八王子道、金沢道の追分、江戸朝立ちの1泊目、留女、保土ヶ谷宿は賑わった。
「おとまりは よい程谷と とめ女 戸塚前(とっ捕まえ)て はなさざりけり」 と弥次さん。
今日の街道メシは、旅籠風に雰囲気を醸した「桑名屋」に立ち寄る。
お約束の生ビールを呷りながら、注文したのは確か "磯花そば" だったっけ。
いくら、わかめ、桜えび、のり等々変わりそばが網籠の中で花のようにならんでいた。
さて、腹ごしらえしたら、保土ヶ谷の誘惑を振り払って戸塚まで歩を進めたい。
2018/07
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八王子道、金沢道の追分、江戸朝立ちの1泊目、留女、保土ヶ谷宿は賑わった。
「おとまりは よい程谷と とめ女 戸塚前(とっ捕まえ)て はなさざりけり」 と弥次さん。
今日の街道メシは、旅籠風に雰囲気を醸した「桑名屋」に立ち寄る。
お約束の生ビールを呷りながら、注文したのは確か "磯花そば" だったっけ。
いくら、わかめ、桜えび、のり等々変わりそばが網籠の中で花のようにならんでいた。
さて、腹ごしらえしたら、保土ヶ谷の誘惑を振り払って戸塚まで歩を進めたい。
2018/07
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東海道最初の品川宿は、旅人はもちろん見送りや出迎えで賑わった。
"寒緋桜" が見頃を迎えた荏原神社を右に見て目黒川を渡ると「そば処 宝喜家」がある。
明治初期、日本で最初のビール工場で生産された "品川縣ビール・復刻版" で喉を潤す。
人心地ついた頃 "鴨なんばん" が運ばれてきた。鴨肉の旨味が効いた出汁が美味い。
初日の街道メシに冷え切った身体が芯から温まったら、今日は川崎宿まで進めたい。
2018/01
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"みちのくの小京都" 角館、武家屋敷の黒板塀に薄紅色のシダレザクラが可愛らしく映えている。
平年ではとても叶わない桜花爛漫の角館行、万全の態勢と細心の注意を払って、この風景に身を置きたい。
日本気象協会の tenki.jp によると角館の桜が満開を迎えたらしい。昨日からの雨も午前中で止むという。
という訳で(いったいどんな訳?)、大宮06:57発、こまち1号で北へ向かうぼっち旅に立つのだ。
「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」とは啄木。
県のシンボル岩手山(2,038m)、頭を雲で隠した成層火山が残雪を抱いて裾野を広げている。
東北新幹線を320km/hで飛ばしてきたE6系も、在来線区間に入るとガクッと速度が落ちる。
岩手・秋田の県境は勾配もカーブもキツイから、さしもの新幹線車両もそれなりに揺れるのだ。
したがって、朝ビールのプルトップリングを引くのに慎重になる。案の定少なくない量の泡を吹いた。
雨、上がったね。角館駅から歩くこと10分、歴史ある屋敷が点在する「武家屋敷通り」にやってきた。
約450本のシダレザクラがお屋敷から通りへと美しく枝を垂らす。樹齢300年を超える古木の花は白に近い。
角館樺細工伝承館の辻までやってきた。シダレザクラの薄紅のグラデーションが美しい。
武家屋敷の重厚な屋根と黒板塀を背景に、淡いシダレザクラは儚い美しさを際立たせている。
武家屋敷の町並みに溶け込んで和の風情の食事処がある。10:00から開いているのでひるまえの一杯を。
"比内地鶏" の正肉とねぎ間を焼いてもらって、酒は羽後長野、鈴木酒造の "秀よし 花綵の里" をいただく。
そして "稲庭雪見うどん" を啜って温まる。 雪見とはとろろを雪に見立てているらしい。姫竹に春を感じるね。
「花冷え」って季語(日本酒の温度も)があるけど、桜花爛漫の今日も温かな饂飩が欲しくなる肌寒さなのだ。
角館のもう1つの桜の名所「桧木内川堤」には、全長2kmにわたるソメイヨシノの花のトンネルが続く。
みごとに色づいた約400本の桜並木は、1934(昭和9)年に現上皇の御誕生記念として植樹されたそうだ。
ところでこの堤に魅力的な助演女優を見つけた。一群の淡い黄色の水仙が可憐に美しく脇を固めている。
緩やかな川の蛇行に沿って一分の隙もなく続くヨメイヨシノの様は、春の朝日に染まった雲の様にも見える。
2時間少々の駆け足の花見(昼酒も一杯やったけど)を終えて角館駅へ。そしてここにもシダレザクラが。
満開を迎えたシダレザクラ、ソメイヨシノ、そして水仙、とても素敵な風景に身を置いて満足の時間だ。
東京方面には戻らず、11:42のこまち9号に身をゆだねる。折角だから弘前まで足を延ばそうと思う。
抱かれたい、もう一度 / 矢沢永吉 1981
蒲田にある有名とんかつ店が大門にやってきたので行ってみたい。
何度かトライをしたけどいつも結構な列ができていて諦めていた。浜松町へ出張ったら実食時間は30分だから。
今回は13:30、並んでいるのはカップル1組。行けそうだ。
初めましてだから基本の "ロースかつランチ定食" を択ぶ、これは平日のお昼限定のサービスメニュー。
カラッと揚がったジューシーなロースは厚みが3cmほど、柔らかいのですっと口に入る。
4種類の岩塩を試しながら、噛むごとに甘味と旨みが広がって美味い。
お椀は白味噌、具だくさんの "豚汁"、主役になれそうな一品にこれは嬉しい。
次回はヒレか上ロースでも良いな。満足な腹を抱えてモノレールまでは小走りに戻るのだ。
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中華鍋を振っているのは在日の方だし、一皿ひと皿が本格的な中華料理だし、
この店を町中華に分類するのは躊躇われる。でも豊富な定食メニューがあって
安価だし、旧い商店街に溶け込んでいるし、っで個人的には町中華に認定。
まず "エビ豆腐煮込み" は、くずれる直前までトロトロに煮込んだ豆腐の海に
大ぶりの芝エビがごろごろと、それこそビールのお供にしたい美味い一皿だ。
っとある日はボリューミーな "酢豚"、ありがちな妙な甘味はない。
しっかり噛み応えのあるジューシーな豚肉がカリっと香ばしく揚がっていて、
しゃきしゃき感を残したタマネギと甘酢あんが絡まって言うことなし。
これは紹興酒のロックでもいいかな。
日替り10種の定食ラインナップのうち3種はラーメン系が彩りを添える。
本格的な一品で麺を覆うような "青椒肉絲メン"、飲んだ後の〆にはこれだな。
様々夜を妄想しつつまだ飲みに来たことがない「台湾キッチン榕城」、
それでも850円でハッピーになれる、ローテーションの一角を担う町中華なのだ。
長岡から2つめの駅を過ぎると列車の窓には信濃川の流れが存在感を増してくる。
堤のあちらこちらで桜が満開になっている。山際のこの辺りはさすがに桜の盛も遅いようだ。
右手に高の井酒造の蔵が見えたら、普通列車は徐々に速度を落として小千谷駅に滑り込む。
闘牛、小千谷縮、にしき鯉、小千谷の町を形容する産物は結構多い。美人の町かも知れないなぁ。
吞み人からしたら、是非とも「小千谷そばの町」を推したい。
駅前通りを緩やかに500~600m下って行くと、目の前に長い橋が現れる。
この長い橋の下を流れるのは信濃川、少し上流で魚野川さえ抱え込んで水量も多く滔々と流れて行く。
対岸の河岸段丘を上って行くと小千谷の市街地、めざす「元祖小千谷そば角屋」がある。
季節柄 "ふきのとう天ぷら" が出ていたので蕎麦前のアテに択ぶ。苦みに春を感じる。
"蔵人の盗み酒" とは、ふな口からの一滴一滴の新酒は、蔵人が人目を盗んでも口にしたい感動の酒、
と云う意味だそうだ。フレッシュかつ濃厚な味わいの無ろ過吟醸原酒にご機嫌な蕎麦前のひとときだ。
絶妙のタイミングで "へきそば" が運ばれる。翡翠色のつやつやした蕎麦がキレイだ。
布海苔(ふのり)を使ったコシの強い蕎麦をズズっと啜って美味しい。
雪国が生んだ素朴な味わいを愉しんで、この美味しい途中下車にほくそ笑むのだ。
1736M水上行は関東平野まで戻れる数少ない1本。"青春18きっぷ" の季節ならではの鈍行列車の旅は、
地酒と郷土料理を求めてのんびりと往く。越後川口から堀ノ内にかけて2本の長いトンネルを潜ると、
左手に越後三山(八海山・越後駒ヶ岳・中ノ岳)が見えてくる。どれもたっぷりと残雪を背負っているね。
ここで仕込んでおいた "八海山" を開けると云うストーリー。幸い車内はガラガラだから心配はない。
ほろ酔いの耳に唸りを上げる1736Mのモーター音が響くと越後湯沢の町が見えてきた。
まちぶせ / 石川ひとみ 1981
その店、安易に大盛りを注文することなかれ、その量異常なり。
雪国の子どもがかまくらを作るように、レンゲで掘り進めて "チャーハン" を食べる。
美味い、安い、具だくさん。 でもデスクワークのオヤジは普通盛りで充分。
ご飯の量は3合たっぷりというところか、実際午後からの仕事には支障をきたす。
"マーボ豆腐" を所望するなら「丼」にすべし「定食」はもっての外。
何故って、マンガ「おそ松くん」に出てきそうなどんぶり飯が出てくるから。
アクリル板越しのガテン系の兄さんが「定食」をぺろり、勿論大汗をかきながらだけど。
この潔いくらいの盛りの良さが、決して美しいとは云わない店に席待ちの列を作るのだ。
大門交差点近くの居酒屋でBiz-Lunch。13:00を回って落ち着きを取り戻した店内。
お茶を運んできた姐さんに "アジフライ定食" を注文、日替り定食は既に売り切れ。
妙に形が整ったアジフライは冷凍モノでしょう。それでもポテサラに煮豆の小鉢、
具だくさんの豚汁(お替りOKらしい)が付いての650円だから良好なパフォーマンス。
さて、お腹を満たしたらモノレールへと急ぎ足。時間に厳しい浜松町遠征なのです。
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日本海に近い駅青海川、ホームに降りると目の前はすぐ海、ちょっと旧いけれどドラマ「高校教師」の
舞台になったよね。信越本線の吞み鉄旅、後半は「越乃shu*kura」で、それこそ日本酒列車で吞んで往く。
咲き誇る約4,000本のソメイヨシノと三重櫓がボンボリの灯りに照らされお堀に映し出されて美しい。
高田城は徳川家康の六男・松平忠輝公の居城として築城された。普請奉行は舅の伊達正宗だ。
忠輝は大坂夏の陣の遅参と大久保長安事件で異母兄秀忠に改易されてしまうが、75万石、親藩の統治が
続いていたら、高田は日本海側にあって、金沢に伍する文化と規模をもった都市になっていたも知れない。
懐かしい高田城址公園の夜桜を愛でたら、雁木通りの飲み屋街・仲町通りをぶらりと歩いてみる。
赴任中、何度となくお邪魔した寿司割烹の暖簾を潜ってみる。大将も奥さんもお変わりなく嬉しい。
地酒を飲みたいから生ビールは小、お通しはホタルイカ、ぜんまい、筍、器には春がいっぱいだ。
平目、甘エビ、やりいか等日本海の幸をお任せで盛ってもらう。
地酒は先ず "鮎正宗" から、ほのかに甘くまろやかな旨味のある、地元オヤジの定番の晩酌酒だ。
妙高市(新井)には3つの蔵があって鮎正宗酒造はそのひとつ、県内産の米と蔵下に湧き出る伏流水で醸す。
君の井酒造は、JR大人の休日倶楽部のCMで吉永小百合さんが訪ねている。
"越乃酔鬼" はやや辛口の定番酒は「冷やでよし燗でなおよし」のこれまた晩酌の酒、ここは涼冷えで美味しい。
巻物を抓みながら辛口を愉しんで "きのこ汁" で〆る。久しぶりの仲町の夜は静かに流れる。
2日目のスタートは10:18、ちょっとのんびりなのはお酒を愉しむリゾート列車「越乃shu*kura」に乗るから。
ディーゼルの音を響かせて、キハ40・48系からなる3両編成が妙高はねうまラインからやって来た。
地酒王国・新潟が誇る「酒」をコンセプトとした列車は、越後の酒蔵と豊かな自然をイメージして命名された。
1号車は食事つき旅行商品用のボックスシートと展望ペアシート、2号車は「蔵守~Kuramori~」が、
地酒やおつまみなどを販売するイベントスペース。ぼっち旅の吞み人は一般的な座席の3号車に席を占める。
駅前で駅弁山﨑屋の「二大将軍弁当」を求める。人気の "鱈めし" と "鮭めし" のハーフ&ハーフ。
棒鱈の甘露煮、塩たらこ、数の子、昆布飯にほぐした鮭といくら、どう見ても日本酒のアテでしょう。
酒は妙高三蔵のもうひとつ "千代の光" 越淡麗純米大吟醸、上品な香りにさわやかで深みのある味わいの酒だ。
そして「越乃shu*kura」は青海川で5分少々停車する。特急の通過待ちではなく観光停車なのだ。
下り線ホーム下まで届くかと思う波打ち際、冬の荒れたイメージから一転、青い日本海はどこまでも穏やか。
今日は水平線に佐渡ヶ島が浮いているように見える。かなりの大きさのだ。
「越乃shu*kura」車両の藍下黒(あいしたぐろ)、なるほどこの日本海の深い藍かと妙に納得できてしまう。
折り返して上越線・飯山線を十日町へ向かう「越乃shu*kura」とはここ長岡駅でお別れになる。
コンコースから1階広場に降りると「三尺玉の打ち上げ筒」モニュメント、長岡は花火の町としても有名だ。
信越本線の旅のアンカーはE129系という新型電車、降雪時でも目立つようにと伝統の派手なカラーリング。
帯は黄金色・朱鷺(とき)色、稲穂をもたげる実りの秋と群れ飛ぶ朱鷺を想像させる新潟らしい色だ。
このE129系は1両のうち半分に4区画のボックスシートを配している、これは吞む旅人には嬉しい配慮だ。
駅ビルの「ぽんしゅ館」で求めたのは "厳選辛口 吉乃川"、なかなかスッキリとした辛口の酒。
早速ワンカップを開け、青しそ入りのひとくち蒲鉾をアテにグビり。高校生が乗ってくる前に愉しんでおこう。
新潟までの所要は1時間20分、途中の東三条・加茂辺りから下校の高校生を満載して首都圏近郊なみの混雑だ。
ぽんしゅの匂いは残ってる?ちょっと気がかりな吞み人を乗せた451Mは16:50、高架化なった新潟駅に滑り込む。
夕闇迫る万代橋にランプが灯り始める。信越本線の旅に付き合ってくれた信濃川(長野県内では千曲川)もまた、
この橋の先で日本海に注ぎ、甲武信ヶ岳に滴を発して367km、日本で一番長い川の旅を終えるのだ。
信越本線 高崎~横川 29.7km
しなの鉄道線 軽井沢~篠ノ井 65.1km
信越本線 篠ノ井~長野 9.3km
北しなの線 長野~妙高高原 37.3km
妙高はねうまライン 妙高高原~直江津 37.7km
信越本線 直江津~新潟 136.3km 完乗
長い夜 / 松山千春 1981
高田城址公園には約4000本の桜が咲き誇り、3000個以上のぼんぼりに淡く照らされてお堀に映える
三重櫓と桜の美しさは、上野の恩賜公園、弘前城公園とともに日本三大夜桜の一つに数えられている。
上越市高田には新卒社員で8年、後に単身赴任で3年、延べ11年在住の浅からぬ縁なのだ。
20代の人生の一番いい時期(ちょっと大袈裟かな?)を過ごしたから、ここの桜を観るとなんだか複雑、
でも懐かしいしホッとした気分にもなるんだよね。
さて、桜を愛でたら、雁木通りの飲み屋街で、日本海の海の幸を肴に妙高の地酒を愉しもう。
ロンリー・ハート / クリエーション 1981
信州の桜は入学式が終わってからと記憶していたけど、今春は4月の声を聴くや満開を迎えた。
近所の蕎麦処で信州の地酒を吞んで里心がついた僕は、新書を一冊ポケットに束の間の帰省を果たす。
母校の時計台は櫻木に囲まれていたと思っていたけれど記憶は曖昧だね。ピンクの枝垂れが1本だった。
そう云えば、風流人を気取った古文の教師は、僕らを母校の前庭や善光寺を見下ろす公園に連れ出して、
そよ風にサクラが舞い踊る中、朗々と万葉集なんかを謳い上げていたっけ。
さて、記憶のソメイヨシノの並木は新校舎を囲むように在った。当時ここはグランドが広がっていて、
暗くなるまでボールを蹴っていた。恋を語るでもなく、訳もなく硬派を気取っていたな。
暫し16~17の頃に思いを馳せて振り返る。丘の下の市街地は春霞に揺れているようだ。
ブギ浮ぎ I LOVE YOU / 田原俊彦 1981
しなの鉄道、えちごトキめき鉄道の結節点・妙高高原駅に国鉄時代の近郊型電車115系が到着する。
レッドとガンメタの化粧を施したしなの鉄道の115系はとても精悍な顔つきをしていると思う。
憧れの東京に向かう鉄路、懐かしいふるさとへと還る鉄路、数え切れないほど乗った信越本線を往く。
信越本線は1997年の長野新幹線開業、2015年の北陸新幹線延伸開業で細切れになってしまった哀しい幹線だ。
上野発の始発に乗車して高崎に到着、高気圧が日本列島を覆った朝は放射冷却でひんやりとしている。
旅のトップランナーは東京駅では見ることがなくなった221系、4両編成で碓氷の関・横川をめざす。
4両編成はオールロングシートで旅情の演出はない。バックの中の缶ビールは出番を失ってしまった。
221系の旅はわずかに30分、碓氷峠区間の廃止により横川駅の1番線は車止めで行く手を塞がれている。
山間の小さな横川駅だが、かつては峠越えの補助機関車の連結に往復40本の特急列車が停車していた。
3分停車で特急の乗客が殺到したのが "峠の釜めし" の立ち売り、最盛期には25,000個/日を売り上げたと云う。
峠の釜めし本舗おぎのや本店を横目に駐車場へ急ぐ、つばめマークも誇らしげにJR関東バスが待っている。
吾妻はやとし日本武 嘆き給いし碓氷山 穿つトンネル二十六 夢にもこゆる汽車の道 ♪
今では7往復のバスが細々と横川と軽井沢を結んでいる。この08:10発が峠を登る初便なのだ。
JR軽井沢駅の隣接地に明治43年(1910年)建築当時の旧軽井沢駅舎が記念館として復元された。
皇族や要人が利用した2階の貴賓室は、当時の雰囲気そのまま観光列車「ろくもん」のラウンジになっている。
10:05、1番線に「ろくもん」が入線する。となりに並ぶのは「峠のシェルパ」EF63型機関車。
2番手ランナーの「ろくもん」は、軽井沢から長野まで、浅間山と千曲川の雄大な景色を眺めながら
美食を堪能するレストランカーを備えた、水戸岡鋭治氏デザインの人気の観光列車なのだ。
明日はいずこか 浮雲に 煙たなびく 浅間山 ♪
信濃追分~御代田間で、車窓をいっぱいに埋めつくす浅間山、その標高は2,568mを誇る。
日本でも有数の活火山が大きく裾野を広げて聳え立つ姿は壮観だ。
青空が広がる缶に満開の桜、春らしい爽快な喉越しと切れ味のTHE軽井沢ビール "桜花爛漫プレミアム" を呷る。
鶏肉、ささがき牛蒡、椎茸、筍がビールのアテにちょうど良い。"峠の釜めし" は軽井沢駅で買えるのだ。
「ろくもん」は途中駅の上田で長めの停車、ここ上田市の真田町は真田一族発祥の地。
駅前では、赤い六文銭の馬印と真田幸村騎馬像が迎えてくれる。真田幸村は、赤い甲冑を身にまとった
部隊を率いて大坂夏の陣に挑んだ。その「赤備え」をイメージしたのがこの濃赤色の車体だ。
大庇を12本の列柱が支える長野駅の門前回廊を春の柔らかな陽が照らしているね。
この時期に友人と会うのも憚られるから、帰省の記しにせめて善光寺だけは詣でておこうとバスに飛び乗る。
「遠くとも 一度は参れ 善光寺」と謳われ、一生に一度お参りするだけで極楽往生が叶うと云うから有難い。
境内入口から山門まで7,777枚の石畳が敷き詰められていると云われる参道を歩いて本堂の前に立つ。
っと自然とあらたかになった気になるから不思議なのだ。
信濃美術館・東山魁夷館がある城山公園から善光寺本堂方面を望む。
平年は月の中ごろにようやく咲き誇る信州の桜も、今春は4月の声を聴くや満開を迎えて華やかなのだ。
御影石を敷きつめた善光寺表参道に老舗「門前そば 藤木庵」がある。文政十年(1827年)の創業と云う。
"斬九郎 特別純米生" は伊那の "信濃錦" の蔵元(宮島酒店)の酒、一合猪口になみなみと注がれ嬉しい。
そば焼き味噌、おやき、野沢菜の "蕎麦前三味" をアテにスパッときれの良い芳醇辛口を堪能するのだ。
〆は黒姫の霧下そばを手打ちした "十割そば" をとろろ汁(松代は長芋が名産)でズズっと啜る。
噛むとしっかり広がる蕎麦の香りを愉しみながら粘り気あるとろろ汁に絡めて美味しい。ふるさとだなぁ。
長野から先は 北しなの線(しなの鉄道)を往く、信州の爽やかな風を表現したロイヤルブルーは新鋭のSR1系。
サイドの緑と水色のラインは、沿線の山並みと清流を表現していると云う。なかなか良いデザインだと思う。
有料快速にも運用されるSR1系は窓枠も広くドリンクホルダーも備えて、心置きなく吞み鉄の旅を愉しめる。
古間駅を過ぎると車窓に黒姫山(2,053m)、プシュッと "善光寺浪漫BEER" はケルシュタイプの地ビールだ。
妙高高原駅では僅かな乗り換え時間で 妙高はねうまライン(えちごトキめき鉄道)に連絡する。
沿線の中心駅・高田では「高田城百万人観桜会」を開催中、よってこの日は堂々の6両編成で運用なのだ。
標高510mの妙高高原から38kmで直江津まで下るから、妙高はねうまラインは結構な急勾配になっている。
車窓には路線名になっている妙高山(2,454m)が残雪を抱いて存在感が半端ではない。
その急勾配ゆえに2つめの二本木駅はスイッチバックになっている。(以前は関山駅もスイッチバックだった)
妙高山の裾野を駆け下った6両編成は、約50分の旅を港町・直江津駅で終える。
信越本線と北陸本線(日本海ひすいライン)が分岐する直江津は鉄道の要衝、6線のホームと多くの側線を持つ。
さて、まだ陽は高いのだけれど、ここ直江津で一度はばきを脱ごう。今宵高田城公園の夜桜を眺めて、
妙高の地酒で日本海の幸を堪能したい。そして明日は「越乃shu*kura」で新潟方面をめざすのだ。
コットン気分 / 杏里 1981
普段歩かない住宅街に迷い込んだら、マンションの1階に信州蕎麦の店を見つけた。
お品書きにふるさとの地酒がラインナップされているから、明るいうちから飲んじゃう。
"出汁巻き玉子" をアテに先ずは "亀の海 超辛口純米"、北に浅間山、南に八ヶ岳を望む
佐久市中込の酒は、穏やかな香りでスッキリとした味わいなのだ。
佐久穂町の黒澤酒造は千曲川最上流の酒蔵、"井筒長" って銘柄がポピュラーだけど、
黒澤の名で生酛(きもと)で醸している、"黒澤 生もと特別純米" は酸味が心地よい酒だ。
"鴨焼き" を抓みながら飯山の酒 "水尾 辛口" を。最近なぜかこの銘柄に嵌っている。
県産米ひとごごちを醸した辛口が、味の濃い鴨焼きを相手に、さっぱりと美味い。
〆は信州小諸の手打ちを "板そば" でいただく、信州らしく胡麻汁でズズっと啜るのだ。
あれっ今日の酒は千曲川に沿った蔵の酒だったなぁ。ふるさとへ帰る車窓が目に浮かぶ。
地酒のラインナップは替わるのかな?ご馳走さまでした。また伺いますね。
千曲川 / サム・テイラー