうち番組及び放送時間帯に視聴する人数を割り出し提示することで、スポンサーに対して広告料をもらう根拠とする必要があるためである。
日本における視聴率は記録に残るものでは、1954年にNHK放送文化研究所が年に2回、訪問面接法による調査を開始したのが最初で、1955年には電通が年に4回、日記式のアンケートによる調査を開始した(電通による視聴率調査は1963年1月が最終。以後の調査はビデオリサーチへ引き継がれる)。1958年には社団法人中央調査社が同じく日記式のアンケートによる調査を年に4回開始し、1959年には年12回(毎月)に拡大した。1961年4月、ニールセンが日本に進出し測定機械による視聴率調査を開始し、1962年12月からはビデオリサーチも調査を開始した。長らくこのニールセンとビデオリサーチの2社が日本国内における視聴率を測定していたが、2000年3月にニールセンが日本国内における視聴率調査から撤退し、現在は、ビデオリサーチの測定した結果のみが用いられることとなった。撤退の理由は個人視聴率導入に関して民放キー局と意見が対立したからだとされる。
概説
視聴率の測定は基本的にモニター世帯に設置されるテレビに接続した専用の機器から得られるデータを基にしている。地域や調査内容によっては、日記式のアンケートによる調査を行っているものもある。因みに、視聴率は各局全体からの割合で測るものではない(例えば、100世帯がテレビ視聴率計測の対象だったとして、そのうち1世帯がテレビを点けていたとする。しかし残りの99世帯がテレビを消していた状態の場合、点けていた1世帯の番組は視聴率100%ではなく1%となる)。各局全体からの割合で測る場合、それぞれの局の視聴率を番組視聴占拠率と呼ぶ。
日本
日本では前述の通り、ビデオリサーチ社の調査結果がそのまま視聴率となる。ビデオリサーチの場合、視聴率調査は主要11地区では毎日、その他の都市では毎月、月はじめ2週間の調査を行っている。標本数は関東地区、関西地区、名古屋地区が600、それ以外の地区は200である。ただし、放送エリア内に地元民放テレビ局が3局以上あることが視聴率調査の条件のため、福井県、山梨県、徳島県、佐賀県、宮崎県では視聴率調査は行われていない。
日本ではほとんどの番組が在京キー局で制作されていることから、一般に視聴率と言った場合、関東地区に於けるその番組の放送時間全体の平均視聴率を指すことが多い。また、在阪局でも制作されている番組が多いため、関西地方の平均視聴率も指す場合がある。
平均視聴率は毎分の0秒時に於ける視聴率(瞬間視聴率)の平均で求められており、一番組中で最も高かった瞬間視聴率を瞬間最高視聴率として考慮することもある。
一般に関東地区、関西地区、名古屋地区などでは15%を超えるとヒット作と言われることが多い。それは、テレビの総視聴率が最も高い時間帯である19時~22時で総視聴率は約70%、それを単純に民放5局とNHK2局の合計局数で割ると10%になることからである。
民間放送各社はこの数値が広告の営業活動に大きくかかわることから視聴率を重視している。近年では公共放送であるNHKでさえも同様に重視している。
なお、これまでの関東地区における最高視聴率はビデオリサーチが視聴率調査を開始した1962年12月3日以降では1963年12月31日の第14回NHK紅白歌合戦で記録した81.4%であり(1961年~2000年に行われていたニールセンによる調査でも第14回NHK紅白歌合戦の89.8%が最高)、ビデオリサーチ以前も含めた最高視聴率は1955年5月30日、日本テレビのボクシング中継・パスカル・ペレス対白井義男戦で記録した96.1%(電通調べ)である。
今後は衛星放送や有料放送の普及で、多チャンネル化が進むことにより、視聴するテレビ番組がますます分散していくことが想定され、その中で、視聴率の存在意義が果たしてどのくらいあるのかを疑問視する声もある。特に、現段階では衛星放送に関する視聴率データが殆ど得られていないこともあり、視聴率に代わる別の指標が必要ではないかとの意見も出されている。しかし、いまだに決定的な策が打ち出せず、現在に至っている。
なお、録画による視聴(録画率)をカウントしない理由として、「録画したからといって、実際に見ているかどうか確認できないため」等があげられている。だがこれはテレビ視聴時にも同様に言えること(ただ単にテレビを付けているという目安であり、本人が番組内容を見ているという根拠はない。)であり、この理由には説得力に欠けると言える(低視聴率番組に対しては録画率の数字が若干視聴率を上回ったという報告も少数ある。)。
視聴率を扱う文献は必ずしも多いわけではないが、松本清張の『渦』は、視聴率を取扱い、その権力批判的な側面が発揮された作品である。
視聴率による弊害
調査対象世帯が少なく、正確なデータを得られないという指摘がある。単純に統計学の見地からすれば充分な数値であるが、不正操作に対する防護の観点からすると安全ではないとの懸念もある。
視聴率が高いほど、局へのスポンサー収入(売上げ)が多くなることによる弊害。
視聴率アップを図り、コマーシャル明け直後にコマーシャル入り直前の内容をもう一度流したり、目的の時間まで延々と視聴者を繋ぎ止める製作手法が出現する。「まもなく」や「この後すぐ」といった言葉を連発する、「跨ぎ」もしくは「フライングスタート」(裏番組潰しの為の、毎正時ではなく“54分”“56分”といった時刻での番組開始)をやるのもそのひとつ。
興味本位の番組・大衆迎合的番組が増え、公共の電波に流すべき善良な番組、すなわち視聴者が必要とする有益な情報を提供する機会が減る。また、そのような番組制作においてプライバシー権・放送倫理を侵害する問題が発生する温床となる。
視聴率アップを狙う余り、やらせなどの捏造行為・視聴率操作などの不正問題が発生する。やらせに関しては複数の放送局で幾度となく発生している。特に軽度のやらせを演出の一種として扱う傾向があり、番組全体の劇場化に歯止めが利かない。
2003年秋、“放送界の八百長”ともいうべき、日本テレビ放送網の視聴率不正操作問題が発覚し、プロデューサーが懲戒解雇されるに至った。(参考→ビデオリサーチ)その結果、番組の質を計測する視聴質の問題も浮上するようになった。
真剣勝負の場であるスポーツイベントにテレビ局が介入し、スポーツイベント中継の番宣のため、出場予定の選手たちを中継局の他の番組に出演させるようになった。このことは、ビッグイベントを控えて調整に入っている選手たちの貴重な時間が奪われ、番組出演によるリスク(体調不良・病気・負傷など)を選手たちが抱えなければならないことになる。
真剣勝負の場であるスポーツイベントにテレビ局が介入し、競技に対する専門的な知識のない人気タレントたちをスポーツイベントの中継に出演させるようになった。バレーボールの世界大会(世界選手権・ワールドカップ)の試合開始前に歌う人気アイドルの存在もそのひとつといえる。また、専門的な知識・技能を必要とするスポーツの現場にそれらの知識・技能がない人気タレントを投入する現象も見られた(K-1の大晦日興業「Dynamite!」など)。
放送業界全体が、IT及び家電メーカーの進化スピードについて行けない状況があり、テレビ関連以外の技術に疎く、敵視または排斥する傾向がある。コピーワンス問題を含め、テレビ業界が従来の習慣やルールに固執する動きがあるものの、新たな広告収入を得られるチャンスを失いかねず、テレビ業界そのものの崩壊という最悪の状況を加速させる恐れがある。
低視聴率で打ち切りとなった番組が、後に多大な評価を得ることもしばしばである。宇宙戦艦ヤマトが日本のみならず、世界のサブカルチャーに与えた影響はその一例である。
キー局以外の系列局が制作して全国放送される番組の場合、制作局の視聴率よりもキー局の視聴率が優先されて打ち切りや枠削減になってしまうこともある。1991年10月~12月に朝日放送(ABC)が制作、テレビ朝日系列のゴールデンタイムで放送されたドラマ『ダウンタウン探偵組'91』がその一例である。ABCでは20%近い高視聴率を取ったのに、テレビ朝日では2~3%しか取れかったことから、その後ABC枠からテレビ朝日枠に変えられてしまったという例もある。ほかにも、「探偵!ナイトスクープ」や「なるトモ!」なども挙げられる。
また、地方局を完全に無視する例も多い。あくまで関東の視聴率が重要であるため、他地域で視聴者が多くても意義を認めない。北海道日本ハムファイターズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、福岡ソフトバンクホークスといった地域密着型球団のプロ野球中継は地元では視聴率が見込まれても、関東のキー局に関係ないため、放送の意義として認められない。意義を認めない理由ついて関東キー局は「プロ野球離れ」を主張するが、プロ野球の放送についてこれらの球団の人気はあまり問題なく、むしろ上昇、定着しつつあることであり、関東のプロ野球離れはあくまで「東京一極集中への反感」「読売中心主義への反感」が問題であるため、キー局の説明には矛盾がある。また、広告費の投下では人口密集地域を狙うため、人口密度の低い地域では非効率的とされる(例:中京地区での20%は関西地区の10%の値打ちしかない、関東地区の5%の値打ちしかない)[1]ため、地域密着がないがしろにされる、関東中心主義とそれに伴う東京一極集中、地域差別の原因である。全国放送と関東ローカルの区別ができない放送が多いこともこれによるものである。
近年では、インターネットの普及、定額化、ブロードバンド化によって、視聴者がネット利用に集中する時間が増加しており、多チャンネル化とともに視聴率低下の原因となっている。このこともあり、特に報道番組においては、インターネットに関わる事件を厳しく採り上げ、暗にインターネットに対するネガティブな印象を与える報道を行っており、テレビへの回帰を目的とした情報操作ともとられかねない。
しかしながら、知的所有権に基づくライセンス問題をクリアした番組コンテンツを、テレビ局サイトならびに大手ポータルサイトにて一部有料で放映しており、減少する広告収入の代替収入源として足場を作っている。
衛星放送等、調査対象外のチャンネルがある(実際にはビデオリサーチは衛星放送の視聴率を集計しているが現在数字を公表していない。ただし、1998年のサッカーW杯(フランス大会)中継の際には特別に衛星放送の視聴率が公表された)。
録画による視聴、パソコン、携帯電話による視聴も視聴率にはカウントされない。そのため、デジタルレコーダー等により録画またはタイムシフトして視聴する人が多い番組の場合視聴率が低めになる(主に平日昼の番組、深夜の映画・アニメ等)
視聴率と学術的問題
このようにして公表される視聴率は、あくまでも視聴率としてビデオリサーチが主張しているものであり、学術的(社会調査)に評価されるものではない。その問題点は次のような事からである。このため、調査手法の改善を求める声もある。
ビデオリサーチ1社のみが行っている上、その方法や結果に対して第三者による検証がおこなわれていない。
衛星放送、インターネット経由やケーブルテレビの専門チャンネル等、調査対象外のチャンネルがある。
録画による視聴、パソコン、携帯電話による視聴も視聴率にはカウントされない。
世帯単位であり、TVが一家に何台もある実態に対応出来ていない(常置TVが一家に一台だった頃の調査手法が未だに取られている)。
次の調査サンプル除外世帯があり、その世帯に対して別に調査やその旨の公表等が行われていない。
マスコミ関係(放送局・新聞社など)に勤めている家族がいる世帯。
家族に芸能人・芸能関係者がいる世帯。
国会議員・都道府県及び政令指定都市の首長及び議員が家族にいる世帯。
山梨県、福井県、徳島県、佐賀県、宮崎県では視聴率調査が定期的に行われていない。そのためキー局はこれらの地域をないがしろにする傾向がある。
地域によって視聴率の計測方法が違う。しかも地方局や独立UHF局のデータは重視されず、あくまでメディアなどで報道されるデータは関東キー局のものである(そのため、放送側がデータが公開されやすい関東に特化した番組作りをする)。
都道府県により放送局数が違うことや難視聴地域や県境でのスピルオーバーなど、放送局同士の競争の条件が整わない・条件が異なる地域がありながら、そのような地域の存在を考慮していない。例えば関東における独立局や有明海沿岸付近はデータが整いにくい状況である。関東キー局と同時放送など同一条件を前提とした番組だけがあるわけでなく、裏番組が違う、放送時間が違うなどの例があり、一律にデータだけを見るべきでないものであるという認識に欠ける。
目的や何のきっかけで視聴しているかについては調査を行っていない。
調査装置や調査方法の詳細などは非公開。(なお調査装置・調査方法の概要についてはビデオリサーチの公式サイトで公開されている)
三冠王・四冠王
日本の放送局が視聴率を評価する際に使う表現で、下記3区分全てで視聴率がトップの放送局を指して「三冠王」と呼ぶ。
ゴールデンタイム(19時~22時)
プライムタイム(19時~23時)
全日(6時~24時)
上記に加えノンプライム(6時~19時、23時~24時)でも視聴率がトップであれば、「四冠王」と呼ばれる。
1980年代後半にフジテレビが「三冠王」を使い始めた。フジテレビは1982年から1993年までの12年間、三冠王。但し、この三冠王は、在京民放局5局中での三冠王であり、取りわけ全日視聴率は、NHKがフジの全日視聴率を1987年と1990年から1993年の合わせて5年間を除き、上回っていた。
日本テレビが「四冠王」の表現を使い始め、バラエティー番組や巨人戦中継が好調で同社が年間視聴率四冠王の座に1994年~2002年に9年連続で就いていた。2003年は日本テレビの年度視聴率三冠王が、2004年にはフジテレビが同年度の三冠王を達成した(読売ジャイアンツ中心のペナントレース中継の視聴率低下や、視聴率不正操作事件が大きく影響していたと考えられる)。
視聴率三冠王の第1号はTBSで、1978年に1度だけ達成したことがある。
ゴールデンタイムとプライムタイム
冒頭で述べた通り、(1960年代から2000年まで2社体制で視聴率調査をしていた)ニールセンとビデオリサーチとで、最もテレビの視聴が高い時間帯の基準が両社で異なっていたからによるものとされている。米国に本社を持つニールセンでは、米国基準で最もテレビの視聴が高い時間帯を設定し、これを19時から23時までとした。
これに対し、ビデオリサーチは日本独自の基準として、最もテレビの視聴が高い時間帯を19時から22時までとした。同時に(最もテレビの視聴が高い時間帯の)それぞれの名称を、ニールセンは「プライムタイム(以下、プライム)」と呼び、ビデオリサーチは「ゴールデンタイム(以下、ゴールデン)」と呼んだ。
なお、この2区分の調査は、ニールセンの「プライム」は1961年4月の調査開始当初から、ビデオリサーチの「ゴールデン」も1962年12月の調査開始当初から始めた。しかしビデオリサーチも1971年から「プライム」の調査を開始し、現在に至っている。
視聴率争い
視聴率がテレビ局の評価を決めると言っても過言ではないため、国や時代、時間帯を問わず視聴率争いは行われている。ここではその代表的なものをあげる。
土曜8時戦争
TBSの『8時だョ!全員集合』(1969年~1985年)とフジテレビの『オレたちひょうきん族』(1981年~1989年)の視聴率争いは熾烈で、「土曜8時戦争」と呼ばれるほどであった。『全員集合』は視聴率が50%前後まで達するお化け番組であったが、『ひょうきん族』の最盛期には視聴率で『全員集合』を逆転し、『全員集合』を放送終了に追い込んだ。
札幌戦争
北海道地区の夕方ワイド番組における視聴率争いで、札幌テレビ放送(STV)が1991年に始めた『どさんこワイド120』を中心としたものである。
それまで夕方の時間帯は、アニメやドラマの再放送が多く行われていたが、STVは夕方ワイド番組を放送することで他局の視聴率を抜き去り、北海道の各テレビ局が同様の番組で追随することとなった。この流れは日本全国に波及し、各地で夕方ワイド番組が作られるようになっていく。大阪・福岡などでは、各局の夕方ワイド番組が競合し、同様の視聴率争いが発生している。
(Wikipediaより)
「視聴率」にどこか振り回され気味のテレビ局。「視聴質」・・・つまり、その番組にどれだけ強い関心を持っているか、を数字にできないものだろうか。
http://www.videor.co.jp/data/ratedata/r_index.htm