旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

温泉街の蒸留所でクラフトジンを愉しむ

2024-08-21 | 旅行記

オーク樽をテーブルにして、外国人のカップルがジンを楽しんでいる。
投宿した旅館から下駄を鳴らして温泉街を漫ろ歩く夕方、野沢温泉蒸留所を訪ねることにした。

銅板のサインボードを手がかりに、民宿が並ぶ細い道を登っていく。
えっ、こんなところにあるのと訝しみながら進むと、突然に洒落たテラスが現れた。

ガラス張りの建屋は2階の高さまで吹き抜けて、無骨な木枠の棚には真新しいオーク樽が天井まで積み上がる。
樽たちにはシングルモルトが寝かされて、琥珀たちはやがて訪れる出番を夢見て、熟成の時間を待っている。

2022年12月に開業した野沢温泉蒸留所だから、未だウイスキーをリリースしていない。
その代わり、50年の時を隔てて湧き出た雪解け水、地元産のボタニカルで抽出したクラフトジンが味わえる。

ブルーラベルの “NOZAWA” は、爽やかな味わいのシグネチャードライジン。すぎの香りがするね。
和風のテイストのボタニカルクラフトジンは、ブラックラベルの “CLASSIC DRY”、山椒が効いているね。

“IWAI” は、レモン、スモモ、桜の葉が効いている。春の味わい、新緑と祝いの季節を表現したグリーンラベルだ。
これまた春を感じる爽やかなテイストは “SHISO”、アップルウッド、赤紫蘇、青紫蘇の風味だそうだ。

ガラスの向こう、胴が鈍く光る蒸留釜を眺めながら、深い眠りにつくシングルモルトの樽に語りかけながら、
ゆっくりと食前酒のボタニカルジンとの時間を愉しんで、夏の終わりの陽は傾いていく。

さてと、旅館に戻っての宴は、水尾に北光正宗に、北信濃の酒肴を思う存分味わおう。

<40年前に街で流れたJ-POP>
夢伝説 / スターダストレビュー 1984 


露天茶座の風景

2024-07-31 | 旅行記

山上の茶樓から東シナ海が見おろせる。
夏至過ぎの夏の太陽も、さすがに没する時刻になって、空は藍に海は灰に、少しずつ色を変えていく。

テラスの隣の席に美しい女(ひと)が座っていた。すこし憂いを帯びた横顔がキレイだと思った。
スマホに触れるでもなく、ページを繰るでもなく、ただ空と海を眺めているようだ。

海の向こうから訪ねてきた旅行者か、台湾の方か知る由もない。
私が席を立つ頃になっても、彼女は時折山肌を上ってくる海からの風に、肩までの黒髪を靡かせていた。

秋を装う季節になって、彼女はどこかを、こんどは微笑みを湛えて旅しているだろうか。なんだか気になる。

ずいぶん長くかかってしまった夏の台湾紀行も、これで筆を置くことにしたい。

<40年前に街で流れたJ-POP>
恋の予感 / 安全地帯 1984


夕立とマンゴーかき氷とブルーベリー・アイスティーと

2024-07-24 | 旅行記

雨季に入った台湾の降雨量は東京の2倍、滞在中は毎日のように激しい雨に見舞われた。
ギラつく真夏の太陽がにわかに湧いた黒雲に覆われると、案の定バケツがひっくり返った帰国前の午前中。
ボクらは「陳記百果園」飛び込んだ。日本でいうと昭和なフルーツパーラーだ。

フルーツが豊富な台湾、やはり代表格はマンゴーか。っで、たぶん一番人気の “マンゴーかき氷” を択ぶ。
甘さ控えめの練乳をかけて、ゴロゴロと大きめのマンゴーが、とにかく甘い、美味い。
頂上のマンゴーアイスがいい感じにかき氷に溶けだして、口の中でフワフワと堪らない。

そういえば初日も、とてつもない豪雨に見舞われた。
フライトが遅い同行者を待つ間に、やはり信義淡水線に乗って中正紀念堂を訪ねた。
巨大な蒋介石の座像にまみえた直後、やはり大きなバケツがひっくり返った。

飛び込んだ國家戲劇院の1階、ちょっと格調高い「風景書店」に併設されたカフェがご機嫌だ。
微かに流れるジャズを聴きながら、ソファーに身を委ねて “ブルーベリー・アイスティー” を愉しんだ。

忙しく乗って呑んだ台湾紀行だけど、時にはこんなステキな足止めを過ごした5日間なのだ。

マージービートで唄わせて / 竹内まりや 1984  


Biz-Lunch 豐盛食堂@永康街・台北「菜圃蛋」

2024-07-17 | 旅行記

信義淡水線の東門站を降りると、ちょっとオシャレな街「永康街」が広がっている。
人気のレストラン、カフェ、ショップが集まっていて、鼎泰豊(ディンタイフォン)の本店もこのエリアにある。

呑み人が訪ねる「豐盛食堂」は台湾家庭料理を楽しめる人気店、
アパートメントの1階に、外壁を煉瓦で飾った古民家風で、レトロな内装の店だ。

もうボクには馴染になった台灣啤酒の “生ビール18Days” をシュポンと。この栓抜きがいいね。
楽しんだのは “菜圃蛋”、切り干し大根の食感が楽しい。ようやくこの定番にたどり着いた。

お通し的に抓んだ “涼拌鮮筍”、これは美味しい。
茹でタケノコを冷やして、甘みのあるマヨネーズをかかる。爪楊枝で突っつきながらビールが美味い。
“菜乾肉” は豚角煮、じっくり煮込んだ豚肉とカリフラワーに青菜を添えて、これはいける。

帰国前のお昼にして出会えた美味くて雰囲気の良い店、次回もきっと伺います。ご馳走さまでした。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ニュアンスしましょ / 香坂みゆき 1984


紅いランタンが連なる非情城市

2024-07-06 | 旅行記

紅いランタンが連なる狭い豎崎路の階段が、東シナ海へと落ちて行く。
日が暮れた頃にこの階段を見上げたら、きっと異世界に迷い込んだ様な気持ちになるのかも知れない。

平渓線で呑んで瑞芳(ルイファン)車站まで戻ってきた。
幹線である宜蘭線の駅だが、平渓線の列車はたいていこの駅の発着だからだ。
そしてここは「非情城市」九份のゲートウェイでもある。

臭豆腐が匂う町並みを1ブロック進んで、區民廣場というバス停から金爪石ゆきの路線バスに乗ると
(酔うほどに曲がりくねった山道を飛ばして)概ね15〜20分で九份のメインストリートまで運んでくれる。

バス停からメインストリートの基山街に迷い込む。
びっしりと並んだスイーツの店、食堂、みやげもの屋が左右から庇を投げかけてアーケードを作る。
そして人、人、人。さながら夏祭りの縁日か、台北のあちらこちらに立つ夜市の様だ。

九份は19世紀末に金鉱が発見され一時期賑わいを見せた。狭い路地や石段は日本統治時代のものだ。
金鉱が枯れて急激に寂れた町は、今度は20世紀末に映画「非情城市」のロケ地になり、
このノスタルジックな街並みは再び脚光を浴びる。

豎崎路の「阿妹茶樓」は、宮崎アニメ『千と千尋の神隠し』の油屋のモデルになったという説がある。
まぁ噂の類だろうけど、その雰囲気を味わいたいのなら、やはり暮れてから訪ねるのがいい。
九份は3度目、たぶんこれが最後だと思うと、ミーハーにもこの茶藝館に入ってみる気になった。

夏の日が狂った様に照りつけた午後だけれど、海からの風が微かに簾を揺らしている。
花柄の小さなポットが結露するほどに冷えたお茶が心地よい。
空と海の色が変わって、灯が点る時間までこうしていたい気分になるね。

茶藝館のテラス席で風に吹かれて、汗がひいた頃に瑞芳の町に降りてきた。
台北に戻る列車は、これまたノスタルジックな「莒光号」に当たった。
静かに心地よく揺れる客車のシートに身を委ねて、台北までの1時間をうつらうつらするするのも愉しい。
ずいぶん遠くまで、いや遠い昔まで旅した一日が暮れて行くのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
桃色吐息 / 高橋真梨子 1984


津々浦々酒場探訪 臨洋港生猛活海鮮@台北

2024-07-03 | 旅行記

旅先では旅行雑誌を飾るグルメでお洒落な店より、地元っ子が通うローカルな店で呑みたい。
台北最初の夜は、中山のホテルから長安東路一段を歩いて「臨洋港生猛活海鮮」を覗いてみる。

先ずは “台湾啤酒” で乾杯。というよりメニューに他の選択肢は見当たらない。
酔うまでひたすらにこの薄いビールを呑むのか? アテは “炒空芯菜” これは定番だね。

刺身、何だったか忘れた。厚切りが印象的で、炙ったやつが美味い。山葵のミドリが怪しい。
そんなことを考えつつもビールはすすむ。否、ほかに呑むものはない。
これは “腰果鶏丁” か。日本で食べる鶏肉のカシューナッツ炒めより少しパサついた感じだ。

「ちょっと一杯やってく?」のサラリーマンとOLのグループ、賑やかに皿を並べてやはりひたすらのビール。
大学生の男の子たちは、無料のご飯を丼に盛って、定食屋にでもやって来たよう。とにかく盛況だ。
店のおばちゃん達には、日本語はもちろん英語も通じないから、身振り手振りで伝えるのが案外楽しい。

おばちゃん、“タイガービール” が台湾のだと言い張るから択んだけど、どう考えてもシンガポールだよね。
訳も分からず択んだ最後の一皿は、イカの揚げ物らしい。美味しいんだけど少々持て余している。

人気店の前には席待ちのグループと、二軒目の相談をする男女で溢れる。
それでは我々ももう一軒、面白い店を探して街を彷徨いますか。夜は始まったばかりだから。

<40年前に街で流れたJ-POP>
迷宮のアンドローラ / 小泉今日子 1984  


ノミビトは朝、空港で

2024-06-26 | 旅行記

土砂降りの午前8時、更新したての真新しい旅券を片手に、羽田空港第2ターミナル。
少々早めの夏休みか、久しぶりの海外渡航は一都市滞在の5日間。予定は全く立てていない。
行った先で酒場を放浪するか、呑み鉄の旅をするか、まぁ単車には乗らないと思うけど。
ちょい贅沢に5つ星ホテルだから、プールサイドでのんびり過ごしても良い。とにかく自由なのだ。

とはいえ、呑むことは外せないから、ナッツとチーズに、朝からラウンジでプレモル生ビール。
喉が潤ったら、“大七箕輪門” 注いで、“焼き鮭” を箸で崩しながら山田錦の純米大吟醸を愉しむ。
搭乗前からやるべき事、いや呑むべきものは呑んでおかないと。

さて、いったい呑み人はどこに降機するのだろう。
容赦なく照りつける市街地の国際空港にはこんなオブジェがあったのでパチリ。

首都を貫く大河の河口の町には、こんな南欧風の小径があったり。

ミーハーにもこんなスイーツに舌鼓を打ったりするのもまた楽しい。

比較的新しい街並みには、こんな今どきのオブジェがあって、観光客やカップルが写真を撮っている。

さて、呑み人が紛れ込んだのはどこの街か、旅慣れた貴兄にはお分かりでしょうか。
スイーツで分かっちゃうかもしれませんね。
いずれ、何らかのレポートをしますね。それでは行ってきます。

<40年前に街で流れたJ-POP>
モリスンは朝、空港で / 佐野元春 1983


富山湾と立山連峰をのぞむワイナリーで

2023-06-17 | 旅行記

富山湾と立山連峰をのぞむ丘の上のワイナリーにやって来た。
もっとも午後から降り出した五月雨に山は霞んでいる。今日は緑に囲まれたゲストハウスで呑みたい。

酔う前にレポートしておく。
エントランスの左側には12人掛けのテーブルを設えたリビングダイニングがある。
壁際にはアンティークな薪ストーブがあって、黒々とした煙突が天井を越えて立ち上がっている。
広々としたオープンキッチンは仲間でワイワイやりながら料理するのも楽しそうだ。

エントランスから右へは白く長い廊下が延びていて、ベットルームが3つ並んでいる。
突き当たりには、オープンスペースにつながる広々としたジャグジーがある。
なぜかここにワインセラーがある。このオープンスペースでシャンパンを開けるのもいい。

ゆったりとしたソファーに身体を沈めたら、二度と立ち上がれそうもないくらい心地よい。
“シードル” のマグナムボトルを開けて華やかな香りをワイングラスに注ぐ。
BluetoothスピーカーからJazzが流れる。
この雨で葡萄畑を散策できないから、ゆっくりと流れる時間を愉しみたい。

最後のひとりが呼び鈴を鳴らすころ、ディナーサービスが運ばれて来た。
ワイングラスとシルバーセットはいそいそと並べて置いたから、宴を始めるのに時間はかからない。

“SAUVIGNON BLANC 2022” で互いのグラスをあわせたら、オードブルを取り分ける。
鯵のマリネ、鰆のカルピオーネ、自家農園の卵のフリタータ、豚肉のパテ・ド・カンパーニュ、
白ワインに合わない訳がない。

氷見で揚がった黒鯛と真鯛、アサリとムール貝をしたがえて “アクアパッツァ”。
爽やかな “YOKAWA BLANC 2020” に漁師飯が美味しい。

色鮮やかな野菜たち、STAUB鍋は “富山ポークのブレゼ” だ。
オープンキッチンのコンロの弱火で40分ほど、重い蓋を開けるとオリーブオイルの香りが広がる。
出来上がりを待つのは “Merlot 2020”、華やかで優しい口当たりだね。

コクと旨みがぎゅうと詰まった “氷見牛ボロネーゼ” を抓む?言っていることが怪しくなっている。
ワインももう分からない。目の前の “ROSE 2019” を自ら注いでゆるりと愉しんでいる。

翌朝のダイニングテーブルに空いたボトルを並べて一枚、よく呑みました。
昨年、室町和久傳 × SAYS FARM のイベントに参加して嵌ってしまったワイナリー、
とうとう現地まで来てしまって、ワイワイと楽しく美味しいステイだったね。

ひんやりとしたワインセラーに降りる。
樽やボトルで眠る子たちに「美味しくなって出ておいで」っと思わず声をかけるのだ。

Tell Her About It / Manhattan Jazz Quintet 1983


大人の休日 岩手山と石割桜と盛岡冷麺と

2022-05-07 | 旅行記

 東北新幹線が全線復旧しましたね。盛岡城跡公園の満開を狙って4月のとある大人の休日。

はやぶさ305号の車内に盛岡到着のアナウンスが流れる頃、車窓を占めるのは雄大に裾野を広げる岩手山。

駅前から盛岡都心循環バス「でんでんむし」(1乗車120円)に乗って、先ずは盛岡地方裁判所に向かう。

裁判所の前庭には国の天然記念物「石割桜」が孤高に美しく咲いている。
巨大な花崗岩の割れ目から突き出た樹高11.0メートルのエドヒガンザクラ、樹齢は360年以上だそうだ。

県庁前交差点から鳥居を潜り、じゃじゃ麺の白龍をやり過ごしたら盛岡城内の櫻山神社へ。
神社の厳かな雰囲気を引き立てるのはシダレザクラ、ピンクの花弁が可憐だ。

ところでここに来る前に、盛岡駅前の「ぴょんぴょん舎」で早めのお昼、そう盛岡冷麺がもう一つの目的なのだ。
ランチメニューの “ミニプルコギ丼” をアテに、地ビールの “BEAREN CLASSIC” をいただく。
甘く脂があるプルコギに、コクとほどよい苦味のラガーが美味しい。 

さてっと真打ち “冷麺” が登場。澄んだスープの真ん中に麺を盛り上げ、脇をキムチ、牛肉のチャーシュー、
ゆで卵に三杯酢漬きゅうり、ナシが固めて見目麗しい。
コクのあるスープ、コシが強い麺のツルッとした喉ごしを味わい、キムチを沈めて辛味を増したりして楽しい。
想像していたよりはるかに美味しい、初めましての本場盛岡の冷麺に満足なのだ。

北上川の支流中津川の河岸段丘、桃山様式の石垣を残す盛岡城跡公園の桜は主にはソメイヨシノか?
桜は二段目の淡路丸と腰曲輪を埋め尽くして爛漫を誇り、本丸に登城するとそこには桜の雲海が広がっている。
淡いピンクの雲海に、浮遊感というか、かるい眩暈を感じたというか、とても心地よい盛岡の桜。

ちょっと贅沢な大人の休日、満開のサクラと冷麺を求めて、日帰りの盛岡紀行なのだ。

夜よ泣かないで / 松山千春 1982
     


大人の休日 雨の山形で1時間3本勝負

2021-05-08 | 旅行記

 予報通りに雨が本降りになった福島駅、15:31、つばさ141号が入線してきた。
本宮までソースかつ丼を食べに来た勢いで、山形で立ち飲みしようと山形新幹線に乗車する。

なにか車中酒をと覗いたNewDaysで目を引いた "寶CRAFTふくしま あかつき桃" って地域限定チューハイ。
福島県を代表する桃「あかつき」を丸ごと搾ったストレート混濁果汁を使用した桃スピリッツなのだ。
甘く芳醇な香りを愉しむうちに、つばさ141号は雪の残る板屋峠を越えて山形県へ。雨が止む気配はない。

 冷たい雨に煙った山形駅に着いたのは16:48、滞在時間は1時間と少々を予定、日帰りだからね。
ところがだ、目星を付けていた立ち飲み屋は臨時休業(行き当たりばったりで偶にやらかす)なのだ。
代わりに見つけた「山形名物 花膳」は地酒と郷土料理の素敵な店でした。でも残り1時間を切ってる。
先ずは "秀鳳 純米大吟醸 つや姫"、山形県オリジナル品種で醸したフルーティーな酒、美味しい。

山菜天ぷら五種盛りを注文した積りがお浸しが出てきた。でもGood、カタクリって初めて食べた。
初孫の "赤魔斬" を注文したら、もっきり一盃に満たずサービスしてもらった。キレある+10がスッキリと旨い。
当然に芋煮が食べたかったのだけど、時間が無いので "山形牛 旨味たっぷりメンチカツ" に変更、
噛んでサクサク、口に入れるとジュワーって肉汁の旨みが広がって、いい仕事しているなぁ。

そして三杯目は "惣邑 純米酒 出羽の里"、初夏はあやめが美しい長井の酒、サラリとでも深い旨みが良い。
っと、つばさ156号の出発時間まで10分を切った。慌てて跳ねを飛ばして駅までダッシュ、酔いが回る。
プロレスじゃないけど山形の地酒を1時間3本勝負、ちょっと消化不足。この店はまた訪ねたい。

お嫁サンバ / 郷ひろみ 1981
     


大人の休日 桜花爛漫の津軽・弘前城へ

2021-05-01 | 旅行記

 400本のソメイヨシノ、しだれ桜や八重桜などを併せて約2600本が咲き誇る弘前公園の桜を観たい。
折からの低気圧が過ぎ去って午前中には雨も上がった。満開の便りは昨日届いている。

秋田駅での乗り換え時間は10分、それでも改札を飛び出して駅ビルで地酒のワンカップを求めてきた。
12:40、2号車には僅か3人を乗せ「つがる3号」が滑り出す。初めての桜の弘前に期待は大きく膨らむ。

20分もすると車窓に八郎潟干拓地が見えてくる。とにかく広いの一言、昭和の大事業に思いを馳せる。
"天の戸" は横手盆地の浅舞酒造の酒、酒名は大胆にも天照大神の逸話「天の岩戸」からとられている。
なるほどラベルには勾玉 (まがたま)があしらわれてるね。カップ酒だけど純米酒?スッキリと旨い酒だ。 
っと一合の旨酒に酔い、うとうと微睡むうちに碇ヶ関を越えて津軽平野に入る。弘前までは2時間の旅になる。

弘前さくらまつりの100円バスに揺られて10分、左手車窓がピンク一色になる、いやいや想像以上だ。
三の丸東門までやってきた。外濠の土塁にはびっじりとソメイヨシノが満開を誇って目を奪う。
もはや外堀と一体となった絢爛たる桜の海が城と城下を分けているのだ。

東門から南門へと中濠を巡る。二の丸と三の丸双方からソメイヨシノが枝を延ばして濠を桜色が覆う。

杉の大橋を渡る、視界にいっぱいのソメイヨシノ、重厚な南門の黒、欄干の朱がアクセントになって美しい。

下乗橋を渡ってようやくの本丸、曳屋されて石垣のスカートを脱いだ三層の天守はなんだか恥ずかしそう。
「弘前枝垂れ」と「八重紅枝垂れ」が天守に付き従い、その薄紅と淡紅紫が足元を隠そうと努めているね。

最後に本丸未申櫓跡に上る。ソメイヨシノ越しに西濠と城下を見下ろし岩木山を眺望する。絶景だね。

「美食処 松の木」に萌葱色の暖簾が掲がる。帰路の特急まで僅かな時間だけど津軽の酒肴を堪能したい。
先ずは生ビール、今日のおすすめから "めばち鮪" を択ぶ。適度な脂が乗って美味しい。中落ちが泣かせる。
ところでお通しの "つがる漬け" が絶品、数の子が入った松前漬けとでも云うのか、日本酒のアテに最高だね。

カネタ玉田酒造店は弘前市内の蔵、ふわりとフルーティー、すっきりとしたキレの "華一風" をいただく。
特別純米酒の華やかなピンクラベルが満開の桜にぴったり重なるね。
イカをたたいて玉ねぎなど野菜と揚げた "イカメンチ" は酒の肴には外せない津軽地方の郷土料理だ。 

"帆立貝味噌焼き" が湯気を立てて運ばれてきた。熱々のホタテと豆腐が、口に入れてハフハフと美味しい。
二杯目の "豊盃" も弘前市内の蔵(三浦酒造)、どんな食事とも合う定番の特別純米酒なのだ。

店を出ると弘前駅が夕陽に染まっている。小一時間だけど津軽の酒肴を存分に愉しんだ。
こんな時勢だから人気店の客もボク一人、飲食業の皆さんには辛い時期に違いない。今暫く頑張ってほしい。

18:02発「つがる5号」で新青森へと向かう。22:00過ぎには東京と云うんだから新幹線は偉大だ。
角館武家屋敷と桧木内川堤、弘前城で満開の桜を眺め、津軽の酒肴を愉しんでの濃~い日帰り旅を終える。
車窓に夕陽を背負って津軽富士が美しい。

<40年前に街で流れたJ-POP>
渚のラブレター / 沢田研二 1981


大人の休日 桜花爛漫の武家屋敷と桧木内川堤

2021-04-24 | 旅行記

 "みちのくの小京都" 角館、武家屋敷の黒板塀に薄紅色のシダレザクラが可愛らしく映えている。
平年ではとても叶わない桜花爛漫の角館行、万全の態勢と細心の注意を払って、この風景に身を置きたい。 

 日本気象協会の tenki.jp によると角館の桜が満開を迎えたらしい。昨日からの雨も午前中で止むという。
という訳で(いったいどんな訳?)、大宮06:57発、こまち1号で北へ向かうぼっち旅に立つのだ。

「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」とは啄木。
県のシンボル岩手山(2,038m)、頭を雲で隠した成層火山が残雪を抱いて裾野を広げている。

東北新幹線を320km/hで飛ばしてきたE6系も、在来線区間に入るとガクッと速度が落ちる。
岩手・秋田の県境は勾配もカーブもキツイから、さしもの新幹線車両もそれなりに揺れるのだ。
したがって、朝ビールのプルトップリングを引くのに慎重になる。案の定少なくない量の泡を吹いた。

雨、上がったね。角館駅から歩くこと10分、歴史ある屋敷が点在する「武家屋敷通り」にやってきた。
約450本のシダレザクラがお屋敷から通りへと美しく枝を垂らす。樹齢300年を超える古木の花は白に近い。

角館樺細工伝承館の辻までやってきた。シダレザクラの薄紅のグラデーションが美しい。

武家屋敷の重厚な屋根と黒板塀を背景に、淡いシダレザクラは儚い美しさを際立たせている。

武家屋敷の町並みに溶け込んで和の風情の食事処がある。10:00から開いているのでひるまえの一杯を。
"比内地鶏" の正肉とねぎ間を焼いてもらって、酒は羽後長野、鈴木酒造の "秀よし 花綵の里" をいただく。

そして "稲庭雪見うどん" を啜って温まる。 雪見とはとろろを雪に見立てているらしい。姫竹に春を感じるね。
「花冷え」って季語(日本酒の温度も)があるけど、桜花爛漫の今日も温かな饂飩が欲しくなる肌寒さなのだ。

 角館のもう1つの桜の名所「桧木内川堤」には、全長2kmにわたるソメイヨシノの花のトンネルが続く。
みごとに色づいた約400本の桜並木は、1934(昭和9)年に現上皇の御誕生記念として植樹されたそうだ。

ところでこの堤に魅力的な助演女優を見つけた。一群の淡い黄色の水仙が可憐に美しく脇を固めている。

緩やかな川の蛇行に沿って一分の隙もなく続くヨメイヨシノの様は、春の朝日に染まった雲の様にも見える。

2時間少々の駆け足の花見(昼酒も一杯やったけど)を終えて角館駅へ。そしてここにもシダレザクラが。
満開を迎えたシダレザクラ、ソメイヨシノ、そして水仙、とても素敵な風景に身を置いて満足の時間だ。
東京方面には戻らず、11:42のこまち9号に身をゆだねる。折角だから弘前まで足を延ばそうと思う。

抱かれたい、もう一度 / 矢沢永吉 1981
     


大人の休日 "小千谷そば"と"蔵人の盗み酒"と

2021-04-17 | 旅行記

 長岡から2つめの駅を過ぎると列車の窓には信濃川の流れが存在感を増してくる。
堤のあちらこちらで桜が満開になっている。山際のこの辺りはさすがに桜の盛も遅いようだ。
右手に高の井酒造の蔵が見えたら、普通列車は徐々に速度を落として小千谷駅に滑り込む。

闘牛、小千谷縮、にしき鯉、小千谷の町を形容する産物は結構多い。美人の町かも知れないなぁ。
吞み人からしたら、是非とも「小千谷そばの町」を推したい。

駅前通りを緩やかに500~600m下って行くと、目の前に長い橋が現れる。
この長い橋の下を流れるのは信濃川、少し上流で魚野川さえ抱え込んで水量も多く滔々と流れて行く。
対岸の河岸段丘を上って行くと小千谷の市街地、めざす「元祖小千谷そば角屋」がある。

 季節柄 "ふきのとう天ぷら" が出ていたので蕎麦前のアテに択ぶ。苦みに春を感じる。
"蔵人の盗み酒" とは、ふな口からの一滴一滴の新酒は、蔵人が人目を盗んでも口にしたい感動の酒、
と云う意味だそうだ。フレッシュかつ濃厚な味わいの無ろ過吟醸原酒にご機嫌な蕎麦前のひとときだ。

     

絶妙のタイミングで "へきそば" が運ばれる。翡翠色のつやつやした蕎麦がキレイだ。
布海苔(ふのり)を使ったコシの強い蕎麦をズズっと啜って美味しい。
雪国が生んだ素朴な味わいを愉しんで、この美味しい途中下車にほくそ笑むのだ。

 1736M水上行は関東平野まで戻れる数少ない1本。"青春18きっぷ" の季節ならではの鈍行列車の旅は、
地酒と郷土料理を求めてのんびりと往く。越後川口から堀ノ内にかけて2本の長いトンネルを潜ると、
左手に越後三山(八海山・越後駒ヶ岳・中ノ岳)が見えてくる。どれもたっぷりと残雪を背負っているね。
ここで仕込んでおいた "八海山" を開けると云うストーリー。幸い車内はガラガラだから心配はない。
ほろ酔いの耳に唸りを上げる1736Mのモーター音が響くと越後湯沢の町が見えてきた。

まちぶせ / 石川ひとみ 1981
     


大人の休日 大天狗と名代ソースかつ丼と

2021-03-27 | 旅行記

 この日は東日本どこも雨、それならばとゆっくりスタートで10:36、やまびこ57号で郡山へGO!
手元のフリーパスを遊ばせておくのも愚かだから、福島ソースかつ丼の名店を訪ねることにする。
会津若松だとお思いでしょうが違います。郡山から1133Mに乗り換えて、今回は本宮へ。

NewDaysのリーチインで見つけた "ピルスナーウルケル" をプシュッと開ける。
4月6日から首都圏・関信越エリアで発売開始のこの缶、品薄状態だったから上々の滑り出しだろうか。

本宮駅から徒歩10分、幸い折からの雨も小止みになって、傘もささずに「柏屋食堂」を訪ねる。
田舎町の小さな食堂と思いきや、2階の大広間二間にテーブルを並べて満席状態、なるほど人気店だ。
これは着丼までかなりの時間が ・・・・・・、でも大丈夫、飲んで待つから。
初めましての "大天狗"、地元の親父さんの晩酌そのままに常温でいただく。突出しの "たこわさ" が嬉しい。

"名代ソースかつ丼" が着丼、厚切りロースが二枚、甘みある継ぎ足し秘伝ソースを絡めキャベツを従え登場。
分厚けど柔らか、サクサクと口にいれたら、ジューシーな肉が甘味とともに口いっぱいに広がって美味しい。
なるほどWebに2,000を超える口コミがあるのも頷ける上々の丼なのだ。

意外と大天狗酒造は本宮駅前に在った。左横書きの大天狗の文字、赤レンガ造りの煙突に歴史を感じる。
大粒の雨に急かされて改良工事中のプレハブ仮駅舎に飛び込む。っと程なく上り電車が入線してきた。
初めての町で絶品のソースかつ丼に巡り合って上々の休日、さてまだ時間があるから何処かで立ち飲みでも?

リトルガール / 西城秀樹 1981
     


はちのへ漫ろ歩記「漁師の漬け丼」

2021-02-13 | 旅行記

 マリンブルーのラインをひいた新鋭キハE130系気動車を見送るここは鮫。
北の海の幸と地酒を求めて、はちのへ漫ろ歩き、今回のターゲットは「漬け丼」だ。

漁港脇の市道を10分ほど歩いていくと、舟溜りの先に社をのせた蕪島が見えてくる。
でも何だか様子がおかしい、そう、八戸線を潰した一昨年の初夏、ヒッチコックの
映画のように島を埋め尽くしていたウミネコがいないのだ。

ウミネコは蕪島に繁殖のために集まる。その時期は節分過ぎだから少し早かったか。
5月に子育てが始まり、8月初旬には島を離れる。前回もぎりぎりだったんだね。
主祭神は市杵嶋姫命(弁財天)で財運・音楽・諸芸・交通航海・安産などご利益がある。

2駅戻って陸奥湊で "イサバのカッチャ" に迎えられる。駅前には八戸市営魚菜小売市場。
朝10時までなら場内で買ったお刺身、焼魚、お惣菜で朝定食が食べられる。
すでに10:30を回っているから近くの「みなと食堂」へ。旅の趣旨から地酒も飲みたい。

一見地味なこの店は八戸の超人気店、吞み人は開店間もないタイミングで入れたけど、
帰り道に通ったら長蛇の列で、今回は実についています。
まずは地酒 "陸奥男山"、冷やでよし燗でなおよし、地元の親父たちの晩酌の酒を一杯。

     

一番人気は "平目漬け丼" らしいけど、ちょっと欲張って "漁師の漬け丼" を択ぶ。
「限定7食」に引っ張られて、意外とミーハー(旧い!)な一面を見せる。
カニ、ホタテ、イクラ、タコ、マグロ、甘エビ、つぶ貝、サーモン、カジキ、イカ、
あれっ、平目がないなぁ。でもホタテが肉厚ぷりぷりだから良しとしよう。
前半は酒のアテとして楽しんで、後半は玉子を溶いて(これいける)美味しくいただく。

新井田川沿いに歩くと見えてくる漆喰土蔵と赤レンガ蔵は "陸奥男山" の八戸酒造だ。
「男山」って銘柄は全国に33蔵あるそうだ、特に東北地方に多い。
そこで商標登録の際に「陸奥」と付けたと云う。もっとも最近は「八仙」という銘柄を
知る人が多いんじゃないだろうか。どちらも青森県産米だけを醸す正に地酒の蔵なのだ。

未明にダメ元で蔵見学の申し込みをメールしておいた。幸い快くお受けいただいた。
大きな酒林(杉玉)を吊るした切妻造、桟瓦葺の主屋に案内される。豪壮で威厳がある。
こんな時期だから映像を見ながらの説明をいただいて、そして唯ひとりの試飲タイム。
漁師さんの食中酒、イカやサバに合うという "陸奥八仙 ISARIBI 特別純米生原酒"、
芳醇で洋食やチーズに合いそうな "陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸生酒" (何れも1月発売)、
それに定番 "陸奥男山 超辛純米" と3本求めて、なぜか達成感に満ちた漫ろ歩き。
さて、まだ日も高いようだから、青森まで足を延ばして「立ち飲み」といこうか。

街角トワイライト / 鈴木雅之 1981