旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

水曜日は家呑み派「葵鶴 純米吟醸 純」

2024-07-17 | 日記・エッセイ・コラム

小さなセラーの隅っこから、深いブルーのボトルが出てきた。これ、兵庫県三木の “葵鶴”。
神戸電鉄粟生線で呑んだ時に仕込んだ酒だから、1年以上寝かせてしまった。ワインじゃあるまいし大丈夫?
羽柴軍が別所長治を包囲した三木合戦の舞台となったこの辺りは、山田錦の日本一の生産地だ。

豚バラの良いところが冷蔵庫にあったから、豆腐としめじと水菜で “豚バラ鍋” にしてもらった。
夏とは言え、鍋ものは手軽でヘルシーで尚且つ日本酒に相性がいい。
もう一回り小さい土鍋では “とうもろこしご飯” が出来上がっていた。
バターを入れずに塩胡椒だけで仕上げると、これもなかなか酒にあう一品になる。

柔らかな香りでさらりとした呑み口の純米吟醸は、特A地区の山田錦100%で醸した「GIはりま認定酒」。
淡麗な酒を差しつ差されつ、鍋をつつきながら、ふたりだけの家呑みもなかなか良いものだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
愛情物語 / 原田知世  1984


人生のそばから 分上野藪かねこ@浦和

2024-07-15 | 呑み鉄放浪記

浦和駅から歩いて10分と少々、閑静な住宅街に隠れるように、その店は柔らかく行燈を点している。
場所がらフラリと訪ねる店ではないので、今宵めずらしく、あらかじめ席を予約して出かけた。
その店は、ゆるりと蕎麦前を愉しめる、雰囲気のいい空間を用意してくれる。

シャンパンゴールドに煌めく “ハートランド” で始める。お通しの “そば味噌” がなかなかいい。
県産平飼いの “玉子焼き”、先ずはそのまま食べて甘さを感じて、あとはおろし醤油でいただく。
それから “フルーツトマトとタコのおろしポン酢”、さっぱりと夏の一品だ。日本酒が欲しくなってきたね。

爽やかな空色のラベルは、白隠政宗の “誉富士 純米酒 夏”、ちゃんと夏酒を揃えてくれるのが嬉しい。
さっぱりドライに仕上がった食中酒に、アテは “賀茂茄子と香り豚のみぞれ煮” が美味しい。

アスパラ、谷中生姜、新玉葱、新ごぼう、ヤングコーンを並べて “夏野菜の天ぷら” は抹茶塩で。
山形の “米鶴” は純米吟醸 直汲み無濾過生、出羽燦々で醸した華やかな酒、これは夏野菜に合うね。

頃合いで、〆の “辛味大根おろしそば” が登場する。
薄い紫をした(かなりの)辛味大根をそばの上に盛ったら、それを全体に流すように汁をぶっかける。
おっかなびっくり、それでも大胆に箸でつかんでズズッと啜る。かっ辛い、でも堪らない。
夏酒に夏のアテと辛味蕎麦、梅雨空を吹き飛ばす爽やかな宵の口なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
愛・おぼえていますか / 飯島真理 1984


アナベルと金婚と東村山音頭と 西武国分寺線・多摩湖線を完乗!

2024-07-13 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

羽根沢信号場から恋ヶ窪駅へ延びる直線区間をレモンイエローの6両編成が駆けてくる。
やはり国分寺駅が単式ホームだから、国分寺を出発する列車と到着する列車はここで行き交うことになる。
ニュースが熱中症への注意を叫んでる休日、国分寺線に乗って呑もうとやってきた。

ブリヂストンの工場を右手に見て小川駅、国分寺線はここで拝島線とX字に交差する。
平面交差になっているので、先発の小平ゆき(拝島線)が行手を遮るように横切って右奥に消えていった。

右から新宿線の複線が近づいてきて、レモンイエローは工事の防音壁に囲まれた2番線に到着。
国分寺を発ってからわずかに10分、国分寺線の旅はアッという間に終わりを迎える。

終点の東村山駅付近は連続立体交差事業が進行中、5つの踏切が解消されるらしい。府中街道の渋滞も酷いもの。
駅の反対側には、えっと言うような26階建てのタワーマンションが聳えている。

そして駅前広場では、大きな欅の木陰で「アイーン」ポーズの志村けんさんが暑さを凌いでいる。
昭和な少年たちの土曜日は、草野球から帰って夕飯を済ませると、『8時だョ!全員集合』にかじりついた。
もっともボクはだんだんと『オレたちひょうきん族』に心変わりしていったのだが。

煙突の高さも誇らしげに “金婚” の豊島屋酒造が江戸前の酒を醸している。
実はこの旅のスタートラインへ向かう車中、Googleマップでどうやら東村山に酒蔵があることを知った。
まぁ呑み人の旅はそれくらい行き当たりばったりなのだが、知ったからには訪ねない訳にはいかない。

滝のような汗を流して15分、ショップ「KAMOSHI no BA(かもしのば)」で試飲を愉しむ。
定番の “金婚” や “屋守(おくのかみ)” の他に、なかなか尖った酒をお造りの印象を受けた。
蔵元でしか買えない無濾過生原酒 “純米大吟醸 NEON(PINK)” と “純米吟醸 MELLOW(BLUE)” を仕込んで、
この先の旅、左手に提げた袋がカチャカチャとリズムよく音を立てるのだ。

駅前に戻ったら「ますも庵」の暖簾をくぐる。まだ陽は高いけど今日の一杯を。
この店は豊島屋酒造さんで「東村山で金婚が飲めるお店は?」と尋ねて、紹介してもらったのだ。

とは言えこの暑さ、先ずはキンキンに冷えた “大人の⭐︎生” を一杯。アテは何も捻らず “冷奴” がステキだ。

そして “金婚 純米酒” を升に溢してもらう。やや甘めの飲み口がスッキリした酒だ。
お供するのは “身欠きニシンの甘露煮”、蕎麦前のうちでは好みの一品だ。

〆の一枚は “肉汁うどん” に変更して、甘い肉汁、コシのある歯ごたえと喉ごしを愉しむ。
うどんは埼玉県さんの地粉と言うからまさに武蔵野うどん。西武線シリーズでははや3度目なのだ。

志村けんさんに別れを告げたらもう一路線乗っておく。
3番線でガラんとして発車を待つレモンイエローは2000系4両編成の西武園行き。冷房が心地よい。
列車がガタンと動き出すなり『次は終点西武園っ』の乾いた車内放送、そう西武園線はたった1駅の乗車なのだ。

黄色い西武電車を背景にして、抜けるように白く、満開の “アナベル” が美しい。
沿線の「北山公園」は、水辺を楽しめる静かな公園で、数千本の花菖蒲と紫陽花が盛りを迎えている。

線路の向こう側は『となりのトトロ』でメイが迷い込んだ七国山のモデルと言われる八国山緑地。
東村山と所沢の市境(都県境)にある緑地は、ハイキング トレイルやバードウォッチングのできる池がある。

競輪の開催がない日は閑散とした西武園駅、レースがある日ならばメインスタンドで呑んでも良かったなぁ。
隣接する西武園ゆうえんちプール、聞こえてくる女の子や子どもたちの歓声が夏を感じさせる。
っと、西の空に夕立を予感させる灰色の雲が広がり始めていることに気付く。
慌ただしく折り返すレモンイエローの電車に乗って、国分寺線・西武園線の旅を終えよう。

西武鉄道 国分寺線 国分寺~東村山 7.8km 完乗
西武鉄道 西武園線 東村山~西武園 2.4km 完乗

東村山音頭 / 三橋美智也&下谷二三子


ノミビトは朝、空港で

2024-07-08 | 日記・エッセイ・コラム

土砂降りの午前8時、更新したての真新しい旅券を片手に、羽田空港第2ターミナル。
少々早めの夏休みか、久しぶりの海外渡航は一都市滞在の5日間。予定は全く立てていない。
行った先で酒場を放浪するか、呑み鉄の旅をするか、まぁ単車には乗らないと思うけど。
ちょい贅沢に5つ星ホテルだから、プールサイドでのんびり過ごしても良い。とにかく自由なのだ。

とはいえ、呑むことは外せないから、ナッツとチーズに、朝からラウンジでプレモル生ビール。
喉が潤ったら、“大七箕輪門” 注いで、“焼き鮭” を箸で崩しながら山田錦の純米大吟醸を愉しむ。
搭乗前からやるべき事、いや呑むべきものは呑んでおかないと。

さて、いったい呑み人はどこに降機するのだろう。
容赦なく照りつける市街地の国際空港にはこんなオブジェがあったのでパチリ。

首都を貫く大河の河口の町には、こんな南欧風の小径があったり。

ミーハーにもこんなスイーツに舌鼓を打ったりするのもまた楽しい。

比較的新しい街並みには、こんな今どきのオブジェがあって、観光客やカップルが写真を撮っている。

さて、呑み人が紛れ込んだのはどこの街か、旅慣れた貴兄にはお分かりでしょうか。
スイーツで分かっちゃうかもしれませんね。
いずれ、何らかのレポートをしますね。それでは行ってきます。

<40年前に街で流れたJ-POP>
モリスンは朝、空港で / 佐野元春 1983


空飛ぶ機関車と真夏日のホッピーと魔法の国と 西武有楽町線・豊島線を完乗!

2024-07-06 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

エメラルドのボディーに3人のキャストを大胆にあしらったフルラッピング電車が豊島園に到着する。
溢れ出した乗客の中には、すぐには改札を出ずに、カメラを片手にホームを行ったり来たり。
今日は昼呑みの練馬を基点に、豊島線と西武有楽町線で遊ぶ。

3番線に入ってきた紅いラインの8両編成は東急の車両、副都心線を経由して横浜中華街からやってきた。
西武の車両は勿論だけど、東京メトロ、東武、東急、横浜高速の車両が入り乱れるのは副都心線効果ですね。

地下がこんなに賑やかなのは想像できないほど、静かな住宅地の只中に小竹向原駅は口を開けている。
小竹向原〜練馬のわずか3駅を結ぶの新線(1998年全通)は、練馬区内で完結するけど有楽町線だ。

紅いラインの石神井公園行きは、6分の乗車で西武有楽町線の旅を終える。
もっとも大抵の場合、このまま池袋線に乗り入れて、石神井公園あるいは飯能まで足を延ばすのが常だ。

高架を西武の路線がX字に交差し、その地下を大江戸線が走って、練馬駅も案外立派なターミナルだ。
すでに真夏の陽に射られて、練馬駅前交差点で都道を越えると、ビルの谷間に酒場が連なる細道が延びる。

この界隈には昼から暖簾が掛かる店が何軒かあるらしい。
呑み人はぼんやりと赤提灯が点った「大衆酒場 練馬 春田屋」に吸い込まれる。すっ涼しい。

先ずは生ビール。よく冷やされたジョッキーには誇らしげに店名が入っているね。
アテは “肉味噌ピーマン” って、己で箸を操って作るんかい?まぁ安いから良い。

二杯目は “生レモンサワー”、この酸っぱいのがいい。
タマネギを敷いて “漬けマグロブツ”、紫蘇を散らしてこれがなかなか気の利いたアテ、さらに呑めそうだ。
日本酒は松竹梅かぁ、ご常連が裏メニュー的な地酒を注がせてるけど、面倒だからホッピーでいく。

ナカを追加するタイミングで “豚バラ” を焼いてもらう。味噌と梅と一本ずつね。
汗も引いたし、ちょい気分が良くなったところで、小さな旅の続きを。

高架のホームに上がってほどなく、Harry Potter を煌めかせて「スタジオツアー東京 エクスプレス」が登場。
豊島線は練馬から北へ、住宅街を掻き分けてわずかに1キロの旅なのだ。

赤を基調とした豊島駅構内は、ホグワーツ魔法魔術学校へとつづくホグズミード駅をイメージしているとか。
ベンチや電話ボックス、天井から提げられた時計も英国調で、なんだかワクワクしてくるね。

空飛ぶ魔法列車のモニュメントは、キングス・クロス駅の9と¾番線の Hogwarts Express と思いきや、
かつて「としまえん」で走っていた機関車をリメイクしたものだそうだ。なかなか粋ですよね。

イングリッシュガーデンをイメージした駅前広場、木材をふんだんに使ったナチュラルで暖かみのある駅舎。
豊島園駅はずいぶん雰囲気が変わりました。

黒いマントを羽織り魔法の杖を握って、コスプレをした若者が少なからず集う緑の小径を行くと、
木立の中に、守護霊(パトローナス)が跳ねる「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」が現れるのだ。

さてこの夏、時間を見つけて魔法の国を訪れて見てはいかがか。ボクは練馬駅前で呑んで待っています。

西武鉄道 西武有楽町線 小竹向原~練馬 2.6km 完乗
西武鉄道 豊島線 練馬~豊島園 1.0km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
時間の国のアリス / 松田聖子 1984