旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

西武多摩川線を完乗! 「中央フリーウェイ ♪ 調布基地を追い越して」

2024-04-27 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

多摩川線の電車はブルーにイエローそれにレッド、5人揃わない戦隊モノってところか。
起点の武蔵境駅に進入してきたのは赤電、1960年代まではこの色が標準だったそうだ。
高度経済成長期を支えた団塊の世代の方には懐かしいのでは?ボクにはこの101系電車が懐かしい。

閑静な住宅街の駅は、大きな広葉樹が木陰をつくり、青々としたシンボルゲートが市民を見送り出迎える。

南口駅ビル「エミオ武蔵境」の階上が多摩川線のホーム、JR中央線からの通番で3番4番が振られている。
4両編成の戦士たちは、案外生真面目にキッカリ12分毎、是政との間をシャトルしている。

101系のデビュー当時の塗色であるイエロー×ベージュのツートンカラーで途中下車したのは多磨駅。
東京外国語大学、FC東京の味の素スタジアム、調布飛行場の最寄駅である。

中央フリーウェイ♪ 調布基地を追い越し 山に向かって行けば ♪
「中央フリーウェイ」が発売された1976年から遡ること数年前まで、ここはアメリカ軍に接収された調布基地。
さらに対戦中は、B-29爆撃機を要撃した三式戦闘機「飛燕」を擁した旧陸軍調布飛行場であった。
今でもこ「飛燕」を敵弾から守る、カマボコ屋根状コンクリート製の掩体壕を見ることができる。

っと、南風に乗って、航空燃料の匂いとターボプロップのエンジン音が流れてくる。
そして数分後、滑走路に現れたのはドルニエ228型機、たぶん神津島へ飛んでいく奴だ。
滑走路の北端でブルっと身震いしたプロペラ機は、銀色の翼を煌めかせ、スタジアムの向こうに消えるのだ。

2021年にリニューアル工事を完了した多磨駅は、陽光溢れるガラス張りの橋上駅。
真横から見ると、セミかバッタに見えるのはボクの気のせいだろうか。ともあれ旅を続けよう。

さらに2駅先まで乗車するアイボリーにブルーのラインは、伊豆箱根鉄道カラーの4両編成だ。
京王線と交差し、中央フリーウェイを潜って、大きな左カーブに差し掛かると競艇場前駅。

調布基地を追い越して、右手に競馬場が見える前に、実は左手に競艇場が見える。
まぁ語呂が悪いからね、ユーミンはこの競艇場はスルーしている。
今は使用していないかつての上りホームには、機能美溢れるボートが展示されている。

呑み人が競艇場を訪れるのは人生初、でもこの週末はレースがなくて、強者どもは場外発売にやって来る。
ボートレースに関心は無いし、勝舟投票券を購入する気も無いけれど、呑むところ位はありそうだ。

後から考えたら、人気の “勝つカレー” とか、丼ものだとかを食べれば良いものを、
アジフライに枝豆だって、アテ風の一品を択んでいる自分が可笑しい。
モニターを睨んでレースに興じるオヤジさん達を眺めながら、真っ昼間の “ハイボール” を一杯。

進行方向を大きく変えるカーブを描いて、レッド×ベージュの赤電塗色が競艇場前駅に入ってきた。
ラスト1区間2分の乗車だけど、この炎天下、冷房が効いた電車は快適この上ない。

妙に静かな昼下がりの終着駅、川砂利を運搬する目的で開業した多摩川線は、多摩川の土手下にある。
すれ違った小さな男の子が、ママに手を引かれてテンションを上げている。電車でお買い物は楽しいね。

夕暮れの武蔵境に戻って、ガード脇にごちゃごちゃと軒を連ねるのが「素浪人」だ。
若いころはあちこちを渡り歩いたのだろうか、今ではすっかり角がとれました風の店主が焼き台に立つ。
一見さんとしては恐る恐る暖簾を潜ったのだけど、快く狭いカウンターの一席を勧められる。

「先ずは生ビール」のアテには “ポテトサラダ” を。このメニューは店の色が出ますね。
そして大好きな “マグロ中おち” がトロリと美味しい。

“厚揚げ” のうえで削り節が揺らめく様に、なぜか心やすらぐのはボクだけだろうか。
大衆酒場の暖簾をくぐった夜は、生ビールからのホッピー2杯が、いつしか習い性になっていると気付く。
今宵も予定数を終了して、多摩川線の短い短い旅を終えるのです。

西武鉄道 多摩川線 武蔵境~是政 8.0km 完乗

中央フリーウェイ / 荒井由美


水曜日は家呑み派 「常山 飛 直汲み生酒」

2024-04-24 | 日記・エッセイ・コラム

いい “たけのこ” が手に入ったから、今宵は家呑みってことで。
料理は “たけのこ” に徹するから、その他は手を抜いてデパ地下で見繕ってきた。

“たけのこ” をじっくり味わえる、春を感じる一品は “若竹煮”、細切りのお揚げはボクのリクエスト。
お揚げでちょっぴり甘味を増した一品は、日本酒にあうと思うのだ。

先日の北陸新幹線の旅で立ち寄ったのは常山酒造、“純米吟醸辛口 飛 しぼりたて直汲生” を開ける。
淡麗旨口とでもいうのかな、キレの良い淡麗なのだけど、米の旨みもじゅうぶんに感じる。

お刺身を白い陶器に盛りつけたら、テーブルが一挙に華やぐね。
それから “揚げイワシの甘辛” は青唐辛子を添えて、こんな肴で淡麗旨口を重ねる。
いただいた「常山」と描かれたグラスに、ひとつ買い足してペアにした。掌に収まってかわいらしい。

土鍋が湯気を上げて “たけのこご飯” が炊き上がったら、しゃもじで混ぜて木の芽をちらす。
品のいい茶碗に盛り付けて、なめこ汁と並べたら、なんだか料亭気分と自賛。
訪ねた蔵で求めた旨い酒を、こうして家呑みで開けると、呑み鉄旅は二度美味しいのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ひとり / 中島みゆき 1984


西武拝島線を完乗! 「玉川上水と武蔵野うどんと多滿自慢と」

2024-04-20 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

副都心の高層ビル群をバックに、急行拝島ゆきが湘南新宿ラインとデットヒートで高田馬場に滑り込む。
遠出する予定のない連休、天気も良いから、東京の裏庭で乗って呑んでみる。

拝島線の起点は小平駅、駅前広場は花に溢れて落ち着いた郊外の駅だ。
起点から3駅連続で他線と交差をしたり、地図を見ると南へ西へとそれこそ直角に進行方向を変えている。
これは西武鉄道が、合併したいくつかの私鉄線、軍や工場への引込線を繋ぎ合わせた歴史による。

列車は新宿から拝島まで直通するもののほか、小平から玉川上水をシャトルするものがある。
ちょうど引き上げ線から折り返しの玉川上水ゆきが入線してきた。
イエローの2000系は1977年からの古参車両、呑み人がこの沿線に住んでいた頃は、絶賛勢力伸長中だった。

乗車前には小平駅周辺を散策して「小平ふるさと村」を訪ねてみた。
旧小平小川郵便局舎は明治41年の和風建築、昭和58年まで現役であったというのは、ちょっと驚きだ。

旧神山家住宅主屋ではギターマンドリンクラブが演奏会をしていた。
奏でる加山雄三の「旅人よ」が旅情をかきたてる。えっ、そんなに遠くまで来ていたっけ?

裏手に廻ると杉皮葺の水舎小屋があった。
旧小川村が開かれると玉川上水から分水され、33か所に設けられた水車は脱穀や製粉に用いられたという。
なんだかまだ東京が遠かった時代の、武蔵野の風景が目に浮かぶ「小平ふるさと村」なのだ。

近くに評判のいい手打うどんの店を見つけた。まずはここでビールを呷る。きょうは夏日だ。
そして “たまなす” 登場、玉葱と茄子ってことだ。
思い描いていた武蔵野うどんよりもかなり上品な一杯は、玉葱の甘味と相まってなかなか美味しい。

ところで2000系の6両編成は、玉川上水駅の折り返し用2・3番ホームに終着する。
萩山で多摩湖線、小川で国分寺線と交差した後、再び西に向きを変えてわずか4駅の運行だ。

駅の改札を抜けてみる。南口には木漏れ日を映してキラキラと玉川上水が流れていく。
この先終点の拝島まで、鉄路はこの煌めきに寄り添うように延びている。

モーターの唸りを聞いて、視線を水面から頭上に転じると、ちょうど多摩都市モノレールの電車がやってきた。
2つの路線が交差して、閑静なこの駅も朝夕は乗降客と乗換客で混雑するのだと思う。

1番線には堂々10連の20000系が軽快に進入してきた。この急行拝島ゆきでラストスパートになる。
玉川上水からは3駅、右に大きなカーブを描いて、横田基地へ向かうJRの引込線と交差すると終点の拝島だ。

4路線が乗り入れ6方面に鉄路が伸びる拝島駅は、なかなか規模の大きなジャンクションだ。
橋上駅の南口側からは、奥多摩から丹沢までの山々を眺める。目を凝らすろ富士が頭を覗かせている。

大きなケヤキを囲むように6つの登録有形文化財を有する酒蔵、石川酒造までは南口から徒歩15分。
蔵自らが「酒飲みのテーマパーク」と称する様に、季節の日本酒やビールを味わうために多くの人が訪れる。
地ビールとイタリアンの「福生のビール小屋」と日本料理の「食道いしかわ」があって、ボクは後者を択ぶ。

もちろんメニューの酒はすべて多満自慢、まずは冷たい “純米生原酒あらばしり” からいただく。
アテは “豚の角煮”、とろとろの豚肉にナスを添えて、白髪ネギを絡めてちょい辛子、美味しいね。

遅れて登場した “だし巻き玉子” に、二杯目の “熟成純米生原酒” はまろやかな味わいがいい。

何度か訪ねている石川酒造だけど、ずいぶん客層に外国人観光客が多くなった。
InstagramにX、SNSで調べては訪ね、訪ねては発信して、訪れる人は増えていく。
正直、彼らに教わる映えるスポットや美味しい店は多いのだと思う。そんな事を考える拝島線の旅だ。

西武鉄道 拝島線 小平〜拝島 14.3km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
17歳の地図 / 尾崎豊 1984


Biz-Lunch Sun'sキッチン@東池袋「天津飯」

2024-04-17 | Biz-Lunch60分1本勝負

池袋のランドマークSunshine60、オフィスフロア専用エレベーターに乗り込む。
とある階で降りると、南面いっぱいに広がるカフェテリア「Sun'sキッチン」がある。

給食会社が受託しているのか、テナントが共同運営しているのかは分からないけれど、
案外と本格的で美味しい賄い料理を食べることができる。

一応、入居テナント従業員専用らしいけれど、ボクたちが席を占めるのに差したる制限はなかった。
2〜3人連れのご同輩のサラリーマン、スマホ片手に一人ランチのアパレル店の販売員、
ちょっぴり混沌とした雰囲気がまた楽しくもある。

そしてボクはと云えば、熱々の餡をかけた “天津飯” をいただく。
カニカマほぐしと万能ネギを散らして見目麗しく、そして美味しい。
お近くにお住まいのあなた、一度、オフィスフロア専用エレベーターに乗ってみたら如何だろう。

<40年前に街で流れたJ-POP>
誘惑光線・クラッ! / 早見優 1984


西武池袋線・秩父線を完乗! 「芝桜と秩父神社と天覧山と」

2024-04-13 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

急行の赤い電光表示も誇らしげに、飯能ゆきの10両編成が3番ホームに入ってきた。
この6000系電車は1992年のデビューと云うから、すっかりベテランの貫禄を身につけている。
西武鉄道線を完乗してから9年が経った。このあたりで再び沿線を呑み歩きたい。

最初に旅する池袋線の起点は西武池袋駅、池袋のランドマークとも言える西武池袋本店の1階にある。
このビルは昨年9月に米投資ファンドが買収、売場・ブランドは次々に取り扱い終了となり改装に入っている。
よもやこの青い看板が落ちるようなことにだけはなって欲しくない。。

所沢を出てから、池袋線は緩やかな勾配を直線的に駆け上がってきたのだけれど、
狭山市に差し掛かる頃には、耐え切れず、大きなカーブと急な勾配で狭山丘陵を登る。
途中下車した入間市駅も、そんなカーブと勾配の中にあった。

航空自衛隊の町入間には、旧陸軍航空士官学校跡地に「修武台記念館」という歴史資料館がある。
チャンスがあれば見学会に応募してみたい。今回は敷地外から F-86F-40 をパチリ。

隣接する「彩の森入間公園」では噴水が飛沫をあげ、新緑が木陰をつくっている。
沿線に住んでいたなら、バケットとチーズとワイン、それに文庫本を持って昼寝に出かけたい。

丘陵を登ってきたのは40000系電車、転換するとクロスシートになって座席指定列車として運用される。
FREE Wi-Fi や多目的トイレを設備し、乗って快適な新型車両だ。

入間市駅から3つ目の飯能駅はスイッチバック構造になっている。
ここから向きを変えて吾野方面へは本格的な山登りになるが、特急を除くほとんどの列車は飯能止まりだ。

飯能駅を背に飯能大橋まで来たら、薫風に吹かれて入間川沿いを下流へ向かって歩いてみる。
加治橋の袂に “天覧山” の五十嵐酒造を訪ねる。純米酒を中心に何本か求めたので何れご紹介したい。

旅の続き、西武秩父ゆきの4000系は、ライオンズカラーの2扉セミクロスシート車両。
いわゆる旧国鉄の急行車両のようなタイプ、たっぷりの旅情に車中酒を楽しむにはこれでなくちゃ。
構内コンビニでワンカップを買って準備万端、でも発車間際に駆け込んできたカップルと相席に。残念。

ところがだ、この華人のカップルは呑み人の前で、不埒なほどイチャつき始めるのだ。
しからば止むなく或いは対抗上?ボクはカポッと “秩父錦 金印” を開けるのだ。
コクとキレのある淡麗辛口にアテの “いぶりがっこチーズ” がよく相応う。これって絶品です。

終点ひとつ手前の横瀬駅で降りると、芝桜の丘(羊山公園)は近い。
秩父のシンボル武甲山を背景に、見ごろを迎えて、色とりどりの花じゅうたんが美しい。

芝桜は北アメリカ原産の多年草で別名をハナツメクサという。
数ある種類の中でも、この “スカーレットフレーム” と “多摩の流れ” が好きかなぁ。

横瀬駅を発った4000系が大きなS字を描いて荒川の河岸段丘を下りる。っとそこは秩父線の終点 西武秩父だ。
秩父線は池袋線の事実上の延伸路線なのだけれど、戦前に開通した吾野までの池袋線と区別している。
秩父線(吾野〜西武秩父)が開通した1966年、同時に特急レッドアローが誕生している。

西武秩父駅はフードコート「祭の宴」や日帰り温泉「祭の湯」を併設した駅舎を持つ。
レジャーランドのような駅は、休日ということもあって、家族連れ、グループ、カップルで賑わっていた。

これだけで腹が膨れるのは分かっていながら、どうしても食べたいのが秩父のB級グルメ “みそポテト” だ。
きょうは秩父そばの人気店「立花」を訪ねて、秩父地粉と武甲山の伏流水で打つ二八蕎麦をいただく。
少し豪華に過ぎる天ぷらを持て余しつつも、喉越し良く、二八を一枚、ズズっと啜って美味しい。

世に名高い例大祭 秩父夜祭(ユネスコ無形文化遺産)で知られる秩父の総鎮守 秩父神社を訪ねる。
お元気三猿、子宝子育ての虎 と つなぎの龍(いずれも左甚五郎作)と極彩色の彫刻が施された社殿は、
徳川家康の命により建てられたものというから、その時代の、例えば東照宮の雰囲気に似ていなくもない。

さて、御本殿に奉納されていた菰樽の一つ “武甲政宗” の蔵が、その重厚な佇を残している。
お約束通りに利き酒を楽しんだら、お気に入りの純米酒を求めてご満悦なのだ。

さて今宵の一杯は飯能駅まで戻って、いや宵というより寧ろ昼呑みの時間ではある。
駅近の隠れ家的居酒屋「なかよし」は、午後2時に縄のれんが掛かる稀有な店だ。

件の縄のれんを潜る。L字に切った年季の入った白木のカウンターが7席、居酒屋というより小料理屋って感じ。
お通しの大根とごぼう天の “おでん” が絶品、上品な出汁がいい味を出している。
唯一がっかりしたのは、地酒の “天覧山” を切らしてしまったんだって、そりゃないよ。

それでは東北の酒で揃えようと、一杯めは秋田県は八峰町、山本酒造店の “白瀑 ど辛” を択ぶ。
“お刺身盛” をつまみながら、日本酒度+15の超辛口が飲みごたえ十分なのだ。

後客が入ってくる。座敷に入った予約客はゴルフコンペの帰り。
小上がりに上がり込んだ5人はリュックを背負ってきた。
なるほど合点が入った。午後2時から暖簾をかけるのは、こういう来客ニーズがあるからだね。

次なるアテは “若鶏の甘唐揚げ”、いいテリをしてるし、これは美味しい。
福島の “会津中将 純米” は、濃醇だがしかしすっきりとした味わい、肉料理にも上手に相手をしてくれる。

さてと、カウンターに常連の二人連れが入るのを潮に店を出る。八十八夜を過ぎて外は明るい。
ゴルフに登山に呑み鉄に、大人の遊びに優しい町に感謝しながら、西武池袋線、西武秩父線の旅を終えよう。

西武鉄道 池袋線 池袋〜吾野 57.8km 完乗
西武鉄道 秩父線 吾野〜西武秩父 19.0km 完乗

君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。/ 中原めいこ 1984


酒と肴と男と女 おでん処 大酉茶屋@金沢

2024-04-10 | 日記・エッセイ・コラム

ひと頃二人は何度か金沢を訪れた。
それぞれの拠点からちょうど良い距離だったこともあるけれど、
訳ありの二人を包み込んでしまうには、この街は手頃な大きさだと思うのだ。

スナップえんどう白和え
ホタルイカ酢味噌

9年前に新幹線が延伸してからこっち、この街は今までに増して多くの観光客を迎えるようになった。
共通の知り合いにばったりという事も無いとは限らない。
くぐる暖簾は、人気の割烹や居酒屋から、渋い小料理屋とか地味めな酒場へと変わった。

先一杯(まずいっぱい)
イイダコ煮

駅前の喧騒を逃れた路地裏の店で提供される酒は、冷も燗も “菊姫” の一択。
鶴来町は白山比咩神社への参道にある蔵へは、ローカル私鉄に揺られて訪ねたことがある。
“先一杯(まずいっぱい)” は旨口だけど軽やかな口あたりの純米酒だ。

金劔
あじたたき

袖振り合うような狭いカウンター、蛇の目のお猪口で差しつ差されつするのが嬉しい。
“金劔” は鶴来町にある金劔宮(きんけんぐう)からあやかった、米の甘味・旨味を感じる優しい女酒。

山廃純米
もも串、せせり串、ささみ串
くるまふ、梅貝、竹の子 etc

焼き物は塩で、レモンを絞る。でも柚子胡椒かワサビか分かれるのが二人の好みだ。
濃醇で飲み応えがある “山廃純米” は、酸味と濃さのある剛健な男酒。
加賀麩やら梅貝やら、金沢おでんらしく盛り合わせてもらう。香り立つ深みのある出汁が美味しい。

次々に暖簾をくぐってくる常連客に席を譲るように店を出る。
街はちょうどいい感じに黄昏れて、二人が肩を並べて歩くのを許してくれる。
えんじに浮かび上がった鼓門を見上げたら、一緒に居られる時間もあと僅かだ。

Hello, My Friend / 稲垣潤一&高橋洋子


北陸新幹線を完乗! 「剱岳と越前そばと月清しと」

2024-04-06 | 呑み鉄放浪記

敦賀延伸開業から1ヶ月、桜の季節を待って北陸を旅する。
呑むことと乗ることに的を絞って、北陸3県を早回しに訪ねてみたい。

背後から朝日を浴びて、午前7時前の赤れんがは驚くほど静かに佇んでいる。

07:20、22番ホームから2本目の “かがやき” が滑り出す。

全長22.3kmの長大な飯山トンネルを抜けると、車窓左手に頸城三山が現れる。
連聳する火打山と活火山の焼山を従えて、“越後富士” 妙高山が秀麗に裾野を広げている。

トンネルの合間にチカチカと日本海が煌めくと、やがて “かがやき” は富山平野へと飛び出す。
こんどは立山連峰の “剱岳” が遥か昔に氷河に削り取られた峻険な山容を見せる。

東京から2時間、満開の桜が迎えてくれた富山駅。
枝いっぱいの淡い桜色と、ハンギングバスケットの橙や黄それに紫のコラボレーションが華やかだ。

富山地方鉄道の市内線にガタゴト揺られること5分、丸の内電停を降りると富山城のお濠端だ。
天守閣と石垣、お濠に桜色を映すソメイヨシノ、ビルの間に煌めく立山連峰、この共演は美しい。

かつて高山本線のホーム上で繁盛していた「立山そば」は、とやマルシェの一角で出汁の香りで誘っている。
思わず押した券売機の “白えび天そば” 、白えびの香ばしさと薄めの出汁を絡めてズズッと美味しい。 

旅はテンポよく進む。13:40発の “つるぎ” は富山・金沢と敦賀を結び、名古屋・大阪方面へと連絡する。
真っ昼間の便はまだまだ輸送力に余裕があって、乗客は間違いなく訪日外国人観光客の方が多い。

 

“三笑楽” は合掌造りで有名な五箇山の酒、豪雪地帯の冬の寒で醸した芳醇辛口が美味しい。
金沢までは20分と少々、“白えび小判” を添えて、カポッとワンカップ一杯がちょうど良い。

金沢駅ではいつもの鼓門が迎えてくれる。この日は初夏を思わせるような陽気になっている。
どこへ行こうか考えた末、彦三町から浅野川沿を主計町茶屋街へ向かう。枝垂れ桜が川面に花筏を浮かべている。

柳の芽が揺れる「ひがし茶屋街」は紅殻格子の町家を並べて、石畳を漫ろ歩くのが楽しい。
朱に縁取られた花街の街灯が点る頃に訪れたら、さぞかし美しく幻想的だろうと想像する。

 

この街にも溢れる訪日外国人観光客、その喧騒から「きんつば中田屋」の階上に逃れる。
呑んでばかりのボクだけど、たまには甘味もいいだろうか、しっとりと “ロールケーキ” が美味しい。

慈母観世音菩薩を見上げる加賀温泉駅、新規延伸区間2つ目の駅は金沢から20分の乗車。
今宵は山代温泉の老舗に投宿して、加賀能登の野山の味覚を肴に一杯やりたい。

そして今宵の酒はお隣は山中温泉の “獅子の里”、スッキリとした切れ味の超辛純米を愉しむ。

少しだけお膳を紹介する。日本海の「割鮮」はあられ塩でいただく。この超辛の酒が合うね。
「進皿」の春鯛大根挟みは新玉ねぎのソースで、「羹(あつもの)」の能登豚野菜道明寺蒸しは生姜の餡で美味しい。

「台物」の和牛鍋、豚骨醤油出汁仕立てで、追い麺にべんがらこんにゃく麺が珍しい。
釜炊き御飯は朝利めし、薄揚げの甘味と三つ葉の香りと相まって美味しい一杯だ。

翌日の “つるぎ” は、まずは隣の芦原温泉まで8分の乗車。
一度は訪ねたいと思っていた丸岡城までは、ここから路線バスでアプローチできる。

丸岡城は北陸唯一の現存天守、織田信長の時代、柴田勝豊が一向一揆への備えとして築いた。
荒々しい野づら積みの石垣に載った2重3階の天守に、盛りを過ぎたソメイヨシノが花吹雪を散らす。

さらに隣の福井までは9分の乗車、缶ビールを開けるまでもない。新幹線というインフラの凄まじさを感じる。

新幹線の延伸開業で新しくなった東口広場には、トリケラトプスの親子が出現した。
ふくい観光案内所の屋上には、ハートのモニュメントと2体のフクイティタン。恐竜の増殖が止まない福井駅だ。

この週末、東口のハピテラスでは、福井県内23蔵を集めて「春の新酒まつり2024」が開催中。
この手のイベントには関心が薄いボクは、駅から10分歩いて常山酒造の蔵を訪ねる。
試飲を楽しみ、お気に入りを何本か仕込んだから、いずれ家呑みでご紹介したい。

軽快なチャイムがホームに響いてまもなく、緩やかなカーヴを描いて東京からの “かがやき” が進入してくる。
終点の敦賀まではあと2区間、時間にしてわずかに10分少々の乗車になる。

敦賀駅のまるで要塞のような堅牢で大きな新駅舎にまずは驚くしかない。
名古屋から、大阪からの特急の乗客を8分で新幹線に乗継させるため、どうしても必要な施設らしい。
いつの日か新幹線が大阪方面に延伸したら、ここが寂しい空間になってしまうだろうと想像する。

駅に降り立ったら、真っ先に佐渡酒造先生にご挨拶。この旅でも美味しいお酒を愉しんでます、っと。
松本零士氏は敦賀出身?っと誤解するほど、街角に「銀河鉄道999」と「宇宙戦艦ヤマト」が溢れている。
お気に入りは「別離」という作品、子どもの頃、映画のこのシーンには泣いた。

かつて1枚の切符で東京からベルリンまで旅する「欧亜国際連絡列車」があった。
毎週金曜の午後8時25分、東京発金ヶ崎(敦賀港)ゆきの夜行急行の乗客は、
ここでウラジオストック航路に乗り継ぎ、遥かヨーロッパをめざした。

なんともロマンのある、そしておそらく過酷な旅だったろう。
かつてのウラジオストック航路の桟橋周辺には海上保安庁の巡視船が並んでいる。
時を経ても、この海と空の「あお」と欧亜国際連絡列車の乗客が見た「あお」はきっと変わらない。

旅の終わりに “越前おろしそば” を啜る。
蕎麦前にいただいた “月きよし” は、20年前に廃業してしまった酒蔵の酒を復刻したもの。
氣比神宮に参拝した松尾芭蕉が詠んだ句『月清し 遊行の持てる 砂の上』からいただいたそうだ。
今宵、つるがの湊で見上げる清々しい月を思って、北陸新幹線の旅は終わる。

北陸新幹線 高崎〜敦賀 460.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
真夜中過ぎの恋 / 安全地帯 1984


Holiday-lunch RESTAURANT SALT@浦和

2024-04-03 | 日記・エッセイ・コラム

信州上田の “亀齢ひとごこち” が注がれるカウンターはフレンチレストラン。
ペアリングコースをお願いすると5種のお酒を Lunch Course の料理に合わせてくれる。
爽やかな香りの純米吟醸が合わせるのは、旬が訪れた “ほたるいか×菜の花のリゾット” だ。

蕗のソースを絡めた “さわら” は蕪蒸しを添えて、このほろ苦い春の味が美味しい。
白ワインはブルゴーニュの “エジェルテ” のシャルドネ、この辛口がいい。

本日のお肉は “鴨”、ソースは鴨のレバーと八角にマデイラ酒、濃厚だね。
合わせるカベルネ・ソーヴィニヨン “パスカル・トソ” は辛口のミディアムボディ、ベリー系の果実味?
いつもは勝手気ままに択ぶお酒も、たまにはお店のコーディネートに委ねるのも楽しいですね。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Rock'n Rouge / 松田聖子 1984