旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

十日町の「へぎそば」とNegi で一杯 北越急行ほくほく線を完乗!

2016-04-30 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 北陸新幹線延伸開業前は特急はくたか号が高速で走り抜けた北越急行ほくほく線。
今では単行電車が走るローカル鉄道は、超快速導入、えちごトキめき鉄道乗入を実現。
ドル箱の特急を失った後、地域の鉄道として利便性向上に創意している。

北越鉄道ほくほく線の起点は犀潟駅。幹線国道端にのどかな駅舎を構えている。

犀潟駅を出発した単行電車は、高田平野(頸城平野)の田園地帯を高架線で突き抜ける。
ネームバリューは魚沼産に敵わないけれど、頸城産のコシヒカリもなかなか美味しい。

高田平野を走り抜け、何本かの長大トンネルを潜ると、雪解け水を集めた信濃川を渡る。
やがて単行電車はJR飯山線とクロスする沿線の中心駅十日町に滑り込む。
コンコースでは新潟のご当地アイドルNegiccoの等身大ボードが迎えてくれる。
最近では中野サンプラザやNHKホールでのライブが決まって中央に進出しつつある。

      

 十日町で途中下車するのは、本場越後妻有の「へぎそば」を食べるため。
布海苔(ふのり)をつなぎに使ったコシの強いそばを手繰りにして、へぎ(片木)に盛る。
十日町では「そば」=「へぎそば」なのだ。

 

駅から歩いて10分、へぎそばの名店小嶋屋本店は、GWの親戚一同的グループで満席。
素朴で耳にやさしい新潟弁が飛び交ってなんだか良い雰囲気だ。
突き出しの野沢菜、きんぴら、雪下人参を肴に、淡麗辛口の「松乃井」を冷でやる。

淡麗辛口でほろ酔いになったところで「へぎそば」をいただく。
本当は大きな片木の5~6人前を、大勢でいただくのがお作法。お一人様はちと寂しい。
それでも地野菜の天ぷらと一緒に美味しくいただきました。満足です。

 再びほくほく線に乗車する。高架ホームに滑り込む六日町行きは2両編成だ。
長大トンネルで今度は魚沼丘陵を潜り抜けると一面の田圃は魚沼産コシヒカリの産地だ。
田圃の中を大きく右カーブすると、上越線の複線と合流して六日町駅に終着する。 

 

大河ドラマ「天地人」の舞台六日町にはいい湯が湧き、「八海山」など美味い酒がある。
寄りたい宿屋、酒蔵があるのだけれど...訳あって今日は先を急ぐのだ。

北越急行ほくほく線 犀潟~六日町 59.5km 完乗

圧倒的なスタイル / Negicco


ビール庭園でラウンジで "サッポロクラッシック" 千歳線を完乗!

2016-04-23 | 呑み鉄放浪記

札幌郊外の白石駅、橋上駅コンコースで日曜日のコンサート。ご機嫌なJAZZを奏でる。
特急や快速が頻繁に走り抜ける千歳線、実は60kmに満たない短い路線だ。

1泊2日の北海道呑み鉄の旅は札幌の街に遊ぶこともない。何をやっているんだ俺。
単身赴任時代に始めた大人のゲームも、少々拘りすぎて引くに引けなくなっている。

千歳線の短い旅は、恵庭と千歳の間にあるサッポロビール庭園駅で途中下車をする。
駅名にまでなっているサッポロビール北海道工場は、雄大な自然の中にたたずむ。

恵庭岳の稜線を眺めながら飲む出来たての "クラッシック" は格別だ。
黒ラベルとクラッシックを堪能してから再び千歳線の電車に乗車する。

殆どの各駅停車の終点である苫小牧のひとつ手前、沼ノ端駅で千歳線の旅は終わる。
ここで室蘭本線と合流する。それにしても沼ノ端とは、まるで開拓使時代の響きだ。
昔はウトナイ沼の湿地がこの辺りまで広がっていたのだろうか。

最後の仕上げに南千歳から新千歳空港の地下に乗り入れる支線に乗車する。
支線とは言え15分毎に空港と札幌を結ぶ快速が疾走する。
フライトまでは小一時間、滑走路を眺めるラウンジで "クラッシック" をもうひと缶。
傍らのブリーフケースの底には、土産の "純米吟醸 國稀" の蒼い箱が横たわっている。

千歳線 白石~沼ノ端 56.0km
          南千歳~新千歳空港 2.6km 完乗

スローバラード / 忌野清志郎 1976


新戸津川9時40分発が最終列車 札沼線を完乗!

2016-04-16 | 呑み鉄放浪記

 警笛を鳴らして折り返し9時40分発の石狩当別行きの気動車がやってきた。
この列車、ここ新十津川駅の始発列車であり最終列車なのだ。
北海道新幹線開通で湧いたJR北海道、一方でローカル各線はリストラが進んだ。
そして札沼線の最端部、浦臼~新十津川間は1日1往復の運行となってしまった。

新十津川駅舎はこんな感じ、もう何年も余計な手はかかっていそうもない。
駅舎の軒下に『歓迎 ようこそ新十津川駅へ』の看板。地方の終着駅に生活の匂いはない。
降りる人、乗り込む人もマニアに限られる。今日は春の青春18きっぷ最終乗車日だ。

昨日訪ねた国稀酒造で仕込んでおいた "特別純米酒・国稀" のスクリューキャップを切る。
肴がコンビニ弁当とは味気ないが、石狩当別までの80分ほどをちびりちびりと楽しむ。

名前は知らないが、残雪の山を眺めながら往く。
写真はうまく撮れなかったけれど、泥濘んだ田圃には白鳥たちが遊んでいた。
何年か前に小樽港から富良野に向かう途中、750ccでこの辺りを走ったはずだ。

石狩当別はベットタウンに有りがちな瀟洒な駅だ。
気動車での運行はここまで、北海道医療大学駅以南は電車が走る。電車は6両編成。
学園都市線と称されるこの区間は札幌への通勤通学と沿線の大学によって需要がある。

あいの里教育大駅以南は複線となって、1日の運行は50往復を超える。
1日1往復の浦臼~新十津川間とはえらい違いだ。

さらに太平駅以南は高架線となった。
高速道路を跨ぎ、高層マンション群を抜けて、まるで首都圏と変わらない風景だ。

 

 札沼線(学園都市線)の全列車は札幌発着。でも起点は桑園駅。その先は函館本線だ。
故に桑園駅で旅を終える。札幌へ向かう列車を見送ってから0キロポストを探す。
コンクリート基盤の高架駅には杭は見当たらない。代わりに壁面にプレートがあった。
1日1往復の北端区間、50往復を超える札幌近郊区間、相反する顔を持つ札沼線なのだ。

札沼線 新十津川~桑園 76.5km 完乗

翳りゆく部屋 / 荒井由実 1976


ごっこ鍋と清酒国稀と舟唄と 留萌本線を完乗!

2016-04-09 | 呑み鉄放浪記

 高倉健演じる刑事が追う殺人犯の妹(烏丸せつこ)が働いていた風待食堂。
刑事たちが張り込みをしていた通りの反対側の旅館(日本通運の社屋)は今はもうない。
ここに来る前夜、予習をしておいた「駅STATION」は1981年、倉本聰脚本の作品だ。

 

木造三階建ての元旅館の富田屋、石造りの蔵が立派な旧商家丸一本間家
増毛駅周辺には明治から昭和にかけての歴史的な町並みが残っている。

260年ほど前の宝暦年間に漁場が開かれた増毛は、道北では古い歴史を誇る。
増毛は坂の町、暑寒別岳から流れ出た暑寒別川の傾斜地に集落が寄り添う。
傾斜地がやがてなだれ込むのは、まだ冬の顔をした日本海だ。

赤提灯の灯る小さな居酒屋を切り盛りする倍賞千恵子演じる桐子。
桐子が好きな八代亜紀の「舟唄」、劇中で何度も印象的に流れていた。
なるほど歌詞の情景を想像させる風景と雰囲気がこの町にはある。

 
 

最北の酒蔵「国稀酒造」は旅の目的のひとつ。
暑寒別岳連峰から豊かな残雪を源流として湧き出る伏流水で醸している。
もちろん劇中でも居酒屋「桐子」にはこの国稀の一升瓶が並んでいた。
土産の「純米吟醸 国稀」は、道産好適米を使った清々しい味わいの吟醸酒だ。

最果ての終着駅増毛、ある意味ご利益のありそうな名前ではある。
記念の硬券は売れるだろうか。映画から35年、国鉄分割民営化を経た。
フィルムの中の淋しげな駅の情景は、更に荒涼とした風景となっている。

余計な引込線や、構造物がすべて剥ぎ取られてしまった増毛駅。
短いプラットホームと、たった1本の線路が、折り返しの列車を待っている。

 

 さて今宵は留萌、光風館石亭さんに投宿する。なかなか気持ちの良い宿だ。
主に利尻島近海の海の幸、道産の肉・野菜などを盛り込んだ海の幸御膳に満足。 

 

お造り、チーズ焼き、石焼きにホタテ。"かすべの煮付" に "ほっけの塩焼" とどれも旨い。
名物 "ごっこ鍋"、淡白な身、ぷるんとしたゼラチン質の皮、ぷちぷちした卵が美味しい。
すすむ酒はもちろん「国稀」、まろやかでスッキリとした芳醇な甘口の酒だ。

 

 早朝の留萌駅から深川へ再び留萌本線に乗る。1日数往復足らず、1両の気動車が走る。
国鉄時代、ここから日本海沿いに宗谷本線の幌延まで140kmにも及ぶ支線が走っていた。
風光明媚なルートでも、このゲームに廃線跡まで加えたら、生涯のうちに終わらない。

6時47分発の深川行き、車内に生活の匂いは無い。乗り合わせた10名余のオジサン達。
青春18きっぷ最後の週末に、一部廃止となる留萌本線を乗りに来たご同輩だ。

鉄路は留萌川に沿って勾配を上る。石狩平野に出るには小さな峠を越えないといけない。
峠の前後は一面の銀世界だ。道北に本格的な春がやってくるのはもう少し先のようだ。

 

 石狩平野に下りると各駅から部活の中高生が乗ってきてようやく賑やかになる。
東進してきた鉄路が左手に大きくカーブを描くと、右手から函館本線の複線が近づく。
暫し並走して単行気動車は深川駅6番線に終着する。0キロポストは簡易な標柱だ。
8ヶ月後には増毛~留萌が廃止になる。日本海の車窓がなくなると思うと寂しい。

留萌本線 増毛~深川 66.8km 完乗

八代亜紀 / 舟唄


伊勢神宮から牡蠣と真珠の鳥羽湾へ 参宮線を完乗!

2016-04-02 | 呑み鉄放浪記

 参宮線と云う名称は、伊勢神宮への参詣路線として建設されたからだ。
紀勢本線の多気から鳥羽までの30km弱の路線は1911年の開業だから歴史は古い。
でも並行する近鉄鳥羽線の開業で大きく乗客を減らし、今では有数の不採算路線だ。

鳥羽行きの各駅停車は2両編成のワンマン運転。
名古屋からの特急列車の連絡を待って、5分遅れで多気駅を発車する。

五つ目の伊勢市駅は伊勢神宮の玄関口、乗客を奪った近鉄線と連絡をしている。

 伊勢神宮は外宮から参拝するのがお作法だ。
外宮の正式名称は豊受大神宮。豊受大御神は天照大御神に食事を供する役目をお持ちだ。
参詣後、大正5年創業の伊勢うどん専門店「中むら」で名物 "伊勢玉子うどん" をいただく。
煮干と鰹節のだし汁、地産のたまりを大釜で煮込んだタレと、モチモチした麺が美味しい。

 お腹を満たした後は、4kmほど離れた内宮を参詣する。
正式名称は皇大神宮、天照大御神が住まう日本人の心のふるさとだ。
心身を清める五十鈴川を宇治橋で渡ると、その先は玉砂利を敷き詰めた神域となる。

一の鳥居を潜った川べりに御手洗場がある。五十鈴川の澄んだ水で手を清める。

天照大御神が住まう正宮、日本一の聖域であると言っても良い。
本来、清廉で厳粛な心持ちになるところであるが、それにしても今日は賑やかだ。
自撮り棒を手にした近隣国の観光客が騒がしい。

皇太神宮を詣でた後はお約束の赤福で一服。
それにしても“おかげ横丁”は賑やか、まるで江戸時代のテーマパークだ。
御神酒の「白鷹」を味わったり、松阪牛のコロッケや串焼きを頬張って楽しい。

 
 

「おかげ横丁」で小1時間遊んで伊勢市駅に戻る。
「快速みえ」は名古屋と伊勢市、鳥羽の間を1日13往復、速達サービスをしている。
青春18きっぷで利用できるのが嬉しい。ところで近鉄の特急には対抗できているのだろうか。

終点の鳥羽までは15分の旅、池の浦シーサイドを通過すると左手に伊勢湾が見えてくる。
車窓に岬に建つリゾートホテルや、入江の牡蠣筏を眺めていると、ほどなく鳥羽だ。

2面4線ある近鉄線のホームには名古屋、京都そして大阪と結ぶ特急が頻繁に発着する。
人気のデラックスカー「観光特急しまかぜ」も白地にブルーの精悍な車体を見せてくれた。
鳥羽では近鉄線が主役、鳥羽線の快速は極めて地味に車止めのある1番線でその旅を終える。

 

 普段は1日中普通列車に揺られる「呑み鉄」の旅、投宿するのは大抵駅前のホテル。
今日はめずらしく鳥羽湾をのぞむ岬のリゾートホテルを択んだ、家族が一緒だからね。
蒼い海と空をながめ、やわらかな潮風に吹かれて露天風呂に浸かる。なかなかご機嫌なのだ。

車海老と魚介のマリネ、志摩大王崎産の伊勢海老、メインは牛フィレ肉のロースト。
ソムリエお奨めの甲州ワイン "アルガブランカ・イセハラ" を合わせる。
いつもとずいぶん調子が違う春休みの「呑み鉄」の旅なのだ。

参宮線 多気~鳥羽 29.1km 完乗

 
 

愛に走って / 山口百恵 1976